殿堂入りした愛なのに

たっぷりチョコ

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壁ドンで再会

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 三春くんと目が合ってしまった。

 これは3年ぶりの再会になるんだろうか。
 
 答えは、否。

 3週間のあいだに逃げる癖がすっかりついてしまったおれは、目が合うなり露骨にそらし、そして走って逃げた。
 実はあの頃にもうひとつやらかしたことがある。
 小6の卒業ま近に、とにかく三春くんとこのまま会えなくなるのが嫌で一度断られたのに何度もライン交換を迫った。その結果、

『しつこい!!』

 三春くんがブチギレた。
 その日は口も聞いてくれず一緒に帰ることもなかった。
 三春くんは切り替えが早い性格で、次の日にはケロッとしててすぐ仲直りができた。でも、怒鳴るくらい怒った三春くんを見たのは初めてで、自業自得とはいえ怒る三春くんがとらうまになった。
 そして、結局ライン交換ができずそのまま卒業。

 怖い。
 また三春くんがブチギレたら。
 好きだからってストーカーまがいなことをしたうえに3週間ずっと避けてたんだから絶対怒ってる。
『しつこい!!』
 キレて怒鳴った時の三春くんの顔を思い出し、ギュッと心臓が縮む。

 何も考えず廊下を走って階段を上る。
 あ、ヤバイ。次理科室だった。
 引き返そうと後ろを振り返ると、下からすごい音が。見下ろすと足音を響かせながらすごい勢いで階段を2段抜かししながら駆け上ってくる三春くんの姿が。

 うわぁぁぁ。

 さっきまで外にいたのに早くない?! もしかしておれを追いかけてきた?
 迫る恐怖な気分で慌てて階段を駆け上る。
 三春くんは猛獣。おれは小動物といったところか。
 うさぎやねずみたちはいつもこんな追いかけられる恐怖を味わいながら生き延びてるのかと思うととにかく尊敬しかない。
 ちなみにうさぎはチーターと同じ速さでチーターよりも長い距離を爆走できる・・・って、今はそれどころじゃない。
 小学校の頃から三春くんは運動神経がよかっただけにとにかく速い。
 4階まで階段を駆け上がり、息をぜぇぜぇいわせながら廊下を走る。
 自慢じゃないけど、運動は苦手だ。
 さすがにここまで走れば・・・と思って振り返ると三春くんがほんの数メートル後ろにいる!
 危機感が発動して猛ダッシュを試みるけどあっという間に追いつかれ壁ドンされた。
 お互い息が上がったまま無言。
 目の前にいる三春くんの呼吸をめちゃくちゃ感じる。(というか息が当たってる)
 心臓が爆音すぎて口から出そうだ。
 
「鈴村」
 
 顔のすぐ近くで声変わりした三春くんの声が。
 入学式で聞いたマイクを通した声よりもスッキリした青い声に三春くんらしくてキュンとする。

「やっと捕まえた。教室行ってもいないし、さすがに限界なんだけど」
「あ、えっと」
 三春くんの声音が低くなりとらうまが蘇る。
 ヤバイ、怒られる。
 きゅんとしたりハラハラしたり。感情の浮き沈みが数秒内でハンパない。
「鈴村、オレーー」
 三春くんが何か言いかけたところで、長い腕がオレを庇うように割り込んできた。有吉だ。
「オレの親友になんか用? 言っとくけどもう授業始まってんだけど」
「・・・」
 三春くんと有吉が無言のにらみ合いが数秒。スッと三春くんが壁ドンをやめておれから離れた。
「鈴村、またな。次はちゃんと教室にいて」
 そう言って三春くんが背中を向けて階段へと歩いて行った。

 一気に緊張が解けてはーーーーーーと盛大なため息が出た。ついでにその場に座り込む。
「有吉が来てくれて助かったよ。ありがと~」
「大丈夫か。いきなり走り出したと思ったら優等生がすごい形相で追いかけてるからなにごとかと思った」
「おれもびっくりした。思わず逃げちゃった」
「よしよし。怖かったな」
 そう言って、有吉が頭を撫でてくれる。(お兄ちゃんか)

 ヤバイ。
 さっきの三春くん、かっこよすぎた。しかも息がエロセクシーだ。(腰くだけた)



