世にも奇妙なお話し

柳原 智

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記憶の壁

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私は目覚めると、いつも同じことをする。壁に貼られたメモや写真を見る。それらは私の記憶だ。私は、一週間前までのことしか覚えていない。それ以前のことは、すべて忘れてしまう。医者に診てもらっても、原因はわからないと言われる。だから、私は自分で自分の過去を残すことにした。壁にメモや写真を貼っていくことで、自分がどんな人生を歩んできたかを思い出すことができる。
壁には、私の名前や年齢、家族や友人の顔や名前、仕事や趣味など、私にとって大切なことが書かれている。それらを見ることで、私は自分のアイデンティティを保つことができる。しかし、それだけでは不十分だ。私は、自分の記憶がなぜリセットされるのか、その原因や治療法を知りたい。だから、私は壁にもう一つのメモを貼った。それは、「記憶を奪った犯人を探せ」というメッセージだった。
私は、自分の記憶がリセットされる前に、何か手がかりを見つけられないかと思った。もしかしたら、私の記憶を奪った犯人が存在するのかもしれない。その犯人が誰なのか、どうやって私の記憶を消したのか、どういう目的があるのか、それらを突き止めることができれば、私はこの呪われた状況から解放されるかもしれない。だから、私は毎日、外出して色々な場所や人に話しかけてみた。しかし、一週間が経つと、その記憶も消えてしまう。私はまた最初からやり直さなければならない。
そんな日々が続いていたある日のことだった。私は目覚めると、壁に貼られたメモや写真が全て消えていることに気づいた。私は驚いて立ち上がった。壁は真っ白だった。私の記憶が書かれた紙切れや写真はどこにも見当たらなかった。私はパニックに陥った。これでは私は自分が誰なのかもわからなくなってしまう。私は必死に部屋中を探したが、何も見つからなかった。
私は怒りと恐怖に震えた。私の記憶を奪った犯人が、私の部屋に侵入して、壁に貼られたものを全て持ち去ったのだと思った。私は、その犯人に復讐することを誓った。私は、自分の記憶が残っているうちに、その犯人を見つけ出すことにした。私は、壁に新しいメモを貼った。それは、「犯人を見つけろ」というメッセージだった。
私は、自分が知っている人や場所に電話したり訪ねたりした。しかし、誰も私のことを覚えていなかった。私は、自分が存在しないかのように扱われた。私は混乱した。私は本当にこの世界に存在するのだろうか。私は自分の名前や住所を確認しようとしたが、それらも壁に貼られていたものだった。私は自分の身分証明書やクレジットカードなどを探したが、それらもなくなっていた。私は何も持っていなかった。
私は途方に暮れた。私はどこに行けばいいのだろうか。私は誰に助けを求めればいいのだろうか。私は何をすればいいのだろうか。私は自分の記憶が消える前に、何かしらの答えを見つけなければならないと思った。私は、自分の記憶がリセットされる原因や方法を知る人がいないかと考えた。そうだ、医者だ。私は医者に診てもらったことがあるはずだ。医者なら、私の症状について何か知っているかもしれない。
私は、壁に貼られていたメモから覚えている医者の名前や住所を思い出そうとした。しかし、それも難しかった。私は何度も頭の中で繰り返したが、曖昧な記憶しか浮かばなかった。しかし、私は諦めなかった。私は、その曖昧な記憶を頼りに、医者のオフィスを探し始めた。
私は何時間も歩き回ったが、目的地に辿り着けなかった。私は迷子になってしまった。私は周囲の人に道を尋ねようとしたが、誰も相手にしてくれなかった。私は孤立してしまった。私は涙がこぼれるのを感じた。
そんなとき、ふと目に入った看板があった。それは、「記憶喪失治療センター」という文字が書かれている看板だった。私は驚いてその看板を見つめた。これは偶然ではないと思った。これは運命だと思った。このセンターなら、私の記憶喪失について何かわかってくれるかもしれないと思った。
私は迷わずそのセンターに向かった。センターの入り口に着くと、ドアが自動的に開いた。中から明るい声が聞こえてきた。「ようこそ、記憶喪失治療センターへ」という声だった。

