転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第二章 ギルド要請冒険者

#35 そう言えば

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「じゃ、あたしは帰るわ」
 話し終えた師匠は、やり終えた顔でそう言った。
「また遊びに行きますね」
「バーカ、修行に来るんだよ。お前はまだまだ未熟なんだから」
 いつものようにふてぶてしい笑顔を浮かべる師匠。
「ふふ……分かりました」
 大事な人が元気でいてくれるだけで幸せなものだ。フェーリエは、魔法で空を飛んでいくアンジェリカを見送りながらそう思った。
「あの魔法、君以外で使えるヒトが居たんだな」
 突然聞こえてきたユースの声にびっくりしながらも、振り返ったフェーリエは笑顔で説明する。
「あの魔法は私が師匠に教えたものですから。慣れるまで時間結構掛かりましたよ」
「そうか」
 ユースの雰囲気から、あれにどうやって慣れるんだ、という声が聞こえてきた様に思う。
「ところで、冷静になって考えてみたんだが……」
 ユースが歯切れ悪くそう言った。首を傾けさせ、フェーリエは言葉の続きを待つ。
「核への攻撃は、アンジェリカさんでも良かったんじゃないだろうか」
「…………あ」
 二人の間に、冷たい風が吹き抜ける。
「……そうですねぇ!そうですよぉ!槍には防腐剤が塗ってあるって、自分で言ってたじゃないですか!わざわざ魔力抵抗が発生するような剣を使わせるなんて!師匠ぉぉぉ!!」
 フェーリエの叫びに、村で作業をしていたヒトが驚きの表情振り向く。アンジェリカが帰った時点で、防音魔法は解かれているのだ。
 しかし、そんなことを気にしている暇はフェーリエにはない。
「槍の方がリーチがあるし、突きに特化してるし!何なら、足止めは『グラビティ』の方が効き目あったし!ほんと、もぉぉ、師匠ぉぉぉ!!」
 フェーリエは頭を抱えてうずくまった。そんなフェーリエに、事の発端の発言をしてしまったユースは、慌てふためきながらフォローの言葉を口にする。
「だ、だが、未熟な俺たちに経験を積ませるためだったのかもしれないだろう?」
 その言葉に、フェーリエは叫ぶことをやめ、顔を上げてユースをじっと見る。
「あの師匠が……そんなこと考えるはず有りません……考えていたとしても、2割ぐらいですよ」
 表情は詳しく分からないはずだが、フェーリエの剣幕に、ユースはたじろぐ。
「師匠の事だから、楽したかったからに決まってます……それなのに、魔石を半分も持って行っただなんて!」
 キングスライムを倒した後、核となっていた割れた魔石を回収したフェーリエ達は、配分を考えた。キングから回収される魔石の大きさは本来の大きさ(手のひら程)よりも遙かに大きい。今回の魔石はフェーリエが抱えなければ全て持ちきれない程の大きさだ。と言っても、攻撃したことで歪に割れてしまっているが。
「魔石のことはもう良いだろう。何にせよ、アンジェリカさんが剣を貸してくれなければ、勝つことは出来なかったんだから」
「そうですけど!なんか、悔しいじゃないですか!そう思わないんですか、剣士さん!」
「研究するわけでも、換金するわけでもない。俺自身には別に必要ではないからな。ただギルドに報告する際に、キングであると証明する手段として、考えている」
「剣士さんは真面目すぎますよぉ……はぁ、今度文句を言おう」
 フェーリエは、あれほど頑張った意味を考える。確かに良い経験ではあったが、アンジェリカの手の上で踊らされている様に思ってしまったのだ。
 気落ちしたまま、フェーリエはユースとともにギルドに報告しに戻った。

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