この恋は無駄じゃない

たっぷりチョコ

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お付き合い編②のその後

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☆ゆるーい心と脳でお読みください。

☆『おつきあい編②ー森くん視点ー』のその後・・・のお話になります。


タイトル『キスの仕方を教える』

 1週間ぶりに森くんが我が家に泊りに来た。
 なぜかじゃんけんをするはめに。
「最初はグー、じゃんけん・・・ぽん!」
 森くんとオレの声がシンクロする中、チョキとパーが出る。
「ッシャァッ!!」
 力強くガッツポーズする森くん。
 オレは開いた手のひらを眺めながら複雑な心境になる。

 学校の屋上で森くんにキスの仕方を教えて欲しいと頼まれた。
 原因は他でもない、オレに勢いよくキスした森くんの歯が唇に当たって血が出たからだ。
 オレはそんなに気にしてなかったし、森くんに何度もフォローしたんだけど当本人はだいぶこたえてるみたいで・・・。
 で、うちに来るなり何度も催促する森くんに渋っていたら、なぜかじゃんけんで勝ったら教えて。と言われてしまい・・・今にいたる。

「マジでやるの?」
 ラグマットの上にふたり向き合って座る。
「やる」
 ネコ目をキリリとあげてオレを見つめてくる森くんは真剣そのものだ。

 正直、教えてほしいと言われてもオレも困る。
 まともに人とキスしたのは元カノとした触れる程度のキスくらい。
 と、森くんちでしたキスのみ。
 こうゆうのって人に教わるものじゃなくて自然と? 
 経験豊富で手慣れた奴なら余裕たっぷりの笑みでレクチャーしたりするんだろうけど。ていうか、そんな奴にピュアな森くんがレクチャーされたくないけど。

「まだ?」
 せっつく森くんに覚悟を決めるしかないと腹をくくる。
 ようするに、キスして血が出なきゃいいわけで。
「キスの仕方っていうか、森は勢いがすぎるからゆっくりやれば問題ないよ」
「・・・実践して」
「なんで?!」
「言葉だけじゃわからないだろ。お手本大事!」
「えー、ゆっくりやればいいだけの話じゃん」
「なんでそこで渋るんだよ、キスのひとつやふたつどうってことないだろ」
「言い方!」
「実践! お手本!」
 ネコ目で圧をかけてくる森くん。
 
 折れるしかないのか、オレ!

 いやいやいや森くんとキスするのが嫌なわけじゃない。むしろラッキーなくらいで。ただ・・・、
「目、開いてるけど?」
 キスしようにも森くんのネコ目がじっと見つめてきてやりずらい。
「見てなきゃ覚えられないだろ」
「・・・そーだけど」
 マジでやりずらいと思いながら森くんに顔を近づけ触れる程度のキスをした。
「わかった?」
「・・・わかった」
 顔を赤くして、急にしおらしくなる森くん。(かわいい)

 もしかして教えてほしいっていうのはただの口実で、本当はキスしたいだけだったんじゃ・・・。そう思ったら森くんが愛おしくてたまらなくなる。
 この1週間、なぜか森くんに避け続けられてけっこうショックだったしめちゃくちゃ寂しかった。
 下に親いるけどネネはまだ塾だし、ちょっとくらいイチャついても問題ないよな。

「森・・・」
 もう1回キスしようとしたら、うつむいてた森くんが急に顔を上げ、
「よっし! 実践あるのみ!」
「え?」
 ガシッと勢いよく肩をつかまれその勢いのまま森くんの顔面が迫ってきた。

 ゆっくりって言ったのに・・・。

 前と同じように体当たりしてきた森くんの歯がまた当たって唇から血が出た。

「なんでー--!!」
「森ー」

 そんな不器用なところも好き。


おわり。




タイトル『呼び方』

 オレにキスしようとして2度も流血事件を起こした森くん。
 相当ショックだったようで、部屋の隅っこで体育座りしてへこんでいる。(え、かわいい)
「森ー、そんなに落ち込むなよ。血はもう止まったんだし」
 明るく振舞ってみるけど振り返ろうともしない。(重症か)

 見た目より繊細な森くん。
 ここはちょっと頭を使ってなんとか森くんを元気づけたいと考えた結果、ある提案を思いつく。

「とりあえずキスはひとまず置いといて、恋人らしいことって他にもあるじゃん」
「は?」
 ピクッと反応して暗い顔のままこっちを向いた。(よっし)
 例えば? と聞いてくる森くんにオレは、
「お互い下の名前で呼び合う!」
「・・・マジ?」
 身体ごと完全にこっちを向いた。(よしよし)表情もちょっと明るくなった。

「森はオレの下の名前知ってる?」
「知ってる。立川は?」
「もちろん。ニックネームとかもありだけど、最初は普通に名前呼びでいかない?」
「・・・わかった」
「じゃー決まり!」

 決めたのに、妙な沈黙が・・・。
「・・・とりあえず、練習してみる? 呼んでみたたらまったく違う名前だったらうけるし」
「なんでだよ。でも、練習は、してもいい」
「・・・」
「・・・」
 やっぱり妙な沈黙が流れる。
 お互い向き合ってどちらからも呼ぼうとしない。

 森くんの下の名前はちゃんと知ってる。知ってるけど、自分で提案しといてなんだけど・・・。
 は、恥ずいっっ!
 今までずっと苗字で呼んでたから、いざ下の名前を呼ぶのがこんなに恥ずかしいとはっ!!

