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鬼祓い士
しおりを挟む穏やかに凪いだ波の上を小型フェリーが進んでいく。
年が明けたばかりの朝方の空気はしんとして冷たく、観光地に向かう船だというのに、甲板に人影は二つだけである。
「龍一ー、見てみて、あのでっかい鳥居。迫力あると思わない? 仕事が終わったら観光しようよ。ああ、今から楽しみだなあ」
甲板の手すりから身を乗り出すようにして小柄な少年がはしゃいでいる。服装や髪形は地味だけど、よく見れば、かなりの美少年だ。
肌の白さといい、柔らかそうな髪の毛といい、一見少女のようにも見える。
「広太さあ、お前、全然緊張しねえの? 頭のネジ、ぶっ飛んでねえか?」
龍一と呼ばれた少年は、吐き捨てるように言った。
さらりとしたストレートの髪に、鋭く整った切れ長の目。癒し系の広太とは、真逆にどこか悪びれた雰囲気のある、大人びた印象の美少年だ。
龍の刺繍を施したジャンバーに編み上げブーツが、彼の凄味あるルックスによく似合っている。
「ネジはいつでもぶっ飛んでるよ。龍一ほどじゃないけどね」
広太は龍一の不機嫌そうな態度に、全くめげた風はない。
「けど、緊張より、ワクワクのほうが大きいかな。だって、今回が初めて二人で当たる仕事なんだよ。楽しみじゃん。そろそろおじさんから自立したいと思ってたし」
「初めてだから、びびってんだろ。何が観光だ。あの島で俺たちを待ってるのは、鬼なんだぜ」
「わかってるよ。そんなの。何年俺が鬼祓いやってると思ってんの。九年だよ」
「俺なんか、十一年だぜ」
張り合う龍一に広太は笑った。
「だろ? もう俺たち鬼のスペシャリストと言っていいんじゃない? 大丈夫だって。俺、龍一を信じてるし」
「……ばーか」
能天気な広太に脱力し、龍一は首を捩じって後方の海側へと視線を向ける。
遠目でも十分目をひいた、巨大な島のシンボルが、右手に迫っている。
神祀る島、厳島神社大鳥居だ。
左手には、朱塗りの社殿がある。青い海にぽっかりと浮かんだその秀麗な様は、龍宮城さながらだ。
「ったく、派手な島だぜ。いかにも、鬼が好みそうだ」
龍一は唸った。
事は、昨日の夕食時、父親のこんな一言から始まった。
「宮島で鬼が暴れてるらしい。お前らちょろっと行って鎮めて来い」
広太は、箸を止め、龍一は両目を見開いた。
「は? なんで。親父が行けばいいじゃん」
「冬休みだろ。どーせ暇だろ。行け。あ、広太は方向音痴で頼りにならないからな。広島までの飛行機や船の手配はお前が全部やってやれよ」
「俺、迷子になるのが得意だしね。龍一、よろしく」
広太は天使の笑みを龍一に向ける。
「はあああ? 意味わかんねー!」
「おじさん、宮島って紅葉まんじゅうで有名なとこだよね」
「ああ、土産はそれでいいぞ」
不満げな息子を軽くスルーし、父親は甥っことほほえみあう。
(くそっ。俺は、お前の奴隷じゃねえぞ)
と言いながら、その夜は、徹夜で宮島の情報を収集してしまう己の妙な律儀さが情けない。
上原家は、江戸時代から続く、鬼祓い一族だ。
その名の通り、現世に時折沸いてくる鬼を払い、その魂を鎮めることを生業としている。
だが、年々能力者は減り、今では、龍一の父慎太郎と息子である龍一、そして従兄弟の広太にしかその能力は備わっていない。
特殊能力を絶やすことなかれ、と、幼少期から、龍一は居候の広太と共に鬼祓いの技術を、いやと言うほどたたき込まれてきた。
修行の日々は、そのまんま、龍一と広太の友情の歴史である。
慎太郎は、融通のきかない仕事人間で、子供たちにも己のポリシーをがんがん押しつけてきた。
学校の授業もそこそこに、西に鬼が出たと言われれば西に走り、東に出たと言われれば東に飛び。
小学校の頃から、運動会や修学旅行などのイベントごとに、まともに参加できた試しがない。
「私は、もう疲れた……」
そんな一言で、母親が家を出て行ってしまったのも、家庭を省みず、あまつさえ子供を振り回す、父親の態度が問題だったのだと龍一は思う。
だから、未だ葛藤がある。日々の鍛練も鬼という摩訶不思議で危険な代物に、ぶつかっていかねばならないデンジャラスな運命も、理不尽なものに感じられてしまうのだ。
このまま大人の命令に唯々諾々と従い、敷かれたレールを進み続けるのか。もっと違う道があるのじゃないか。
悶々とする日々なのだ。
「龍一、どうしたの。ぼーっとして。ついたよ」
広太の声に龍一ははっと我に返った。船は、桟橋に横付けされ、客が降り始めていた。
「ようこそいらっしゃいました。わたくしは、厳島神社神主、神林孝次郎です」
桟橋へと下りた二人を、作務衣姿の恰幅のいい男が出迎える。体格に見合った、がっしりとした太い眉毛が印象的な男である。
「鬼祓い師の上原龍一です」
「同じく田中広太です」
二人は、よそいきの顔を作り頭を下げた。
「お二人は、まだ学生と聞いてます。そんなお若い方が、鬼祓い師とは、驚きました。高校二年なら、うちの玲子とたった一つしか違わないというのに、たいしたものだ」
宿への道を案内しながら、何度も孝次郎は感心してみせた。
「若いけど俺たち、仕事はできるから大丈夫ですよ。安心して任せちゃってください」
単独での仕事は初めてなのに、広太は調子のいいことを言う。
「いや、心配はしておりません。優秀な方だと聞いておりますし。ただ、こんなお若い方に面倒を押しつけて申し訳なく思っているんですよ」
孝次郎は頭をかいた。
孝次郎の用意した宿は、厳島神社に隣接した、海上に建つ和室二間の宿舎だった。
「まるで庭が海なんだね。魚が見えそう」
窓からの景色に広太がはしゃぐ。
「宮島は、どこもかしこもが絶景なんですよ。ですが、この宿は特に神社や港もすぐですし、便利だと思います」
孝次郎は自慢げに言った。
龍一は荷物を置き、机を挟んで、孝次郎と差し向かいに座った。広太は龍一の隣に座る。孝次郎の肩ごしに、青い海と波の揺れる様が見えた。どこもかしこもが絶景と称した孝次郎の言葉が、誇張ではないと思える光景だ。
孝次郎は改めて、訪問への礼を言い、居住まいを正した。
「お二人をおよびしたのは、他でもありません。三鬼という鬼を祓っていただきたいのです」
孝次郎はそう切り出した。
「弥山にある、三鬼堂の鬼、ですか」
龍一は尋ねる。
「そうです。よくご存じですね」
「一応、ネットで宮島の歴史と文化についてさらってきました。ざっとですが」
龍一の答えに、孝次郎は満足げに頷き、
