桜餅

サクラ

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 2 幼馴染の定義

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最近、エルケンは素っ気ない。
というか、意識的に避けられてる気がする。

「ねーエルケン」
「俺忙しいから、また後でな」

ぽんぽんと頭を撫でられ、追い返される。
なんだか、その対応が妙に大人っぽくて寂しくなる。
エルケンは、私と『桜餅』になったのがどうしてだか、理由を覚えているのだろうか。

私とエルケンだけの約束。
二人だけの秘密。

一緒に大人になろうねって言ったのに。

入れ替わりの様にナカジュンが私に話しかけてくる。
明るくて優しいナカジュンは、気を使う様に言った。

「桜ちゃんさー、エルケンの事好きなの?」
「好きだよ、幼馴染だもん。でもエルケンはモテるから、私は邪魔者かもしれないな……」

だって私の好きが、恋してる好きなのか分からない。
カッコいいエルケンは、いつだって周りに人がいて誰からも好かれる。
私だってエルケンの傍にいつもいる側の人だった。でも、私はただの幼馴染なのに傍にいて良いのかな。

考え込む私に、ナカジュンは明るく笑った。

「俺は桜ちゃんのこと、好きだぜ」
「あはは、ありがとうナカジュン!ナカジュンは優しいね、こんな私にだって好きなんて言ってくれて」







今日の帰り道は、一人だ。
いつもは見慣れている景色が全く違うように見える。
そこへ偶然にも、ナカジュンがいた。

「あれ、桜ちゃん家こっち?」
「ナカジュン。私はこっちだよ、ナカジュンも?」
「うん、俺んちも。桜ちゃんが一人とか珍しいね、学校で凄い人気なのに」

こないだエルケンにも言われたけど、私そんな人気なのかな。
エルケンの方が凄いと思うけどな。

にこにことした笑顔で言ってくれるナカジュンを見たら、そうハッキリとは言えない。
っていうか、ナカジュンも人気者じゃん。

「ナカジュンは好きな人とかいるの?」
「俺?俺はいるけど、その子は幼馴染とすごく仲がいいからな…」
「へぇー、私とエルケンみたいだねっ!」
「あ、うん、そだね…………」

ナカジュンがしょんぼりとした表情を浮かべた。
私、なんか悪い事言っちゃったかな?

「あ、じゃあ桜ちゃんまたね」
「うん、ナカジュンまた明日」

手を振ってナカジュンと別れる。



それを見ていたエルケンに気づかずに。
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