私はその声に従ってセンターの中に入った。中は白い壁と床で、清潔で明るい雰囲気だった。私は受付に近づいた。そこには、笑顔の女性が座っていた。「こんにちは、あなたは初めてですか?」と女性が聞いた。「はい、そうです」と私は答えた。「記憶喪失治療センターという看板を見て、興味がありました」と私は付け加えた。「そうですか。それなら、まずはこちらにお名前と連絡先を記入してください」と女性が言って、私に紙とペンを渡した。
私は紙を見た。そこには、「記憶喪失治療センター 利用者登録フォーム」と書かれていた。私は自分の名前や連絡先を書こうとしたが、それらを思い出せなかった。私は困って女性を見た。「すみません、私は自分の名前や連絡先を忘れてしまったんです」と私は言った。「えっ、本当ですか?それは大変ですね」と女性が驚いて言った。「それなら、あなたは記憶喪失の症状があるんですね」と女性が言って、紙とペンを取り上げた。「それなら、こちらにお名前と連絡先を記入してください」と女性が言って、別の紙とペンを渡した。
私はその紙を見た。そこには、「記憶喪失治療センター 記憶喪失者登録フォーム」と書かれていた。私は不思議に思った。「これは何ですか?」と私は聞いた。「これは、記憶喪失の症状がある方のための登録フォームです」と女性が答えた。「こちらにお名前と連絡先を記入していただくと、当センターの専門医があなたの記憶喪失の原因や治療法について診断してくれます」と女性が言った。「本当ですか?それなら、ぜひお願いします」と私は言って、紙に自分の名前や連絡先を書こうとした。
しかし、そのとき、私は何かがおかしいと感じた。私は紙をよく見た。そこには、「お名前:」と「連絡先:」という欄があったが、その下には、「同意書:」という欄もあった。その欄には、「私は記憶喪失治療センターの専門医による診断や治療を受けることに同意します。また、その過程で発生する可能性のあるリスクや副作用についても承知しました」と書かれていた。
私は驚いて女性を見た。「これは何ですか?リスクや副作用って何ですか?」と私は聞いた。「ああ、それはご心配なく」と女性が笑って言った。「当センターでは、最新の技術を用いて記憶喪失の原因や治療法を探っています。その技術は非常に効果的ですが、まだ完全に安全とは言えません。そのため、ごく稀にリスクや副作用が発生することがあります」と女性が説明した。「リスクや副作用とは具体的にどんなものですか?」と私は尋ねた。「それは、例えば、記憶喪失が悪化したり、記憶が混乱したり、記憶が操作されたりすることです」と女性が言った。
私は恐怖に震えた。私はその紙を手から放した。「そんなことは絶対に嫌です」と私は叫んだ。「私はここから出て行きます」と私は言って、センターを出ようとした。しかし、そのとき、ドアが閉まってしまった。私はドアを開けようとしたが、鍵がかかっていた。私は受付の女性を見た。「開けてください」と私は言った。「すみません、それはできません」と女性が言った。「あなたは記憶喪失者登録フォームにサインをしました。それは、当センターの診断や治療を受けることに同意したことを意味します」と女性が言った。
私は呆然とした。「サイン?私はサインなんてしていません」と私は言った。「いいえ、あなたはサインをしました」と女性が言った。「こちらにあなたのサインがあります」と女性が言って、紙を見せた。そこには、「お名前:」と「連絡先:」の欄に私の名前や連絡先が書かれていた。そして、「同意書:」の欄には、「同意します」という文字と私のサインが書かれていた。
私は信じられなかった。「これは嘘です。私はこんなものにサインなんてしていません」と私は言った。「いいえ、これは本当です。あなたは自分でサインをしました」と女性が言った。「あなたは記憶喪失の症状があるから、忘れてしまっただけです」と女性が言った。
私は怒りと絶望に満ちた。「これは罠です。あなたたちは私の記憶を奪った犯人です」と私は言った。「いいえ、そんなことはありません。あなたの記憶を奪った犯人ではありません。あなたの記憶を取り戻す手助けをする味方です」と女性が言った。「それでは、どうして私を閉じ込めるんですか?どうして私を無理やり診断や治療を受けさせようとするんですか?」と私は言った。「それは、あなたの記憶喪失の原因や治療法を探るためです。あなたの記憶喪失には特別な理由があります。それを知ることで、あなたの記憶喪失を解決することができます」と女性が言った。
「特別な理由?それは何ですか?」と私は聞いた。「それは、あなただけに関係する秘密です。それを教えることはできません。あなただけが自分で発見することができます」と女性が言った。「では、どうすれば発見できるんですか?」と私は聞いた。「それは、当センターの専門医による診断や治療を受けることです」と女性が言った。「当センターの専門医は、あなたの記憶喪失の原因や治療法について詳しく知っています。彼らは、あなたの記憶を取り戻すために必要なことをしてくれます」と女性が言った。
私は信用できなかった。「それは嘘だと思います。あなたたちは私の記憶を取り戻すつもりはないと思います。あなたたちは私の記憶をさらに奪ったり、操作したりするつもりだと思います」と私は言った。「いいえ、そんなことはありません。あなたの記憶を奪ったり、操作したりするつもりはありません。あなたの記憶を取り戻すつもりです」と女性が言った。「それでは、どうして私に選択肢を与えないんですか?どうして私に自由に出て行かせないんですか?」と私は言った。「それは、あなたが逃げてしまうかもしれないからです。あなたが逃げてしまうと、あなたの記憶喪失は解決できません。あなたの記憶喪失は解決しなければならないのです」と女性が言った。
私は納得できなかった。「私は逃げません。私は自分で記憶喪失の原因や治療法を探します」と私は言った。「それは無駄です。あなたは自分で記憶喪失の原因や治療法を探すことはできません。あなただけでは、その秘密を解き明かすことはできません」と女性が言った。「では、どうしてあなただけがその秘密を知っているんですか?どうしてあなただけがその秘密を教えてくれるんですか?」と私は言った。「それは、あなただけに関係する秘密だからです。それを教えることはできません。あなただけが自分で発見することができます」と女性が繰り返した。
私は怒りと不安に苛まれた。「これ以上話しても無駄だと思います。あなたは私に何も教えてくれません。あなたは私を騙しているだけだと思います」と私は言った。「いいえ、そんなことはありません。あなたを騙しているわけではありません。あなたを助けているわけです」と女性が言った。「それでは、どうして私を信用させる方法がないんですか?どうして私に証拠や保証がないんですか?」と私は言った。「それは、あなただけに関係する秘密だからです。それを証明することはできません。あなただけが自分で確信することができます」と女性が言った。
私は絶望した。「もう何も聞きたくありません。もう何も信じられません。もう何も望みません」と私は言った。「ただ一つだけ望みます。ここから出してください」と私は言った。
しかし、女性は首を振った。「それはできません。あなたはここから出ることはできません。あなたはここで記憶喪失の原因や治療法を探ることができます」と女性が言った。「それでは、どうすればいいんですか?」と私は言った。「それは、当センターの専門医による診断や治療を受けることです」と女性が言った。「それは嫌です」と私は言った。「それは仕方ありません。あなたはもう選択肢がありません。あなたはもう逃げられません」と女性が言った。
そのとき、ドアの向こうから足音が聞こえてきた。私はドアの方を見た。そこには、白衣を着た男性が現れた。「こんにちは、私は記憶喪失治療センターの専門医です。あなたの名前は何ですか?」と男性が聞いた。
私は答えなかった。私は黙って男性を見つめた。男性は笑って言った。「あなたは記憶喪失の症状があるから、名前を忘れてしまったんですね。それなら、私が教えてあげましょう。あなたの名前は、山田太郎です!

