転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第四章 魔導王国

#113 昔のお話

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『……ニア!エテルニア!』
 親しく呼びかけられる声に少女は振り返った。小麦畑に負けない黄金の髪を風に任せ、澄み渡った青空のような瞳で自分に声を掛けた者を見る。振り返った少女に、男性の姿をしたものは優しく声を掛けた。
『どうしたんだ?なにかあったのか?』
 少女の様子がおかしいことが気になるのだろう。その目は心配とほんの少しの好奇心で満ちていた。
「なんでもありません。ガイア」
 エテルニアと呼ばれた少女がガイアに答える。深い苦悩を隠し、偽りの微笑みでガイアを拒むその姿は、酷く痛々しい。
『そう、か……』
 少女に頼りにされなかったことが残念だったのだろう。ガイアは分かりやすく肩を落とした。
 しかし気を取り直し、少女の手を引いてガイアは歩き出した。少女もそれを拒まず、黙って手を引かれていた。
 周りには二人以外に誰もいない。いや、実はいる。本当はここにはもう一人いるのだ。
(さっきと同じ風景。やっぱり、記憶を見せる感じの魔法ね)
 少女と神には見えていない、透明の状態で宙に浮くフェーリエは、腕を組んで二人を見下ろしていた。
 ここは『Abyss』と繋がった結果発動した魔法の空間。フェーリエは過去の状況をただ見せられ、干渉することを許されていない領域だ。
(ウルティム……いえ、魔神に邪魔されたけど、これを見てどう対処すべきか分かんないなぁ……)
 ユースやアウラには大丈夫と啖呵を切ったが、実際は全く答えは出ていない。そもそも干渉できないというのにどう探れと言うのか。フェーリエは頭を抱えた。
 フェーリエが悩んでいる間にも、二人は白亜の大理石で作られた神殿に到着していた。ここは二人が住む家らしい。神と、それに唯一生み出された特別な巫女。神聖な二人が住む場所だと、前回の記憶から分かっている。
(前は二時間ぐらいここにいたけど、向こうでは五分も経ってなかったし。時間的には余裕はあるはず!)
 正確な時間は分からないが、感覚で数えるとかなりの時差があった。時間に余裕はある。フェーリエは自分にそう言い聞かせた。
 ガイアは神殿の奥まで行くと、部屋の前で少女に笑いかける。
『お休み、エテルニア』
「お休みなさい、ガイア」
 外は夕方。まだ寝るには早い時間だがガイアは少女に休むようにと、笑いかける。それにぎこちない笑顔を返しながら、更に神殿の奥へ向かうガイアを、少女は大人しく見送った。ため息を尽きながら、少女は自分の部屋の扉を開けた。
 ギイィと扉が閉まる音がして、少女が扉の向こうに姿を消した。
 その少女を追って壁を通過しながら、フェーリエは思う。
(女王が言ってた、ガイアに作られた少女が、この子よね。神に無条件で愛される少女。欲深い人間が利用するのは仕方ないのかもなぁ)
 気持ちの悪い壁抜けを終えたフェーリエは、静かに少女を眺めた。如何にも聖女と言った清らかな性格をしていそうだ。神と人との間で迷い悩み、そして人に殺された少女。
 この二時間後、少女は村の人によって殺される。そこまで見て、フェーリエは現実に引き戻されたのだ。何というタイミングか。正しくアニメの続きが気になるような心境に久々になった。不謹慎だが。
(さっきはこの子の方ばっか見てたし、今回はいろんな所見てみようかな)
 視点は固定されておらず、フェーリエは自由に行動できる状態だ。常に宙を漂っているアウラの気持ちを考えつつ、フェーリエはガイアの方へ移動することにした。


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