魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第2章 テイマー

第65話

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 イールギットは動じていない。
 右手で俺を指さしたまま、左手で印を結んでいる。

 スキルを補助し、強化する技術。
 テイムと同時発動でも、しっかり防ぎきったか。
 俺の力を正確に読み切れていないとできない。さすがだな。
 だが……

「やはり多少なりとも、テイムは甘くなるな」

「…………!」

「右足を取り戻したぞ」

 ずん、と俺は1歩前へ進んだ。
 同時に左手に力をため、先ほどよりも早く解き放つ。

「ふぅ……ッ!!」

 イールギットが鋭く吐息し、再び防御した。

 ガギイイイイインッ

 スキルとスキルの打ち消し合う音。
 余波で岩場が砕け散り、飛び散った破片のひとつが魔法使いの頬を切ったようだ。

「いひぃっ……!? あ、あ、あああ……!」

「が……がんばれ! 傷は浅いぞ!」

 剣士が励ましてるが、うん、ほんとにな。ほんとに浅いぞ。

「で、でも、こんな……こんなっ……!」

「い、イールギットを支援するんだ! 俺たちみんなで勝利をつかもう!」

「む、む、ムリよ……あんなの勝てるわけない……!」

「だ、大丈夫! 魔王は押されてるぞ! たぶん!」

 それもほんとにな。
 たぶんじゃない。
 攻撃を捌きながら、イールギットは再び俺の右足をロックした。

 恐ろしい手腕だ。
 並の魔王なら、とっくに地面に這いつくばらされ、首筋に魔力のくさびを打ちこまれていただろう。
 生来の防御を破るまで、何度も何度も。

 そうなったら終わりだ。
 だが。

「今度は、左足が戻ったなあ」

 ざし、とまた1歩進む。
 力を振り絞るイールギットの表情が、わずかにゆがんだ気がした。

 いや。
 ……笑った、のか? また?

 俺の気のせいか?
 いや。
 どちらでもいいな。

「これで、死ぬか?」

 今度は10数秒かけて、大きく力を組み上げた。
 その間に、テイムが入りこんでくる。

 左半身すべてが引きれると同時、俺の攻撃が――
 小刻みな魔力砲撃の連射が、イールギットを襲った。

 キュドドドドドドドドッ!!

 1撃1撃が、ドラゴンを屠る力を持つ。
 それらを、すべて。
 イールギットはしのいだ。

 すばらしい。
 すばらしい。
 ならば。

「次で!」

 スキル、魔王。

獄壊暴槍ゲヘナグングニル

「死ぬか!?」

 右手に黒い槍を生成し、間髪置かずそれを投げ放つ。
 ただのスキルではないぞ。

 イールギットが左手で使用している、魔力を壁として扱う防御スタイル。
 その手の防御では、コレは防げない。
 槍の穂先が壁をこじあけ、内側に入りこんで弾け飛ぶ。

 ガドォンンンン!!!

 今までに数倍する轟音が、森をどこまでも駆け巡り……
 イールギットは立っていた。

「ふーッ……! ふーーーッ……!」

 血走った目で。
 必死に呼吸しながら。
 俺に向けられた指も震えている。
 それでも、戦意はまるで損なわれていない。

 攻撃の特性を見切り、とっさに受け流すスタイルに変えたか。
 正しいが、完全にはこなせなかったようだな……
 斬り裂かれたような傷が、体のあちこちに見られる。
 なにより、

「ずいぶん近づけたぞ」

 すぐそばにまで迫った俺の言葉に、イールギットは。
 はっきりわかるほど、笑った。

 ……誘いこまれたか?
 いいや。
 確かにイールギットのテイムは、近づくほどに威力が増すタイプだ。
 だが、そのメリットを差し置いても、俺の接近を許すデメリットのほうがはるかに大きいはず。

 俺とて、無策に歩みを進めていたわけではない。
 とうに本気だ。
 幾度の季節越しにか、俺自身もう覚えてもいないが。

 俺は今、出し惜しみなく、自由に力を振るっている!

 イールギットのおかげだ。
 とても楽しい。
 だが、そうなった魔王おれの周囲は――

「っぐ……がはッ!!」

 イールギットがせきこむ。
 手で覆いもしないその口元から、ぼたぼたと鮮血がこぼれた。

「テイムと、スキル防御と……そこに加えて瘴気しょうきの防御までには、さすがのおまえも手が回らないだろう」

「余裕……っよ……!」

「そうか」

 そうだな。

獄壊暴槍ゲヘナグングニル


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は2/10、19時ごろの更新です。
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