追放された無能令嬢、実は転生賢者でした――王国が滅びてももう知りません

タマ マコト

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第5話 無能の正体と、奪われていた人生

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 帝国の朝は、静かなくせに目が覚める音がする。

 アストレイア王国の朝はもっと柔らかかった。侍女たちの足音も、カーテンを開ける仕草も、どこか“令嬢の一日”に合わせて整えられていた。けれどヴァルディオン帝国の研究棟の朝は違う。規則正しい鐘の音。遠くの廊下を行く靴音。窓の外で交代する見張りの短い報告。眠りの続きを許さない、仕事の国の朝だった。

 リリアは薄く目を開け、しばらく天井を見つめた。

 白い石の天井。簡素な装飾。昨日と同じ、冷静な部屋。

 なのに身体の内側は、昨日と同じではなかった。

 胸の奥にある魔力は、相変わらず巨大で、深く、静かだった。嵐の中心だけが妙に澄みきっているみたいに、不気味な落ち着きがある。拘束具はまだ両手首と両足首に嵌められたままだが、昨日より少しだけ、魔力の流れを“感じ取れる”ようになっていた。

 自分の身体の中を流れる見えない河を、指先でなぞるみたいに。

「……気持ち悪いくらい、よく分かる」

 呟くと、声が思ったよりはっきり出た。

 寝台から起き上がる。少しだけ眩暈はある。でも、昨日のような制御不能の熱ではない。痛みの代わりに、理解の輪郭がじわじわ広がっている感覚だ。

 扉が叩かれた。

「失礼します」

 入ってきたのは昨日の女性研究員だった。真面目そうな茶髪をきっちり結い上げ、書類束を抱えている。

「朝食と、本日の予定です」 
「予定」 
「首席からの指示で、古文書庫への同行許可が出ました」 
「古文書庫?」

 意外で、リリアは瞬きをした。

「検査の続きではなく?」 
「それもあります。ただ、昨夜の解析であなたの術式が星辰系古代魔法と深く関係していると判明しましたので、記録との照合を優先することになりました」 
「なるほど。資料を当たれ、と」 
「端的に言えばそうです」

 女性研究員は机に盆を置く。簡素だが温かいスープとパン、果物が少し。囚人食みたいに粗末ではなく、客用ほど贅沢でもない、その中間の扱いだった。

「首席と皇子殿下は、あなたが文字を読める前提で話を進めています」 
「読めますよ。一応」 
「古代文字も?」 
「断片的には。昨日から、勝手に意味が流れ込んでくる感じです」

 女性研究員は表情を変えなかったが、目だけ少し動いた。たぶん、内心ではかなり驚いている。

「……では、朝食後に迎えが来ます」 
「ありがとうございます」 
「礼を言われることでは」 
「ちゃんと人として会話してくれるので」

 その言葉に、彼女はほんの少しだけ目を伏せた。

「私たちは研究者ですから。対象の安定は、こちらの利益でもあります」 
「そういう言い方、帝国らしいですね」 
「嫌いですか」 
「嫌いじゃないです。嘘じゃないので」

 彼女はそれには答えず、軽く一礼して部屋を出た。

 朝食を終えた頃、迎えに来たのはカイルだった。

 黒を基調にした軍装に、今日は外套を羽織っていない。無駄のない服装のせいで、かえって体格の良さが目立つ。黄金の瞳は相変わらず冷たいのに、朝の光を受けると硬貨みたいに鋭く光った。

「皇子殿下が案内役ですか」 
「不満か」 
「いえ。古文書庫って、もっと埃っぽい老人が来る場所かと思ってました」 
「エドガーにはあとで伝えておく」 
「やめてください。絶対面倒なことになります」

 ほんの少しだけ、カイルの口元が動いた。

「歩けるか」 
「一応」 
「無理はするな。古文書庫の封印層は、君の記憶に反応する可能性がある」 
「それ、行く前に聞くとちょっと怖いですね」 
「怖がる程度の理性があるならまだましだ」

