魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第4章 魔法使い

第120話

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 魚。
 海鳥。
 海藻類。

 多種多様かつ大量の海の幸が並ぶ豪勢なテーブルの向こう側で、ワインのグラスを片手にアードランツは言ったものだ。

「つま……お…………で……ろ……す」

「ふむふむ!」

「ど…………い……見え……ら…………は、ええ」

「ふむふむ!」

「その……か…………ので。……ワインのおかわりはいかがです?」

「なんで最後だけはっきり聞こえるんだアードランツよ!?」

 俺のツッコミに、彼は細い両目をまたたかせたようだった。
 それすら遠すぎて、いまいち判然としない。
 つまりこのテーブルめっちゃ長い。

「最後だけ、とは……今までの、我の発言は、よもや?」

「ほぼほぼ聞こえていなかったぞ!」

「早くおっしゃっていただければ」

「師匠の言うことは黙って聞くのが弟子の仕事だからな!」

「ゼルス様、我に助力できることであれば、提言でも何でもいたしますゆえ……師匠呼ばわりだけはなにとぞご容赦を。なにとぞ」

「そうか……?」

 俺は結構新鮮な心地なんだが。

「そんな両端じゃなくてえ、ゼルス様、もっとこっち座ったらいかがですかあ?」

 給仕をしてくれているユイルーが、アードランツのそばを指さす。
 まったくもってすばらしい解決策。
 なんなら、俺のとなりで終始無言のままもぐもぐしている、軽装鎧姿のままのアリーシャに、最初に言われたことでもあるんだが。

「いや! こうがいいと思うんだ! このテーブル、すごくいいと思うんだ!」

「そうですかあ~? アタシは正直、ムダに長さが長くって用意もお片付けもめんどくさいなーって」

「その長さこそがめっちゃ魔王っぽいじゃないか! このムダを思いつきたい! あと長さが長いはさすがにひどくない?」

「あ、いっけない。なんかねえ、繰り返しちゃうんですよねえ。ひょっとしたら生前のクセなのかも」

「生きていたころの記憶はないのか?」

「覚えてないんですよね~。お料理のこと以外、なーんにも」

 ふむ……
 そのこと自体は、ま、珍しくもないか。

「でもそれだったら、今日のごはんももっと魔王っぽいメニューにしたら良かったかなあ」

「ほほう。たとえば?」

「暗黒トカゲのゲヘナ風姿焼き季節のマンドラゴラソース添え、とか!」

「すげーーー!! 魔王っぽい!」

「作ってきましょうか!?」

「すまん食いたくはない」

「ぴえ~ん!」

 泣くのスピーディだなおい。

「このようなことでよろしければ、いくらでも提案させていただきまするが……」

 真っ赤なワインでくちびるを湿らせ、アードランツがいささか大きな声で言った。
 ごめんな声張らせちゃって。

「魔王らしさなど、主観的にして曖昧模糊……そも、魔王の数からして無量無辺、把握できるものではありますまい。ゼルス様がお気になさること、それそのものの必要性を感じませぬ……」

「アーくんの言うことも当然至極、実に単純明快にして、えもいわれぬ明朗会計……」

「いかがなされましたか急に」

「いや……四字熟語がポイントなのかなーって。魔王っぽいしゃべりの……」

「ゼルス様」

「マジメだこれでも!」

「なおいかにすればよいやら……。左様」

 なにかにピンときた様子で、アードランツが顔を上げた。

「ゼルス様は、どのような魔王をこそ、魔王らしいと思っておられるのですか?」

「あー。俺の理想か?」

「いかにも」

「それは簡単な話だ」

 魚の切り身を酒で流しこみ、俺は胸を張る。

「最強の勇者と戦う魔王!!」

「……ゼルス様……」

「あ、あれ!? ダメか!? これは俺、けっこう最初からずっとそうなんだが!」

「そういうことでは……いえ……それは?」

「だからな、こう……おまえも言った通り、魔王は山ほどいるわけじゃないか」

 それこそムダに。

「光の側から実態を知ってみれば、闇はきっと底なし沼にも思えるだろう。それと正面切って戦う者は、力量や魔力のみならず、精神面も大切になる」

「ゼルス様……」

「精神面。そう。すなわちやる気が!」

「ゼルス様?」

「魔王として! 勇者にやる気を出させたい! こいつを絶対に倒してやるぜウオー!! ってなる感じにアレしたい! つまり、魔王を前にしてやる気を出せる勇者が最強で! 勇者をそういうふうにさせる魔王が理想だ!」

「……その理屈でいきますと、我は……」

「おまえはすこぶる、理想っぽい!」

 俺いま、めっちゃほめてる!

「あんまりでは?」

 なぜだいアリーシャたん!?

「ふ……ふ、ふ……」

「ん? アーくん? その笑い方もいいな……」

「本当に……お変わり、ありませんな。なにひとつ……」

 ふむ……?
 アードランツと再会してからこちら、ちょくちょくそれを聞くが。
 なにやら、しみじみされてしまったな……? どうした?

「しからば。ゼルス様に最適な、理想化の方法がございます」

「! な、なんだって!? 教えてくれアーくん!」

「いちどで成功するとは限りませんぞ。飽くことなく繰り返す覚悟が必要です。天覆う黒雲に幾度遮られようとも、常に下界に手を伸ばし続ける月光がごとく……」

「まかせてくれ! 後半わけわからんが覚悟はできてる!」

「……では……」

 グラスを置いて、アーくんは立ち上がった。
 遠く皿の上の料理は、あまり減っているようにも見えないが。

「ついてきていただけますか」



**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は1/30、19時ごろの更新です。
ストックを作れなかったため、申しわけありませんが、
一回分お休みとさせていただきます。

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