「三鬼は圧倒的な神通力で人々を救うと言われている、まさに正義の鬼でした。ですが、ここにきて、鬼の本能に目覚めたのです。様々な怪異を引き起こすようになりました。どうか、ご覧になってください」
台の上に、数枚の写真を並べた。
「くぐり岩だ」
一枚を手にとり、龍一は呟く。
「何それ」
広太は小声で尋ねた。
「霊峰弥山の頂上前にある岩です。特異な形状から、そう呼ばれているんです」
龍一の代わりに孝次郎が説明する。
「アーチ部分をよく見てください」
孝次郎は二枚目の写真を指した。
「……割れてる」
「そう。真っ二つに」
孝次郎は眉をひそめる。
「それがそもそもの始まりでした。翌日弥山本堂の鐘が壊されました。そして、またその翌日。消えずの火が、消えてしまった。怪異は山だけでなく、神社にまでおりてきました。仁王像が徘徊してるという噂が囁かれ、亡霊の目撃者が増えました。こんなこと、今までに一度もなかったのです」
「あの……お言葉ですが、それは本当に鬼の仕業なんでしょうか。くぐり岩は、確かにかなり頑丈な岩なんでしょうが、道具を使えば、人力でも、なんとかなりそうな気もしますし。他のことも勿論ですが」
龍一の問いかけに、孝次郎は頷く。
「私どもも、すぐに鬼を疑ったわけではありません。最初はいたずらの線で県警にも捜査を依頼しました。宮島は世界遺産や重要文化財の宝庫ですから。目立ちたがり屋の馬鹿者が、ちょっかいをかけて来ないとも限らないですし」
「わかる、わかる。いたずらを笑われてるだけなのに、目立てばえらいと思ってる勘違いって学校にもいるよねえ。最低だよなー。注目を集めたいなら、もっといいことで目立てばいいのに」
何かを思いだしたらしく、広太がそれらしいことを言う。
「いたずらじゃないと確信した出来事があったんですね」
横道に逸れそうな会話を、龍一はさりげなく修正する。
「はい。そうなのです」
孝次郎は声をひそめて言った。
「龍一さんは、我が島が、平清盛公と並々ならぬ縁で結ばれているのを、ご存じでしょう。清盛は、幾度となく厳島神社を参拝しました。清盛に、宗教的覚醒をさせたのは、宮島の神だと言われております。あの美しい社殿を創建したのは、清盛なのです。その清盛の亡霊が、夜な夜な神社に現れるようになったのです。甲冑を着た若々しい姿でした。おそらくは、彼が一番輝いていた頃のお姿なのでしょう」
平清盛。
ふいうちみたいに、飛び出した有名人の名前に、龍一と広太は顔を見合わせる。
「清盛は厳島神社の崩壊を予言し、私の前で泣き崩れました。」
孝次郎は言った。
「怪異を起こしているのは、三鬼だと、私はそのときに知ったのです。清盛は、自分の愛した宮島が鬼ごときに破壊され、汚されるのは忍びないと泣いておられた……。私も、同じ気持ちです」
孝次郎は畳に両手をつき、深々と頭を下げた。
「お願いします。この宮島を、神祀る島を、救ってください。悪い鬼を祓ってくださいませ!」
二人はとりあえず、弥山に登ってみることにした。
「どう思う。さっきの話」
ロープウェイまでの道を歩きながら、広太は言った。
「さあ。あれだけじゃ、まだ何もわかんねえよ。とにかくこの島のものが壊れまくってて、それを三鬼って地場の鬼が原因だと目星をつけてるって、ことくらいしか」
「だよね。けど、清盛が出てきたのにはびっくりした。戦国武将の霊なんて、一度俺も拝んでみたいなあ。甲冑は男の憧れだよね」
「そのうち会えるんじゃねえの? 神社に毎晩出没してんだろ」
そんなたわいもない会話を続けていたとき、
「あんたたち!」
ふいに誰かが目の前に立ちふさがった。
「ん? 何だ?」
二人は立ち止まる。
道の真ん中に、一人の少女が、腕を組み肩をいからせ、両足を広げて突っ立っていた。
年は、中学生か、それとも高校にあがったばかり、といったところか。
長い髪を結んですっきりと頭の高い位置でまとめ、白いセーターにタータンチェックのスカートが、少女の清楚なルックスによく似合っている。わっ、可愛い、と広太は小声で言い、
「君誰? 俺たちに何か用?」
先を歩いていた龍一を押しのけて一歩前に進み出た。
「あんたたち、鬼祓い師なんでしょ」
少女は逆に問い返してきた。一見して、龍一たちを歓迎していないとわかる。きっと結ばれた唇といい、トゲのある口ぶりといい、一目瞭然だ。
「そうだけど?」
龍一は、少女を真似て腕を組む。
「島から出てってよ。ペテン師。鬼祓い師なんて、およびじゃないわ。迷惑なのよ。出てってよ!」
少女は瞬きもせずに言った。
「ペテン師?」
広太は呆然とし、
「……なんだとぉ? もう一回言ってみろ」
龍一は片眉をぴくりと上げた。
「この島から出てけって言ってんの!」
「馬鹿野郎。こっちだってなあ、好きで来てるんじゃねえ。仕事で仕方なく来てんだよ!」
龍一は放心している広太の肩を押し退け、少女までの距離を縮めた。
「な、何よ。凄んだって怖くないんだからねっ」
言葉の勢いとは裏腹に、少女は一歩後退る。
「お前、神林玲子だろ。年下のくせに生意気な奴だな」
龍一は指摘した。
「何で知ってるの!」
玲子は両目を丸くする。
「龍一もしかして神通力まで使えるようになった?」
真顔で尋ねる広太に、
「さっき神主が娘がいるって言ってたろうが。それに、その太い眉毛。親父さんにそっくりだ」
「なっ……!」
玲子は頬を真っ赤に染めて、眉を両手で隠す。龍一は、玲子のセーターの首の下あたりを指でさし、睨み付けた。
「言っとくが、ペテン師なんて単語で俺らが傷つくなんて思うなよ。そんなの、行く先々で言われ慣れてる。鬼祓いを呼んだはいいものの、馬の骨に事件を解決してもらった、じゃあ悔しいとか思うんだろうな。祓う前に言われたのは今が初めてだけどな。しかも呼びつけた本人の娘に」
「……そんなこと言われてたの? 俺たち……」
広太は呟き、玲子の、大きな瞳は、見開かれたままゆらゆらと揺らめく。
知らなかったのか、と龍一は改めて、広太の鈍感さに感心した。
どんなに命がけで鬼を祓っても、その後に待っているのは、羨望の混じった中傷と言い訳だったりする。
称賛を求めているわけではない。いや、求めているのだろうか。
父も広太も、そのあたり全く無頓着なところが、己の狭量さを自覚させられ自己嫌悪に陥ることもしばしばだ。
「とにかく、あの人のよさそうな神主が、娘の躾けには失敗したってことがよくわかったぜ」
「失礼ねっ。パパを悪く言わないで!」
玲子はいきりたった。
「失礼なのはどっちだ。お前な、いくら俺らが気に入らないにしても、初対面の相手に、そんな口きいていいと思ってんのか?」
