転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

文字の大きさ
88 / 185
第四章 魔導王国

#86 彼が従う理由

しおりを挟む
「うっわぁ。大きい……」
 フェーリエの目の前には、でかでかとした門が立ちはだかっていた。いかにもお偉いさんが住んでいそうな家の門だ。
『この門に張られた結界に合う条件が、魔力量300以上のヒトみたいでね。ご主人から魔力を借りてるだけの僕では通れなかったんだよ』
『私は魔力を持っている訳ではないので、通ることが出来ませんでした』
 ウルティムとアウラが申し訳なさそうに頭を下げる。
 元々ウルティムに魔力はあるはずだが、リッチになった際に魔力が邪気に置き換えられてしまった。それ以降に生成されるのは全て邪気。契約し、邪気を追い出したところで、直ぐに魔力を生成する体に戻れるわけでもない。肉体があるリッチだが、今では半幽霊の状態で漂えるのも、体が不安定な証拠だ。今はフェーリエの魔力で器を満たし、その力を使う。常に貸しているのが200程。フェーリエにとって痛くも痒くもないが、正直今回に至っては返して欲しかった。
「なるほどね。私が通れれば、皆も通れるのかしら」
『恐らくはね。範囲に含められるみたい』
 ウルティムの特殊な力として、魔法に付与された属性や条件を『視る』事が出来ると言うものがある。全てが未知な今、ウルティムの能力は非常に便利だ。
 フェーリエは目の前の門に手を触れ、前に押す。重厚な見た目とは裏腹に、思いの外すんなり門は開き、フェーリエを迎え入れる。
 結界を通る感覚がした後、急にユースが地面に蹲った。
「っ!?ユースさん!?大丈夫ですか!?」
 フェーリエが問いかけるも、ユースは何も答えない。ただ蹲って胸を押さえている。
『どうやら結界の影響を受けすぎたみたいだね。ご主人の結界で覆えば緩和されると思うよ』
 ウルティムの冷静な言葉に、フェーリエは慌ててユースの周りに魔法障壁を展開する。
 すると、ユースの呼吸が落ち着き、冷や汗も止まった。
「良かった……。ちょっと!そういう手があるなら先に言って頂戴よ!」
 ウルティムに向かって叫ぶ。初めから言ってくれれば、こうならずに済んだというのに。
「……視界が」
「視界が、どうしたんですか?」
 見える、小さく呟かれた言葉に、フェーリエはほっと息を吐いた。どうやら、守護結界の効果も緩和できたようだ。
「済まない。迷惑をかけた」
「いえいえ!お互い様ですから!!では、探索に移りましょうか」
 ユースを腕を取って、屋敷に向かって歩き出す。困惑した様子だったが、ユースは大人しくついてきてくれた。

『何故、あんな意地悪を?』
 アウラがウルティムに冷たく尋ねる。
『何故って、彼、何考えてるか分からないじゃない?ご主人があそこまで信じてると、逆に疑いたくなるってだけだよ』
 ヒトを疑うのはもはや癖だ。戦場でも、誰が敵で味方なのか、常に疑っていた。そのツケで精霊から睨まれようと、直せるものではない。
『フェーリエ様はそんなことを望んでいません。くれぐれも、勝手なことはしないように』
 ユースには決して聞こえないように、波長をずらして、ウルティムだけに聞かせる。過保護でフェーリエを愛しているアウラは、フェーリエに害する者に酷く厳しい。ユースはそんなアウラに気に入られているのだ。一体どういう違いなのか。
(理性を失いたくなかった。ドルミートを滅ぼしたくなかった。僕がフェーリエと契約したのはその理由からだ。それでも、フェーリエのことは気に入ってるんだけどなぁ。反応が面白いし、何より、魔力がたくさんあるし)
 少しでも楽しませて欲しい。その気持ちで、ウルティムは主人を見つめた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました

藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。 逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、 “立て直す”以外の選択肢を持たなかった。 領地経営、改革、そして予想外の縁。 没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。 ※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。

処理中です...