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第八章 世界の変化
#179 兄妹の会話
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「ルナさん……大丈夫でしょうか」
シャーロットが小さく呟いた。何と返せば良いか分からず、ユスティアは握った手に目線を落とした。
ユスティアとシャーロットは、ルナと共に命令を受け海の上にいた。
ルナは自分の行動が国同士の火種になってしまった事を悔いている。本人にそのつもりが無かったのだからなおのこと。それに加えて王族二人を連れての旅だ。相当の重圧を感じている事だろう。
「伯爵も、あれほど落ち込んでいる娘を旅に出したくは無かったでしょうに」
シャーロットの言葉に、クラヴィス伯爵家へ訪れた時の事を思い出す。
ユスティア達は、命令を受けてからまずクラヴィス伯爵家へ向かった。ユスティア達は城で旅支度を調えられたが、ルナはそうでは無かったからだ。
王からある程度の説明は受けていたらしく、伯爵は帰還した娘を厳しい表情で出迎えた。国の平和を乱してしまうも同然の行為に、愛国心の高い伯爵は複雑な心境だっただろうが、項垂れて謝る娘をただただ無言で抱きしめた。
父親との親子らしい触れ合いの記憶が無いユスティアは、泣きながらも安堵するルナの心境を理解することは出来なかった。そんなユスティアにシャーロットは『王は父親ではいられない職業ですから』と言って笑った。
伯爵は最後までユスティア達の前で娘を守る行動は取らなかった。それが彼なりの線引きだったのだろう。
クラヴィス伯爵領の港から海に出ても、ルナは顔を伏せるばかりだった。今も甲板で頭を冷やしたいからと一人でいる。
部屋で待機しているユスティアとシャーロットは、ルナが戻ってくるのを待っていた。
「……俺たちに出来る事は無い。待つしか無いだろう」
「お兄様は冷たいですね。そんな状態ではルナさんは振り向いてくれないかも知れませんよ?」
「大きなお世話だ」
シャーロットはクスクスと笑う。ルナへの想いを知られたときから、シャーロットはこうしてからかってくるのだ。この異母妹との旅は溜息が多くなりそうだ。
「今回の事、知っていたのか?」
笑っている妹に溜息と共に質問を投げかける。この妹はいつも知っている。どうやって知っているのかは分からないが、話していないことも知っている。まだ小さい頃から大人の話に加わっていたり、誰も知らない新しいものを生み出したりしていた。
「……知ってはいませんよ。私は未来を知ることは出来ませんから。ただ、ある程度予測は付いていました」
「そうか」
「止めなかったこと、怒らないんですか?」
シャーロットはユスティアが怒ると思っていたようだ。確かにシャーロットが契約をした場合の結果をルナに伝えていれば、彼女はこれ程抱え込むことにはならなかっただろう。それでも、ユスティアはシャーロットは怒れなかった。
「俺も同罪だ。彼女のこれまでの行動からして、契約する事は分かっていた。それでも俺は止めなかった。お前と一緒だ」
「あら、こんなことでおそろいになるなんて嫌ですけど」
嫌だと言いながらも、シャーロットは笑った。止めなかった理由が、恐らく一緒なのだろう。
「何故でしょうね。あの子には……」
「「好きなようにして欲しい」」
異口同音に発せられた言葉に、ユスティアとシャーロットは顔を見合わせて笑った。
自由に伸び伸びと、したいように行動して欲しい。彼女と会って直ぐの妹が自分と同じ感情を抱いたことが可笑しく、ルナが扉を叩くまで二人で笑っていた。
シャーロットが小さく呟いた。何と返せば良いか分からず、ユスティアは握った手に目線を落とした。
ユスティアとシャーロットは、ルナと共に命令を受け海の上にいた。
ルナは自分の行動が国同士の火種になってしまった事を悔いている。本人にそのつもりが無かったのだからなおのこと。それに加えて王族二人を連れての旅だ。相当の重圧を感じている事だろう。
「伯爵も、あれほど落ち込んでいる娘を旅に出したくは無かったでしょうに」
シャーロットの言葉に、クラヴィス伯爵家へ訪れた時の事を思い出す。
ユスティア達は、命令を受けてからまずクラヴィス伯爵家へ向かった。ユスティア達は城で旅支度を調えられたが、ルナはそうでは無かったからだ。
王からある程度の説明は受けていたらしく、伯爵は帰還した娘を厳しい表情で出迎えた。国の平和を乱してしまうも同然の行為に、愛国心の高い伯爵は複雑な心境だっただろうが、項垂れて謝る娘をただただ無言で抱きしめた。
父親との親子らしい触れ合いの記憶が無いユスティアは、泣きながらも安堵するルナの心境を理解することは出来なかった。そんなユスティアにシャーロットは『王は父親ではいられない職業ですから』と言って笑った。
伯爵は最後までユスティア達の前で娘を守る行動は取らなかった。それが彼なりの線引きだったのだろう。
クラヴィス伯爵領の港から海に出ても、ルナは顔を伏せるばかりだった。今も甲板で頭を冷やしたいからと一人でいる。
部屋で待機しているユスティアとシャーロットは、ルナが戻ってくるのを待っていた。
「……俺たちに出来る事は無い。待つしか無いだろう」
「お兄様は冷たいですね。そんな状態ではルナさんは振り向いてくれないかも知れませんよ?」
「大きなお世話だ」
シャーロットはクスクスと笑う。ルナへの想いを知られたときから、シャーロットはこうしてからかってくるのだ。この異母妹との旅は溜息が多くなりそうだ。
「今回の事、知っていたのか?」
笑っている妹に溜息と共に質問を投げかける。この妹はいつも知っている。どうやって知っているのかは分からないが、話していないことも知っている。まだ小さい頃から大人の話に加わっていたり、誰も知らない新しいものを生み出したりしていた。
「……知ってはいませんよ。私は未来を知ることは出来ませんから。ただ、ある程度予測は付いていました」
「そうか」
「止めなかったこと、怒らないんですか?」
シャーロットはユスティアが怒ると思っていたようだ。確かにシャーロットが契約をした場合の結果をルナに伝えていれば、彼女はこれ程抱え込むことにはならなかっただろう。それでも、ユスティアはシャーロットは怒れなかった。
「俺も同罪だ。彼女のこれまでの行動からして、契約する事は分かっていた。それでも俺は止めなかった。お前と一緒だ」
「あら、こんなことでおそろいになるなんて嫌ですけど」
嫌だと言いながらも、シャーロットは笑った。止めなかった理由が、恐らく一緒なのだろう。
「何故でしょうね。あの子には……」
「「好きなようにして欲しい」」
異口同音に発せられた言葉に、ユスティアとシャーロットは顔を見合わせて笑った。
自由に伸び伸びと、したいように行動して欲しい。彼女と会って直ぐの妹が自分と同じ感情を抱いたことが可笑しく、ルナが扉を叩くまで二人で笑っていた。
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