 廊下を歩きながら、リリアは手首の拘束具を見下ろした。

「これ、つけたままですか」 
「外した方がいいと思うか?」 
「思いません」 
「ならそのままだ」

 即答だった。

 でも、嫌ではない。この人は“信用していない”ことを曖昧に優しさで包まない。だからこちらも、変に期待しなくて済む。

 古文書庫は研究棟のさらに奥、地下へ続く階段の先にあった。

 空気が変わる。乾いた紙と古い革、封印用香木の匂い。石壁にはびっしりと細い術式が刻まれ、一定間隔で淡い青光を放つ水晶が埋め込まれている。

 巨大な円形の扉の前に立つと、待っていたエドガーが振り返った。

「遅いぞ、皇子殿下」 
「お前が早すぎる」 
「知識を前にしてのんびりできるほど老いておらん」

 老魔導師の目は朝からぎらぎらしていた。隣には数人の研究員が控え、机の上にはすでに文書や計測器が並べられている。

「おはようございます、首席」 
「朝の挨拶ができる危険因子は貴重だな」 
「褒め言葉として受け取っておきます」

 エドガーは喉の奥で小さく笑い、扉に手をかざした。

 重い封印音とともに扉が開く。

 その向こうに広がっていたのは、まるで時間そのものを積み上げたみたいな空間だった。

 高い天井まで届く書架。巻物、古書、石板、金属板、魔法記録水晶。古いものほど奥へ、危険なものほど深層へ収められているのが一目で分かる。薄暗いはずなのに、光水晶の反射で文字だけが静かに浮かび上がり、空気の中に知識の気配が沈殿していた。

 リリアは足を踏み入れた瞬間、喉の奥がかすかに震えるのを感じた。

 懐かしい。

 そんなはずないのに、そう思った。

「……知ってる、匂い」

 無意識に零れた言葉に、エドガーとカイルが視線を向ける。

「何だと?」 
「たぶん、古い羊皮紙と保存樹脂、それから……星辰香。記憶保持用の香木ですよね」 
「正解だ」

 エドガーの目が細くなる。

「現代の魔導師で即答できる者はそう多くない」 
「私も、さっきまで知らなかったはずなんですけど」

 頭の奥で、また小さな扉が開いた感覚がした。

 長い机の前に座らされ、エドガーが数冊の古書を運んでくる。その表紙にはアストレイア王国でもヴァルディオン帝国でもない、もっと古い時代の紋章が刻まれていた。

「まずはこれだ。星律結界原論・第一稿写本」 
「……星律結界」

 その言葉だけで、心臓が一度強く打つ。

 アストレイア王国を守る結界の名だ。

「君の術式波形と、この理論体系の基礎構造が一致している」 
「一致」 
「見れば分かる」

 恐る恐る、本を開く。

 古い文字の並び。普通なら読めないはずの筆記。なのに、視界に入った瞬間、それが意味を持って流れ込んでくる。

 星律結界は、防御結界ではない。

 正しくは、広域魔力流制御式封環。

 大地の星脈を束ね、外殻を守ると同時に、中心部の魔力圧を逃がさず封じるための環。

 リリアの指先がページの上で止まる。

「……封じる?」 
「読めるか」 
「はい。これ、国土を守るための結界じゃない。もちろん防壁の役目もあるけど、本質は別です」 
「続けろ」 
「内側の……何かを、押さえ込む構造になってる」