 森くんもひたすらオレを睨んで何かを我慢しているみたいだ。
 絶対、恥ずいと思ってる!

 このままじゃ話が進まない。ここは意を決して、
「オレから先に言うから森も言って」
「・・・わかった」
「・・・」
「・・・」
「あ、敦志」
「泉」
 呼び合ったものの、全身の血が駆け巡ってふたりとも耳まで赤くなった。
 
 無理っっ!
 なんでこんなに恥ずいんだっ。(世の恋人すげー)


 結局、照れすぎて名前呼びは封印された・・・かと思ったけど、数日後、晴れて採用となった。



おわり。





タイトル『こだわる理由』

 暗闇の中、見られている視線が痛い。
「寝れるかっっ!」
 限界とばかりにガバッとベッドから起き上がってリモコンで部屋の電気をつける。
 すると、床に敷いてある客用の布団の上じゃなく、オレのベッドに頬杖をついている森くんがいた。(近っ)

「え? 何してんの? オレの寝顔見てたの?」
「寝顔ならキスできると思って」
「なんで?! 教えた時と状況あんま変わんないと思うけど。ていうか、まだこだわってたの?!」
 オレの驚きに森くんが不機嫌顔になる。

「とりあえず今日はもう寝ようよ。寝込み襲われるなんてオレ、怖くて寝れないよ」
「だって・・・」
 ぷぅと頬を膨らませる森くん。(かわいいかよ)

 森くんは・・・ちょっと、いや、頑固だ。

 ふーとため息を吐いて気を取り直し、ベッドからおりて森くんの横に座った。
「こだわる理由ってあるの?」
 こうゆう時は押しつけてもなにも解決しない。まだ幼いネネを面倒みていた時に学んだこと。
 眠いけど、とりあえず話を聞く。

 だんまりが続いた後、森くんの口がようやく開いた。
「・・・したくなった時にできないじゃん」
「え?」
 きょとんとするオレに、森くんがイラ立って「キス!」と強めに言った。
「いちいち立川がしてくれるの待ってたらいつできるかわかんないし、自分でした方が早いじゃん。けど、いざすると血ぃ出るし。もっとスマートにできるようになりたいのっ! 俺はっ!」
 顔を真っ赤にして駄々っ子のように言う森くんが・・・か、可愛すぎ~っ!

 バスケバカだからてっきりスポコン的な理由かと思ってたのに。
 なにこの可愛さ。

 萌えるあまり口元に手を当てながら見えない涙を流す、オレ。

「立川、聞いてる?」
「聞いてる。えーと・・・」
 キスの仕方でアドバイスをしてあげようと思うけど、森くんの場合斜め上な失敗をしそうで・・・被害にあうオレが怖い。
「じゃー、キスしたくなったら言ってよ」
「は? 恥ずっ! 無理っ」
「えー。別に恥ずくなくない? キスしたいって普通に言えばいいだけじゃん」
「言うくらいなら流血事件の方が・・・」
「それはやめて。いくらオレでも何度も血を流すのは命の危機っていうか、地味に痛いから」
「やっぱ練習あるのみ!」
「それも怖い! つーか、さっき当たったところまだ治ってないから」
「・・・」
「じゃー合図とかは?」
「は?」
「バスケでも使ってるでしょ? 口に出さなくてもサインとかあらかじめ決めて合図を送る~的な」
「あー。それならいけるかも」
「じゃー決めよう! キスのサイン・・・」

 夜中になにやってんだと思うけど、可愛い恋人のためだ。
 キスのサインくらいいくらでも考える。
 森くんもキスしたくなる時があるんだと思うだけで顔がニヤける。

「あ、思いついた! こんなんどう?」
 ハイッと手を挙げる森くん。
 さすがバスケバカ。バスケ系が絡むと途端にできる奴になる。

 自分の肩に埃を払う仕草をする森くん。
 それ、テレビで観たことある。
 野球とかスポーツの監督が選手に向かってサインを送るのに似てるってそのまんまかいっ!

「もっと地味なのにしようよ。もっと不自然じゃないやつ」
「不自然じゃないやつ?」
 首をかしげながらいくつか提案をしてくれるけどどれもスポーツの監督がやりそう。周りからしたらなんだこいつと思うようなサインばっか。

「なんだよ! 立川わがまますぎっ! そんなこと言うなら立川が決めろよ」
 ことごとくダメだしするオレに、森くんがついに逆切れした。

 そう言われると悩む。
 うーん・・・と腕を組んであれこれ考えてみる。
 せっかくキスのサインなんだから恋人っぽいのがいい。
 恋人っぽいの、恋人っぽいのとあれこれ連想してみる。

「まだ?」
「あ! これは?」
 森くんが着ているTシャツを軽くつまんで引っ張る。
「は? わかりづらくね?」
「じゃー、引っ張ってからの『ん』は?」
 軽く口をとがらせて言ってみる。
「・・・あざと」
「・・・別に本当にこうしなくてもいいけど。この方がもっとわかりやすくない?」
「・・・口閉じるだけでもいい?」
「そこはこだわりなく。伝わるんならいいと思う」
「じゃ、それで」
「りょーかーい。あーやっと寝れる」

 今日は良い夢見れそうと思いながらベッドに膝をついたところでTシャツの隅っこを引っ張られる。
「え?」
 振り返ると、森くんが「ん」と口をとがらせていた。
 さっそく使う森くんに見えない矢がオレの心臓にきゅんっと刺さる。
 
 もう、押し倒していいですか。



 ご要望どおりキスしてから寝ました。


おわり。
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