龍一は玲子の口をつねりあげた。
「な、何すんのっ!」
「一応俺は、お前の父親の依頼を受けてやってきたんだぞ。客扱いしてもいいんじゃねえの? なあ、よーく胸に手を置いて考えてみろ。さっきのは遠方から来た客に対する態度だったか? あ?」
「……」
玲子は無言で俯いた。
「何か言うことは?」
「……」
「ん?」
龍一は玲子の顔を覗き込む。
「……悪かったわよ。ごめんなさい」
蚊の鳴くような小さな声で、玲子は言い、ぷい、と顔を背けた。
紅葉谷駅からロープウェイを乗り継ぎ、獅子岩駅へ。
その後は弥山頂上を目指し、なだらかな勾配をひたすら上るだけ。
「おーい。遅いぞ。お前本当にここが地元なのか?」
龍一は後を振り向き揶揄する口調で言った。
「玲子ちゃん、早くー」
広太は、少し立ち止まり、玲子を手招く。
「何であんたたち、そんなに早いのよ。もーっ。信じられないっ」
泣き言を吐きながら、玲子は、早足で二人に追いつこうとする。
「お客様の気分を害したバツだ。償ってもらうぜ」
そんな龍一の一言で、玲子は、無料ガイドとして龍一たちに同行することになった。
文句を言いながらもついてきたのは、内心かなり反省しているからだろう。だが、日頃修行で鍛えている鬼祓い師の足にはついていけず、終始遅れ気味でガイドとは名ばかりの存在に成り果てている。
「龍一ー。玲子ちゃんってすっごく可愛いよね。俺、ああいうツンデレ系の巨乳タイプ、好みなんだよね」
広太が、ひそひそと話しかけてきた。
「巨乳? どこが?」
龍一は玲子を振り返り、広太の指摘した箇所を見た。いまいちぴんと来ない。視線に気づいた玲子が、いーっと敵意をむき出しにする。
「おー、こわ。あんなの全然可愛いと思えねえけどな」
「俺、あの子に唾つけたから。龍一、絶対に取らないでよね」
真顔の広太に龍一はぎょっとする。
「お前、もしかしてすっげーマゾなのか。あんな酷いこと言われたんだぞ。俺たち」
「そんなの気にしないもーん」
「マジかよ……お前、女なら誰でもいいんじゃねえの?」
「否定はしないよ。俺は、努力しなくてもモテモテの龍一とは立場が違うからね。普通の男は、ちょっとしたきっかけを生かさなきゃ、春なんていつまでたっても来ないの!」
「……へいへい」
広太の卑下はいつものことだから、反論はしないことにした。龍一にしてみれば、広太こそ、男女問わず可愛い可愛いともてはやされているように見えるが、本人曰く、
「あんなのペット扱いされてるだけ。男として見られてないんだよ」
ということらしい。
広太はだらりと表情を崩す。
「あー。早いとこ鬼を祓って、玲子ちゃんとデートしたいなあ。ねえ、龍一、協力してよ」
「……どうだかなあ」
龍一は視線を上に向けた。さっと、何かが青い空を秒速で横切る。さっき、玲子と初めて会ったときから気づいていた違和感が、次第に確信へと変わっていく。
「強力なライバルが、もう出現してるかもしれねえよ」
龍一はひとりごちた。
「ここが、三鬼堂か。古びたお堂だな」
龍一は、あたりを見回しながら言った。
「龍一。鬼の匂いがぷんぷんする」
広太が囁く。龍一は頷いた。孝次郎によれば、ここの鬼が宮島の怪異を引き起こしているという。匂いはあれども、鬼自身の気配は感じられなかった。
本体が遊離しているのなら、清盛の御告げが信憑性を帯びてくる。
「三鬼は福徳、知恵、幸福の徳を備えた弥山の守護神だったはずだぜ。奴の仕業としたら、一体どんな理由があって邪悪化したんだろうな」
「彼は……三鬼は、悪いことなんてしてないわ!」
やっと追いついた玲子が、はあはあと息をきらしながら言った。
「お疲れ。玲子ちゃん」
広太が満面の笑みで出迎えるが、玲子はスルーしてまっすぐ龍一の前に立った。
「三鬼は……とても優しくて……気が弱い男の子なの。なのに、一生懸命、山とこの島を守ってくれていたの。そんな彼が、愛する島を破壊しようなんて思うはずがない!」
怒りなのか、それとも悲しみのせいなのか。
固く握られた玲子の拳が、震えている。
「お前、鬼に会ったことがあるのか」
玲子は頷く。
「小さい頃、パパについて、よくここに来ていたの。ある日私は道に迷って、パパとはぐれた。崖から落ちそうになった私を三鬼は助けてくれて、一晩中慰めてくれたの」
玲子はぶるりと肩を震わせた。少女の想いに共鳴するかのように吹いてきた突風が、ざわわ、と周囲の木々を揺らし、鳥の大群が飛び立った。
黒い影が、青い空を秒速で横切ったのを、龍一は見逃さなかった。
(……またか)
「どんな鬼だった? 三鬼って」
広太が尋ねる。
「見た目は子供だわ。長く生きてるけど、無邪気な……本当に子供なの」
玲子は言った。
「それから、私たちはパパに隠れて会うようになった。私はどんどん成長して……彼の身長を追い越してからは、本当の弟みたいに思えてきたの。けれど、最近ここに来ても、三鬼がいないことのほうが多くなって……でも……でも!」
玲子の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「あの優しい三鬼が、悪いことしてるなんて思えない! ねえ、お願い。彼を助けて!」
玲子は泣き崩れた。
「玲子ちゃん、すっげーいい子じゃんか。ますます気に入った!」
歩きながら広太はでれでれと鼻の下を伸ばす。
「本気なのか?」
「本気本気」
「そうか。よかったな。ライバルはいそうだが、彼女は弟としか思ってないみたいだし」
「それって三鬼のこと? もしかして龍一には見えてんの?」
広太は首を傾げる。
「ああ。さっきから、ずっとあの子に張りついてる。声をかけてきたときから気づいてたよ。だからここに呼んだんだ。見極めたかったからな。とりついてる奴の正体を」
「マジで? 俺、本気で龍一が玲子ちゃんに切れたのかと思ってた」
「まさか。さすがの俺もそこまで短気じゃねえよ」
龍一は苦笑する。
三鬼堂からくぐり岩まではすぐだった。
「割れてないじゃん」
石造りの階段と、それを取り囲む巨石のオブジェの前で、高校生男子二人は腕を組む。写真では真っ二つに転がっていたアーチが、ちゃんと所定の位置に納まっている。
「鬼が、後悔して直しに来たとか……?」
広太は言った。
「それ、本気で言ってるか?」
「いや」
「だろうな」
龍一は屋根部分をぽんぽんとたたき、岩肌に耳をつけてみた。石からは、邪悪なものは感じられない。
「玲子!」
龍一は少し離れた場所にいる少女を手招いた。