 言葉にした瞬間、頭の奥に閃光が走った。

 巨大な術式環。 
 その下で脈動する黒い穴。 
 自分の手が、そこへ新しい線を描き足していく。

 息が浅くなる。

「リリア」

 カイルの低い声が現実へ引き戻す。

「呼吸を整えろ」 
「……はい」

 一拍おいてから、続きを追う。

 著者名の欄に視線が滑った瞬間、指先が凍った。

 そこに記されていたのは、今ではどこの歴史書にも主名として残っていない、失われた古代名。

 ——リィ=アステル。

 読んだ瞬間、それが誰なのか、理屈ではなく分かってしまった。

 自分だ。

 前世の、自分。

「っ……」

 本の端を掴む指に力が入る。

「何が書いてある」 
「著者……設計者の名前
です」 
「読めるのか」 
「はい」 
「誰だ」 
「……私、です」

 沈黙が落ちた。

 研究員たちが息を呑む音すら、やけに大きく聞こえる。

 エドガーがゆっくりと本を閉じかけたリリアの手元を見つめた。

「確証は」 
「あります。理屈じゃなくて、わかるんです」 
「記憶の断片か」 
「たぶん。これを書いた時の感覚が……少しだけ」

 ページの上の文字が、ただの記録じゃなくなる。これは他人の研究成果じゃない。自分が必死で積み上げた痕跡だ。書き癖まで分かる気がする。ここで一度筆が止まって、次の行で書き直していることまで、なぜか伝わってくる。

 リリアは次のページをめくる。

 構造図。魔力流路。接続点。補助術式。

 その中心部にある小さな注釈を読んだ瞬間、身体の芯が冷えた。

「……接続核、適合者一名による循環補助、恒常維持」

 声が掠れる。

「何だ?」 
「これ……結界は完全自立式じゃない」 
「つまり?」 
「定期的な接続核が必要なんです。大地の星脈だけじゃ足りない。適合する個体を介して、微調整し続けなきゃいけない」

 エドガーが表情を変えた。

「人間を媒介にする構造か」 
「はい。でも表の理論では伏せてある。王国の外向け文書に出せる内容じゃないから」 
「接続核の条件は」 
「高い適合率、星辰系術式との親和、設計者の系譜——」

