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一
「そこの若人、水を持っておらんかね」
背後からの声に振り返ると、老人が草むらに座って手招いている。今し方通り過ぎた場所だ。誰もいなかったはずなのに、と璃央は老人を凝視した。白髪白髯。袖口が広くゆったりとした着物の腰を、太い麻紐で縛っている。素足だ。秋も深まる山の中で寒くないのだろうか。宮城内でたまに見かける道士の着物によく似ている。璃央は閃いた。この老人はきっと仙人だ。
「もしかして、おじいさんが士鵠仙人ですか」
璃央は背中の荷を下ろし、慌ただしく竹の水筒を差し出した。栓を抜く老人の指は、栓と同じくらい細い。璃央は老人の前で座を正して待った。老人は喉を鳴らして水を飲み、ぷは、と盛大に息を吐いた。
「いや」
簡潔な否定に膨らんだ胸がしぼみ、璃央はため息をついた。
「なんだ、違うのかぁ……あ、や、なんでもないです」
「おれを士鵠様と思って水をくれたのか。ぬか喜びさせてすまんな」
「いいんです。おじいさん、じゃない、おじいさま? おじ、おじい、うーん、あー、とにかく、喉乾いてたんスよね!」
とっさに尊称が出てこない。ごまかそうと大きな声を出すと、老人は璃央に負けず劣らず大きな声で笑った。薄いてのひらで膝を叩き、笑いが収まらないのか璃央の肩まで叩いた。この細い腕のどこに宿っているのか、驚くほどの力強さだった。
「おじいさんでよい。むしろ、おじいさんでなければならぬ」
「はあ、じゃあ、おじいさん」
「うむ。よいぞよいぞ」
老人はまたぐいっと水をあおった。返された水筒はすっかり軽い。目的地まであとどれくらいかわからないのに水がなくなったのは痛手だが、飲まれてしまったものは仕方がない。幸いにも道は崖の上を通っていて、下は川だ。いざとなれば、なんとか調達できるだろう。
「ところでお前さん、そんな大荷物でどこから来た」
「都からです」
「都! それは遠いところから来たなぁ。十日は歩いたろう」
老人は顔を首ごと動かし、璃央を上から下まで丹念に見た。都から来たと言っても、璃央はただの十九歳の青年だ。髪は丸く結って頭巾で覆い、丸襟の短い上着に、足首まである長い筒型の袴といった、ごく一般的な装いをしている。今は旅の途中なので脚絆を巻いているが、どこを取ってもまじまじと見るほど珍しくはない。
「おじいさん、士鵠様の知り合いですか」
「何を隠そう、おれは士鵠様の弟子だ」
「えっ」
「一番弟子だぞ」
「すげぇ! あの、あの、士鵠様ってどんなっすか」
これから会いに行く相手について、璃央は名前しか知らない。温和な人物だとうれしいが、仙人はいわば世捨て人だ。どんな偏屈者かわからない。
「そうさなぁ」
老人は目を細めた。璃央の向こう、ずっと遠くを眺めている。
「士鵠様はまっすぐな心の人だ。気難しいが、それはやさしさや臆病さの裏返しなのだ」
大切なものをやわらかい布で包むような声で、老人はそう言った。この人もやさしい人なのだろうと璃央は思った。肝心の士鵠については、やさしいのか気難しいのかよくわからなかった。
「士鵠様に用となれば、薬だな。見たところ若くて健康そうだが、何か患っているのか」
「薬が欲しいのは俺じゃなくて、皇帝陛下っす。金丹っていう、仙人になるための薬を探してるんです」
「ほほう、金丹か。なるほどなるほど」
老人は頭がもげそうなほどうなずいている。
「皇帝陛下の御使いならば、お役人様だな。若いのに大したものだ」
「一応役人だけど、全然っすよ。ものすごく下っ端っす」
時の皇帝は三十五歳。数年前から神仙思想にどっぷりと浸かっている。皇帝は仙人になろうと国中から師となる仙人を招いたが、皆偽者だった。空も飛べず水にも浮けず、怒った皇帝は偽仙人たちを次々と処刑した。結果、残ったのが道士たちだ。道士は仙人になるための修行中の身なので、処刑を免れた。道士も多少の神通力を使うが、仙人とは比べものにならないそうだ。皇帝は道士たちを宮中に住まわせ、共に修行しているらしい。道士の人数は後宮の女たちに匹敵するとの噂だった。
皇帝は仙人を募り続けているが、処刑を恐れて誰も名乗り出ない。各地の役所に仙人を推薦するよう要請しても、偽者を推しては連座して処罰されるかもしれないので、誰も声を上げない。焦れた皇帝はとうとう金丹だけでもいいから差し出せと言い始めた。
金丹は、飲むだけで仙人になれる薬らしい。この山に住む士鵠仙人が金丹を持っているかもしれないという情報があったので、璃央は使者として山を登っている。
「今までは仙人様に失礼だからって、そこそこ位がないと使者になれなかったんスけど、薬もらうだけなら下っ端でもいいだろってなったみたいで、俺も志願できたんです」
士鵠は薬作りに長けているらしい。麓の村では士鵠仙人の薬で助かった人間がたくさんいるそうだ。山に入る前に村長に話を聞いたが、士鵠の薬がよく効くのは本当らしい。連れていかないでくれと懇願されたので、金丹をもらうだけだと言って安心させた。
「己を卑下するものではないぞ。下っ端とはいえ、試験に受からなければ役人にはなれまい」
「いや、俺、試験受けてなくて……父さんが偉い人だから、ちょっと入れてもらっただけで……それも妾の子だから、ほんとのほんとに下っ端で、たぶんおじいさんが思ってるよりもずっと下っ端です」
