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第2話 王子の微笑は刃物のきらめき
しおりを挟む謁見の間は、冷蔵庫みたいに冷えていた。
壁の金箔は燦燦と光っているのに、空気だけが氷河の底。広さのせいか、天井の高さのせいか、それとも、ひな壇の中央に座る男のせいか。
第一王子セオドール。
整った顔、彫像みたいな横顔、笑うときだけ目尻に浅い皺が寄る——けれど、その笑いは、炎にかざしたナイフの刃先と同じで、光るほどに冷たい。
「雑役係。前へ」
名は呼ばれない。役割だけが呼ばれる。
背中を押され、私は赤い絨毯の端で膝をつく。膝の下で、石が硬い。しんとした空気の中、鎧の触れ合う音がひとつ、二つ。どこかで香が焚かれている。甘い煙が喉にからみ、声を出す前から後悔する。
「本日、礼拝前廊の磨き残し、並びに、台所裏排水口の処理遅延。王城の歯車に砂を噛ませる愚は、何と呼ぶ?」
セオドールは愉快そうに問い、すぐ自分で答える。
「不要。つまり、駒としても失格」
駒。
その単語が床を滑って私の膝にぶつかる。痛くはない。けれど、胸の内側で鋭い針が動いた。封印紋。心臓の裏で眠っているはずの薄い紋が、ちり、と熱を発する。思考が一瞬だけ白く泡立ち、視界の端に細い光が滲む。星屑のような、けれど色は冷たい青。
「弁明は?」
「……遅延は、私の段取りの悪さです。申し訳ありません」
「申し訳ありません、では足りない。駒は磨かれねば役に立たぬ。磨いて光らせ、盤上で私の意図どおりに動く。それが存在理由だ」
盤上。意図。
言葉自体は抽象的なのに、音の運び方が具体的に痛い。
セオドールはほんの少し笑い、銀のカップを指で叩く。コン、と乾いた音。胸の紋が共鳴して、灼けた針の先で内側から皮膚をなぞる。私は呼吸を整える。深く、ゆっくり。——痛みは波、私は岸。
「お前は、下の者の仕事に“同情”したそうだな」
上級メイドの、あの冷たい目が横に立っている。
彼女の報告書。私が階段下の子どもにパンを渡して、排水口の開始が十五分遅れたこと。関係はある。関係はあるけれど、あの十五分が誰の命を削ったのか、私はまだ知らない。
「同情は、歯車を錆びさせる。錆びた歯車は取り替える。簡単だ」
簡単、という紅茶のような音。
私は唇の内側を噛み、血の金属の味で意識を現実につなぎとめる。視界の端で光がまた滲み、星の細粉がふわ、と舞った気がする。いや、舞ってない。幻覚。私は雑役係。星と無縁。——そう思い込むのに、胸の針は引き抜けない。
「罰は三日間の夜勤追加。明日から礼拝室と王妃の回廊。遅延は許さぬ。次にあれば、“不要”の印をつける」
不要。
それは追放の婉曲。
背中に氷片が落ちる。私は深く頭を下げる。髪が顔に落ち、呼吸で頬に貼りつく。足元の赤い絨毯の毛並みが逆立って見える。王子の微笑は変わらない。見上げなくてもわかる。刃は置かれたまま、次の機会を待っている。
「下がれ」
声はやわらかい。
退け、という意味を、絹で包んで投げる。
私は「承知いたしました」と言った。上級メイドの教えどおりに。
背中に視線が刺さるのを耐えて、私は謁見の間を出る。扉が閉じる瞬間、胸の紋がどくん、と大きく鳴った。見えない手で心臓を掴まれ、軽く捻られたみたいに。足が少しふらつく。
廊下は、朝よりも白かった。
光に濡れた石床は、私の影を薄紙のように平たく伸ばす。伸ばされた影は私の所有ではない。宮廷の道具としての影。そんな気分。歩幅が小さくなり、呼吸が浅くなる。光が痛い。目を細めても、痛みは瞼を透過して骨に届く。この城の白は、骨までくる。