 そこまで読んで、喉が詰まる。

 系譜。

 前世の自分が設計し、その術式の流れを血に残したなら。

 エルフェリア家はただの名門貴族じゃない。

 結界の維持に適応するために続いてきた家系。

 その中心にいた自分。

 そこまで思考が繋がった瞬間、さらに別の断片が落ちてきた。

 薄暗い部屋。 
 赤子を抱く女。 
 その額に自分が手を置き、低く告げる。 
 ——次代へ残す。必要なら、私の系譜に。

「……やめて」

 思わず声が出た。

 ページの上に影が落ちる。自分のだ。指先がかすかに震えている。

「どうした」 
「いえ……今、少し……」 
「無理に続けるな」

 カイルの声音は低いが、命令ではなく制止だった。

 でも、リリアは首を横に振る。

「続けます」 
「顔色が悪い」 
「悪くないです」 
「嘘だな」 「……悪いです。でも、止めたらたぶん、もう見られない」

 その言葉に、カイルは押し切らなかった。

 ページをめくる。さらに深い注釈。運用記録。接続核の負荷軽減処理。幼少時からの馴染ませ。定着失敗時の例。

 そして最後に、ひどく簡潔な一文があった。

 ——接続中、個体表層魔力は著しく低下し、外部観測において無魔力と誤認され得る。

 その文章を読んだ瞬間、世界の音が消えた。

「……あ」

 口から漏れたのは、意味のない息だった。

 無魔力と誤認され得る。

 つまり。

 つまり、自分が十歳で魔力ゼロと判定されたのは。

 生まれつき欠けていたからじゃない。

 結界に、繋がれていたから。

 王国全体を維持するために、自分の魔力が常時吸われ続け、表に出る分がなかっただけ。

 リリアはしばらく何も言えなかった。

 怒りが来ると思っていた。叫びたくなるか、泣きたくなるか、せめて何かが爆発すると思っていた。

 でも、実際に胸へ落ちてきたのは、ひどく冷たい虚無だった。

 空っぽ。

 底が抜けるって、こういうことなんだと初めて分かる。

「……無能、じゃ……なかった」

 その言葉は、確認というより、壊れたものの残骸みたいに零れた。

 エドガーが重く頷く。

「少なくとも、資料上はそうだ」 
「じゃあ、私は……」 
「王国を維持するための接続核だった可能性が高い」 
「知らないうちに?」 
「おそらく」

 知らないうちに。

 その一言がいちばん、ひどかった。

 もし自分の意思で選んだ犠牲なら、まだ耐えようがあった。使命だと信じることもできた。けれど実際は違う。

 何も知らされないまま、ただ“無能”と呼ばれ、価値がないと見下され、自分の魔力を吸われ続けていた。

 王国のために。 
 結界のために。 
 たぶん、家のためにも。

 リリアは両手で顔を覆いたくなった。でも拘束具の重さがそれを邪魔する。だからただ、机の上の本を見つめたまま、静かに息を吐いた。

「国家も、家族も……」

 声が、やけに遠い。

「最初から、私を私として見てなかったんですね」

 その一言に、誰もすぐには返せなかった。

 慰めの言葉なんて、今の状況では薄すぎる。否定もできない。肯定すれば残酷だ。

 沈黙のあと、カイルが静かに言った。

「少なくとも、資料上はそう見える」 
「……優しくないですね」 
「ここで嘘をつく方が残酷だ」

 その通りだった。

 だからリリアは、目を閉じた。

 父の顔が浮かぶ。冷たかった目。家の名誉のためだと言った声。

 アルベルトの顔が浮かぶ。無能な女を王妃にはできないと言い切った夜。

 継母の微笑み。セレナの勝ち誇った瞳。

 その全部が、今なら違う意味を持って見える。

 彼らは本当に知らなかったのかもしれない。あるいは一部は知っていて、都合よく口を閉ざしたのかもしれない。

 どちらにしても、結果は同じだ。

 リリアは一人の少女として扱われなかった。

 足りない娘、役に立たない婚約者、無能令嬢。 
 そう見せられたまま、王国の礎に組み込まれていた。

 叫びたいほど理不尽なのに、涙は出なかった。

 涙よりもっと深いところが、ひどく冷えてしまったからだ。

 その時、別の研究員が慌てた足音で書庫へ駆け込んできた。

「首席!」 
「何だ、騒々しい」 
「辺境観測網から緊急報告です。アストレイア王国東部、ルクス辺境都市周辺で大規模魔物災害が発生!」 
「数は」 
「通常の五倍以上、結界外周が明滅を繰り返していると! 現地では避難が始まって——」

