魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第1章 支援術師

第36話

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 コンッ、と駒音が高く、謁見の間に響く。
 マロネはどうも、自信のある手を見つけると、体の動きも派手になる傾向にあるな。

「チェック! これでどうさ、アリーシャたん!」

「……。ありません。参りました」

「の~~~っほっほっほっほっほっ!」

 敗北宣言に答えるのも、情け容赦ない高笑い。
 やかましいなあ、もう。

「まっだまだだねえ、アリーシャたん! ゲームの腕も、勇者候補としてもまだまだ!」

「はい」

「そんなこっちゃ、お嫁のもらい手もないよ! 人間はそれだと困るんでしょ~!?」

「はい。精進します」

「むっ……し、殊勝だねえ? ほんとはくやしいんでしょ? 本音出しちゃいなよ、ほれほれ」

「くやしいですが、けれどゼルス様がわたし寄りに手を加えてくださったこのルールで、こんなにも鮮やかに勝利されるマロネ様を尊敬しています」

「ぐむ!?」

「マロネ様のようになりたいです」

「ぐはあッ!? あ、あ、……アリーシャたん、いぢわる言ってごめんねええええええ!! だいしゅきいいいいいい!!」

「マロネ様」

「マロネがアリーシャたんお嫁にもらうううううう!!」

「それは本当に困ります、マロネ様」

 うるさいぞー、と俺は玉座から文句を垂れる。
 アリーシャに抱きついてすりすりしていたマロネが、キッとこっちをにらんだ。なんでだよ。

「ゼルス様っ! アリーシャたんは渡しませんからねっ!」

「どういうことだよ。俺が何したってんだ」

「いつなんどき、魔王らしく魔王魔王した手段で、アリーシャたんをモノにしようとするか! わかんないじゃないですか!」

「しねえよ!」

「魔王魔王ってすごく言いづらいですね」

 知らんわ、まったく。
 この俺がこうもマジメに、サイドテーブルでお仕事してるってのに。
 侍従なら、お茶のひとつも淹れたらどうなんだ。

「ゼルス様、今お酒をお持ちしますね」

「……ありがとう、アリーシャ。茶でいいよ」

「かしこまりました」

 アリーシャみたいな嫁がいたら、なんか……
 確かに、イイかも……

「ご注進!」

 ん?
 おお。
 これまた騒々しく、謁見の間に駆けこんできたのは。

「由々しき事態でございます魔王様!!」

「おう馬。デジャブだな馬」

「スレイプニルでございます! 確かに前にもありましたが、火急の報せはわたくしの担当ゆえ、1度や2度のことではございませんでしょうに!」

「そう言われればそうだ」

 だったらいいかげん、人の部分生やしてから来ればいいのに。

「それで、どうした? 魔王めっちゃ忙しいんだが?」

「ダクテム様がご出立なさいました!」

「! なんだと!?」

「居室におられず、これこのような書き置きが」

「読め!」

「は! 『お世話になりました。さらば』、以上です!」

「みじかっ!」

 それでいてこの上ない別れの言葉!
 ちくしょう、あいつめ……!

「早すぎるだろ~……! もうちょっといると思ってたのに」

「行こうとしてることは、わかってましたけどねえ。さすがダクっち」

「ああ。マロネおまえの予想すら上回るとはな。あいつ傷どうなんだ?」

「まだ全快ではないはずです。人の精神力をなめてましたね」

 精神力、か。
 さすがは確かな勇者候補だ。

「ダクテム様が……?」

「ああ」

 アリーシャが運んできてくれた茶を受け取り、俺は苦笑した。

「忠実すぎるやつだからな。今度こそ、ちゃんとした勇者パーティに加わって、俺を倒しに来るつもりなんだろうさ」

「すごいですね」

「にしても、今のまま出てったってしょうがないだろー!? またファレンスみたいなのに捕まっちゃうかもしれんじゃないか!」

「きっとそのようなことは……」

「そこを改善しようと思って、せこせこ新しい教材作ってたのに!」

「そうなのですか?」

 へ~、とマロネも寄ってくる。

「なんかがんばってるなー、とは思ってましたけど。そうだったんですね」

「おまえ侍従としてどうなんだ……。まあ考えもしてみなかったからな、勇者にあんなのがいるだとか。ピンキリあるだろうとは思ってたけど、アレではなあ」

「ええ。アレではねえ」

「とゆーわけで、我が育成プログラムにも『勇者を見る目を養う』が追加されたわけだ! 聖剣持ってるとか、国家うんたらとか、そんなんじゃない真の勇者を育て、また選ぶために!」

「わあーパチパチパチ」

「パチパチパチ!」

 アリーシャとスレイプニルも、無言で拍手してくれる。
 パチパチ言ってほしかった。

「して、その教材とは?」

「うむ。これだ!」

 テーブルに載せていた四角い紙を、バッと見せびらかす。
 全員、覗きこんでいるな。
 読んでもいいのだぞマロネ、ふふふ。

「……『真の勇者とは、これだ! 魔王推奨最強勇者』……の図……?」

「そうだ! わかりやすく絵に描いてみた。いいアイディアだろう?」

「ええ、まあ……アイディアは。ほんでなんスか、このコロッケパン叩きつぶしたみたいな、真ん中のこの……」

「勇者だが?」

「それが持ってるしなびたバナナみたいな、この……」

「それがアレだ、あのー、光の剣だ!」

「なにそれこわい」

「え、なんかない? 光でできてて、なんでも斬ってくるやつ。持ってるイメージない?」

「えぇ~……」

「絶対強いだろ? こんなん来たら魔王泣いちゃう」

 マロネとアリーシャが顔を見合わせる。

「絵のど下手さは、まあ、ともかくとして……」

「ずいぶんと、センスというか……勇者観がお古いですね」

「そうそれ。マロネもそれが言いたかった。でもマロネやさしいからはっきり言えないところをズバリ切り捨てちゃうアリーシャたんこわい」

「学ばせられる身にもなってください」

「返す言葉もないや……」

 なにを2人でぶつぶつ言ってるんだ?
 ……ああ。

「心配しなくていいぞ?」

「いや心配もしますわこんなん」

「もっといろんなパターンの勇者の絵を、たくさん描くからな!」

「ちょっ」

「取り急ぎ、おいスレイプニル。ダクテムを追いかけてな、1枚だけだがこれ渡してきてくれ」

「ゼルス様らめええええええ!!」

 遠い空は、今日も無責任に青い。
 最強の勇者が俺の前に立ってくれるのは、まったくいつの日かな!


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

これにて本編第1部完結です。

明日11/28、19時ごろに、ちょっとだけおまけの小話を更新いたします。
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