 その日の夜、相部屋でもある有吉と三春くん対策を話し合った。
「あれは相当怒ってんな」
「やっぱり?!」
「ここは向こうから来るまえにこっちから乗り込もうぜ」
「乗り込む? まさか戦の話でもしてる?」
「オレも一緒についてくからさ、ここはがつんっと謝ればいいじゃん!」
「謝るにがつん?」
「いちいちツッコミ入れなくていいから。な、オレも一緒なら怖くないだろ」
「そうだね、ありがとう」
 なんだかんだ優しい有吉。


 さっそく次の日の朝、登校早々に有吉に首根っこ捕まれながらSクラスへと向かった。
「こっちから行くとは言ってたけど、朝からだとは聞いてないーー! 心の準備がっ」
「なに言ってんだよ。こうゆうのは先手必勝っていうだろ。向こうが来る前に行かないでどうすんだよ」
「でも~」
 迫力はあったけど、好きな人に壁ドンをされたという実感がじわじわきて今にいたるおれの脳内は・・・吐息交じりの三春くんのドアップが占領している。
 今、三春くんに会ったらまもとに会話どころか、顔さえ見れないよぉー。と、心の中で悶えていたけど、Sクラスに三春くんの姿はなかった。
 代わりに、
「三春なら寝坊だと思う。あいついっつも遅刻ギリギリに登校してくるから」
「わかった。Aクラスの鈴村が来たって伝えといて。また来るって」
「わかった、伝えとく」
 二つ返事してくれたSクラスの男子。どこかで見覚えがあると思ったら昨日、三春くんと一緒に歩いていた男子のひとりだ。
 人当たり良さそうだけど、なんとなく雰囲気がチャラそうだ。(Sクラスでもいるんだな)
 廊下を歩きながら有吉が、
「優等生が寝坊って。ご身分高いことで」
「優等生だって人間だよ。三春くんは小学生の頃から朝が苦手でよく遅刻してたんだよ」
 思い出してついクスクスと笑みが。
「笑うほど?」
「えーとね、寝癖がいつもすごかったから。それを思い出してつい。猫耳みたいな寝癖があった時はクラスで大爆笑だったんだよ」
「・・・優等生の赤裸々な過去が」
 そっと口元に手を当てる有吉。
「可愛い思い出だよ!」

 自分が知ってる三春くんの一面を知れてちょっと嬉しくなった。
 壁ドンする三春くんにドキドキばっかりしてたけど、三春くんはやっぱり三春くんだ。

 
 気を取り直して昼休みに有吉と一緒にSクラスへ向かう途中、廊下でばったり三春くんと会う。
「お、偶然! ちょうどそっちに行こうとしてたんだ」
 有吉がちょっとびっくりしている三春くんに声をかける。
「オレも。朝こっちのクラスに鈴村が来たって友達から聞いて。悪かったな、いなくて」
 有吉じゃない。オレに話しかけてくれる三春くん。
 まっすぐな視線に緊張して顔を上げることができない。
「う、ううん」
 返事するも、声がかすれた。(うぅ、情けない)
「立ち話もなんだし、屋上でも行って話さない?」
 気を利かせてくれる有吉。 
 そのまま開放されている屋上へと行き、天気の良い昼の日差しを浴びながら三春くんと向き合った。
 無言が数秒。
 何から話せばいいかテンパってると三春くんが、
「悪いけど、鈴村とふたりで話したいんだけど」
「オレ邪魔ってこと? どーしょうかな。昨日みたいな威圧感で親友を追いつめないか心配なんだけど」
「あれは鈴村が逃げるから・・・。わかった、ちゃんと距離とって話す」
「平和的に・・・て、待った」
 そう言って、有吉がズボンのポケットから振動してるスマホを取り出し画面を見るなり、ビシッと人差し指を三春くんに向けた。
「オレの親友に何かしたらマジで許させねーからな!」
 有吉の釘さしに三春くんが表情を硬くしながら頷く。
「鈴村悪い、幼馴染から電話。なんかあったら叫べよ。絶対助けに行くから」
 グッと親指を立てた。
「うん、ありがとう」
 グッとおれもつられて親指を立てた。