「呼び捨て?!」
不服そうにしながらも、玲子は素直にやって来て龍一の隣に立つ。
「このでかい岩を真っ二つだなんて、お前の弟はすげー力持ちだな」
「だから三鬼はそんなことしないって言ってるでしょ!」
龍一は、中央にある、わずかな継ぎ目を指でなぞった。
「けど、誰かがくっつけてる。お前事情知ってるか。親父さんからは何も聞いてないんだけど」
「私よ。私が直したの」
玲子はあっさりと言った。
「玲子ちゃんが? どうやって?」
岩を叩いていた広太が振り向く。
「念じたの。自然物だから無理かと思ったけど、なんとか元通りに修復できたわ」
「……お前、能力者なのか」
龍一はまじまじと玲子を見た。
「能力者って、何? 物を直す力なら、あるわ。それだけだけど」
「そうか。だから鬼ともコミュニケーション出来たんだ。普通の人間は無理だもんね」
広太は納得する。龍一は腕組みをした。
「それならなんで俺らを呼んだ? お前の力でなんとかなるんじゃねえの? 」
「今言ったでしょ。私ができるのは、せいぜい壊れたものを修復したり、けがを治したりするだけよ。鬼祓いなんて絶対に無理」
気弱な声でそう言うと、玲子は慌てて弁解する。
「それにっ。私は三鬼がやってるなんて思ってないから。私の知ってる鬼は、あなたたちが思ってるみたいな邪悪なもんじゃないの」
「何故それを親父に言わない?」
龍一は鋭い目で玲子を見た。
「お前の親父さんは、三鬼が黒幕だと思ってる。お前が知ってることを全部話せば誤解は解けるんじゃねえのか。これはお前たちだけの問題じゃねえんだぞ。この綺麗な島が、ぐちゃぐちゃにされてもいいのか」
「言ったわ。でも信じてくれないの。今まで三鬼のこと隠してたのが失敗だったわ。私が夢を見たと思ってるの。パパは清盛と話してるから……そっちを信じてるの」
玲子は唇を噛みしめた。
山から下りた後は、厳島神社を隅から隅まで見回ることにした。
さすが神主の娘と言ったところか、玲子のガイドは完璧だった。
ご褒美だと、龍一は遠慮する玲子を宿に連れ込む。夕食は、牡蠣や穴子など、海の幸をふんだんに使った会席料理だった。
「うまっ。マジうますぎ。本場の牡蠣はやっぱ違うなー」
「宮島の魚介は日本一よ。にぎり天やあなご飯だって絶品なんだから」
夕食に舌鼓をうつ広太に、玲子は満足げにレクチャーする。
龍一は思わずくすりと笑ってしまった。
「何がおかしいのよ」
玲子は膨れる。
「あ、悪ぃ。お前って親父さんとやっぱ似てるなあ、と思って」
「……どういう意味」
玲子は前髪を弄ってさりげなく眉を隠す。
「いや、そうじゃなくってさ。お前たち親子って本当にこの島が好きなんだな」
東京育ちの龍一は、郷土愛が薄い。だから、そんな二人が羨ましく思える。
玲子の表情がふっと和らいだ。
「そりゃあね。みんないい人だし。景色も綺麗だし。食べ物も美味しいし。好きにならない理由がないでしょ」
「だな」
「あんたも、ちょっとはこの島のこと、気に入った?」
龍一は頷く。
「ああ。ここはいい島だ。空気もいいし」
「俺も好きだよ。宮島」
広太もにこにこと同意する。
「でしょーっ」
玲子は満面の笑みを浮かべた。
こうやってストレートに会話をしてみると、広太の言う通り、玲子の可愛らしい部分が龍一にも見えてくる。同世代同士、話は弾んだ。
「聞いてもいいかな」
しばらくすると、玲子は、そう前置きをして、
「二人とも、なんで鬼祓い師なんかやってるの? まだ高校生なのに……。大変な仕事でしょ。私は最初に出会ったのが三鬼だったからよかったけど……中には最悪なのもいるんじゃない?」
問いかけてきた。
「いるいる。手当たり次第に人間をとって食おうと思ってるようなやばいのもいっぱいいるよ」
広太は言った。
「それなのに、どうして……もしかして報償金が高いとか?」
「ばーか。言っとくが、クライアントからは一銭も出ねえよ」
龍一は教えた。
「嘘!」
目を丸くしている玲子に、広太は説明する。
「俺たち、鬼祓い協会ってとこに所属してんの。実践するのは日本に三人だけなんだけど。で、そこから月謝という名のお手当てをもらって、修行や出張費に当ててるんだ。勿論それだけじゃ生活できないから、龍一の父さんは本業を他でやってる。ちなみに俺たちは旅費しかもらってないよ。まだ未成年だからって言うことで」
「そんなので、よくやってられるわね。いやになったりしないの?」
「全然。俺、この仕事が好きだもん。子供の頃見た、鬼祓いの現場で圧倒されたんだ。大勢の鬼を、鬼祓い師が、あっと言う間になぎ倒した。かっこいいーって、痺れちゃった。俺にも能力があるってわかってたからさ。頑張れば、俺もあんな風になれるかもって……ずっとその人に追いつこうと思って頑張ってる」
「そうなんだ」
玲子は顔をあげてまっすぐ広太を見た。
「広太君って、案外熱い人なのね」
「見直した?」
「うん」
ほのぼのムードな二人の横で、龍一も少し驚いていた。
能天気に見える広太だが、ただそれだけではなかったらしい。広太の言う鬼祓い師とは、龍一の父だ。あの親父に、まさかそこまで心酔してるとは、今まで全く気づかなかった。
「……あんたは?」
玲子は、上目使いで龍一を見た。
「この仕事をやってる理由か?」
「そう」
「そんなの……鬼祓いの家に生まれたからに決まってるだろう」
穏やかに凪いでいた胸の奥が、ざわめき始める。
牡蠣の殻をむきながら、
「親父に強制されてなきゃ、やってねえよ。面倒だし、億劫だし、いつも危険と隣り合わせだ。時々不当ないちゃもんつけられることもあるしな」
後半の台詞に、玲子の顔色がさっと変わった。
「あんな事言ってるけどさ、本当は誰より真面目に仕事するんだよ」
広太が横でフォローを入れる。
「それは性分だ。やるからにはテキトーな事はできねえよ。けどな、きっかけさえあれば、こんな仕事いつでもやめてやる。もっと、まっとうで、手応えのある仕事につきてえんだ」
「あんたの言う、やりがいのある仕事って何」
玲子が聞いた。
「わかんねえよ。でも、今の仕事じゃない事だけは確かだ」
龍一は牡蠣を奥歯でぐしゃりと噛みしめる。ほろにがい味が口いっぱいに広がった。
その夜。
厳島神社欄干の影で、派手な袴に身を包んだ龍一と広太が顔をつきあわせていた。
「いつも思うんだけど、鬼祓いの正装ってださくない? 俺、オレンジ色って嫌いなんだよね。まだ紫のほうがましだよなあ」
広太は、不満そうに龍一の袴を引っ張る
