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初めての侵入者
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「出産、やばい……」
壮絶な初出産の後、復活までかなりの時間がかかってしまった私はしみじみとそう呟いていた。
復活したとはいっても相変わらず地面に寝ころんだまま、私は大きなため息を吐く。
出産とは命懸けで大変なことだということは分かっていたつもりだったけど、まさかこれほどとは思っていなかった。
なにより、途中から与えられた快感がヤバすぎた。
おそらく『被虐願望』スキルの影響だろうけど、どうやら私は一定以上の苦痛は全て快感に変換される身体になってしまったようだ。
それが、さっきの出産中にありえないほどの気持ちよさを感じてしまった理由だろう。
あまりの凄まじさに、そのまま頭が狂ってしまうかと思ってしまった。
「赤ちゃんを産むたびにあんな風になってたら、とてもじゃないけど身体が持たないよ……」
思わず、そんな弱音とも言える言葉が漏れてしまう。
これから大量にモンスターを産み落とさなくてはならない私にとって、体力の消耗は文字通り死活問題だ。
一回の出産でこんなに体力を消耗してしまっていては、ダンジョンの戦力として数えられるほどにゴブリンを増やすのにどれだけ時間がかかるか分からない。
最悪の場合には敵の襲撃に間に合わない可能性があるし、それ以前に戦力が整うまでに私の精神がおかしくなってしまうかもしれない。
「まぁ、それは普通に『瞬間出産』を習得すればいいとして、問題はそこだけじゃないのよね」
『瞬間出産』なら体力の消費も抑えられるだろうし、私への負担はほとんど無くなる。
後は延々とモンスターに犯されていれば、勝手にダンジョン内のモンスターが増えていくって寸法だ。
「だけど、それだけじゃ増えるペースが遅い気がする……」
別に急ぐ必要もないのは分かっているのだけど、やっぱり身を守る術は多いに越したことはない。
もしもの時に取れる選択肢が多いということは、それだけ生存の確率を上げることに直結する。
今は隠蔽しているとはいえ、いつダンジョンの存在がバレてしまうか分からない。
もしバレてしまって攻め込まれたら、私は自分と四匹のゴブリンだけで迎撃しなければいけないのだ。
ちなみに一匹増えているのは、もちろん私の産んだ赤ちゃんゴブリンも頭数に入っているから。
モンスターの成長は早いみたいで、さっき生まれたはずの赤ちゃんはすでに歩き回れるほどに成長していて、今は他のゴブリンに習いながら戦い方を覚えている最中だ。
他よりも頭一つ分くらい小さいゴブリンが拙い手つきで棍棒を振る姿は、自分の子どもと言う贔屓目なしで見てもちょっと可愛らしい。
できることならずっと眺めていたいくらいだけど、流石にそんなことをしている暇はないだろう。
「ともかく自分の身を守るためにも、もっとポコポコ産んで戦力を増やしていかないと駄目ね」
とりあえずもう一匹くらい仕込んでおこうかと立ち上がったところで、ふと嫌な感覚が私を襲う。
「なに、これ……? もしかして、侵入者?」
心臓をコアとして捧げている影響からか、私はダンジョン内のことなら手に取るように分かるようになっている。
だから侵入者が居ればもちろん分かるし、集中すればダンジョン内の様子ならモニタリングすることもできるのだ。
「相変わらず意味分かんないけど、便利だから深く考えるのはやめよっと。使えるものはありがたく使わせてもらいましょう。……さてさて、侵入者はどなたかなー?」
たぶん野生の動物が侵入してきたんだろうと楽観的に考えた私は、目を閉じて視界をダンジョンの入り口付近に飛ばす。
しばらくして視界に映ったのは、角の生えたちょっと大きめの兎の姿だった。
「やっぱり野生の動物かぁ。……いや、あれってモンスターになるのかな?」
普通の兎に角は生えていないはずだし、かと言ってモンスターにしては弱そうすぎる。
「ともかく、貴重な食糧であることは変わらないわ。さっさとゴブリンをけしかけて、晩ご飯にしちゃいましょうか」
さっそく一匹のゴブリンを入り口まで転移させようとして、しかしその時異変が起きた。
「えっ!?」
私が視界を戻そうとした瞬間、ヒュッという小さな風切り音とともに兎に向かって勢いよくなにかが飛んでいく。
それは寸分たがわず兎の頭に飛んでいくと、兎は「ギッ!?」と小さな断末魔を上げて動かなくなった。
突然の事態に私が呆然とそれを眺めていると、不意に入り口近くの茂みが揺れる。
「こ、今度はなにっ!?」
次から次へと訪れる異変に戸惑っていると、それは茂みからゆっくりと姿を現した。
すらっとした手足。
動きやすそうな少しピッチリしたボディラインを強調する服は、泥や落ち葉で少し汚れている。
辺りを警戒するようにキリッと引き締められた瞳は、もう動かなくなった兎をジッと見つめ続けていた。
手に持った弓にはしっかりと矢がつがえてあり、もし兎が再び動き出してもすぐに仕留められてしまいそうだ。
そしてなにより目を引くのは、頭の上で小刻みにピコピコ動いている動物を思わせるモコモコの耳。
茂みから私の視界の中に現れたのは、どこからどう見てもファンタジーな物語でお馴染みのあの姿だ。
「獣人、キターーーー!」
