桜餅

サクラ

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 8 どたばたデート大作戦!

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「中川先輩、どうしたんですか?」
「図書館の使い方を教えて欲しくてさ」

アホ丸出しな(全く違和感無いから凄い)ナカジュンは、ユウナにそう言った。
後輩のユウナの事は、しっかり知ってるもん。

そして、私達はと言うと。

「なんで俺達まで………」
「ちゃんとハッピーエンドにしてあげなきゃ!それともエルケン、私の事…………嫌い?」

やる気無さそうに呟くエルケンを見て、私は言う。
今日はいつもと違って私服である。
わりと遊びに行ったりっていうのは無かった(小さい頃はよく遊んでたけど)。だから、エルケンの私服はなんか新鮮。

「な訳あるか。ほら、早く行かねーとアイツらいっちまうぞ」

さりげなく頭を撫でられる。
なんかエルケン、前よりも優しくなった気がするなぁ。

…………って、置いてかれちゃう!








「ここで、バーコードを読み込んで………」
「なるほど、ユウナちゃんて凄いねぇ」
「いえいえ、そんなこと無いですよ。私はいつも来てるからです」

本棚の陰に隠れて、二人の様子をエルケンと共に窺う。
なんかこれ、探偵みたいだよね。

今日のユウナは、いつも通り三つ編みだ。
それに、眼鏡だって着けている。
そして洋服は、ベージュに赤いリボンが付いたケープ風のブラウスに、クッキーみたいな茶色のふんわりしたスカート。

「眼鏡と三つ編み外せば可愛いんだけど………。本人が物凄い恥ずかしがってたんだよなぁ」
「まあ、印象が変わって良くなるんだろうな」

珍しく、エルケンが真剣な意見をあげた。
でも、なんかいい感じになってる。

不意に二人が近付いてきた。
隠れなければいけない。
慌てて走り出そうとした時に、私の足がもつれて…………。

(おい、大丈夫か?)
(うん大丈夫だよ、ありがと)

転びそうになった私を、エルケンが抱き止めてくれる。
カーテンの陰に隠れてしまっているのだが、目の前を二人が通るのが分かる。
私はエルケンの胸に埋もれてじっとしている。

(バレなさそうだな)
(そうだね、大丈夫そう)

………って、大丈夫じゃないよ!私が!
この体勢はかなりヤバい。
思いきり密着してるし、『付き合ってる』っていう名目が私達にあるから余計に。

離れようとしたけど、何か体が固定されて動けない。

「あ、あの………?エルケン?」
「ん?どした?」
「『どした?』じゃないんだけど………」

エルケンの両腕に抱き締められている事に、今気づく。
そして本人も、それに今気づく。

「…………わりいっ!」
「うぅん、全然良いけど…」

私達が雰囲気良くなってどうすんの?と、今自問自答しました。
慌てて私は二人がよく見える所に、位置をとる。

「あ、あのね………話したい事があるんだけど………」

ナカジュンがついに、そう切り出した。
そして、ユウナの手を引いて外へ出たのだが。

生憎にも、外はどしゃ降り。

一気に全身が濡れてしまった二人。
その場に立ち尽くしたままナカジュンが、俯くユウナに声をかける。

「ゆ、ユウナごめん!」
「………ふふっ、あはははっ。中川、先輩……面白いですね」

くすくすと笑いを溢しながら、ユウナは眼鏡を取った。
雨で水滴がついてしまうから逆に見えにくくなるらしい。
それから、三つ編みもほどいた。
彼女は三つ編みのまま髪が濡れるのを嫌う。

ナカジュンが、半分くらい叫ぶような形で言った。

「俺っ、ユウナちゃんのこと好きだ!!」
「中川先輩……?」
「俺と、付き合って…………ください」

顔を赤くしたままのナカジュンは、ユウナに手を差し伸べる。
ユウナはゆっくりとその手を取って、頷いた。

「嬉しいです。もちろん、……よろしくお願いします」

ナカジュン、良い話しだけどそこ入り口!








で、カップル誕生を見届けた私達。
次の日、少しだけいつもより明るい表情をしたユウナが、ナカジュンと手を繋いでいた。

「いやー、良かったね。仲良さそうでっ」
「…………ほらよ」

二人を眺めていたエルケンが不意に振り返り、そう言った。
そして、そのまま続ける。

「手ぇ繋ぐくらいなら、俺達にも出来んだろ」
「…………うんっ!エルケンの手、あったかい♪」
「………ったく」

エルケンの細く長い指を握りながら。
学校の方へ二人で歩いて行く。


デート大作戦、成功ですっ!!
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