昼、夕、忙殺。
叱責の余韻は、手を動かし続けることでしか洗えない。私は動いた。磨く。拭く。こする。頭の中の音量を落とすため、現実の音を上げ続ける。
そして、夜。
地下へ降りる階段は、今日だけ少し長かった。足音が石に吸われ、湿り気が肺にゆっくり入り込む。地上の白の痛みが、落ちていくたび薄まる。暗闇は優しく、影は私に寄り添う。私は袋を肩にかけ直し、灯りのない回廊を進む。
曲がり角を二度。
わずかな空気の揺れで、彼の存在がわかる。
暗闇の奥に、銀いろの二点がひらく。ノアの目。距離感の掴めない光。私は自然に歩みを緩め、彼の待つ壁際の定位置へ。
「……来たな」
「うん。来たよ。今日も、直す」
「お前、匂いが変わった。鉄と……星の匂い」
「やだ、その表現。鉄は排水口。星は、なんだろ」
「知らない。けど、濃い」
「濃い匂いって言わないの。香水じゃないんだから」
短い応酬。
それだけで体温が一度上がる。昼間の白い痛みが、言葉の熱で少しだけ遠のく。ノアは私の横で壁に片肩を預け、目を細める。角の根元が闇を梳き、髪に触れて微かに音を立てた。
「上はどうだった」
「王子の微笑みが、刃物だった。磨かれてない駒は不要だって」
「刃物は、切るために笑う」
「わかりにくい哲学やめて」
「お前の比喩だ」
「……そうだった」
灯りの死んだ壁の基盤に触れる。
金属は昼より冷たい。指のひびがひとつ、二つ、痛みの芯を自己主張する。私は息を整え、工具を並べる。ネジを緩める音が、脈拍の代わり。規則のある音は心を平らにする。
ノアは黙って見ていた。
視線は刺さらない。体温だけが隣にある。
少しだけ、肩がほどける。胸の紋はまだ熱いが、さっきほどの針ではない。
「……ねえ、ノア」
「何だ」
「もし私が、“不要”になったら、ここで暮らせるかな」
「地下で?」
「うん。灯り直して、排水口直して、たまにパンを焼いて」
「パンは地下でふくらまない」
「そこなの? 突っ込むところ」
「現実は大事だ」
「現実、嫌いじゃないよ」
笑おうとしたとき、
冷たい風が、回廊の奥から滑ってきた。地下の風は普通、重い。水と石の匂いで粘る。けれど今の風は裏返った布みたいに乾いていて、頬を撫でたあとにチリとした静電気を残した。
ノアが顔を上げる。
銀いろの瞳にわずかな縦の光。獣が耳を立てるみたいに、角の根元が動く。
「隠れろ」
「え、なに——」
「壁の内側。今すぐ」
声の温度が、石の温度と一致した。
私は反射で基盤の覆い板を持ち上げ、身体を半ば突っ込む。ノアが肩を押し込んで、残りの体を影に押し隠す。石の粉の匂い。頬に冷たい感触。心臓が一段飛ばしで打つ。
次の瞬間、闇がざわめいた。
——カサ、カサカサ、シャリ。
小さいけれど、数が多い音。砂が意思を持って這うみたいな、嫌なリズム。回廊の角から、黒いものが溢れる。鼠。いや、鼠に似ているが、目が白く濁り、背中に瘴の霧が薄くまとわりついている。瘴鼠。鼻の頭が腐ったように崩れ、歯が妙にまっすぐ光る。三匹、五匹、十、二十。波。
喉の奥で名前が浮かぶ。
瘴鼠(しょうそ)。黒霧が城下に流れ込んだ夜、スラムで何度も見た影だ。けれど、城内で見るのは初めてだ。上は清潔、下は汚濁、という都合のいい図式が破られていく音がする。
ノアが一歩、前に出た。
拳を軽く握る。皮膚の下で筋が盛り上がり、指の骨格が美しく歪む。彼が吸った息は短く、吐く息は長い。目の前に来た一匹が跳ね上がり、喉笛に向かって歯を剥いた。
火花。