二人の異母兄も試験は受けていないが、璃央が一生かかっても手が届かないような位についている。長兄はいずれ皇帝の直轄軍を束ねると言われているし、次兄は国策に関して百年に一人の逸材と呼ばれている。下町育ちの璃央は武道も学問も心得がない。父にも兄にも疎まれている。金丹探しの話を聞いたとき、これしかないと思った。金丹を手に入れて皇帝に認められれば、父も兄もきっと璃央を見直してくれるはずだ。
「だが、金丹を持ち帰れば下っ端ではなくなる。そうだろう」
「そうなる、のかな。それはそれで困るなぁ」
「なぜだ」
「位が高くなったら仕事が難しくなるじゃないですか。俺、頭よくないから無理っす」
「そんなもの、手下にやらせればいい。偉い役人は皆そうしておる」
「あ、そっか。おじいさん頭いいなぁ」
璃央はへらっと笑った。老人もにこにこ笑っている。酒を飲んだように頬が紅色になって、璃央まで朗らかな気分になった。本当は笑っている場合ではない。険しい顔の父に頼みこみ、床に額を擦りつけて旅費を借りたのだ。金丹がもらえなかったら、なんてと考えるだけで恐ろしい。
「いいことを教えよう」
老人が口の横に手を当てたので、璃央は耳を近づけた。
「金丹を手に入れたら、自分で飲んでしまうのだ」
「えっ」
皇帝に献上する薬を横取りなどしたら、ただでは済まない。璃央の驚きをよそに老人は笑っている。
「金丹を飲めば仙人の世界へ行けるぞ」
仙人の世界は、空を飛び雲を踏み越えた先にあると言われている。神通力がなければ行けない場所だ。老人によると、仙人の世界には瑞雲がたなびき、珍しい草や木が生え、一年中花が絶えないらしい。小道の砂利さえ玉で、金銀七宝で飾られた門が幾重にも連なる豪華な御殿が建っている。璃央が聞きかじった仙人の住まいはいくつもの楼閣を備えた屋敷だったが、それよりさらに豪奢な造りのようだ。南方の果実、北方の肉、東方の魚、西方の酒、あらゆるごちそうが尽きず、美しい天女たちが舞い歌っている。
「どうだ」
「どうって言われても」
最初の感想は、ズイウンってなんだろう、だった。珍しい草木がどんなものかわからないが、ずっと花が咲いているのは楽しそうだと思った。御殿は皇帝の宮城より大きいのだろうか。そもそも宮城が大きすぎて想像がつかない。どんなにごちそうがあっても食べられる量には限度がある。食べたいのに食べられないのは悲しい気がする。天女の舞は見てみたいが、自分なんか相手にされないに決まっている。それとも、仙人になったら無限に食べられたり、美人に好かれたりするようになるのだろうか。
「行きたくなっただろう」
ずい、と老人が身を乗り出す。
「うーん、仙人の世界って、空の上にあるんですよね」
「そうだ」
「じゃあ、別にいいっす。空の上にあるなら、仙人の世界には空がないんでしょ。俺、空見上げるの好きなんで」
空はどこまでも続いている。晴れていても曇っていても雨が降っていても途切れない。目が届く限り一番遠い空の下に何があるのかと考えるのは楽しい。珍しい草木でなくても、美しい天女でなくてもいい。石ころ一つでいい。璃央には想像するのが愉快だった。
「空より珍しくて高価なものがごまんとあるぞ」
「うん、でも、そういうのって見たり食べたりしたらおしまいじゃないっすか。今おじいさんに聞いて半分くらい終わった感じかな」
何があるかわからないから胸が高鳴る。子どもの頃からそうだった。路地の行きつく先、いつも閉まっている扉の向こうを想像するのが好きだった。確かめてみたくて近所の木や屋根に登り、叱られたのも一度や二度ではない。もう聞いてしまった仙人の世界より、今自分が登っている山の向こうの景色を知りたい。
老人は呆けたように璃央を見ていた。がっかりさせてしまったかもしれない。
「あの、なんか、すいません」
「何を謝ることがあるものか! よいぞ! 実によい!」
老人は再び驚くような力で璃央の肩を叩き、大声で笑った。何がそんなに面白かったのかわからないが、失望させていないようでよかった。
「おっと、引き止めすぎたな。日が暮れては大変だ。さあ、行きなさい。天に愛され地に慈しまれた子よ」
「天に……なんスか」
「士鵠様には、おれと会ったとは言わぬ方がよい。実はちっとばかし怒らせているからな。機嫌が悪くなるだろう。ほれほれ、水筒をきちんとしまえ。おれの顔なぞ見ていても仕方がないぞ」
璃央は荷の口を開けて水筒を入れた。ふと気づいて、もう一度取り出す。水筒が重い。栓を抜くと、縁まで水が入っている。
「おじいさん」
顔を上げると老人はいなかった。
「すげぇ」
これが仙人の神通力か。老人は士鵠の弟子だと言っていた。弟子がこれほどならば、士鵠はもっと素晴らしい力を持っているに違いない。金丹もたくさん持っているだろうから、少しは分けてもらえるはずだ。心が軽くなり、璃央は勇んで山を登っていった。
ふいに木々が途切れ、頭上が開けた。日が傾いて黄色みがかった空を見上げ、璃央はほっと息をついた。やっぱり、空が見えると安心する。生きてここに立っていると実感できる。
目の前には民家が建っていた。着いた、と思うと心臓がひとつ大きく鳴った。仙人の家なので大御殿を想像していたが、規模だけなら麓の村の長の家と大して変わらない。しかし、村長の家より豪華だ。門は彫刻が多く立派だし、観音開きの木戸は分厚い。敷地を囲む背の高い石塀は混ぜ物もなくなめらかで、青緑色の瓦が秋の日を受けてつやつやと輝いている。
「すいませーん。こんにちはー」
呼びかけてみたが、応答がない。取次いでくれそうな下男も見当たらない。門からは短い通路が伸び、中庭に続いているようだ。勝手に入ったら怒られるだろうか。皇帝の使いだから大丈夫だろうと気楽に考え、璃央は門をくぐった。通路を抜けて中庭へ入る。