「オーラでカラーが決まってんだから仕方ねえだろ。いいか。くれぐれも油断するなよ。いつ何が起きるかわかんねえし、玲子の弟が俺らの味方とは限らねえんだぜ」
「了解っ。龍一も気を抜かないでね!」
広太は真面目くさった顔で敬礼する。
「ねえ、あんたたち、」
後から聞き慣れた声がした。はっとして二人は振り向く。
白とえんじの巫女の格好をした玲子が立っていた。はにかんだようににこりと笑う。
「何しに来た。こんな夜中に。言っとくが、俺たち、肝試しで遊んでるんじゃないんだぞ。この先はどうなっても知らないぜ」
龍一の厳しい口調に、玲子の笑顔が強張る。
「……そうだよ。帰ったほうがいいよ。危険だし」
広太も龍一に同意する。
「……気になって、眠れないの。あんたたち、今から鬼を祓うんでしょ」
「そうだ」
「絶対に違うけど、もしその鬼が三鬼だったら……祓わず、許してやってくれる?」
玲子は上目使いで尋ねる。
「約束できねえな。こっちだって命がけだ」
「ごめんね。俺も約束できない」
玲子は俯く。
小さな唇が、わなわなと震えていた。
「じゃあ、ちょっとだけ、踊らせて」
「踊り?」
怪訝そうな龍一に
「三鬼は私の舞が好きだった。彼が、邪悪化したなんて信じないよ。でも……もしそうなら、私の舞で……元の純粋な気持ちを思いだしてほしいなって思ったの」
玲子は縋るような目で訴えた。
月明かりに照らされた高舞台の上で、玲子はつ、と扇子を前に突き出した。
月を仰ぎ見るように両手をかざし、とん、と軽く跳躍する。ゆっくりと摺り足で回転し、どこへともなく流し目を送る。
聞こえるのはさざ波と、床を打つ足袋の音だけなのに、流れるように美しいその動きを見ていると、優美な笛の音がバックに流れているような気がしてくる。
「玲子ちゃんって、やっぱ綺麗だなー」
ぽつり、と広太が呟いた。
返事の代わりに龍一は玲子を食い入るように見る。
昼間のおきゃんな少女は鳴りを潜め、神の使いという名がぴったりな、可憐な少女がそこにいた。
広く秀でた額に汗の玉がいくつも浮かんでいる。きりりとつり上がった太い眉が、意志の強さを物語っていた。
いつ鬼が来るかわからないのだ。怖くないわけはない。
だけど、気丈に己のできる限りのことをやっているのだ。それだけ、三鬼が可愛いと言うことか。
弟なのだ、と玲子は言った。血のつながりがないどころか、人間ですらないけれど。
龍一は隣にいる広太を盗み見る。
もし、こいつが、鬼になったら、俺も、玲子と同じように、必死にこちら側へ呼び戻そうとするのだろうか。
考えるまでもない。
もう一度、高舞台へと視線を移す。
玲子が一心に舞っている。
……綺麗、なのかもしれねえな。
いちずな祈りをこめた舞は、龍一の胸を激しく打った。
がしゃん……!
突然不快な物音が、静寂のひとときを終わらせた。玲子はぴたと動きを止め、
「なんだ?」
広太はきょろきょろとあたりを見回す。
ひっ、と玲子が、喉の奥に詰まったような悲鳴をあげた。
「どうした!」
二人は高舞台へと飛び出した。
「あ、あれ……」
玲子は、上空の一点を凝視し、
「龍一、五重の塔に誰かいる!」
広太が、上を指さした。
「……なんだ、ありゃ」
振り向いた龍一はそこにある光景に絶句した。
闇の中、暗い森を突き抜けるようにそびえ立つ五重の塔。
ライトアップされた赤い屋根に、半裸の体が張りついている。
「人か? いや違うな。あれは仁王だ」
龍一はごくりと唾を飲み込んだ。
昼間、玲子に連れられて行った、大聖院の入り口に二体安置されていた巨大な仁王像。
「こんな人、トレーニングジムに行けばうじゃうじゃいるよね」
広太はそう言って笑っていたが、赤茶けた体が動いているのを目撃してみれば、体中の毛が逆立つような禍々しさがある。
六つの視線に気づいているのかいないのか、仁王は、塔の屋根に手をかけてぶら下がり、弾みをつけて、一段上へと移動した。生まれたての赤ん坊か、ロボットみたいに、ぎくしゃくとした動き。彼が上を目指しているのは明白である。
「あいつ、何か持ってるな」
龍一は、両目を眇めて仁王の手元に視線をこらした。
「ん……? なになに?」
龍一の肩口から覗き込み、
「斧!」
広太は叫んだ。
「破壊するつもりだわ! 五重の塔を!」
玲子の顔から血の気が引く。
「五重の塔って、世界遺産だよな」
「そうよ。この島にあるものはほとんどがそう」
「やばいな」
龍一はちっと舌打ちをする。
鬼を祓えたとしても、重要文化財が破損されたとあれば、親父になんと責められるかわからず、それはプライドが許さない。
「だいじょーぶ。まかせて」
広太はにやっと笑って、唇を尖らせ、口の前に寄せていた手のひらに向かってふーっと息を吹きかけた。
何もなかったはずの手のひらに、ヨーヨーが一個現れる。
「ほいっと」
広太は、ヨーヨーのケーブルを引き絞り、掛け声と共に空中へと投げた。
空気を裂く音と共にヨーヨーは夜空を駆け上がり、とんでもない飛距離記録を樹立させながら、くるくると長い塔の先端に巻きつく。
「行ってきまーす。龍一、玲子ちゃんを頼んだよ」
神経に触るタイプの摩擦音と共に広太の体は、ケーブルに巻き取られるような感じで宙に浮き、次の瞬間には、塔の屋根へと移動していた。
「あんたたちって何者?」
ものすごい勢いでこちらを見た玲子に、
「今ごろ何言ってる。俺たちは鬼祓い師だ」
龍一は答えた。
間近で見ると、仁王の迫力は相当だった。ジムに棲息するマッチョどころじゃない。まさに怪物である。
一瞬広太はひるみかけるが、
「お兄さん、物騒なもん、持ってるね。危ないから僕にちょーだい」
覚悟を決め仁王の握っている斧を、軽いキックで蹴り落とす。仁王は、何か起きたかわからない、という風に、突然現れた邪魔者と、自分の手元を交互に見る。その隙に、広太は、瓦屋根に転がった斧を拾い上げた。
「がおーっ」
やっと、状況を把握した仁王は、顔をゆがめて広太を威嚇する。
「えっ、そういう声なんだ。ちょっと意外」
仁王は、全速力で、広太に迫ってきた。
「嘘。君そんなに機敏に動けるの。詐欺だよ」
広太は、傾斜のきつい瓦屋根の上をぴょんぴょんと跳ねる。
「……君もきっと重要文化財なんだよね。傷つけるわけにもいかないし、やりにくいよなあ」
屋根の上の鬼ごっこを続けながら広太は嘆いた。
その頃。龍一も、もう一体の仁王と対峙していた。
「た、助けてっ」
玲子は、がくがく震えながら悲鳴をあげた。
「慌てるな。心配しなくていい。俺を誰だと思ってる。鬼祓い師だぜ」
龍一は片手を広げて玲子を己の背後に匿った。玲子は即座に龍一の肩に両手を置く。小刻みに震える、白い手が、どんな言葉よりも、恐怖を如実に物語っていた。