思わず大きな声で叫んでしまった私は、驚いてこちらを見つめているゴブリンに向けて急いで指示を出すのだった。
壮絶な初出産の後、復活までかなりの時間がかかってしまった私はしみじみとそう呟いていた。
復活したとはいっても相変わらず地面に寝ころんだまま、私は大きなため息を吐く。
出産とは命懸けで大変なことだということは分かっていたつもりだったけど、まさかこれほどとは思っていなかった。
なにより、途中から与えられた快感がヤバすぎた。
おそらく『被虐願望』スキルの影響だろうけど、どうやら私は一定以上の苦痛は全て快感に変換される身体になってしまったようだ。
それが、さっきの出産中にありえないほどの気持ちよさを感じてしまった理由だろう。
あまりの凄まじさに、そのまま頭が狂ってしまうかと思ってしまった。
「赤ちゃんを産むたびにあんな風になってたら、とてもじゃないけど身体が持たないよ……」
思わず、そんな弱音とも言える言葉が漏れてしまう。
これから大量にモンスターを産み落とさなくてはならない私にとって、体力の消耗は文字通り死活問題だ。
一回の出産でこんなに体力を消耗してしまっていては、ダンジョンの戦力として数えられるほどにゴブリンを増やすのにどれだけ時間がかかるか分からない。
最悪の場合には敵の襲撃に間に合わない可能性があるし、それ以前に戦力が整うまでに私の精神がおかしくなってしまうかもしれない。
「まぁ、それは普通に『瞬間出産』を習得すればいいとして、問題はそこだけじゃないのよね」
『瞬間出産』なら体力の消費も抑えられるだろうし、私への負担はほとんど無くなる。
後は延々とモンスターに犯されていれば、勝手にダンジョン内のモンスターが増えていくって寸法だ。
「だけど、それだけじゃ増えるペースが遅い気がする……」
別に急ぐ必要もないのは分かっているのだけど、やっぱり身を守る術は多いに越したことはない。
もしもの時に取れる選択肢が多いということは、それだけ生存の確率を上げることに直結する。
今は隠蔽しているとはいえ、いつダンジョンの存在がバレてしまうか分からない。
もしバレてしまって攻め込まれたら、私は自分と四匹のゴブリンだけで迎撃しなければいけないのだ。
ちなみに一匹増えているのは、もちろん私の産んだ赤ちゃんゴブリンも頭数に入っているから。
モンスターの成長は早いみたいで、さっき生まれたはずの赤ちゃんはすでに歩き回れるほどに成長していて、今は他のゴブリンに習いながら戦い方を覚えている最中だ。
他よりも頭一つ分くらい小さいゴブリンが拙い手つきで棍棒を振る姿は、自分の子どもと言う贔屓目なしで見てもちょっと可愛らしい。
できることならずっと眺めていたいくらいだけど、流石にそんなことをしている暇はないだろう。
「ともかく自分の身を守るためにも、もっとポコポコ産んで戦力を増やしていかないと駄目ね」
とりあえずもう一匹くらい仕込んでおこうかと立ち上がったところで、ふと嫌な感覚が私を襲う。
「なに、これ……? もしかして、侵入者?」
心臓をコアとして捧げている影響からか、私はダンジョン内のことなら手に取るように分かるようになっている。
だから侵入者が居ればもちろん分かるし、集中すればダンジョン内の様子ならモニタリングすることもできるのだ。
「相変わらず意味分かんないけど、便利だから深く考えるのはやめよっと。使えるものはありがたく使わせてもらいましょう。……さてさて、侵入者はどなたかなー?」
たぶん野生の動物が侵入してきたんだろうと楽観的に考えた私は、目を閉じて視界をダンジョンの入り口付近に飛ばす。
しばらくして視界に映ったのは、角の生えたちょっと大きめの兎の姿だった。
「やっぱり野生の動物かぁ。……いや、あれってモンスターになるのかな?」
普通の兎に角は生えていないはずだし、かと言ってモンスターにしては弱そうすぎる。
「ともかく、貴重な食糧であることは変わらないわ。さっさとゴブリンをけしかけて、晩ご飯にしちゃいましょうか」
さっそく一匹のゴブリンを入り口まで転移させようとして、しかしその時異変が起きた。
「えっ!?」
私が視界を戻そうとした瞬間、ヒュッという小さな風切り音とともに兎に向かって勢いよくなにかが飛んでいく。
それは寸分たがわず兎の頭に飛んでいくと、兎は「ギッ!?」と小さな断末魔を上げて動かなくなった。
突然の事態に私が呆然とそれを眺めていると、不意に入り口近くの茂みが揺れる。
「こ、今度はなにっ!?」
次から次へと訪れる異変に戸惑っていると、それは茂みからゆっくりと姿を現した。
すらっとした手足。
動きやすそうな少しピッチリしたボディラインを強調する服は、泥や落ち葉で少し汚れている。
辺りを警戒するようにキリッと引き締められた瞳は、もう動かなくなった兎をジッと見つめ続けていた。
手に持った弓にはしっかりと矢がつがえてあり、もし兎が再び動き出してもすぐに仕留められてしまいそうだ。
そしてなにより目を引くのは、頭の上で小刻みにピコピコ動いている動物を思わせるモコモコの耳。
茂みから私の視界の中に現れたのは、どこからどう見てもファンタジーな物語でお馴染みのあの姿だ。
「獣人、キターーーー!」
思わず大きな声で叫んでしまった私は、驚いてこちらを見つめているゴブリンに向けて急いで指示を出すのだった。
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