「すいませーん」
中庭でもう一度呼んだが、誰も出てこない。鶏が真っ赤なとさかを振りながら歩いている。左手に小さな菜園があり、紫色のつるに豆が生っていた。隣の簡素な厩では、老いた馬が一頭水を飲んでいた。璃央が近づくと水桶から鼻先を上げ、光のない目でじっと見つめてくる。貧相な馬だ。枯れたすすき色に、褪せた茶のぶちがぼんやり浮かんでいる。たてがみは細く、しおれて首に張りついていた。
「お前のご主人様は出掛けてるのか」
璃央は荷を下ろし、腰の手拭いを取って馬の目やにを拭ってやった。動物はなんでも好きだが、馬は特に好きだ。賢くてやさしい。璃央を邪険にしない。璃央が頬に触れると、老馬は自ら頭をすり寄せてきた。
「留守番はお前だけか」
璃央の言葉がわかるのか、老馬は顔を鶏に向けた。
「そっか、ふたりで留守番なのか。お勤めご苦労様だな」
「誰だ。何をしている」
ぴんと張った弦のような声が聞こえ、璃央は振り返った。門に続く通路の脇に若い男が立っている。身長は璃央より少し低い。目鼻立ちのはっきりした顔で、奥が見通せないほど黒い瞳が印象的だった。袖口の広い濃緑色の上着を着て、袴の裾を紐でくくっている。白い革の履は見慣れない形をしていた。髪は結っているが髷にはせず、馬の尾のように頭の上から垂れ下がっている。顔立ちも衣服も都の人間とは違う。士鵠仙人の弟子に違いない。急に速く動き出した心臓をなだめるため、璃央は深く息を吐いて会釈した。
「董璃央と申します。皇帝陛下の御使いとして参りました。士鵠仙人にお会いしたい。取次をお願いします」
この台詞は道中何百回も練習したので、すらすら言える。若者は黙って璃央の方へ歩いてきた。庇から出ると日光が彼の瞳の縁を紫色に見せる。若者は璃央から五歩程度のところで止まり、眉間に皺を寄せた。
「士鵠は俺だ」
「えっ」
想定では「かしこまりました。しばらくお待ちください」と微笑まれ、白い着物の士鵠仙人が登場、璃央は「ご尊顔を拝する機に恵まれ大変光栄にございます。わたくしは姓を董、名を璃央と申します」から始まる長い挨拶をするつもりだった。それも道中練習してきたが、自分が発した驚きの声ですべて吹き飛んだ。
「何を呆けている。俺に用なんだろう。さっさと話せ」
「や、でも、ほんとに? あっ、何でもないです。失礼しました」
璃央は慌てて胸の前で手を組み、腰を追って深々と礼をした。若い。若すぎる。璃央よりは年上だろうが、それでも五つか六つ。絶対に十以上は離れていない。途中で出会った老人の方がよほど仙人らしい姿をしていた。この若者は本当に仙人なのか。疑わしいが、仙人でもない若者が一人山奥に住んでいるよりは、若い仙人の方が納得がいく。猟師と炭焼きが頭をかすめたが、まるで似合わない。仙人は不老不死の金丹を飲んでいるのだから、見た目が若いのは薬効だろう。加えて、老人が言っていた。
「士鵠様はまっすぐな心の人だ。多少気難しいが、それはやさしさや臆病さの裏返しなのだ」
まっすぐな心もやさしさも臆病さもまったく感じられないが、気難しいのは当たっている気がする。そうなれば間違いない。目の前の若者が士鵠仙人だ。
「いつまでお辞儀をしているんだ。居心地が悪いからやめろ」
「すいません、じゃなくて、申し訳ございません」
覚えてきた台詞のほとんどが使えなくなってしまったが、なんとか乗り切らなければならない。
「えーっと、わたくしは皇帝陛下の御使いで」
「それはもう聞いた。用件を話せ」
「皇帝陛下は不老不死の金丹をご、ご……ご要望? ご所望? で、このたび士鵠仙人に、あり、あらせられられましては」
金丹ください、と言いたいだけなのにどうしていいかわからない。
「あ、そうだ!」
勅書がある。不慣れな言葉遣いにおろおろせずとも、最初から出せばよかった。璃央は荷物から漆塗りの箱を出した。受け取って以来恐ろしくて開けていないので、中を見るのは璃央も初めてだ。そうっと蓋を取ると、金色の背表紙をつけた絹の巻物が入っていた。
「勅書です! 読んでください!」
璃央が両手で差し出した勅書を、士鵠は片手で受け取った。ぞんざいな手つきで広げ、目を通していく。勅書の端が地面に落ち、璃央は慌てた。勅書だ。皇帝の命令が書かれ、玉璽が押されている。この世に存在する木簡、竹簡、書籍、その他文字が書かれたものの中で一番権威がある。たとえほんの少しでも地面に落としていいはずはなく、不敬罪に問われるには十分だ。璃央には士鵠を咎める気はないが、ないからこそ、ひやひやしてしまう。
皇帝の使者なら士鵠の振る舞いを叱責すべきだろう。しかるべき手順を踏んで罪を問い、罰する。そんなのは嫌だ。罰するとはつまり何かの責苦を負わせることだ。笞打ちか労役かわからないが、誰かが苦しい思いをする。皇帝という、会ったことも見たこともない誰かが書いたものの端が地面に落ちただけで。璃央は横を向いて勅書が目に入らないようにした。
「話はわかった」
士鵠は勅書を元通りに巻き、片手で差し出した。璃央は両手で受け取り、てのひらでそっと土ぼこりを払った。返却する前にもっときちんと払っておこう。
「帰れ。金丹はやらない」
「え、なんでですか!」
「世のため人のためになる話であればと思ったが、我欲じゃないか。それに、俺は皇帝が嫌いだ」
一人で来てよかった、と璃央は心の底から思った。今の言葉だけで申し開きの余地なく笞打ち二十回が確定する。
「皇帝陛下が嫌いってなんですか。まさか、知り合いっすか」
