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歯の間に挟んでいるだけの、噛み跡が残りそうもない甘噛みは最終確認らしかった。
彼がわずかに首の角度をずらすと、瞬間的に細針を刺したような痛みが起こる。
浮き出てきた小さな血の玉をダニエルはすかさず舐め取った。微細な味を感じ取ってか、どこか恍惚とした目つきになる。
唾液と混じった生血は凝固を妨げられ、かすかに垂れ落ちていく。一滴すら逃すまいと小指に吸いつく様は、どこか口寂しい赤子を連想させた。
恐怖より微笑ましさが勝るも、指摘すれば揶揄になる気がして、アシャは沈黙を選んだ。
ほどなくしてダニエルは指から唇を離し、長く熱いため息をついた。
「あ、ありがとうございます。さらっとして、甘酸っぱくて……美味しかったです」
果汁を飲んだような独特の感想よりも、自身の唇や牙に付いた血を大雑把に拭う彼の舌に意識が向く。
「……それは良かった」
気もそぞろに答え、尚も口元に視線を注いだ。
意図するところを察したダニエルは頬を染め、アシャの首や腰に腕を回して抱き寄せる。
柔らかさを確かめ合うだけの、ごく軽い接吻が降ってきた。うっすらと残る鉄錆の味も不快ではなかった。
体温を分け合い、重ねた胸から速い心音を感じ取る快さに比べれば些末なことだった。
「こうなる前は人並みに暖かかったんですけど、今はすぐに冷えてしまって……その、平気ですか?」
ダニエルは気遣わしげにアシャの背中を撫でさする。
どうやら純粋な吸血鬼一族の出ではなく、血を分け与えられた元人間であるらしい。
「気になりませんよ」
アシャは彼の不安を打ち消すべく即答し、羽織っているナイトガウンの結び目を解いた。
肩からするりと脱ぎ落とすと、ダニエルも焦った顔で寝衣に手をかける。
下着一枚を残した互いの身体に手を這わせ、そろそろと形を確かめるように触れ回った。
ダニエルはアシャの肋骨が浮いた裸身を周到に愛で、辛うじてある乳房を包んで揉みしだく。
長い指が色づいた胸の先端を捏ね、固くなったそこを優しくつねる。アシャは痺れを伴う快楽に喘ぎ、身悶えた。
「ダ、ダニエルさ……んんっ」
薄く開いた唇を塞がれ、遠慮がちに入り込んできた舌が口内を探り始める。
間近にあるはずの牙は皮膚や粘膜に当たらず、巧みに隠されていた。
舌同士がねっとりと絡みつき、深く喰みあっても擦り傷ひとつ負わなかった。
湿り気を帯びた脚の間がもどかしく、アシャは太ももを擦り合わせる。
動きに気付いたダニエルの手がアシャの鼠径部へと伸びた。
「……脱ぎますか?」
小声で尋ねられ、俯き気味で頷いた。
布地の色を濃くして用を成さなくなった下着が脚の間から引き抜かれ、足首をくぐった。
一糸まとわぬ姿に恥じらいを覚える前に、アシャは身を低くしてダニエルの下穿きに手をかける。
「こっちは、あたしがやります」
客は一夜の相手に何もかも任せ、お膳立てしてもらう立場にあるのだろうが、受け身ばかりではつまらない。
「そ、そんなことをさせるわけには」
「してみたいんです。お願いします……」
ダニエルは及び腰で制止しようとしたが、アシャの要望をはねつけるのは心苦しかったのか、間もなく外股気味に座り込んだ。
彼の気が変わらないうちに、とアシャは手早く仕立ての良い下穿きを脱がせる。
「えっ……?」
だが、まろび出てきたのはアシャの想定をはるかに上回る代物だった。
太く長大な肉塊はいかにも凶悪で、透明感のある白皙の美男の顔と印象が噛み合わない。
初夜の時には処女喪失のことばかり意識を向けていて、男性のそれを詳しく見る余裕はなかった。
生々しさに心臓が大きく跳ね、落ち着きのない鼓動は更に速まっていく。
「アシャ様……その、あまり見ない方が……」
ダニエルは視線を斜め下に逸らし、くぐもった声で忠告する。けれどアシャは同意しかねた。
「いいえ。詳しく知らなくちゃ、駄目だと思うんです」
淫らな欲の象徴であり、子種を蒔く源でもある男性特有の持ち物。
自分の中から湧いて出た思いもよらない欲求に突き動かされ、開いた足の間に身体を割り込ませ、鼻を寄せる。
湯上がりだからか不快な性臭はなかった。
別の生物の如く微細にうごめく逸物に息を吹きかけ、丸い先端に舌先を当てるとダニエルは身をわななかせる。
「い、いけません……本当に、それはっ」
抵抗を示す言葉とは裏腹に、アシャの頭や肩へ軽く触れるだけで、強く押しのけはしない。
相手の要望を断りきれない性質のせいか、満更でもないのか測りかねたが、本気で嫌がっていないならそれで良い。