仁王は片手に鉈を下げていた。
(こいつは神社を破壊する気か)
もう一体を広太に任せて幸いだった。もしかしたら、あちらは、おとりで、本来の狙いは、こっちなのかもしれなかった。
「がおーっ」
仁王は何も持っていない方の手で己の胸をどんどんと叩き、威嚇するかのような咆哮をあげる。
「猿みてーだな。言っとくが、そんなんじゃ、俺はびびらねーぜ」
だが、玲子をどうにかせねば、対等に戦うのは難しい。
何もないはずの仁王の眼孔に、緑色の光が点滅している。
(思った通りだ。こいつが鬼化したわけじゃない。仁王はただの傀儡だ。親玉は、別にいる)
龍一は、どこかで今も自分たちを見つめている、鬼の息づかいを肌に感じた。バリアでも張っているのか、姿は見えない。
仁王が、すさまじい勢いで間合いを詰め、龍一たちに向けて持っていた鉈を振りかぶった。
「つっ……!」
とっさに龍一は玲子を抱き、灯籠の方角に飛ぶ。
鉈は、さっきまで二人がいた真下の木床に、ぐさりと突き刺さる。
「ぐ、わおっ」
仁王は力任せに鉈を床から抜く。木切れが飛び散った。仁王は、新たな一撃を食らわせてきた。
龍一は、玲子を抱いたまま、後ろに飛ぶ。そのまま本殿に向かう長い回廊を走った。
高欄を、威嚇するかのように破壊しながら、仁王は、二人の後を追ってきた。
「やっぱり、三鬼のせいじゃなかった。鬼は仁王だったのね!」
玲子は、龍一の首にしがみつきながら言った。
「いや、まだわからない」
龍一は即座に打ち消した。
仁王のまとっている鬼の匂いは、三鬼堂で嗅いだものとは違っていた。だけど、まだ何もわかっていない。下手に期待させるのは罪だ。そして今、説明している時間はない。
仁王は素早い動きで二人に追いつき、鉈をふるった。すんでのところでかわすものの、玲子と一緒ではどうしても動きが制限されてしまう。
(さて、どうするか)
考えていた時、
「ぐ、おおっ」
呻くと、仁王は突然立ち止まった。柱に食い込ませた鉈が、抜けなくなったのだ。
「ラッキー」
愛用グッズを取り戻そうと、引っ張ったり押したりともたついている仁王に中指を立て、龍一は目的の場所へと移動のスピードをあげた。
本殿の中央で、玲子を床に下ろす。
「三女神! いるんだろ。出てきてくれ!」
両手をはっしと音を立てて合わせ、龍一は叫んだ。
部屋の四隅から、白い靄が、二人に向かってのびてくる。
「わらわの眠りを妨げるのは誰じゃ。そうぞうしい」
眠たげな女の声。
あっと言う間に部屋全体が、ミルクのような靄で満たされた。
「このところ、毎晩かまびすしいですなあ」
「まだゆるりと眠っておりたかったのに」
雅びな宮中衣装に身を包んだ妙齢の女性が三人、靄の中から浮かび上がってきた。
「市杵島姫命、田心姫命、たきつ姫命でございますね」
龍一は跪き頭を垂れた。
「えっ、そんな、まさか、信じられない!」
神話でなじみ深い女神の姿に、玲子は口をぽかんと開けて立ち尽くす。
「座れよ」
龍一は玲子の袴を引っ張った。
「えっ?」
「ここにいるのは神様だぞ。俺の真似をして、座れ。頭を下げろ」
玲子は慌てて龍一に倣い、膝を折った。
「お前は、鬼祓い師か」
背の高い女性が笑みのない顔で龍一を凝視する。
「さようでございます」
「顔をあげよ」
龍一は従った。
「まあ、綺麗な男だのう。わらわたちに何の用じゃ。眠りを妨げてまで呼び出さねばならぬほどのものかのう」
「はい。時間が押してますゆえ、手短に。この者をほんの一時、皆様の手で匿っていただきたく」
龍一は玲子を見た。
「お前が一晩私たちにつきあうとでも言うなら聞いてやらぬでもないわのう。綺麗な男よ」
背の一番低い女性がからかうような口調で言った。
「わたくし、未熟者で神を退屈させぬほどの話術も技術も持ち合わせておりません。ただ、この神なる島に降りかかっている災厄だけは、必ず祓って差し上げる所存ですので、それでご容赦を」
龍一はぴくりとも表情を変えず、まっすぐに相手を見る。
「ほう。お前は神への礼節を知る、中身もなかなかいい男よのう。しかも何より美しい。気に入った。匿ってやろう。ただ、ほんの一時だけぞよ」
一番後にいた女性が言った。廊下から、重い足音が近づいてくる。
仁王が鉈を手に入れ、追撃を開始したのだ。
「ありがたい! 恩に着ます!」
龍一は立ち上がり、今度は玲子! と名前を呼んだ。
「は、はいっ」
玲子は、未だに目を白黒している。
「大人しく、ここでいい子にしてろよ。神様に迷惑をかけるな」
龍一は本殿から飛び出した。
「こっちだ。来いよ」
かたわらを抜ける龍一に、仁王は緑色の目をぎょろつかせた。龍一は少し離れた距離で立ち止まり、くいくい、とひとさし指を動かして仁王を招いた。
「ぎぎっ……!」
挑発に、仁王は激昂し、元来た方角へと龍一の後を追って走る。
高舞台まで戻ると、龍一は月を背中に向きを変え、仁王と対峙した。
「はっ!」
空中に両手を合わせ気合を入れると、一振りの太刀が現れる。龍一の守護刀だ。
「暴れすぎて、傷だらけじゃんか。一体お前、誰に操られてんだ?」
仁王は、答えず鉈を振りかぶる。今度は、龍一は逃げなかった。手にした剣で、はっしと受け止める。
睨み合い、しばし力で押し合った後、龍一は左足を大きく伸ばして仁王の腹を蹴った。
「ぐおっ」
仁王は呻き、よろめいた。
すかさず龍一は仁王の持っていた鉈を刀で払い、今度は、自ら仁王の巨体へと体をぶつける。
骨と骨のぶつかるような鈍い音がした。
「ぎぎぎぎっ……!」
歯ぎしりのような、不快な音が、仁王の口から洩れる。
しばらくして、仁王は、どう、と倒れた。龍一は馬乗りになり、仁王の頭に指をつけ息を吹きかける。
目の中の緑色の点滅が次第にゆっくりになり、やがて止まった。
「いっちょうあがり」
龍一は額の汗を拭く。
「龍一ー。派手にやったなー」
欄干にヨーヨーを巻き付けて、五重の塔から、広太が戻ってきた。
「そっちは? 倒したのか?」
「うん。見て」
赤い瓦の上に、仁王が頭を下にしてのびている。
「どうやって下ろすんだ。あれ」
「俺に聞かないでよ」
広太は肩を竦めた。
その時。
「きゃあっ」
玲子の悲鳴が聞こえた。
「いっけね。あいつの事忘れてた」
龍一は社殿へと走った。
ほんの一時だけ匿うと、三女神は言ったが、その一時とは、龍一が思っていた以上に短かかったらしい。
靄の立ち込める部屋の中に、女神の姿はなく、あるのは、玲子と、玲子を背後からはがい締めにしている、小柄な少年だけである。