 有吉がいなくなった屋上に三春くんとおれのふたりっきりになってしまった。
 改めて、好きな人と3年ぶりの再会を果たす。
 
 ど、どうしよう~~~。ここからどうすればいいんだ。
 
 ダラダラと変な汗が出てきた。手のひらが汗で湿ってる。
 思考停止しかけてる脳みそをなんとか起動させながら、とにかく昨日逃げたことと今まで居留守を使ったことを謝らなきゃと、頭を下げながら口を開けたところで先手を取られた。
「ごめん!」
 三春くんの青い声が天井のない屋上に響く。
 てっきり怒ってるんだとばかり思っていたから突然の謝罪にびっくりして思わず顔を上げると目が合った。
 眉を下げて本当に反省してる顔の三春くん。
「ごめん、連絡先交換しなくて」
 叱られた犬みたいにしゅんとしてる三春くんにぎょっとする。
「うぇ? え、いつの話?!」
 頭にはてなを浮かべながら三春くんが、
「それでオレから逃げてたんじゃないの? しつこいとか言って怒鳴ったこともあったし」
「そんなわけないよ! あの後仲直りしたし、普通に笑って卒業したじゃん!」
「じゃーなんで教室行っても会ってくれなかったの?」
「・・知ってたんだ」
「そりゃもちろん。最初はマジでいないと思ってたけど、明らかにクラスの奴らニヤニヤしてたし」
「うっ」
「昨日も追い回すようなことしてごめん」

 三春くんのピュアな謝罪に良心が痛む。
 もう一度深々と頭を下げ、「ごめん」と次はおれが謝った。
「さ、3年ぶりの再会でどうしたらいいかわからなくて。三春くんにはもう忘れられてるとばかり思ってたし。まさかこの学校に入学してくるなんて。それもびっくりで。直接教室に会いに来てくれたのも・・・」
「ドッキリ系かと思った?」
「・・・そこまでは。でも、そんな感じかも。居留守使っても毎日来てくれるし。なんていうか、変に勘ぐっちゃっておれのほうこそしつこく連絡先聞いたりしたから今更怒ってるのかな・・・とか」
「じゃーオレらふたりとも同じことで怒ってると思ってたってこと?!」
「みたいだね。なんかごめん」
「なんで鈴村が謝んの! はぁーーー誤解とけてよかった」
「勝手に疑ってごめん」
「いいよ、確かに元同級生が急に現れたらびっくりするかも。オレはテンション上げて飛びつくけど」
「ごめん、おれは不審がるタイプだった」
「なんか久々! 鈴村って感じ!」
 ニカッと歯を見せて笑う三春くんに小学生の頃の三春くんが被ってキュンとする。(うっ)

 スッと三春くんが右手を出してきた。
「スッキリしたところで、これからまた友達としてよろしく!」
「う、うん。よろしく」
 大きい手に思わずごくりと喉が鳴った。
 友達相手に緊張するなんておかしい。三春くんにも変に思われたくない。
 やけくそとばかりに勢いで手を伸ばして三春くんと握手する。(あったかい)
 三春くんの手は見た目どおり大きくて指が細くて、あったかい。
 すぐに握手はほどけ、代わりに三春くんが幼い笑顔で笑ってくれた。
 
 ヤバイ。
 一生この手洗えないかも。

 じーんと心の中で感動してると、
「あ。忘れず連絡先交換しよ。Sクラスだけ教室も寮も別校舎でびっくりした。せっかく鈴村と一日中会えると思ってたのに」
「今、なんて」
 聞き間違いかと思うくらい、その場で目が点になる。
「ん?」
 スマホを取り出す三春くん。本気でおれと連絡先を交換してくれるみたいだ。
「そういえばなんでこの学校受験したの? 三春くん、勉強苦手だったよね? てっきりスポーツ系の部活が強い学校に行ったのかと思った」
「めちゃくちゃ頑張った!」
「Sクラスってことは医者目指してるとか?」
「全っ然! Sクラスが医者目指してる奴が多いっていうのは入学して知った」
「ぅえ?! じゃーなんで」
「奨学金制度の条件なんだよ、Sクラスは。オレがここを受験したのは鈴村に会うため。それだけ!」
「おれに、会うために・・・わざわざ?」
「うん。鈴村のスマホ出して」
 言われるがままスマホをズボンのポケットから出す。
「偏差値70以上の学校に受験? しかも、優等生で?」
「優等生かはわかんないけど。あ、できた」
 スマホの連絡先に三春くんの名前が追加された。
「やっとライン交換できた!」
 ニカッと風に吹かれながら嬉しそうに笑う三春くんに、心臓が大きく跳ねる。(どっきゅん)

 おれのために入学しただとーーーー?!

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