魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第4章 魔法使い

第118話

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「アンデッドか?」

 女性に目を向けて問いかける俺に。
 アードランツはうなずき、アリーシャは少し目を丸くした。

「アンデッド……? 彼女が、ですか?」

「見たとこ、そんな感じがした。気づかなかったか?」

「恥ずかしながら、まったく……顔色が悪い、とは思いましたが」

「悪いにしてもほどがあるが、ま、それはそれだな。俺にも種族がわからん。アーくんがつくった・・・・のか?」

 つまり、ネクロマンシーを施したのか、と聞いたわけだが。
 アードランツは首を横に振った。

「いえ。精霊との融合体のようでして。人間だった彼女が……ユイルーが死んだとき、ちょうど産まれたばかりの精霊が、その体に入りこんだものかと」

「たまに聞くパターンだな。定かじゃないのか?」

「はい。彼女の体内の精霊に呼びかけても、応答がありません。おそらく、入りこむと同時に死んだものかと……エネルギーだけが残り、記憶もなにもなくさまよっておりました」

「ほ~。そんなこともあるんだな」

「極めて希少でありますれば、我が手元に」

「そんな珍しい経緯をたどると、そういうにらみかたもできるようになるのか」

「……にらみ……」

 眉を吊り上げて歯をむき出し、拾われたばかりの仔猫がごとく俺を威嚇する彼女に。
 アードランツはただゴンと、握りこぶしの腹を叩きつけた。

「いたいっ! わ……我が主ぃ……!?」

「ひかえろ。というか空気で察しろ。なんだ今の顔は」

「だ、だって、我が主とタメぐちでしゃべってる……我が主とタメぐちでしゃべってる……! わわわ我が主とっ、きぃーっ……!」

「こちらは魔王ゼルス様だ」

「……えっ」

「師として我に教えをくだされた御方、何度も話し聞かせたであろう。ご挨拶させていただけ」

「……ひ……ひ……」

「それが挨拶か?」

「ひえー……!」

「もういい、埋葬されていろ」

 まあまあ、と俺はアードランツをたしなめた。
 なんだこの不思議な立ち位置。

「いいじゃないか、おまえを守ろうとしたわけだし。部下として立派だぞ」

「は……ご容赦ありがたく」

「マロネだったら、罵倒するだけ罵倒しながらとんずらこいてたところだ。ラグラドヴァリエのときみたく」

「まことに興味をそそられるお話ではございますが、ともあれ、至らぬ手下がご無礼をいたしました」

 いまいちどうながされ、アンデッドの女性がわたわたと頭を下げる。

「ゆっ、ユイルーと申します! 我が主のもとでいろいろやらせてもらってて、えっと、えっと! ごはんとか作ってます!」

「なんかこう、うん、だいたいのポジショニングはわかった気がする。俺はゼルス。こっちは弟子のアリーシャだ」

「えっと! 我が主よりエラい人だからゼルス様はゼルス様様で、えっと、そのお弟子さんだから~……お弟子さん? お弟子さんだったら呼び捨てでも! なんなら我が主の右腕たるアタシのほうがエラい!?」

「今の俺の弟子ということは、つまりアードランツの妹弟子なわけだが」

「アタシめになんでもお申しつけくださいませアリーシャ様!」

 自爆のリズムがマロネとおんなじだなおい。

「アリーシャ、でけっこうですよ」

 ようやくガルマガルミアを鞘に納め、アリーシャが改めて首をかしげた。

「確かに、お香の匂いはいたしますが……本当にアンデッドなのですか?」

「ほんとですよお。自分でも何なのか、ぜんぜんわからないですけど」

「アードランツ様の右腕を?」

「はいっ! このお城のことならなんでもわかります! 詳しい専門家です!」

「……左様ですか」

「さよです!」

 はは。
 ふしぎなものだな、アリーシャとは噛み合ってない。
 それもどこかしら、アリーシャのほうがまごついている感じだ。

「いい部下じゃないか、アーくん」

「ゼルス様、お気遣いなど無用。はっきり断言してやっていただきたい、無能と」

「張りつめるばかりが能でもないさ。なにより、右腕に据えたのはおまえなんだろ?」

「なかば以上、本人の自称であることは主張しておきたいところ……ですが、料理の腕前だけはすさまじいので」

「アンデッドなのに」

「あと謎の勢いもすさまじいので」

「アーくんとよく似てるじゃないか」

「ゼルス様……それはあまりにあまりでは……」

 いや、勢いなかったら無理だろ、この城の内装とか。
 ……ふむ。
 アードランツの部下、か……

「ときにユイルーとやら」

「はっ、はいっ! ゼルス様様!」

「せめて様いっこにして。ユイルーから見て、アードランツは魔王っぽいか?」

「そりゃあもう!! 我が主ほど魔王っぽいお人はいません! しゃべりかたとか! ポーズとか! ファッションセンスとか!」

「ふむふむ! ちなみに俺はどうかな? 魔王っぽい?」

「えっ? ゼルス様は本物の魔王なんでしょ? だから『ぽい』とかじゃないのでは?」

 めっちゃなるほど。
 この子ほんとは頭いいんじゃないのか?

「魔王なんだが、魔王っぽくないから、魔王っぽいものになりたいんだ」

「なるほど! ぽいもののほうがいいんですね!」

「そうだ! どうしたらいいと思う!?」

「だったら我が主は最適ですう! いつも『別にそんなこだわりとかないし』って感じに振る舞っておられますけど、ほんとはバチクソこだわりまくりの痛々しい理論派なんですから!」

「ほほう! たとえば!?」

「絶対に『我が主』って呼ぶように、って決めたのは我が主ですう!」

「っかー!」

 っかーーーっ!!
 俺に足りないのはそーゆーとこだな!!

「アリーシャたん! 今から俺のことは必ず『マイマスター』と呼ぶように!」

「お断りいたします」

「あれえ!? 頓挫早くね!? ど、どうしたらいいんだアードランツ! 両手で顔おおってないで教えてくれい!」

 我が主ぃ~? と心配そうに覗きこむユイルーをよそに。

「ゼルス様……もしや……」

 天を仰いだままのアードランツが、蚊の鳴くような声を震わせた。

「もしや……しばらくお帰りに、ならないつもりでおられますか……?」

「当然だが?」

「……こ……」

「こ?」

「この世は闇が多すぎます……」

 セリフとられた!!


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は1/15、19時ごろの更新です。
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