「近づくなっ」
少年は若々しい声で恫喝すると、玲子を部屋の隅へと引きずっていく。
「お前が黒幕か」
龍一の問いかけに少年は、こくりと頷く。
広太が、龍一に少し遅れて飛び込んできたが、状況を把握して部屋の中央でブレーキをかける。
龍一は少年を上から下まで眺めた。それにしても見すぼらしい格好である。
いたるところがほつれたぼろぼろの着物。顔も、体も薄汚れている。髪までほこりまみれで白くなっていた。
よく光る、どこか卑屈な目が、ぎらぎらと龍一を睨めつけている。玲子の上向きに逸らされた喉には、短刀が突きつけられていた。
「三鬼……」
震える声が、玲子の形いい唇から洩れる。
「三鬼だと? こいつが?」
龍一は言い、
「酷い。玲子ちゃんはお前を信じてたのに」
広太は憤りの声をあげる。
「うるさいっ。お前ら、どけっ!」
三鬼は、鈴を転がしたような綺麗な声で叫んだ。
「今から、この神社を、ぶっ壊す! 邪魔するなっ。邪魔したら、この女を殺すからなっ……!」
少年は、玲子の髪を引っ張り、無防備にさらされた喉首に当てて、刀のみねをすっと滑らせる。
「どうして……」
玲子の目からこぼれだした涙が一筋、頬を伝って落ちた。
「どうしてこんな事するの? 三鬼……」
「理由なんか簡単だよ。玲子ちゃん」
三鬼はなぶるようにぴたぴたと短刀を玲子の頬に当てる。
「こんなまやかしの建物、なくなった方がいいんだ。全てを……全てを終わらせてやる。この島も、この神社も、もう、何もかもうんざりなんだよ!」
「龍一……」
不安げな顔で広太は龍一を見た。
龍一は腕を組み、見下したような表情で、じっとしている。
わじわじと、虫の鳴くような音がした。
靄の中から、何かが、ものすごい勢いで立ち上がってくる。
「ひっ」
玲子は悲鳴をあげた。
靄から生まれたのは、甲冑を身につけた侍の亡霊たちだった。
髪をざんばらに落とし、虚ろな目で、背中を丸めて立っている。
複数の矢に射抜かれたままの者もいた。手にべっとりと血をつけた者まで。
それぞれが、表情を無くした状態で、ゆらゆらと、左右に揺らめいている。廊下まで続いている、落ち武者たちの群れは、百は優に超えているようだった。
「行け。破壊するんだ。手当たり次第に」
高笑いが、神殿に響く。
わじわじ。
死霊たちは、一斉に激しく動き始めた。
「言いたい事はそれだけか。ラスボス登場だって言うのに、つまんねーの」
龍一は守護刀を振りかぶる。
きらりと、白い刃が、闇を一閃した。
じわじわじわじわ
生まれたばかりのゾンビたちは、塩をかけられたナメクジのように一斉に悶え始める。体は左右に激しく揺れながら縮み、やがて小さな黒い固まりになり……、
床に吸い込まれるようにして消えてしまった。
「うっそぉ……」
呆れたような、感嘆したような、玲子の声。
「パフォーマンスは、ここまでだ。なかなか面白かったぜ」
龍一は、ちらりと三鬼を見る。
「玲子ちゃん、こっち!」
広太は、三鬼があっけにとられている隙に、玲子を救い出した。
「あいつ、凄いじゃない! なんで最初からあれやらなかったの?!」
玲子は我慢できなくなって広太に尋ねる。
「龍一のフルパワーモードは、一日五分しか続かないんだ。だから黒幕が出てくるまで温存しといたわけ。バレるとやばいから絶対内緒にしてて」
広太は小声で教える。
「くそっ」
三鬼は狼狽し、逃げようとした。
「この野郎逃がすか」
だが、すぐ龍一に襟首を掴まれつまみ上げられてしまう。
「離せ!」
少年は足をばたつかせた。
「なあ、お前、三鬼じゃねえだろ。本物はどこにやった」
「知るか!」
「とぼけんな」
龍一はばちん、と少年のおでこを叩く。たちまち、艶やかな少年の顔は消え、入れかわりのように、小汚い、壮年男子の顔が現れた。
「な、何よ、その男!」
玲子は憤りに満ちた声をあげた。だが、龍一は想定内、という風情である。
「やっぱりな。お前、清盛の偽物だろ。神主の前で偉そうな御告げをのたまったのって、お前だろ。もしかして、芝居が得意なのか? 神主も玲子も、すっかり騙されてたみたいだぜ」
「ち、ちがうっ」
男は、瞳を左右に揺らめかせた。顔かたちは違えども、卑屈に光る目は、さっきの少年と同じである。
「嘘つくな。お前の目的は大体わかってんだよ。愉快犯って奴だ。人間界だけじゃなく、鬼の世界でもはやってるとは知らなかったぜ」
「なるほど、そう言うことかあ」
広太がこくこくと頷いている。玲子はきつねにつままれたような表情のままだ。
「そんなに芝居が好きなら、鬼の国で劇団にでも入りやがれ」
龍一は、ふっ、と男に息を吹きかける。
「や、やめ……」
全てを言い終える時すら与えられず。
男は闇に消えてしまった。
「こ、腰が抜けちゃった……」
全てが終わった後、玲子は、へたへたとその場に座りこんだ。
「俺も、マジで、疲れた……死にそう」
龍一も大きなため息の後、床に大の字で寝そべる。全身がだるくて、頭の中が、割れるように痛い。このまま、朝まで眠り込んでしまいたかった。
「ねえ、結局どうなったの? さっきのは、三鬼じゃなかったのよね。彼はどこにいるの? そもそもさっきのあいつは何者なの?」
玲子は床にぺたりと座ったまま、矢継ぎ早に質問する。
「あいつは、ただこの世を騒がせたいだけの、目立ちたがり屋のかまってちゃんな鬼なんだよ」
疲れ果てている龍一に代わって、広太がしゃがんで玲子と視線を合わせ、説明を始めた。
「どんなことでもいいから、注目を浴びたいタイプなんだ。世界遺産を壊したら、それだけで目立つだろ。それに、最近ドラマの影響で、清盛ブームが起きてるじゃん。だから、清盛に成り済まして、みんなの前に現れたりした。建物を壊すだけじゃインパクトが弱いから、ドラマチックな演出が欲しかったんじゃない?」
「確かに、つい最近まで、宮島にロケハンが来てたりしたわ。おかげで観光客が増えたって、旅館のおじちゃんが喜んでたもの」
玲子は回想する。
「だろ?」
「けど、三鬼は? 彼は全然メジャーじゃないわよ」
「推測だけど、あの鬼は玲子ちゃんに気があったんじゃないかな?」
「私に?」
「そう。同じ鬼なのに、玲子ちゃんに弟扱いされて可愛がられてて、気に入らなかったんじゃないかな。ちんけで無名な鬼だけど、力だけはあったんだろうね。三鬼を拘束して、彼に罪をなすり付けたんだと思う」
「じゃあ、三鬼は、どうなるの。もうあの鬼はいないんだから、見つけられないじゃない!」
「大丈夫だよ。三鬼のことなら」
寝そべったまま、龍一は言った。