「知り合いなわけないだろう。今の皇帝が誰かという話じゃない。俺は皇帝という存在が嫌いなんだ。まず、こんな布きれ一枚で誰も彼もが自分の思い通り動くと思ってるのが気に入らない。さらに戦争をする、無駄に大きな建築物を造る、酒色に溺れる。その金をまかなうために税を重くする。歴代みんなそうだっただろう。その上、不老不死の薬? 冗談じゃない」
士鵠は燃えるような目で璃央をにらみつけた。自分は皇帝ではない。ただの使い走りだ。文句を言われても困ってしまう。
「あの、でも、ちょっと待ってください」
困ってしまうが、すごすご帰るわけにはいかない。
「戦争って、やりたくてやってるわけじゃないと思うんです。たぶん、よその国が攻めてくるのを防いだりとか、そういうのもあるはずで」
「防衛戦は理解している。では、先年の南方遠征は? 攻められたわけではないだろう。軍が占拠した地域には大きな川の分岐点があった。交易は活性化したそうだが、そのために元々住んでいた人々を殺して土地を奪うのは防衛か」
「えっと、あれは、蛮族討伐で」
「蛮族の定義とはなんだ。殺戮と略奪は野蛮ではないのか」
反論できない。この話題は不利だ。
「戦争はそうかもしれないですけど、でかい建物は、権力を見せるっていうか、それだけで他の国を怯ませて攻め込んでこないようにするっていうか」
「大きなものを作らなければ示せない権力は、要するに小さいんだろう」
この話も駄目だ。次。
「建物もそうかもしれないですけど、あと酒もちょっと置いといて、女は必要ですよね。世継ぎがいないと困るし」
「不老不死になったら世継ぎなどいなくてもいいだろう。皇帝が死なないんだからな」
その通りだと思ってしまった。
「戦争がしたいなら、何かを建てたいなら、酒を飲んで女をはべらせたいなら、自分が畑を耕して得た金でやればいい」
士鵠が言葉を発するたび、璃央の頭から言葉が消えていく。
「わかっているのか。お前を派遣するのにかかった費用は誰かが血を吐いて納めた米や絹だ」
頭の後ろを殴られた気分だった。旅費は半分以上を父に借りた。父の給金は宮廷から出ている。真っ白な頭の中で、士鵠の言葉だけがあちこちにぶつかって鳴っている。
「どうせさっきのは誰かの受け売りだろう。だからすぐに行き詰まるんだ」
もう一発殴られた。
「お前だって本当は皇帝などろくでもないと思っているんだろう」
そんなことはない、とすら言えない。皇帝がろくでもないかどうかなんて考えもしなかった。士鵠の言う通り、今の問答はすべてどこかで聞いた誰かの言葉だ。誰の発言かすら思い出せない。皇帝について璃央が知っているのは一つだけだ。敬い、称えなければ父が不機嫌になる。裏を返せば、皇帝に認められれば父によろこんでもらえる。
「金丹がいるんです。お願いします。金丹ください」
万策尽き、璃央は地面に両手と膝をついて頭を下げた。額に触れた砂はざらざらしていて、息を吸ったら土ぼこりでむせそうになった。頭を下げるのに抵抗はない。惨めだとも思わない。子どもの頃から、ありがとうございます、ごめんなさい、お願いしますを唱えながら生きてきた。勅書が通じないならどうしようもない。璃央にできるのはこれだけだ。
「やめろ。誰かがひれ伏す様など見たくない。それに、頭を下げるだけ無駄だ。金丹はない」
「え、えっ、金丹ないんスか」
勢いよく顔を上げたら口に砂が入った。反射的に吐き出したら士鵠が眉を寄せたが、出してしまったのだからもう遅い。それより金丹だ。まさか、ないなんて。とぼとぼと山道を下る自分が見えた。とぼとぼと元来た道を帰り、父に叱責され、同僚に笑われ、少ない給金から借りた旅費を返す。喉が詰まって息ができなくなりそうだ。
「ない。今作っている最中だ」
「じゃあ、できたらあるんですね!」
よかった。とぼとぼ帰らなくていい。
「できてもお前にはやらないから帰れ」
「そこをなんとか!」
「お前、俺の話を聞いてたか。俺は皇帝が嫌いだ。お前は金丹を皇帝にやろうとしている。この流れでどうしてもらえると思ってるんだ。馬鹿なのか」
「士鵠様が皇帝陛下が嫌いなのはわかりましたけど、俺は金丹が必要なんです」
璃央は背筋を伸ばして士鵠を見上げた。しばしの沈黙のあと、士鵠は門を指した。
「出ていけ。もたもたしていると日が暮れるぞ。夜になる前にさっさと山を下りろ」
士鵠は冷ややかに言い、門に続く通路の右の扉から部屋へ入ってしまった。璃央は詰めていた息を吐き出した。目の前を鶏がのんびり歩いていく。璃央は立ち上がり、袴の土ぼこりをはたいた。厩の脇に置いていた荷物を背負うと、老馬が鼻先を寄せてくる。
「まだ帰らないけど、出ていけって言われたから一回出る。また明日な」
門を出て荷物を下ろし、璃央は土壁を背に座った。携帯食は余分がある。弟子の老人のおかげで水もある。今日は風もない。夜は冷え込むが、死にはしないだろう。璃央は野宿を決めた。明日になったら、もう一度士鵠と話す。今日は駄目でも、明日には何かが変わるかもしれない。
問題は、どうやって士鵠を説得するかだ。まさか士鵠が皇帝を嫌っているとは思わなかった。璃央の周囲に皇帝を批判する者はいない。士鵠があまりに堂々と嫌いだと言うから面食らってしまった。あの調子では、なかなか折れてくれないだろう。
璃央は空を見上げた。空には乾きかけた筆で擦ったような雲が浮かんでいた。鳥が飛んでいく。ねぐらに帰るのかもしれない。鳥はねぐらまでしか飛ばないが、空はもっと遠くまで広がっている。