アシャは目を閉じ、大きなものを口内に迎え入れた。
彼がわずかに首の角度をずらすと、瞬間的に細針を刺したような痛みが起こる。
浮き出てきた小さな血の玉をダニエルはすかさず舐め取った。微細な味を感じ取ってか、どこか恍惚とした目つきになる。
唾液と混じった生血は凝固を妨げられ、かすかに垂れ落ちていく。一滴すら逃すまいと小指に吸いつく様は、どこか口寂しい赤子を連想させた。
恐怖より微笑ましさが勝るも、指摘すれば揶揄になる気がして、アシャは沈黙を選んだ。
ほどなくしてダニエルは指から唇を離し、長く熱いため息をついた。
「あ、ありがとうございます。さらっとして、甘酸っぱくて……美味しかったです」
果汁を飲んだような独特の感想よりも、自身の唇や牙に付いた血を大雑把に拭う彼の舌に意識が向く。
「……それは良かった」
気もそぞろに答え、尚も口元に視線を注いだ。
意図するところを察したダニエルは頬を染め、アシャの首や腰に腕を回して抱き寄せる。
柔らかさを確かめ合うだけの、ごく軽い接吻が降ってきた。うっすらと残る鉄錆の味も不快ではなかった。
体温を分け合い、重ねた胸から速い心音を感じ取る快さに比べれば些末なことだった。
「こうなる前は人並みに暖かかったんですけど、今はすぐに冷えてしまって……その、平気ですか?」
ダニエルは気遣わしげにアシャの背中を撫でさする。
どうやら純粋な吸血鬼一族の出ではなく、血を分け与えられた元人間であるらしい。
「気になりませんよ」
アシャは彼の不安を打ち消すべく即答し、羽織っているナイトガウンの結び目を解いた。
肩からするりと脱ぎ落とすと、ダニエルも焦った顔で寝衣に手をかける。
下着一枚を残した互いの身体に手を這わせ、そろそろと形を確かめるように触れ回った。
ダニエルはアシャの肋骨が浮いた裸身を周到に愛で、辛うじてある乳房を包んで揉みしだく。
長い指が色づいた胸の先端を捏ね、固くなったそこを優しくつねる。アシャは痺れを伴う快楽に喘ぎ、身悶えた。
「ダ、ダニエルさ……んんっ」
薄く開いた唇を塞がれ、遠慮がちに入り込んできた舌が口内を探り始める。
間近にあるはずの牙は皮膚や粘膜に当たらず、巧みに隠されていた。
舌同士がねっとりと絡みつき、深く喰みあっても擦り傷ひとつ負わなかった。
湿り気を帯びた脚の間がもどかしく、アシャは太ももを擦り合わせる。
動きに気付いたダニエルの手がアシャの鼠径部へと伸びた。
「……脱ぎますか?」
小声で尋ねられ、俯き気味で頷いた。
布地の色を濃くして用を成さなくなった下着が脚の間から引き抜かれ、足首をくぐった。
一糸まとわぬ姿に恥じらいを覚える前に、アシャは身を低くしてダニエルの下穿きに手をかける。
「こっちは、あたしがやります」
客は一夜の相手に何もかも任せ、お膳立てしてもらう立場にあるのだろうが、受け身ばかりではつまらない。
「そ、そんなことをさせるわけには」
「してみたいんです。お願いします……」
ダニエルは及び腰で制止しようとしたが、アシャの要望をはねつけるのは心苦しかったのか、間もなく外股気味に座り込んだ。
彼の気が変わらないうちに、とアシャは手早く仕立ての良い下穿きを脱がせる。
「えっ……?」
だが、まろび出てきたのはアシャの想定をはるかに上回る代物だった。
太く長大な肉塊はいかにも凶悪で、透明感のある白皙の美男の顔と印象が噛み合わない。
初夜の時には処女喪失のことばかり意識を向けていて、男性のそれを詳しく見る余裕はなかった。
生々しさに心臓が大きく跳ね、落ち着きのない鼓動は更に速まっていく。
「アシャ様……その、あまり見ない方が……」
ダニエルは視線を斜め下に逸らし、くぐもった声で忠告する。けれどアシャは同意しかねた。
「いいえ。詳しく知らなくちゃ、駄目だと思うんです」
淫らな欲の象徴であり、子種を蒔く源でもある男性特有の持ち物。
自分の中から湧いて出た思いもよらない欲求に突き動かされ、開いた足の間に身体を割り込ませ、鼻を寄せる。
湯上がりだからか不快な性臭はなかった。
別の生物の如く微細にうごめく逸物に息を吹きかけ、丸い先端に舌先を当てるとダニエルは身をわななかせる。
「い、いけません……本当に、それはっ」
抵抗を示す言葉とは裏腹に、アシャの頭や肩へ軽く触れるだけで、強く押しのけはしない。
相手の要望を断りきれない性質のせいか、満更でもないのか測りかねたが、本気で嫌がっていないならそれで良い。
アシャは目を閉じ、大きなものを口内に迎え入れた。
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