桜餅

サクラ

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 22 嵐の訪れ

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今日はエルケンと一緒に帰れる日。
………なんだけど。

「桜、さっきからキョロキョロしてどうした?」
「ん~……?何でもない、気のせいだと思う」

ずっと、刺すような視線を感じている。
それは学校を出る前からもである。
なんとなく落ち着かない私に、エルケンが心配そうに此方を見る。

「なぁ、なんかあったか?」
「ストーカー、じゃないと思うんだけどね?なんか、ずっと視線を感じるんだ」

振り返っても誰も居ない。
けれど、背中には視線を感じていた。

不意に、前から歩いてきた子にぶつかった。

「きゃっ………!」

前を歩いてきた女の子らしき人物は、私が声をあげたのに対しても無言でぼうっと立っている。
そして、その目を見てゾッとした。
他国の血を匂わせるオッドアイには、いっさい光が宿っていなかった。

「ねぇ、ボクにぶつかっといて……無言………?」
「え?男の、子…………?」

顔立ちは中性的で、化粧なんかしたら女の子に見える。
そしてもちろん、男の子に見えない事もない。
だか、確かに『ボク』と言った。

「おい、二人共大丈夫か?」

エルケンが私達の元に駆けてくると言った。
しかし、聞く耳も持たずにあの子は去っていく。

「なんだろう、あの子………」
「変なやつだな。歳的には、俺達と同じくらいか」

確かに、歳的には同じくらいだろう。
やや小柄ではあるが。

「気にすんな、行こうぜ」
「う、うん…………」




◇◇◇◇◇ ◇◇◆◇◇◆◇◇ ◇◇◇◇◇



「何なのアイツ!優にぶつかって謝んないとか最悪!」
「お姉ちゃん、ボクは……大丈夫。落ち、ついて………?」

姉・花篝 風華(はなかがり ふうか)は憤慨したように言った。
妹・花篝 優華(はなかがり ゆうか)がそれをなだめる。
この双子は随分と変わっていた。

「でも、お姉ちゃんがそう言う……なら。ボクは、よ」
「優は本当に可愛い!だから、お姉ちゃんから離れたら駄目だよ」
「分かってる、お姉ちゃん………」

風華は美しい黒髪に、優華と同じオッドアイである。
だが優華とは全く違って、その目にはきらきらした輝きが宿る。
そして言う間でもなくシスコンであった。

優華は大人しく静かだが、ゲスい事を平気で言ってのける。
また風華同様にシスコンである。

色々な意味を含んでの『双子』なのだ。

風華が初めて中川淳平という男に恋をした。
ならば、それを応援するのが姉を愛する妹というもの。
姉が要らないと言えば、妹も要らない。
そんな双子。



◇◇◇◇◇ ◇◇◆◇◇◆◇◇ ◇◇◇◇◇



「あの、ね……ナカジュン」
「桜ちゃん、どうしたの?疲れてる……よね」

屋上で、お昼を食べる私達四人(エルケンとユウナは委員会でいないから二人だけど)。

「最近、何か視線を感じるんだよね……」
「……あれ、桜ちゃんも?最近俺もさ、何か見られてる気がすんの」

さっき疲れた?と聞いてきたナカジュンの方が疲れてそう。
っていうかナカジュンも、変な視線を感じているのか。

「昨日エルケンと帰ってる時も、ずっと感じてた。家に入ったらさすがに感じなくなったんだけどね……?」
「そうなんだ……。俺は学校を出るまで、かな」

ナカジュンの場合は、ファンの行き過ぎた行動だったりして。
ありそうだから、すごい困る。
エルケンとナカジュンは驚くくらいファン多いからなぁ…。
ってか、これだと絶対ユウナが危ないし!

「ナカジュン、ユウナを守ってあげてねっ!」
「………?うん、分かった」



だけど、私は気づかなかった。

その瞬間にも私達が監視されてること。

知らない内に恨みを買っていること。
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