空の下のどこかには、皇帝が大好きで璃央に快く金丹をくれる仙人がいるかもしれない。山道で出会った老人のような、朗らかな人物だろう。璃央が訪ねていったら旅の労をねぎらってくれて、温かい食事と寝床を提供してくれる。帰るときには金丹だけでなく、父や兄への土産も持たせてくれる。ひとりくらい、そんな仙人がいてもいいはずだ。
「何をしている」
思いの外長く空を眺めていたらしく、首を戻したら痛かった。気づけば東は暗くなり、雲は濃い紅色に染まっている。士鵠は出ていけと言ったときと同じく、不機嫌そうに璃央を見下ろしていた。
「夜になる前に山を下りろと言ったぞ」
「今日はここで野宿しようと思って」
璃央は山道に目を向けた。木々の合間は空より暗い。じきに足元も怪しくなるだろう。今からでは山を下りられないが、野宿を決めているので支障はない。
「入れ」
「え、入れてくれるんですか」
「狼が出る。食われたくないだろう」
食料と気温は考えの内に入っていたが、狼までは気にしていなかった。もちろん食べられたくはないので、璃央は急いで荷物を担いだ。敷地内に入ると、士鵠が扉を閉めてかんぬきをかけた。空は急激に赤から紫へ傾いていく。
「ありがとうございます。士鵠様、やさしいんですね」
「当然だ。お前は放っておいたら死ぬかもしれない人間を見過ごすのか」
「あ、はい、すいません」
返答に一々棘がある。それもこれも自分が、大嫌いな皇帝の使いだからだろう。士鵠はさっきと同じ部屋に消えた。どうやら彼のやさしさはここまでらしい。部屋や寝床を貸してもらえるとは思っていなかったし、軒があるだけでも夜露がしのげてありがたい。璃央は中庭まで進んだ。鶏はもういなかったが、脚を畳んでいた老馬が顔を上げた。
「明日って言ったけど、今日のうちにまた会えたな」
璃央は携帯食をかじり、水を少し飲んで厩の横木をくぐった。汚れた藁を脇へ押しやり、老馬の隣に腰を下ろす。もたれても、老馬は嫌がる素振りを見せなかった。
「お前のご主人、やさしいんだかやさしくないんだかわかんないな。たぶん、やさしいんだろうけどさ」
同感だとでも言うように、馬は首を揺すって低く鳴いた。
「ご主人の部屋、ほんとにあそこか。あそこ、召使いの部屋だろ」
通常、門の脇は召使いの部屋だ。主人の部屋は、中庭を挟んで門の反対側にある。一人で暮らすには広い家だが、他に誰かいないのだろうか。山中で出会った老人以外にも弟子はいるのだろうか。金丹はいつ完成するだろう。なんと言えば金丹がもらえるだろう。疑問がぷかりぷかりと浮かんでは、答えが出ないまま沈んでいく。璃央は馬の首筋に頬を寄せた。温かい。明日になったら金丹がもらえる画期的な案を思いつくといいなぁ、と思っているうちにまぶたが落ちた。
背後からの声に振り返ると、老人が草むらに座って手招いている。今し方通り過ぎた場所だ。誰もいなかったはずなのに、と璃央は老人を凝視した。白髪白髯。袖口が広くゆったりとした着物の腰を、太い麻紐で縛っている。素足だ。秋も深まる山の中で寒くないのだろうか。宮城内でたまに見かける道士の着物によく似ている。璃央は閃いた。この老人はきっと仙人だ。
「もしかして、おじいさんが士鵠仙人ですか」
璃央は背中の荷を下ろし、慌ただしく竹の水筒を差し出した。栓を抜く老人の指は、栓と同じくらい細い。璃央は老人の前で座を正して待った。老人は喉を鳴らして水を飲み、ぷは、と盛大に息を吐いた。
「いや」
簡潔な否定に膨らんだ胸がしぼみ、璃央はため息をついた。
「なんだ、違うのかぁ……あ、や、なんでもないです」
「おれを士鵠様と思って水をくれたのか。ぬか喜びさせてすまんな」
「いいんです。おじいさん、じゃない、おじいさま? おじ、おじい、うーん、あー、とにかく、喉乾いてたんスよね!」
とっさに尊称が出てこない。ごまかそうと大きな声を出すと、老人は璃央に負けず劣らず大きな声で笑った。薄いてのひらで膝を叩き、笑いが収まらないのか璃央の肩まで叩いた。この細い腕のどこに宿っているのか、驚くほどの力強さだった。
「おじいさんでよい。むしろ、おじいさんでなければならぬ」
「はあ、じゃあ、おじいさん」
「うむ。よいぞよいぞ」
老人はまたぐいっと水をあおった。返された水筒はすっかり軽い。目的地まであとどれくらいかわからないのに水がなくなったのは痛手だが、飲まれてしまったものは仕方がない。幸いにも道は崖の上を通っていて、下は川だ。いざとなれば、なんとか調達できるだろう。
「ところでお前さん、そんな大荷物でどこから来た」
「都からです」
「都! それは遠いところから来たなぁ。十日は歩いたろう」
老人は顔を首ごと動かし、璃央を上から下まで丹念に見た。都から来たと言っても、璃央はただの十九歳の青年だ。髪は丸く結って頭巾で覆い、丸襟の短い上着に、足首まである長い筒型の袴といった、ごく一般的な装いをしている。今は旅の途中なので脚絆を巻いているが、どこを取ってもまじまじと見るほど珍しくはない。
「おじいさん、士鵠様の知り合いですか」
「何を隠そう、おれは士鵠様の弟子だ」
「えっ」
「一番弟子だぞ」
「すげぇ! あの、あの、士鵠様ってどんなっすか」
これから会いに行く相手について、璃央は名前しか知らない。温和な人物だとうれしいが、仙人はいわば世捨て人だ。どんな偏屈者かわからない。
「そうさなぁ」
老人は目を細めた。璃央の向こう、ずっと遠くを眺めている。
「士鵠様はまっすぐな心の人だ。気難しいが、それはやさしさや臆病さの裏返しなのだ」
大切なものをやわらかい布で包むような声で、老人はそう言った。この人もやさしい人なのだろうと璃央は思った。肝心の士鵠については、やさしいのか気難しいのかよくわからなかった。
