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第28話
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「売れ筋商品を教えてほしい? なにそれ。もしかして偵察かなにか? ふたりで新しく道具屋でも始めるのかしら? 商売敵が増えるって言うなら、さすがの私も敵に塩を送るつもりはないんだけど」
「違うよ。そういう話じゃないんだ」
いや、もしかしてそういう話なのか?
工房で新しく消耗品を売り出すということは、つまり道具屋と客を取り合うということになる。
だとしたら、ドロシーの指摘もあながち間違いではない気がする。
とは言え、ここはまず彼女と対立するつもりがないということを理解してもらわないと。
とりあえず簡単に事情を説明すると、ドロシーは納得した様子で頷く。
「なるほどね。つまり君たちは、工房の収入を増やすために消耗品を売りたい。だけどなにを売ればいいのか分からないから、私に教えてほしいってことね」
「まぁ、そういうことだな。教えてくれないか?」
「うん、まぁそれくらいなら良いよ。ドロシーさんが教えてあげよう」
「いいのか? もしかしたら、それで本当にドロシーの店の売り上げに影響が出るかも知れないのに」
「まぁ、大丈夫でしょ。どうせ君たちはどこかのお店に商品を卸すんだし、だったら私の店にも納品してくれれば、こっちとしても取引先が増えるから。一石二鳥ってやつ」
微笑んだドロシーは、俺たちのお願いを承諾しながらカウンターから出てくる。
「それじゃ、授業を始めようか。まずは、この店で一番売れている物を見せてあげるよ」
そう言ってドロシーが棚から手に取ったのは、小瓶に入った色とりどりの液体だった。
「これはポーションね。液体の色によって効能は異なって、この水色なのが傷を癒すポーション。こっちの少し白っぽいポーションが魔力の回復を高める効果があるの」
「へぇ、いろいろと種類があるんだな。このピンク色のはどんな効果があるんだ?」
近くにあった小瓶を眺めながら尋ねると、ドロシーはニヤリと笑って答える。
「お目が高い。それは主に倦怠期のカップルなんかが使う、性欲増強のポーションよ。君も一本買っておく?」
「んなっ!? なんでそんな物まで置いてるんだよ!」
「えー? だって、それを 求めて来るお客さんも結構いるのよ」
慌てて小瓶を棚に戻す俺をからかうように、ドロシーはクスクスと笑う。
「ふふっ、君って思ったより初心なのね。そんなんじゃ、いざという時に苦労するわよ」
「放っておいてくれ。そんなことより、説明を続けてくれないか」
照れ隠しに少し不愛想な口調になってしまうと、ドロシーはさらに楽しそうに笑みを深める。
だけどそれ以上からかってくることもなく、意外にあっさりと彼女は話を本題に戻す。
「そうね、それじゃあ話を続けましょうか。ポーションが一番の売れ筋商品だとは言ったけど、その中でも特に水色と白、それから緑色のポーションが良く売れるわ」
「水色と白の効能はさっき教えてもらったけど、緑色はなにに効くんだ?」
「緑は解毒のポーションよ。品質にもよるけど、これがあればこの辺りに住むモンスターの毒はたいてい解毒できるの。だから三種類とも、冒険者の子たちがよく買いに来るわね」
なるほど。
確かにゲームなんかでも、その三つは序盤の必需品だ。
この街は駆け出しの冒険者が多いって話だから、それらが売れるのはなんら不思議じゃないだろう。
「逆にこの街では、この黒っぽいポーションはあまり売れないわね。解呪のポーションなんだけど、この辺りには呪いを付与してくるようなモンスターは全くいないから。せいぜいパーティーでひとつ、お守りに持っておくくらいじゃないかしら」
「やっぱりポーションだったらなんでも良いわけじゃないんだな。覚えておくよ」
頭の中でメモを取っていると、ドロシーはさらに棚から別の商品を手に取った。
「それじゃ、次ね。ポーションほどじゃないけど、こっちも結構な頻度で売れるわね」
そう言ってドロシーが差し出してきたのは、なにやら道具のいっぱい詰まったバッグだった。
「これは野営セット。冒険するのなら、必需品と言ってもいいかもしれないわ。中身は寝袋に着火剤、それから浄水器なんかも入ってるの。冒険者の中には、よくコレを壊して買いに来る人も居るわね」
言いながらバッグの中から取り出された道具類を眺めてみると、それはなんだかキャンプ用品みたいだ。
もちろん現代と比べれば見た目も性能もはるかに劣るけど、それでも最低限の野営をすることはできるだろう。
「紹介しておいてなんだけど、これを売るのはあまりオススメしないわ」
「なんで? これだったら私たちでも用意できそうだよ?」
取り出した道具を再びバッグにしまったドロシーは、首を傾げるリーリアにそっけなく答える。
「それが理由よ。だれでもやろうと思えば揃えられる物を、わざわざ道具屋以外で買わないって話。ウチは普通に揃えるよりもセットで安く売ってるけど、正直に言って採算が合わないわ。ほとんど客引きみたいなものだから」
「なるほど。他の商品を買ってもらってやっと利益を伸ばすことができるってわけだ」
「そういうこと。もしどうしてもこれを売りたいなら、他にもいろんな商品を取り揃えておくことね」
納得したのかリーリアも頷き、それを見てドロシーは次の商品を手に取った。
「違うよ。そういう話じゃないんだ」
いや、もしかしてそういう話なのか?