 空気が変わった。

 エドガーが即座に書簡をひったくるように受け取る。カイルも数歩で距離を詰め、報告に目を通した。紙面を見た瞬間、彼の表情がさらに鋭くなる。

「初動が早すぎる」 
「結界の出力低下が表面化したな」 
「アストレイア側は?」 
「現時点では“局地的な異常”として処理中とのことです」

 その一言に、エドガーが露骨に顔をしかめた。

「愚か者どもめ」

 リリアは座ったまま、その報告を聞いていた。

 ルクス辺境都市。

 名前だけは知っている。王国東部、結界の外縁に近い街。魔物被害も比較的多く、だからこそ結界の恩恵に敏感な土地だ。

 そこが崩れ始めた。

 つまり、この資料の仮説はたぶんもう、仮説じゃない。

 自分が王国から切り離されたことで、結界の維持に綻びが出た。

 いや、もっと正確に言えば——王国は、自分を追放することで、自分たちの心臓の一部を自ら引き剥がしたのだ。

 なのに、リリアの胸に最初に浮かんだのは優越感ではなかった。

 ざまあみろ、でもない。

 ただ、どうしようもなく疲れたような感覚だった。

「……そうですか」

 静かにそう言うと、カイルがこちらを見る。

「何を考えている」 
「別に」

 答えながらも、少し遅れて本音が胸に浮いた。

 あの国が困ると聞いても、思ったより何も動かない。

 昨日までなら、少しくらいは焦ったかもしれない。家族がいる、婚約者がいる、育った国があると思えば、心のどこかが引っ張られたはずだ。

 でも今は違う。

 だってその国は、最初から自分を人間として数えていなかったのだから。

 役目だけを求めて、価値がないと切り捨てて、最後は国外へ捨てた。

 そんな場所のために、何を感じればいいのだろう。

「皇子殿下」

 リリアはゆっくり顔を上げた。

「私、たぶん今、ちゃんと怒れてないです」 
「……」 
「怒るより先に、何かが全部抜けてしまった感じで」 
「当然だ」 
「当然、ですか」 
「奪われていたことを知った直後に、きれいな感情だけ出る方が異常だ」

 カイルの言葉は淡々としているのに、なぜかそのまま胸へ落ちた。

 エドガーが資料をまとめながら言う。

「少なくとも今日のところは、これ以上の照合は中止だ」 
「まだ見られます」 
「見られるのと、見るべきなのは別だ」 
「でも」 
「君は今、知識を入れるたびに自分の人生ごと切り刻まれている。研究者としては興味深いが、人としては休ませるべき段階だ」

 相変わらず言い方は容赦がない。

 でも、たぶん正しい。

 リリアは椅子の背にもたれ、息を吐いた。その後息を吸うと、肺の奥まで冷えた空気が入っていく気がした。

 知ってしまった。

 自分は無能ではなかった。

 けれどその真実は、名誉の回復なんかじゃない。失われた六年が戻るわけでもない。父の言葉がなかったことになるわけでも、アルベルトの断罪が消えるわけでもない。

 むしろ逆だ。

 あの六年全部が、“知らないうちに搾取されていた時間”として塗り替えられてしまった。

 それは怒りより、ずっと重い。

 立ち上がろうとした時、少しだけ足元が揺れた。カイルがすぐ支えるでもなく、ただ手を差し出せる位置に立つ。

「歩けるか」 「……たぶん」 
「たぶん、か」 
「今日はその言葉ばっかりですね」 
「理解が進んでいない証拠だ」 
「嫌味ですか」 
「事実だ」

 それでもリリアは、差し出された手を見た。

 掴むか迷って、結局自分で立った。膝は少し震えたが、倒れはしない。

「意地っ張りだな」 
「最後の砦みたいなものなので」 
「その砦は大事にしろ」 
「珍しく優しいこと言いますね」 
「優しくはない。必要だと言っているだけだ」 
「そういうところです」

 ほんの少しだけ、口元が緩んだ。

 笑えたわけじゃない。たぶん、崩れ落ちないための反射だ。

 古文書庫を出る前、リリアは一度だけ振り返った。

 積み上がった知識の海の中に、自分の前世がいた。 
 自分の知らなかった人生がいた。 
 そして、自分の今までの不幸が、偶然でも不運でもなく、構造の中で起きていた可能性があった。

 それはもう、“可哀想な追放令嬢”なんて簡単な言葉では済まない。

 私は奪われていたのだ、とリリアは思う。

 立場だけじゃない。 
 婚約だけじゃない。 
 人生の前提そのものを。

 地下書庫を出て、冷たい廊下の空気に触れた時、胸の奥で何かが静かに動いた。

 再起、というほど前向きではない。  復讐、と呼ぶにはまだ温度が足りない。

 でも確かに、一つだけ芽吹いたものがある。

 もう二度と、誰かの都合で自分を定義させない。

 それは炎みたいに派手な決意じゃなかった。

 凍えた地面の下で、春を知らないまま伸び始める根みたいに、静かで、しぶとい意志だった。

 そしてその頃、アストレイア王国東部では、結界の明滅の下、魔物の群れが都市外壁へ押し寄せていた。

 王国はようやく、自分たちが何を失ったのかを、遅すぎる形で知り始めていた。
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