「士鵠様に用となれば、薬だな。見たところ若くて健康そうだが、何か患っているのか」
「薬が欲しいのは俺じゃなくて、皇帝陛下っす。金丹っていう、仙人になるための薬を探してるんです」
「ほほう、金丹か。なるほどなるほど」
老人は頭がもげそうなほどうなずいている。
「皇帝陛下の御使いならば、お役人様だな。若いのに大したものだ」
「一応役人だけど、全然っすよ。ものすごく下っ端っす」
時の皇帝は三十五歳。数年前から神仙思想にどっぷりと浸かっている。皇帝は仙人になろうと国中から師となる仙人を招いたが、皆偽者だった。空も飛べず水にも浮けず、怒った皇帝は偽仙人たちを次々と処刑した。結果、残ったのが道士たちだ。道士は仙人になるための修行中の身なので、処刑を免れた。道士も多少の神通力を使うが、仙人とは比べものにならないそうだ。皇帝は道士たちを宮中に住まわせ、共に修行しているらしい。道士の人数は後宮の女たちに匹敵するとの噂だった。
皇帝は仙人を募り続けているが、処刑を恐れて誰も名乗り出ない。各地の役所に仙人を推薦するよう要請しても、偽者を推しては連座して処罰されるかもしれないので、誰も声を上げない。焦れた皇帝はとうとう金丹だけでもいいから差し出せと言い始めた。
金丹は、飲むだけで仙人になれる薬らしい。この山に住む士鵠仙人が金丹を持っているかもしれないという情報があったので、璃央は使者として山を登っている。
「今までは仙人様に失礼だからって、そこそこ位がないと使者になれなかったんスけど、薬もらうだけなら下っ端でもいいだろってなったみたいで、俺も志願できたんです」
士鵠は薬作りに長けているらしい。麓の村では士鵠仙人の薬で助かった人間がたくさんいるそうだ。山に入る前に村長に話を聞いたが、士鵠の薬がよく効くのは本当らしい。連れていかないでくれと懇願されたので、金丹をもらうだけだと言って安心させた。
「己を卑下するものではないぞ。下っ端とはいえ、試験に受からなければ役人にはなれまい」
「いや、俺、試験受けてなくて……父さんが偉い人だから、ちょっと入れてもらっただけで……それも妾の子だから、ほんとのほんとに下っ端で、たぶんおじいさんが思ってるよりもずっと下っ端です」
二人の異母兄も試験は受けていないが、璃央が一生かかっても手が届かないような位についている。長兄はいずれ皇帝の直轄軍を束ねると言われているし、次兄は国策に関して百年に一人の逸材と呼ばれている。下町育ちの璃央は武道も学問も心得がない。父にも兄にも疎まれている。金丹探しの話を聞いたとき、これしかないと思った。金丹を手に入れて皇帝に認められれば、父も兄もきっと璃央を見直してくれるはずだ。
「だが、金丹を持ち帰れば下っ端ではなくなる。そうだろう」
「そうなる、のかな。それはそれで困るなぁ」
「なぜだ」
「位が高くなったら仕事が難しくなるじゃないですか。俺、頭よくないから無理っす」
「そんなもの、手下にやらせればいい。偉い役人は皆そうしておる」
「あ、そっか。おじいさん頭いいなぁ」
璃央はへらっと笑った。老人もにこにこ笑っている。酒を飲んだように頬が紅色になって、璃央まで朗らかな気分になった。本当は笑っている場合ではない。険しい顔の父に頼みこみ、床に額を擦りつけて旅費を借りたのだ。金丹がもらえなかったら、なんてと考えるだけで恐ろしい。
「いいことを教えよう」
老人が口の横に手を当てたので、璃央は耳を近づけた。
「金丹を手に入れたら、自分で飲んでしまうのだ」
「えっ」
皇帝に献上する薬を横取りなどしたら、ただでは済まない。璃央の驚きをよそに老人は笑っている。
「金丹を飲めば仙人の世界へ行けるぞ」
仙人の世界は、空を飛び雲を踏み越えた先にあると言われている。神通力がなければ行けない場所だ。老人によると、仙人の世界には瑞雲がたなびき、珍しい草や木が生え、一年中花が絶えないらしい。小道の砂利さえ玉で、金銀七宝で飾られた門が幾重にも連なる豪華な御殿が建っている。璃央が聞きかじった仙人の住まいはいくつもの楼閣を備えた屋敷だったが、それよりさらに豪奢な造りのようだ。南方の果実、北方の肉、東方の魚、西方の酒、あらゆるごちそうが尽きず、美しい天女たちが舞い歌っている。
「どうだ」
「どうって言われても」
最初の感想は、ズイウンってなんだろう、だった。珍しい草木がどんなものかわからないが、ずっと花が咲いているのは楽しそうだと思った。御殿は皇帝の宮城より大きいのだろうか。そもそも宮城が大きすぎて想像がつかない。どんなにごちそうがあっても食べられる量には限度がある。食べたいのに食べられないのは悲しい気がする。天女の舞は見てみたいが、自分なんか相手にされないに決まっている。それとも、仙人になったら無限に食べられたり、美人に好かれたりするようになるのだろうか。
「行きたくなっただろう」
ずい、と老人が身を乗り出す。
「うーん、仙人の世界って、空の上にあるんですよね」
「そうだ」
「じゃあ、別にいいっす。空の上にあるなら、仙人の世界には空がないんでしょ。俺、空見上げるの好きなんで」
空はどこまでも続いている。晴れていても曇っていても雨が降っていても途切れない。目が届く限り一番遠い空の下に何があるのかと考えるのは楽しい。珍しい草木でなくても、美しい天女でなくてもいい。石ころ一つでいい。璃央には想像するのが愉快だった。
「空より珍しくて高価なものがごまんとあるぞ」
