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第3章 前衛タンク
第71話
しおりを挟む俺の城。
このゼルスの居城、魔王城。
本当は、他の魔王の城と区別するために、なんか名前とかつけといたほうがいいんだが……
面倒だし、近くに他の魔王のテリトリーもないから、いまだ無名。
我が腹心の部下、マロネのしぶとい懇願によりこないだ増築したこの城には、今日も闇の力があふれかえっている。
内にも。
……外にも。
「所属不明のドラゴン大編隊、またもこちらの警告を無視!! 魔王城上空に侵入しましたッ!!」
謁見の間に駆け込んできたスレイプニルが、険しい表情で報告を重ねる。
さっきから、何度も何度も中と外を行き来してくれてるんだ。まったくご苦労。
「威嚇魔法にも、動じる様子がございませぬ! 由々しき事態にございます!」
「魔王様……」
玉座のかたわらに控えるアリーシャも、珍しく眉間にしわを寄せている。
確かに……ここ数十年、覚えのない状況だな。
「はぐれドラゴンがたまたままとまった程度じゃ、こうは動かん……。よその魔王の軍勢、か」
「間違いないですねえ」
ぞろりと長いローブを引きずって、闇の精霊マロネが外を見やった。
こっちの表情にも笑顔がないが、さすがに落ち着いた様子だ。
頼もしいぞ、うんうん。
謁見の間の正面、空に向かって開いたバルコニー。
すでにそこから、昼下がりの太陽を覆い隠すほどのドラゴンどもが、ぐるぐると旋回しているのが見える。
俺の領土に棲むドラゴン族を、ぜんぶかき集めたよりも多いな……
何者だ?
「あんなことする友だちはおらんしなあ……」
「てゆーかゼルス様、魔王の友だちなんて1人もいないでしょ」
「うるせ」
「マロネが参ります」
ぶわ、とマロネの小さな体が、闇の粒子に溶けはじめる。
「ものの5分で、1匹残らずたたき落としてやりますよ」
「まて」
「はい?」
「もう少し様子を見よう」
玉座に腰掛けたまま、俺はサイドテーブルの酒を飲み干した。
……さすがにこれ、しまっといたほうがいいかな?
「どこのどなたさんがどういうつもりにしろ、いきなりヤアヤア我こそはとはくるまいさ。そこまで恨みを買った覚えもない」
「ど~でしょーか~……」
「あの数だと、そんじょそこらの魔族将軍じゃ統率しきれん。親玉がくっついてきてるはずだ」
「マロネはできますもん」
「もんつけてしゃべる闇の精霊も、まあそんじょそこらにいてほしくはないが……」
謁見の間から出なくともわかる。
魔王城はすでに臨戦態勢だ。
勇者がやって来たときのため、城に詰めている全魔族が、今はこぞって空をにらんでいる。
普段は領地の四方を守っている守備隊長たちもすでに動いているし、保育所の子どもたちも避難を完了した。
……マロネを止めずに行かせたほうが、おもしろかったか?
「いやいや。さすがにそれは、甘く見すぎか……」
口元に残った酒をなめとる俺の視線の先で、1匹のドラゴンが降下をはじめた。
編隊の中でも、ひときわの巨躯。
バルコニーにおさまるか疑問だったが、なんとも器用に、静かに着地してくれた。
スロープがわりに垂らされた長い首を歩いて、ドラゴンの背から人影が降りてくる。
豪奢な深紫のドレスを身にまとった、若く見える長身の女。
……こいつは。
「お初にお目にかかる、魔王ゼルス」
「こちらこそ、初めまして」
立ち上がり、俺はマロネをさがらせた。
迎える態度はとったが、礼はしない。
1秒でも、視線をそらせる相手じゃあない。
「魔王ラグラドヴァリエとお見受けするが?」
「いかにも」
「これは驚いた。我が城へようこそ」
ふん、とその美女――ラグラドヴァリエが鼻を鳴らす。
うそじゃないさ、驚いたことは。
「序列第1位の龍魔王様が、こんな辺境の土地に何用かな?」
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お読みくださり、ありがとうございます。
次は4/5、19時ごろの更新です。
(しばらくは1の位が0と5の日に更新して参ります)
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