転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第六章 舞踏会?いいえ今度こそ武闘会です

#146 第二試合

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「それでは第二試合です。『覆面ズ』ユース選手と『女神の使徒』クレメンス選手の戦いです!!」
 司会者アミウスの口上に合わせてユースは入場した。反対側からは、弓を背負った男が同じように入場していた。
 『女神の使徒』とはパーティーの名前だろうか。Bランクの弓使い。一見聖職者のような風体をしているが、そうではないだろう。聖職者は協会の活動以外ではあまり外に出られないのだから。
「それでは、どうぞ!」
 司会者の号令に、剣を鞘から抜く。弓を構えられる前に切り込むべきだろうか。
 木剣を使わなければならないルールはない。かといって過剰な攻撃は禁止されている。慣れ親しんだ獲物を使っても良いが、冒険者生命に影響が出るような怪我はさせるな、ということらしい。
 相手が降参するか、司会者が止めるような状態になれば決着は付く。
 最短で終わらせたいが、相手も同じBランクである以上そう簡単にはいかないだろう。
(一先ず距離を詰め……)
 動き出そうとしたユースは、相手の行動に動きを止めた。
 試合が始まったにも関わらず、クレメンスは弓を構えなかった。あろう事か祈りを捧げているのだ。
(な、んだ……これは。油断を誘っているのか?)
 あまりのことにユースはどうすべきか悩んだ。そして悩んでいるユースの耳に、彼の言葉が聞こえてきた。
「我らを守護せし全知全能なる女神よ、今日という良き日を迎えられた事に感謝を捧げます」
 どうやらパーティー名は側だけではなかったようだ。
(これは……やりづらい)
 純粋に女神に祈りを捧げている男を無慈悲に切り捨てられるほど、ユースは薄情ではない。
「ありがとうございます。祈りを捧げる時間を頂いて」
 動かない此方に気付いたクレメンスは丁寧に頭を下げた。
「あなた方は短時間の間にキングを二体も倒した有名な方々ですので、こうして手合わせが出来る事、光栄に思います」
「いや、あれは俺の力ではない。殆どもう一人の魔法使いの手柄だ」
「それでも、私は嬉しいので。では、よろしくお願いします」
 小さく微笑みを浮かべたクレメンスは、ようやく弓を構えた。
 ユースは地面を蹴り、一気に距離を詰めた。まずは弓を落とすため、手首を柄で狙う。
 クレメンスは距離を一気に詰められ驚いたようだが、直ぐに服のしたから短剣を取り出し投擲した。腰に差していたのだろう。
 剣の腹を相手に向ける。ルナの師匠から貰ったこの剣は、魔力を込めれば障壁が展開される。難なく短剣を弾き、ユースは彼の首元に刃を当てた。
 身じろぎすれば首が切れてしまう状態で、彼は両手を挙げた。
「降参です。流石ですね」
「……何故、本気を出さなかった?」
「本気を出していないのは貴方も同じですよね。弓と剣では私の方が分が悪かっただけの話です」
 クレメンスは負けたことに何も感じていない様だった。むしろ、喜んでいる様な気がする。
 降参の意を汲み取った司会者は、高らかにユースの名前を勝者として宣言した。
 彼の意図に不服を感じながらも、ユースはそれ以上聞けずに控え室に戻された。
 
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