工房で新しく消耗品を売り出すということは、つまり道具屋と客を取り合うということになる。
だとしたら、ドロシーの指摘もあながち間違いではない気がする。
とは言え、ここはまず彼女と対立するつもりがないということを理解してもらわないと。
とりあえず簡単に事情を説明すると、ドロシーは納得した様子で頷く。
「なるほどね。つまり君たちは、工房の収入を増やすために消耗品を売りたい。だけどなにを売ればいいのか分からないから、私に教えてほしいってことね」
「まぁ、そういうことだな。教えてくれないか?」
「うん、まぁそれくらいなら良いよ。ドロシーさんが教えてあげよう」
「いいのか? もしかしたら、それで本当にドロシーの店の売り上げに影響が出るかも知れないのに」
「まぁ、大丈夫でしょ。どうせ君たちはどこかのお店に商品を卸すんだし、だったら私の店にも納品してくれれば、こっちとしても取引先が増えるから。一石二鳥ってやつ」
微笑んだドロシーは、俺たちのお願いを承諾しながらカウンターから出てくる。
「それじゃ、授業を始めようか。まずは、この店で一番売れている物を見せてあげるよ」
そう言ってドロシーが棚から手に取ったのは、小瓶に入った色とりどりの液体だった。
「これはポーションね。液体の色によって効能は異なって、この水色なのが傷を癒すポーション。こっちの少し白っぽいポーションが魔力の回復を高める効果があるの」
「へぇ、いろいろと種類があるんだな。このピンク色のはどんな効果があるんだ?」
近くにあった小瓶を眺めながら尋ねると、ドロシーはニヤリと笑って答える。
「お目が高い。それは主に倦怠期のカップルなんかが使う、性欲増強のポーションよ。君も一本買っておく?」
「んなっ!? なんでそんな物まで置いてるんだよ!」
「えー? だって、それを 求めて来るお客さんも結構いるのよ」
慌てて小瓶を棚に戻す俺をからかうように、ドロシーはクスクスと笑う。
「ふふっ、君って思ったより初心なのね。そんなんじゃ、いざという時に苦労するわよ」
「放っておいてくれ。そんなことより、説明を続けてくれないか」
照れ隠しに少し不愛想な口調になってしまうと、ドロシーはさらに楽しそうに笑みを深める。
だけどそれ以上からかってくることもなく、意外にあっさりと彼女は話を本題に戻す。
「そうね、それじゃあ話を続けましょうか。ポーションが一番の売れ筋商品だとは言ったけど、その中でも特に水色と白、それから緑色のポーションが良く売れるわ」
「水色と白の効能はさっき教えてもらったけど、緑色はなにに効くんだ?」
「緑は解毒のポーションよ。品質にもよるけど、これがあればこの辺りに住むモンスターの毒はたいてい解毒できるの。だから三種類とも、冒険者の子たちがよく買いに来るわね」
なるほど。
確かにゲームなんかでも、その三つは序盤の必需品だ。
この街は駆け出しの冒険者が多いって話だから、それらが売れるのはなんら不思議じゃないだろう。
「逆にこの街では、この黒っぽいポーションはあまり売れないわね。解呪のポーションなんだけど、この辺りには呪いを付与してくるようなモンスターは全くいないから。せいぜいパーティーでひとつ、お守りに持っておくくらいじゃないかしら」
「やっぱりポーションだったらなんでも良いわけじゃないんだな。覚えておくよ」
頭の中でメモを取っていると、ドロシーはさらに棚から別の商品を手に取った。
「それじゃ、次ね。ポーションほどじゃないけど、こっちも結構な頻度で売れるわね」
そう言ってドロシーが差し出してきたのは、なにやら道具のいっぱい詰まったバッグだった。
「これは野営セット。冒険するのなら、必需品と言ってもいいかもしれないわ。中身は寝袋に着火剤、それから浄水器なんかも入ってるの。冒険者の中には、よくコレを壊して買いに来る人も居るわね」
言いながらバッグの中から取り出された道具類を眺めてみると、それはなんだかキャンプ用品みたいだ。
もちろん現代と比べれば見た目も性能もはるかに劣るけど、それでも最低限の野営をすることはできるだろう。
「紹介しておいてなんだけど、これを売るのはあまりオススメしないわ」
「なんで? これだったら私たちでも用意できそうだよ?」
取り出した道具を再びバッグにしまったドロシーは、首を傾げるリーリアにそっけなく答える。
「それが理由よ。だれでもやろうと思えば揃えられる物を、わざわざ道具屋以外で買わないって話。ウチは普通に揃えるよりもセットで安く売ってるけど、正直に言って採算が合わないわ。ほとんど客引きみたいなものだから」
「なるほど。他の商品を買ってもらってやっと利益を伸ばすことができるってわけだ」
「そういうこと。もしどうしてもこれを売りたいなら、他にもいろんな商品を取り揃えておくことね」
納得したのかリーリアも頷き、それを見てドロシーは次の商品を手に取った。
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