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第七章 火竜討伐
#157 面倒な副団長
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「私は第三騎士団副団長、メディオ=グラディス。火竜討伐の指揮官を国王から命ぜられた。以後、私の命令には従うように」
王都から馬で四時間の平野に張られたテントの中で、男は偉そうにそう言った。地面に座らされている冒険者達は、皆「なんだこいつは」と言いたげな顔で男を見る。
兄から話には聞いていたが予想以上に面倒臭そうな男で、フェーリエの頬はピクピクと痙攣する。
フェーリエ達は、闘技場から馬に乗って走らされた。救護室に運ばれていたグレッグ達も、動けるならば、と馬に乗せられた。乗る際にユースから心配されたフェーリエだったが、乗馬はそこそこ自信がある。ブランクはあるが。
「今回はここで野営をする。二人ペアを組んで火の番をしろ」
「ちょっと待った。おたくの所の騎士は番をしないのか?」
グレッグが片手を上げてメディオの言葉に反抗する。討伐部隊はトーナメントに残った冒険者八人だけではない。第三騎士団の恐らく精鋭二十人がここにはいる。彼らはまるで協力をしないかのような物言いに、冒険者達の目つきが鋭くなる。
「当然だ。火竜討伐を国から任せられたのは我ら第三騎士団。たかが冒険者ごときが参加するのであれば、我らをサポートするのが筋だろう」
言葉に頭が痛くなる。どうしてこうも身勝手なのか。そもそも此方は強制的に連れてこられたのであって、自主的に参加しようとしていたのではない。確かにフェーリエとユースは討伐隊に入ることを目標にはしていたが、そうではない者達の方が多い。
フェーリエの隣では、アルスが憤慨したように腕を組んでいる。相当お怒りのようだ。だが、国からの要請である以上、表だって騒動は起こせない。そう、国からの要請だ。彼の言っていることは間違っている。ここにいる冒険者他達にも、正式に国から要請が降りているのだ。対等の立場でなければ可笑しい。
「話は以上だ」
有無を言わせぬ態度で、メディオは出て行った。
後に残ったのは、苛立ちを通り越して呆れ果てた冒険者達。
「……取り敢えず、見張りどうしますか?」
「トーナメントの時のペアで良いんじゃない?」
沈黙を破ったフェーリエに答えたのは、溜息を吐いたアルスだった。それで良いのか周りに聞こうとすると、彼が視線を集めている事に気がついた。
「嬢ちゃん……こんな男前トーナメントにいたか?」
グレッグが代表してフェーリエに問いかける。ああ、彼の姿が変わっているため誰か分からなかったのか。説明しようとしたフェーリエを手で制止し、彼自身が口を開いた。
「あたしはアルスよ。前は訳あって女の姿をしてたけど、こっちが本当の姿なの。口調はなかなか戻らないけど」
「ああ、なるほど?」
事情を知っていたクローとエルゴー、そしてフェーリエ以外がよく分からないと言った顔で頷く。取り敢えずトーナメントにいた美女だったと理解したのだろう。
「初めはあたしとエルゴーが番をするわ。あんた達は休んでなさい」
アルスの言葉に、皆が頷いた。
王都から馬で四時間の平野に張られたテントの中で、男は偉そうにそう言った。地面に座らされている冒険者達は、皆「なんだこいつは」と言いたげな顔で男を見る。
兄から話には聞いていたが予想以上に面倒臭そうな男で、フェーリエの頬はピクピクと痙攣する。
フェーリエ達は、闘技場から馬に乗って走らされた。救護室に運ばれていたグレッグ達も、動けるならば、と馬に乗せられた。乗る際にユースから心配されたフェーリエだったが、乗馬はそこそこ自信がある。ブランクはあるが。
「今回はここで野営をする。二人ペアを組んで火の番をしろ」
「ちょっと待った。おたくの所の騎士は番をしないのか?」
グレッグが片手を上げてメディオの言葉に反抗する。討伐部隊はトーナメントに残った冒険者八人だけではない。第三騎士団の恐らく精鋭二十人がここにはいる。彼らはまるで協力をしないかのような物言いに、冒険者達の目つきが鋭くなる。
「当然だ。火竜討伐を国から任せられたのは我ら第三騎士団。たかが冒険者ごときが参加するのであれば、我らをサポートするのが筋だろう」
言葉に頭が痛くなる。どうしてこうも身勝手なのか。そもそも此方は強制的に連れてこられたのであって、自主的に参加しようとしていたのではない。確かにフェーリエとユースは討伐隊に入ることを目標にはしていたが、そうではない者達の方が多い。
フェーリエの隣では、アルスが憤慨したように腕を組んでいる。相当お怒りのようだ。だが、国からの要請である以上、表だって騒動は起こせない。そう、国からの要請だ。彼の言っていることは間違っている。ここにいる冒険者他達にも、正式に国から要請が降りているのだ。対等の立場でなければ可笑しい。
「話は以上だ」
有無を言わせぬ態度で、メディオは出て行った。
後に残ったのは、苛立ちを通り越して呆れ果てた冒険者達。
「……取り敢えず、見張りどうしますか?」
「トーナメントの時のペアで良いんじゃない?」
沈黙を破ったフェーリエに答えたのは、溜息を吐いたアルスだった。それで良いのか周りに聞こうとすると、彼が視線を集めている事に気がついた。
「嬢ちゃん……こんな男前トーナメントにいたか?」
グレッグが代表してフェーリエに問いかける。ああ、彼の姿が変わっているため誰か分からなかったのか。説明しようとしたフェーリエを手で制止し、彼自身が口を開いた。
「あたしはアルスよ。前は訳あって女の姿をしてたけど、こっちが本当の姿なの。口調はなかなか戻らないけど」
「ああ、なるほど?」
事情を知っていたクローとエルゴー、そしてフェーリエ以外がよく分からないと言った顔で頷く。取り敢えずトーナメントにいた美女だったと理解したのだろう。
「初めはあたしとエルゴーが番をするわ。あんた達は休んでなさい」
アルスの言葉に、皆が頷いた。
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