「うん、でも、そういうのって見たり食べたりしたらおしまいじゃないっすか。今おじいさんに聞いて半分くらい終わった感じかな」
何があるかわからないから胸が高鳴る。子どもの頃からそうだった。路地の行きつく先、いつも閉まっている扉の向こうを想像するのが好きだった。確かめてみたくて近所の木や屋根に登り、叱られたのも一度や二度ではない。もう聞いてしまった仙人の世界より、今自分が登っている山の向こうの景色を知りたい。
老人は呆けたように璃央を見ていた。がっかりさせてしまったかもしれない。
「あの、なんか、すいません」
「何を謝ることがあるものか! よいぞ! 実によい!」
老人は再び驚くような力で璃央の肩を叩き、大声で笑った。何がそんなに面白かったのかわからないが、失望させていないようでよかった。
「おっと、引き止めすぎたな。日が暮れては大変だ。さあ、行きなさい。天に愛され地に慈しまれた子よ」
「天に……なんスか」
「士鵠様には、おれと会ったとは言わぬ方がよい。実はちっとばかし怒らせているからな。機嫌が悪くなるだろう。ほれほれ、水筒をきちんとしまえ。おれの顔なぞ見ていても仕方がないぞ」
璃央は荷の口を開けて水筒を入れた。ふと気づいて、もう一度取り出す。水筒が重い。栓を抜くと、縁まで水が入っている。
「おじいさん」
顔を上げると老人はいなかった。
「すげぇ」
これが仙人の神通力か。老人は士鵠の弟子だと言っていた。弟子がこれほどならば、士鵠はもっと素晴らしい力を持っているに違いない。金丹もたくさん持っているだろうから、少しは分けてもらえるはずだ。心が軽くなり、璃央は勇んで山を登っていった。
ふいに木々が途切れ、頭上が開けた。日が傾いて黄色みがかった空を見上げ、璃央はほっと息をついた。やっぱり、空が見えると安心する。生きてここに立っていると実感できる。
目の前には民家が建っていた。着いた、と思うと心臓がひとつ大きく鳴った。仙人の家なので大御殿を想像していたが、規模だけなら麓の村の長の家と大して変わらない。しかし、村長の家より豪華だ。門は彫刻が多く立派だし、観音開きの木戸は分厚い。敷地を囲む背の高い石塀は混ぜ物もなくなめらかで、青緑色の瓦が秋の日を受けてつやつやと輝いている。
「すいませーん。こんにちはー」
呼びかけてみたが、応答がない。取次いでくれそうな下男も見当たらない。門からは短い通路が伸び、中庭に続いているようだ。勝手に入ったら怒られるだろうか。皇帝の使いだから大丈夫だろうと気楽に考え、璃央は門をくぐった。通路を抜けて中庭へ入る。
「すいませーん」
中庭でもう一度呼んだが、誰も出てこない。鶏が真っ赤なとさかを振りながら歩いている。左手に小さな菜園があり、紫色のつるに豆が生っていた。隣の簡素な厩では、老いた馬が一頭水を飲んでいた。璃央が近づくと水桶から鼻先を上げ、光のない目でじっと見つめてくる。貧相な馬だ。枯れたすすき色に、褪せた茶のぶちがぼんやり浮かんでいる。たてがみは細く、しおれて首に張りついていた。
「お前のご主人様は出掛けてるのか」
璃央は荷を下ろし、腰の手拭いを取って馬の目やにを拭ってやった。動物はなんでも好きだが、馬は特に好きだ。賢くてやさしい。璃央を邪険にしない。璃央が頬に触れると、老馬は自ら頭をすり寄せてきた。
「留守番はお前だけか」
璃央の言葉がわかるのか、老馬は顔を鶏に向けた。
「そっか、ふたりで留守番なのか。お勤めご苦労様だな」
「誰だ。何をしている」
ぴんと張った弦のような声が聞こえ、璃央は振り返った。門に続く通路の脇に若い男が立っている。身長は璃央より少し低い。目鼻立ちのはっきりした顔で、奥が見通せないほど黒い瞳が印象的だった。袖口の広い濃緑色の上着を着て、袴の裾を紐でくくっている。白い革の履は見慣れない形をしていた。髪は結っているが髷にはせず、馬の尾のように頭の上から垂れ下がっている。顔立ちも衣服も都の人間とは違う。士鵠仙人の弟子に違いない。急に速く動き出した心臓をなだめるため、璃央は深く息を吐いて会釈した。
「董璃央と申します。皇帝陛下の御使いとして参りました。士鵠仙人にお会いしたい。取次をお願いします」
この台詞は道中何百回も練習したので、すらすら言える。若者は黙って璃央の方へ歩いてきた。庇から出ると日光が彼の瞳の縁を紫色に見せる。若者は璃央から五歩程度のところで止まり、眉間に皺を寄せた。
「士鵠は俺だ」
「えっ」
想定では「かしこまりました。しばらくお待ちください」と微笑まれ、白い着物の士鵠仙人が登場、璃央は「ご尊顔を拝する機に恵まれ大変光栄にございます。わたくしは姓を董、名を璃央と申します」から始まる長い挨拶をするつもりだった。それも道中練習してきたが、自分が発した驚きの声ですべて吹き飛んだ。
「何を呆けている。俺に用なんだろう。さっさと話せ」
「や、でも、ほんとに? あっ、何でもないです。失礼しました」
璃央は慌てて胸の前で手を組み、腰を追って深々と礼をした。若い。若すぎる。璃央よりは年上だろうが、それでも五つか六つ。絶対に十以上は離れていない。途中で出会った老人の方がよほど仙人らしい姿をしていた。この若者は本当に仙人なのか。疑わしいが、仙人でもない若者が一人山奥に住んでいるよりは、若い仙人の方が納得がいく。猟師と炭焼きが頭をかすめたが、まるで似合わない。仙人は不老不死の金丹を飲んでいるのだから、見た目が若いのは薬効だろう。加えて、老人が言っていた。
「士鵠様はまっすぐな心の人だ。多少気難しいが、それはやさしさや臆病さの裏返しなのだ」