拳が鼠の顎を掠めた瞬間、空気が小さく爆ぜた。炎ではない。もっと乾いた何か。石英を粉砕したときの、キンとした閃光。鼠は空中でねじれ、床に落ちる前に灰になった。続く二匹、三匹、四匹。ノアの腕が踊る。拳と肘、膝。彼の動きは静かで、なのに一撃ごとに空気が瞬時に圧縮され、火花が散る。拳に火をつけたのは瘴か、彼自身の身体か。知らない。知ってるのは、彼が圧倒的であること。
でも、数が多い。
壁を這い、天井から降り、影の中から湧く。私は覆い板の陰から身を出し、足場を確認する。滑る。石が湿っている。息が早い。胸の紋が、熱い。視界の端で星の粉がまた滲む。あれは幻じゃないのかもしれない。脳裏でセオドールの声がちらつく。「不要」。押し戻す。
「——リリア、下がってろ」
「いや、私……」
言葉が喉でほどけた。
瘴鼠の群れの後方、濃い霧がひときわ濃く渦を巻く。核。そこに瘴が集まり、鼠たちに形を与えている。核を崩せば、群れは散る。頭ではわかる。足はすくむ。胸の紋が熱で泣いている。昼の痛みが、夜の底で形を得ていく。
鼠が一匹、私の足首に向かって走った。
牙の白さ。音の速さ。反射で、私は言う。
——言葉は、思考より先に出た。
「……ほどけて」
ひと呼吸のあいだ、世界が静止した。
次の瞬間、空気が逆流する。回廊の湿気が後ろに引かれ、瘴の霧が糸を引くみたいにたわむ。糸はぱちん、と音を立てずに切れ、鼠の形を保つ意味が解体される。足首に来ていた一匹が、砂時計をひっくり返したみたいに形を失い、床に落ちる前に塵になった。塵は濡れた石に触れ、じゅ、と小さく音を立てて消えた。
核の渦が痙攣する。
私は一歩、前へ。ノアの横顔が視界の端で動く。止めようとする気配。私は首を縦に一度だけ振った。自分に向けて。胸の紋は熱い。でも、痛みは今、武器の柄になった。
「ほどけて」
今度は少し強く。
言葉が回廊に流れ込み、石の模様を舐め、瘴の核に触れる。渦がふっと緩み、鼠たちの輪郭に走る黒い糸が一本、一本ほどけていく。糸の端は空気の奥へ吸い込まれ、鼠は形を諦める。数十が一斉に、塵になった。塵は静かだった。音もなく、ただ消滅の手続きだけを忠実にこなす。
残りの数匹が戸惑うように足を止め、ゆっくりと後退する。
ノアの拳が最後の二匹を地面に叩きつけ、火花が弾け、匂いが消える。闇が元の闇に戻る。湿った空気が肺に戻り、私は遅れて大きく息を吸った。指が震えている。膝の裏が笑っている。笑い事じゃないのに、笑っている。
静寂。
回廊の奥から水滴が落ちる音。ぽとん。
私とノアの呼吸音が、徐々に同じリズムになる。
「……今の、私?」
声は自分のものじゃないみたいに軽かった。
胸の紋はまだ熱い。皮膚の下で星の粉が転げ回っている感覚。怖い。けれど、さっきまでの“無力の怖さ”とは違う。何かを握った感覚の、逆側の怖さ。
ノアは少しだけ、目を細めた。
いつもより長く私を見た。銀いろの瞳の奥で、古い湖が揺れる。彼は頷いた。
「……ああ」
「“ああ”って……それだけ?」
「それで全部だ。お前が言って、お前がほどいた」
「魔法……?」
「わからない。けど、俺の拳より、静かで、遠くて、深い」
「遠くて深い、って、いいのか悪いのか」
「いい。“核”に届いた。拳じゃ届かない場所だ」
褒め言葉。
でも、褒められている実感は薄い。私は壁に背を預け、指で胸元を押さえた。熱はゆっくり引いている。その引き際が、波打ち際の泡みたいに不規則で、くすぐったい。
「怖くないのか」
「——怖いよ」
素直に言葉が出た。
自分の声が、思ったより落ち着いている。不思議。世界はさっきより静かで、さっきより繊細だ。塵になった瘴鼠の名残が床に線を描き、それが湿気で丸くなって、消える。そんな些細な変化まで見える。
