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13,悩みの種と素敵な恋

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「もうすぐ祭日イヨルティだね、未ちゃん」
「そうだね、レイちゃん。プレゼントの準備ってもうした?」
「私は、まだ…してないんだ」



森に訪れる、冬の祭日イヨルティ

この冬の祭日イヨルティには必ず雪が降るけど、その雪の中に混じって、金色の欠片を見つける事があるらしい。

その金色の欠片を小さな袋に入れて、暦が変わるまで大切に持っていれば、願い事が叶うかもしれないというものだ。


それは昔から森に伝わる御伽噺で。
でも、実際に金色の欠片は空から降ってくるらしい。



そして冬の祭日イヨルティでは、お世話になった人同士で集い、料理を振る舞ったりプレゼントを交換したりする。

椅子に座ったレイが勢い良く立ち上がって、私に笑顔で言った。



「じゃあさじゃあさっ、私と何か見に行かない?」
「へ?見に行くって……」
「もちろん、街にだよっ」



確かにあの賑やかな街になら、色々な物がある。
アルにだって喜んでもらえるかもしれない。



「そういえばー、未ちゃんってお兄ちゃんとペアリングしてるんだね」
「へ、あ、うん……」
「羨ましいなぁ」



そう言って横を向いたレイの顔が何だか寂しげに見えて、前を歩き出した彼女の袖を、つい引っ張った。

今、聞かなきゃ。
絶対に後悔するから。



「れ、レイちゃん!」
「ひゃっ!びっくりした…未ちゃんどうしたの?」
「前に好きな人いるって言ってたでしょ…?何か、あったの?」

「……うん、彼はね、未ちゃんに出会うよりもずっと前にいなくなっちゃったの」
「そう、なん…だ」

「あ、でも!気を遣わなくても大丈夫だよ!今は別な人が好きだから」



慌てて私に弁解するレイの笑顔が本当に素敵に輝いていた。

レイは辛い事があった後もちゃんと乗り越えてえらいと思うと、私は駄目な子なんだと思ってしまう。


そんな事より、街へ出掛けるんだから。
もっと楽しいことを考えなくちゃ。








レイの手に引かれて、沢山の人々がすれ違う道を歩いていく。

まぁ、これだけ人が多かったらぶつかったりなんかもしてしまったりするだろう。



「わ、ご、ごめんなさいっ」
「気をつけろ……って、なんだ嬢ちゃん達…また街へ来たのか?」
「リントさん…!お久しぶりです」



彼女がぶつかってしまい、白い息を吐きながら気だるげに言ったのは、少し前にお世話になったリント。



「リントは今、暇?」
「んー、まぁ…忙しくはないが」
「じゃあ、私達の買い物に付き合って!」



少しだけ胸がふわぁってシャボン玉の様に、空に浮いたみたいな気持ち。

きっとそうだ。
あのレイの幸せそうで、明るくて、ちょっと照れたような笑顔を見ていたら分かる。

だって私も、そうやって笑っていたのだから。


レイちゃんは、リントさんの事が好きなんだ。
行動も視線であっても、それは恋をしている女の子そのもの。



溢れんばかりの人のせいで、レイとリントの姿は見えなくなってしまった。

でも、逆に今はこれで良かったのかも。
だって私があの二人の傍にいたら、絶対に何かお節介をしていたかもしれないから。



「でも二人とはぐれちゃったし…どうしようかな」



フードだけは外れないように押さえてなくちゃ。
こないだは無理矢理外させられそうになったし、気を付けないと本当にバレてしまうかもしれない。


さて、アルのプレゼントを見つけないといけないのだ。
何をプレゼントしたら喜んでくれるだろうか。

マフラーは前に作ったし。
指輪だって、ペアリングがある。


ぼーっと辺りの店を見ていると、目に留まった。
それは腕時計といわれる、小さな持ち歩き用の時計だ。



「これ、綺麗……!」



パッと頭の中にアルの顔が思い浮かぶ。
彼がこの時計を着ける所を想像したら、絶対に似合うと思った。

私が良いと思ったのは、黒い革のベルトが艶々に光る美しい時計。


ピンクと黄色の灯りに照らされたショーウィンドウをそうして覗いていると、見かねた店員が店の中から出てきた。



「何かお気に召した物でもありましたか?」



物腰穏やかで優しい目をした、女の人がふわりと微笑む。
暗めの赤い髪の毛。
澄んだ茶色い瞳。

……とっても綺麗な人。



「すみませんっ、あの……」
「うふふ、別に良いのよ。良かったら、店の中の商品も見ていってね」
「じゃあ、見ていきます」



店員に連れられて入ったお店は、微かに珈琲の香りがして、大人の雰囲気がする。


女性用やプレゼント用の時計も沢山並んでいるけれど、やはりさっきの時計が気になる。

少し値段が張るし、でも今からまた手作りの物を交換していけば、冬の祭日イヨルティには間に合うだろう。



「何か悩んでるの?」
「あ、の…ショーウィンドウの時計が欲しくて…でも、お金が足りないので、また来ます」

「それなら、私があれ取っといてあげようか?男性用だし、大切な人にプレゼントするんでしょう?」



店員の彼女には、そう見透かされていた。



「素敵な時計で、着けたらきっと似合うんだろうなぁって思って……」
「うんうん、あなたもとっても素敵。待っているわ、また来てちょうだいね」



優しく笑う彼女を見て、当分の目標が出来た事に、胸が踊る様な私だった。
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