私は驚いて男性を見た。「山田太郎?それが私の名前ですか?」と私は聞いた。「はい、それがあなたの名前です」と男性が言った。「あなたは、このセンターの常連患者です。あなたは、何度もこのセンターに来て、記憶喪失の診断や治療を受けています」と男性が言った。
私は信じられなかった。「常連患者?何度も来ている?そんなことはありません。私は初めてこのセンターに来ました」と私は言った。「いいえ、そんなことはありません。あなたは何度も来ています。あなたは記憶喪失の症状があるから、そのことを忘れてしまっているだけです」と男性が言った。
私は怒りと不安に苛まれた。「どうして私の名前を知っているんですか?どうして私が何度も来ていると言うんですか?」と私は言った。「それは、私があなたの担当医だからです」と男性が言った。「私はあなたの記憶喪失の原因や治療法について詳しく知っています。私はあなたの記録を持っています」と男性が言った。
私は不信感を抱いた。「私の記録?それを見せてください」と私は言った。「すみません、それはできません」と男性が言った。「あなたの記録は機密事項です。それを見せることはできません」と男性が言った。
私は納得できなかった。「機密事項?それは何ですか?それは私に関することではありませんか?」と私は言った。「それは、あなただけに関係する秘密です。それを教えることはできません。あなただけが自分で発見することができます」と男性が言った。

私は怒りと絶望に満ちた。「もう何も聞きたくありません。もう何も信じられません。もう何も望みません」と私は言った。「ただ一つだけ望みます。ここから出してください」と私は言った。
しかし、男性は無視した。「さあ、早く行きましょう」と男性が言って、私の腕を掴んだ。「手を離してください」と私は言って、男性の手を振り払おうとした。しかし、男性の手は強くて、振り払えなかった。「やめてください」と私は叫んだ。「助けてください」と私は叫んだ。
しかし、誰も助けてくれなかった。受付の女性は笑って見ていた。「ごめんなさいね、山田さん」と女性が言った。「でも、これはあなたのためですよ」と女性が言った。「あなただけに関係する秘密を知ることで、あなただけが自分で発見することができます」と女性が言った。
私は泣いた。「どうしてこんなことをするんですか?どうして私をこんな目に合わせるんですか?」と私は言った。「それは、あなただけに関係する秘密です。それを教えることはできません。あなただけが自分で発見することができます」と男性と女性が同時に言った。
そして、彼らは笑った。彼らの笑顔は邪悪だった。彼らの笑顔は残酷だった。彼らの笑顔は恐ろしかった。
私は叫んだ。「助けてください!」と私は叫んだ。
しかし、誰も聞いてくれなかった。
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