「でも、昼の白よりは、怖くない。あの笑う刃よりは」
「上は、刃でできてる」
「下は、瘴でできてる」
「お前は、声でできてる」
「……うん。なんか、そんな気がしてきた」
ノアは唇の端で、わずかに笑った。
ぎこちない笑顔。それでも、回廊の温度が一度上がる。彼は私のそばに来て、手を差し出した。握るための手じゃない。立ち上がるための、平たい手の差し出し方。
私はその手に自分の手を重ねた。
硬い掌。皮膚の下の力。引かれるでもなく、押されるでもなく、ただ支点ができる。私は立ち上がる。膝がまだ少し笑っているけど、立てる。
「……“不要”なんかじゃなかったな」
「王子に言って」
「言わない。上に行かない」
「正解」
短い会話の合間に、遅れて震えがやってくる。
体が戦いの後始末を始めた合図。私は肩を上下させ、指を握って開いて、呼吸を数える。吸って三つ数え、吐いて五つ数える。ノアが一緒に呼吸を合わせる。心拍が落ち着く。胸の紋の熱は、ぬるい湯くらいに下がった。
「今日は、もう戻れ。長く地下にいると、上に匂いがつく」
「瘴の匂い?」
「星の匂い」
「だから、その表現やめて……」
「やめない」
「強情」
「そうだ。生き残るための癖だ」
ノアは回廊の闇を一度見渡し、倒れた……いや、塵になった瘴鼠の痕跡を靴先で崩した。床に残った黒い輪郭は、すぐ湿りに溶ける。見なかったことにできる程度の痕。地下は、こうして何度でも元の顔に戻る。
「リリア」
「ん?」
「お前の“ほどけ”は、たぶん、上にも下にも効く。上の鎖にも」
「上の……鎖」
「言葉。掟。名。笑う刃」
私は息を止めた。
頭の中で、薄い紙が風でめくれる。セオドールの声、上級メイドの声、礼拝室の祈り。全部、言葉でできている。言葉が世界を固定し、私を“雑巾”にする。なら——
「ほどけて、って言えば、ほどける?」
「試すなら、俺の前でやれ」
「見張り?」
「見届け」
「それ、好き」
笑う。
胸の中の星が、ひとつ、点滅する。昼の痛みが、少しだけ形を変える。刃物のきらめきのかわりに、遠い灯台の光。そこへ向かう道はまだない。けれど、夜の地下でなら、道の代わりに歌を選べる気がした。
「ありがとう、ノア」
「何に」
「ここで、私を“雑巾”って呼ばないこと」
「お前は、お前だ」
「……うん。今夜は、その言葉で寝る」
私は工具袋を肩にかけ直し、階段の方へ歩く。
背中に、ノアの視線。重さはない。体温だけが、数歩ぶんの距離で寄り添う。角が闇に溶け、銀いろの瞳だけが最後まで残っていた。上がりきる直前、また低い水滴の音。ぽとん。世界がちゃんと続いている音。
扉を押すと、夜の白が帰ってくる。
でも、昼ほど痛くなかった。胸の紋はまだあたたかく、歩くたびに“ほどけ”の残響が足裏に伝わる。廊下の端で、自分の影が呼吸している。私は頷いた。影にも、名前はある。たぶん、いずれ。
部屋に戻り、毛布に潜り、目を閉じる。
セオドールの微笑が瞼の裏に浮かぶ。刃先の光。私はその刃に、低く囁いてみる。心の中でだけ。
——ほどけて。
刃は消えない。
でも、光の角度が、ほんの少しだけ鈍った。夢の手前で、私は微笑む。怖い。けど、怖いだけじゃない。夜の地下の冷気と、銀いろの瞳と、塵になった瘴の匂い。全部が混ざって、眠りの色が深くなる。
明日も廊下を磨く。
でも、今日の私には、ひとつ増えた。
言葉が武器になるかもしれない、という予感が。
それがナイフよりも静かで、遠くて、深いことを、知ってしまったという事実が。
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