魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第1章 支援術師

第33話

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「回復したか? 動いて大丈夫なのか?」

 杖を見て心配する俺に、ダクテムは笑って首を横に振った。

「まだまだ、全身に力が戻りませぬ。少々無茶をしすぎました」

「そうか……」

「しかし、どうしてもひとこと、自分の口から言わねばと思いましてな」

「いつから見ていた?」

「マロネ様にお気遣いいただき、氷の魔王と対峙なさったあたりから、ずっと」

 マロネめ……。

「き……きみは!」

 ファレンスが立ち上がり、ダクテムを前にする。
 覚えていたか。
 自分が追放した男の顔を。

「ファレンス殿、お久しゅうございますな」

「ああ! そうか、きみか……ゼルスンの関係者だったのか」

「自分も、アリーシャ殿と同じく、弟子の1人です」

「!! そうだったのか! なら文句ない、ぜひ我がパーティに戻ってきてくれ! 私が間違っていた!」

 ……ダクテムは。
 決して近接戦闘が得意なタイプではない。
 城に出戻ってきたときは、あれほどの立ち回りを見せてくれはしたが。
 本来は、戦場全体を把握し、上手に力を使う役回りだ。

 ゆえに、ファレンスのようなタイプとの相性は悪くない。
 追放の理由も、このぶんだと……

「反省した! 本当だ! もうきみが、私に断りなく村の人々の傷を癒していたとしても、クビにしたりはしない!!」

 想像より100倍どうしようもない理由だった。
 マジかおまえ。

「人気取りをしていると疑ってしまったんだ! もちろん今ではそんなことはない、ゼルスンの弟子ならそんなことはしない! きみの能力には何の文句もなかった、本当だ!」

「ファレンス殿……」

「あ、ああ!」

 ダクテムは居住まいを正し、わずかに微笑んで言った。



「お断りいたします」



「えっ?」

「ファレンス殿のパーティには、戻りません」

「……あ……え?」

「それを、伝えに参りました。短い間でしたが、お世話になりましたな」

 ダクテム……
 ふむ。

「いいのか?」

「はい」

 俺への返事にも、迷いがない。
 マロネも言っていたが、こうなるとわかっていたかのようだな。

「な……なっ……な、なぜ!! なぜだ!?」

 ファレンスがダクテムの両肩をつかむ。
 おいおい。うちの子にあまり乱暴してくれるなよ。

「どうしてなんだ!? 勇者パーティだぞ!? ゼルスンの言うこともわかるが、しかしともかく、国家公認であることも事実だ! 待遇についてはじゅうぶん考慮する!」

「ファレンス殿。自分はまだまだ未熟。戦いで得られる以上の報酬はいただけませぬ」

「そっ……そうか。ならそれでもいい、尊重しよう! 戻ってきて、私を支えてくれ!」

「……ワシはな、ファレンス殿」

 あくまで静かな口調を保ったまま、ダクテムがファレンスの手をそっと払った。

「誰かにほめられたくて、認められたくて、勇者になろうと思ったわけではない。魔王を倒すために……世のため人のために、そのために強くなろうと思ったのだよ」

「だ……だったら!」

「ファレンス殿は弱い」

「ぐ!!」

「アリーシャ殿にあしらわれたことを言っているのではない。強さとは、剣の腕前や魔力の格、スキルのレベルだけではないのだ。剣士や魔術士ならいざしらず……そう……だから、そう」

 ダクテムがひとつ、小さくうなずいた。

「あなたは勇者ではない」

 数秒の沈黙ののち。
 ファレンスの体が、ゆっくりと真後ろにかたむいていった。
 ばたーん、とダンジョンの床にひっくり返る。

 ……白目をむいて、気を失っているようだ。
 実はリアクションの引き出し、多いやつだったんだなあ。

「ショックの量が、心のキャパシティを上回ったようですね」

『あっはははははおもしろ~い! これだから人間って好きい~!』

「マロネ様……趣味のお悪い」

『え~そう~? ゼルス様にくらべたらぜんぜんだよ』

「何をおっしゃいますか」

『だってこの人いま絶対、ファレンスのこと憐れだとか思ってるよ。こんなミスタースカポンタンを』

「……それは……まあ。はい」

『自分のピュアさで詰ましたようなもんなのにさー。魔族でも人間でも、こーゆー手合いがいちばんタチ悪いんだよね。こわーい」

「あの。マロネ様。よろしくないのでは」

『へーきへーき、今はアリーシャにしか聞かせてないからさ~』

 そうだな、マロネよ。

「俺に聞く気がなかったら、そうだったかもな」

『そーそー。このスキル双方向だから、ゼルス様に聞こうとされたら聞かれちゃうんだけど。でもどーせゼルス様気づいてな……い、でしょ……』

「ああ。気づいてないとも」

『……ですよねー……』

「向こう10日間、自慢のツインテを城の屋根にくくり、ぶら下がった状態で眠ることを許可する」

『闇の精霊に頭皮の限界に挑ませてどうなさるおつもりで!?』

 知るか。
 勝手にハゲあがるがいい。


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は11/27、7時ごろの更新です。
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