魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第3章 前衛タンク

第80話

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「そういうのには、テミティは最適の部類じゃないのか?」

 赤くしたたるレア肉を頬張りながら、俺は率直に言った。
 う~む、絶妙な焼き加減。
 ……ではあるが、絵になりすぎるからレアはやめろと、厨房に言ってあるというのに。マロネだな。ったく。うまいけど。

「単独で、いろんな働きができるだろう。人数がいるなら不得手もカバーしてもらいやすいだろうし、重宝されるんじゃないのか?」

「強く肯定」

「ははは、さすがの自信家だ」

「自ら公国に赴いた。自信無しではやらない」

「そりゃそうだな……で、それならばだ。追放になるなど、ありえないわけだが?」

 テミティがうなずく。
 その切れ長の目に、浅くない悔恨の色が宿るのを、確かに見た気がした。

「結論から言う。あの勇者隊、調べてほしい。魔王様に」

「ふむ……?」

「わたくしは魔王様に生かされた。死を賭した攻撃のつもりだった。成らなかったが……わたくしは評価されたと考える。たとえ魔王様ゆえの情けだとしても」

「テミティが死なないほうがいいと考えたから、そうしたまでだぞ。ドワーフがそれを情けと呼ぶなら、そうなのかもしれんがな」

 うそじゃない。
 テミティは戦士として優秀すぎる。
 あんなハンパなシチュエーションで喪うわけにはいかん。つーかあのミスリル鎧の中から転移するやつどうやったんだマジで。

「第3勇者隊は、女剣士の隊」

 止まっていたフォークを再び動かしながら、テミティが続けた。

「正規兵に加え、冒険者資格を持つ手練れを、常時数名雇っている。わたくしもその1人だった」

「女剣士がリーダー、ってことか?」

「左様」

「そりゃまたカッコいいな。強いのか?」

「腕は、肯定」

「ほー……。腕、は?」

「魔王様」

 ふ、とテミティが視線をやわらげる。
 笑ってるのか。
 珍しいな……、……近くで見よ。

「あの剣士を調べれば、知れるかもしれない……真の勇者たるを」

「! 本当か!?」

「結果、失望するかもしれないが」

「ほう失望! ……ってどういうことだ?」

「そう感じたまで。もしもあの女剣士が、魔王様の想う勇者たりえる手合いだった場合……追放されたわたくしの落ち度。今いちど、ここで鍛え直していただきたい」

「ふむ?」

「近づくな。それ以上」

 くっ。
 なついてくれているようでいて、独特の距離感を崩さない……!
 ふふふ。アリーシャにもない魅力。実にイイ。

 とはいえ。
 そういう話か。
 失望ね……

「つまり今テミティは、自分の落ち度による……その、能力不足だとかいう理由での追放、それが妥当だと思ってはいないわけだ?」

「肯定」

「はは、なるほどな。それはわかった。わかったが~……ん~」

 この俺に、どんな得があるのかな?
 真の勇者どうこうには興味があるが、今は猜疑心も同時にわいてくるのだ。

 テミティを追放するほどの者なら、さぞ傑出した実力を持っている……
 わけではなく、単に見る目のない勇者もどき・・・の可能性がある、と知ってしまったからな。
 そうは動かないぞ?

「受けていただけるならば」

「ん?」

「おもしろき余興をご覧に入れる」

「ほう、余興。なんだろ。腹踊りかな? 見たい」

「龍魔王。先ほどの……ラグラドヴァリエ」

 こと、とグラスをテーブルに置いて、テミティが目つきを鋭くした。

「倒そう。あれを。わたくしが」

「……うん? ……ラグラドヴァリエを?」

「うむ」

「ドラゴン序列1位を? おまえが?」

「うむ」

「……1人で?」

「場合によっては」

 なるほど。
 テミティちゃん。

「学習しろよ!?」

「むう」

「おまえは1人で! っていうか前衛ガードポジションは1人で戦うようなアレじゃないの! そりゃたまには例外もいるけど、おまえはその例外とは逆方向の例外なの! カッチカチ! 守備キチ●イ! それを活かす方向で考えろよ!?」

「なればこそ。余興」

「……んむ……!?」

「魔王様のお言葉にかけらの瑕疵かしもなし。なれば……成れば、おもしろい。わたくしはそう考えるが?」

 ……むむ……
 テミティは、本当におもしろ半分だけで、こんなことを言う子じゃない。

 俺と戦ったときの、あの転移のような……
 隠し技がまだ、なにかあるのか?
 だとしても。

「小手先が通用する相手じゃないぞ……?」

「承知」

「俺への奇襲は死を賭したと言ってたが、まさか同じ覚悟じゃあるまいな?」

「近い。だが死なぬよ。わたくしの目標は、あくまで魔王ゼルス」

 そうか。
 そこがわかっているなら……

「よかろう」

 に、と俺は笑った。
 ジョッキを持った手を伸ばし、テミティのグラスと縁を合わせる。

 久しぶりに、お出かけしてみるとするか。


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は5/20、19時ごろの更新です。
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