「お前の周りに、今もいるぜ。ただ、今回迷惑をかけたから、恥ずかしくて出ていけないんだと」
「そんなことないのに」
「ま、魂だけはいつもお前と一緒にいたんだ。俺は最初から感じてたぜ」
玲子の横に立つ、可愛らしい少年が、龍一には見える。さっき化けていた偽物と、顔の造作は一緒だが、瞳の輝きが全然違っていた。少年は、まっすぐに龍一を見て、ありがとう、という風に礼をしてみせた。
「やべ。このこと、すっかり忘れてたな」
休憩タイムを終えて外に出た龍一は、仁王の鉈で、酷いありさまになっている回廊を前に、ぼりぼりと頭をかいた。
「……なんでこうなるわけ? 文化遺産なんだよ! もっと違う戦い方は出来なかったわけ?!」
広太が龍一に詰め寄る。
「……悪い。すっかり飛んじまってた」
「あーあ」
広太は肩をすくめ、
「やっぱおじさんってベテランだったんだね。こんな悲惨なことになったのって初めてだもん」
いじけたような声で言った。
「……始末書もんだと思うか?」
「うん」
「はあっ」
二人は顔を見合わせてため息をつく。
「あんた達、何落ち込んでるの。ばっかみたい」
玲子が、二人の間に割って立った。
「これ見て落ち込まない奴があるか? あ?」
龍一は八つ当たり気味に言った。始末書も悔しいが、口の悪い親父に半人前扱いされて嘲笑されるのがもっと悔しい。
「こんなのすぐに直せるけど」
涼しい顔でそう言うと、玲子は、割れた床に、指を当てる。
「お、おお……!」
みるみる修復されて行く柱や床に、龍一と広太は驚愕の声をあげた。
「そうか。くぐり岩も直したって言ってたもんね。忘れてた!」
広太はぱちぱちと両手を叩く。
「お前、凄いな!」
龍一は玲子に笑いかけた。
「当たり前でしょ」
玲子はつん、と顔を逸らし、その後で、ふっと笑みを洩らす。
「なんて、ね。嘘よ。それはこっちの台詞」
そして真顔で龍一に向き直る。
「あんた、さっきこんな仕事、いつでもやめてやるって言ってたじゃない。でも、そんなの駄目。あんたは鬼祓い師の才能があるわ。そういう人は、もう逃げられないのよ。あんたが他の道に進むなんて勿体なさすぎる」
「なんだよ、いきなり」
龍一は面食らった。
「鬼を祓ってるあんたは素敵だった。かっこよかったって言ってるの。その才能を朽ちさせちゃ駄目」
「そうそう。龍一は凄いだろ? だって、俺をこの道に引きずり込んだ張本人だもん」
広太がにやにやしながら同意する。
「なんだよ。あれ、親父のことじゃなかったのか」
龍一は、夕食時の、広太の台詞を思いだした。
「龍一のことだよ。マジで鈍感なんだから」
「……っ、お前にそれを言われたくねーよ!」
広太は玲子に向き直る。
「玲子ちゃん、龍一ってね、子供の頃からすごかったの。一撃で鬼を祓うだなんて、おじさんにだって無理なんだよ。贅沢だよね。それなのに、全然自覚がないなんて」
「広太、あのなあ……」
「何を意地はってんだか。龍一はこの仕事に元々向いてるよ。だって、俺がいじめられた時、いつでも助けに来てくれてたじゃんか。この仕事も一緒だよ。人を助けるのって、龍一、好きだろ?」
「人を、助ける……? 鬼祓いが……?」
龍一は言った。
「うん。本当に助かった。ありがとう。私と宮島を救ってくれて」
玲子は、にっこりと笑ってみせた
「それでは、お気をつけてお帰りください。本当にお世話になりました」
桟橋の上、作務衣姿の孝次郎が、深々と頭を下げる。
「こちらこそお世話になりました」
「ずるずる一週間も居すわっちゃって、すいません。仕事は初日で終わってたのに」
龍一と広太は恐縮する。
「いえいえ、玲子も話相手が出来て楽しそうでしたから。これからしばらく寂しくなります」
孝次郎の言葉に、しんみりとした雰囲気が流れる。明日からは東京で、高校生としての毎日が再開する。バカンスは今日で終わったのだ。また、鬼が現れるまで、小さなリアルをコツコツと積み上げる日々が続く。
船は出航し、龍宮城のような景色が遠くなる。
「玲子ちゃん、見送りに来なかったね。忙しかったのかなあ。あんなに仲良くなったと思ってたのに、ちょっとショックじゃない?」
広太は悲しげに言った。
「別に、あんな奴、どうでもいいよ」
龍一は捨て鉢な台詞を返す。心がざらついていた。こんな気分は久しぶりだった。
確かに玲子が来ないのは意外だった。短い期間とはいえ、毎日顔を突き合わせていれば情もわく。最後のほうは、妹を相手にしているような気分にさえなっていた。だが、玲子はそうでもなかったってことか。そんな事実に、予想以上にダメージを受けている自分自身にがっかりだ。
「そういやお前、まだコクってないだろ。これからどうすんだ」
「へっへー。携帯アドレス交換してるからねー。もうちょっと親睦を深めて、告白はそこからだよ」
「そうか」
龍一は少しほっとした。
ならば、いつかまた会うこともあるだろう。広太と自分との絆は、まだまだこの先もずっと、永遠に続いていくだろうから。
「うーっ。寒い。客室に戻ろっか」
広太が言った。
「そうだな」
二人は揃って階段を降りる。そして、フェリーの柱にもたれかかっている人影を見つけて大声をあげた。
「ど、どうしたの! こんなところに!」
「お前何やってんだ!」
赤いミニスカートに、ポニーテール。
化粧っけのない清楚な顔に、太い眉の凛々しい少女が、すました顔でたたずんでいる。
「私、今日から、上原家に居候することになりました。よろしくお願いします」
玲子はぺこりと頭を下げた。
「お前、何言ってんだ?」
不信感を露にする龍一にかまわず、玲子はにっこりと笑う。
「ねえ、私があんたたちと組んだら最強だと思わない? 日本一の鬼祓い師軍団に、日本一の修復師。パパが、鬼祓い協会にかけあってくれたの。協会もあなたのお父さんも大歓迎だそうよ。ちゃんと修行させてくれるって。三鬼にも、昨日さよなら言ってきたわ。しばらくは修行の日々だけど、すぐにあんたたちに追いついてやる……負けないから」
「あのなあ……」
口を開こうとした龍一を広太が押しとどめた。
「いいじゃん。玲子ちゃんがいれば、龍一が物壊しても平気だし」
「そう。好きなだけ暴れていいわよ。全部私が直してあげる」
二人はにこにこと顔を見あわせ、どうだ、という風に龍一を見た。
迫力に欠けるどや顔に、龍一は吹き出す。
「……ったく。なんだよ。お前ら。ばっかじゃねえの?」
終わり
0
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