魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

文字の大きさ
28 / 129
第1章 支援術師

第28話

しおりを挟む

 魔王バドマトスを追って踏みこんだ洞窟は、それまでの広場よりも大きな空間だった。
 これは、むしろ。
 洞窟というより、神殿……?

「ふん? 新米魔王のくせに、達者な小細工だな!」

 ファレンスが余裕たっぷりに吐き捨てる。
 ……もう勝ったつもりか?
 いやいやまさか。
 勇者の底がそんなに浅いはずはないな。

 なにせこの神殿。
 さっきまでと同じく、壁や天井が分厚い氷で覆われているが、それがほぼ360度全体にわたっている。
 単なる凝り性とは思えない。
 もしかすると、これは……

「グクフフフフフフフ……!」

 ズンン、と背後からの音に振り返る。
 俺たちが通ってきた入り口に、バドマトスの姿があった。

「なにい……!? ど、どうやって後ろに!?」

「グフハハハハハかかったな人間どもよふくろのねずみだなぶりごろしにしてくれる恐れおののけこの魔王の恐るべき力の恐ろしい」

「あまりしゃべるな貴様は!」

 セリフについちゃ、ファレンスとまったく同意見ではあるが。
 おそらく、氷の中を移動したな。
 やはりこの魔王、歴が浅いにしちゃ芸達者だぞ。

「お、おい、退路を断たれたぜ……大丈夫か、ファレンスのダンナ!?」

「うろたえるな!」

「け、けどよ……」

「タテノス!」

「わ……悪かった! なんでもねえよ」

 キンッ、とファレンスが聖剣を鞘に納めた。
 再び奥義を使うつもりか。

「人間の技などもう通用しないおとなしくしていればまばたきほどの間に殺してやるなぜならばこの我こそは」

「<ヴァイオレットジャスト>!!」

 赤い光がほとばしる。
 魔王はよけようともしなかった。

「フンバッ!!」

 謎の気合いで、毛皮に包まれた筋肉が、ぐわっと膨張する。
 必殺の光線は弾き散らされ、今度はダメージも通っていないようだった。

「グハハハハハハおろかなり人間おろかなり人間魔王最強魔王最強――」

「ゼルスン! 火属性支援を!!」

「……なにっ!?」

 よーしきたきた。
 いいともいいとも!

「<グランド・【イフリート】・アロスメデッサ>」

 によく似た闇のスキル!

 ゴウ、と音すらともなって、聖剣をオレンジのオーラが包む。
 それを鞘に納め、ファレンスが吠えた。

「今までっ……とっておいたのだ!!」

「本当ですか?」

 アリーシャの呟きは、幸か不幸か、俺にしか聞こえていないようだったが……

「<フレイムヴァイオレットジャスト>!!」

 波打つような光の斬撃が、バドマトスを直撃した。
 ガシャアアアン、と氷が砕けたような音が響く。

 ……いや?
 ような・・・、ではないな。
 本当に氷が砕けている。

「な……に……!?」

「グファファフフフフフフフ……! 死ねい!!」

 愕然とするファレンスに、初めて短く単語を切ったバドマトスが、つぶてのような氷を群れで発射する。

「あぶねえっ……!」

 とっさに前へ出た鎧くんが、盾となってファレンスを守った。
 これが、いわゆる『勝手な動き』なのかどうか。
 ファレンスが反応してくれないから、ちょっとわからないな。
 でもたぶん違うのかな。

「そんな……バカな! <フレイムヴァイオレットジャスト>!!」

 再び放たれる奥義。
 またもバドマトスを直撃し――いや。

 していない。
 氷だ。

 氷の壁を空中に生み出し、ファレンスの攻撃を軽減している。
 なんと、この魔王。
 戦いの中で、相手のことを……攻撃の特性を見切りはじめたか。

「おろかなりおろかなり人間ども決して生かしては帰さん決してだ」

「ぜ……ゼルスンッ!!」

 はいゼルスンです。

「私と剣を! 両方強化してくれ!!」

「わかった」

「急げ!!」

「<ユニオン・【イフリート】・パイオカロテス>」

 っぽい闇スキル。
 これは強いぞ。

 ファレンス自体の特性と。
 聖剣の持つポテンシャル。
 どちらにも強化を施した。間違いなく今までで最強だ。

 あとは……
 勇者たる者のもつ、実力が発揮されれば!

「くらええええええ<アルティメットヴァイオレットジャスト>!!」

 螺旋らせんに渦巻く赤光が、バドマトスの氷盾を貫いた。

「ギャガアアアアアアアアアア!?」

 響き渡る悲鳴。
 ゆっくりと巨体が倒れてゆく。
 視界の端で、ファレンスがほっと脱力するのがわかった。

 さすがは勇者殿……
 ……と、言いたいところだが。

「まだ楽しめそうだなあ」

「……え……? ゼルスン? きみはなにを……」

 倒れかけたバドマトスが、後ろ足で踏みとどまる。

「ゴブファアアッ!!」

 居直りざまに放たれた氷の矢が、ファレンスたちを襲った。

「ぐあっ!?」

「だ、ダンナあ!?」

 タテノスの防御が、きわどいところで間に合わない。
 右腕を撃ち抜かれたファレンスが、がくりとひざをついた。

「ば……ばか、な! なんだこの魔王はっ……!?」

「だ、ダンナ……!」

「タテノス!! 貴様、もっとしっかり守らないかッ!?」

「うっ……!?」

「仕事分の働きもできんやつに払う金はないぞ! どう責任をとる気だ!?」

 うん?
 なんか……
 のんきだな?
 そんなやりとりをしている場合じゃないと思うが……

 ああ、そうか。
 バドマトスが、神殿の壁際から離れないことが、ファレンスにはわかっているんだな?
 この神殿のどこかにあるエネルギー源から、氷を伝って力を受け取っている。
 だからこその、あの耐久力というわけだろうが。

「それを見切っての世間話・・・か。勇者は余裕だなあ……」

「余裕、ですか……」

 アリーシャが、奥歯ですりつぶすように呟く。
 余裕だろ?
 さあ、おもしろくなってきた。


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

更新が遅れてしまい、申し訳ありません。

次は11/25、19時ごろの更新です。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...