まっすぐな心もやさしさも臆病さもまったく感じられないが、気難しいのは当たっている気がする。そうなれば間違いない。目の前の若者が士鵠仙人だ。
「いつまでお辞儀をしているんだ。居心地が悪いからやめろ」
「すいません、じゃなくて、申し訳ございません」
覚えてきた台詞のほとんどが使えなくなってしまったが、なんとか乗り切らなければならない。
「えーっと、わたくしは皇帝陛下の御使いで」
「それはもう聞いた。用件を話せ」
「皇帝陛下は不老不死の金丹をご、ご……ご要望? ご所望? で、このたび士鵠仙人に、あり、あらせられられましては」
金丹ください、と言いたいだけなのにどうしていいかわからない。
「あ、そうだ!」
勅書がある。不慣れな言葉遣いにおろおろせずとも、最初から出せばよかった。璃央は荷物から漆塗りの箱を出した。受け取って以来恐ろしくて開けていないので、中を見るのは璃央も初めてだ。そうっと蓋を取ると、金色の背表紙をつけた絹の巻物が入っていた。
「勅書です! 読んでください!」
璃央が両手で差し出した勅書を、士鵠は片手で受け取った。ぞんざいな手つきで広げ、目を通していく。勅書の端が地面に落ち、璃央は慌てた。勅書だ。皇帝の命令が書かれ、玉璽が押されている。この世に存在する木簡、竹簡、書籍、その他文字が書かれたものの中で一番権威がある。たとえほんの少しでも地面に落としていいはずはなく、不敬罪に問われるには十分だ。璃央には士鵠を咎める気はないが、ないからこそ、ひやひやしてしまう。
皇帝の使者なら士鵠の振る舞いを叱責すべきだろう。しかるべき手順を踏んで罪を問い、罰する。そんなのは嫌だ。罰するとはつまり何かの責苦を負わせることだ。笞打ちか労役かわからないが、誰かが苦しい思いをする。皇帝という、会ったことも見たこともない誰かが書いたものの端が地面に落ちただけで。璃央は横を向いて勅書が目に入らないようにした。
「話はわかった」
士鵠は勅書を元通りに巻き、片手で差し出した。璃央は両手で受け取り、てのひらでそっと土ぼこりを払った。返却する前にもっときちんと払っておこう。
「帰れ。金丹はやらない」
「え、なんでですか!」
「世のため人のためになる話であればと思ったが、我欲じゃないか。それに、俺は皇帝が嫌いだ」
一人で来てよかった、と璃央は心の底から思った。今の言葉だけで申し開きの余地なく笞打ち二十回が確定する。
「皇帝陛下が嫌いってなんですか。まさか、知り合いっすか」
「知り合いなわけないだろう。今の皇帝が誰かという話じゃない。俺は皇帝という存在が嫌いなんだ。まず、こんな布きれ一枚で誰も彼もが自分の思い通り動くと思ってるのが気に入らない。さらに戦争をする、無駄に大きな建築物を造る、酒色に溺れる。その金をまかなうために税を重くする。歴代みんなそうだっただろう。その上、不老不死の薬? 冗談じゃない」
士鵠は燃えるような目で璃央をにらみつけた。自分は皇帝ではない。ただの使い走りだ。文句を言われても困ってしまう。
「あの、でも、ちょっと待ってください」
困ってしまうが、すごすご帰るわけにはいかない。
「戦争って、やりたくてやってるわけじゃないと思うんです。たぶん、よその国が攻めてくるのを防いだりとか、そういうのもあるはずで」
「防衛戦は理解している。では、先年の南方遠征は? 攻められたわけではないだろう。軍が占拠した地域には大きな川の分岐点があった。交易は活性化したそうだが、そのために元々住んでいた人々を殺して土地を奪うのは防衛か」
「えっと、あれは、蛮族討伐で」
「蛮族の定義とはなんだ。殺戮と略奪は野蛮ではないのか」
反論できない。この話題は不利だ。
「戦争はそうかもしれないですけど、でかい建物は、権力を見せるっていうか、それだけで他の国を怯ませて攻め込んでこないようにするっていうか」
「大きなものを作らなければ示せない権力は、要するに小さいんだろう」
この話も駄目だ。次。
「建物もそうかもしれないですけど、あと酒もちょっと置いといて、女は必要ですよね。世継ぎがいないと困るし」
「不老不死になったら世継ぎなどいなくてもいいだろう。皇帝が死なないんだからな」
その通りだと思ってしまった。
「戦争がしたいなら、何かを建てたいなら、酒を飲んで女をはべらせたいなら、自分が畑を耕して得た金でやればいい」
士鵠が言葉を発するたび、璃央の頭から言葉が消えていく。
「わかっているのか。お前を派遣するのにかかった費用は誰かが血を吐いて納めた米や絹だ」
頭の後ろを殴られた気分だった。旅費は半分以上を父に借りた。父の給金は宮廷から出ている。真っ白な頭の中で、士鵠の言葉だけがあちこちにぶつかって鳴っている。
「どうせさっきのは誰かの受け売りだろう。だからすぐに行き詰まるんだ」
もう一発殴られた。
「お前だって本当は皇帝などろくでもないと思っているんだろう」
そんなことはない、とすら言えない。皇帝がろくでもないかどうかなんて考えもしなかった。士鵠の言う通り、今の問答はすべてどこかで聞いた誰かの言葉だ。誰の発言かすら思い出せない。皇帝について璃央が知っているのは一つだけだ。敬い、称えなければ父が不機嫌になる。裏を返せば、皇帝に認められれば父によろこんでもらえる。
「金丹がいるんです。お願いします。金丹ください」
万策尽き、璃央は地面に両手と膝をついて頭を下げた。額に触れた砂はざらざらしていて、息を吸ったら土ぼこりでむせそうになった。頭を下げるのに抵抗はない。惨めだとも思わない。子どもの頃から、ありがとうございます、ごめんなさい、お願いしますを唱えながら生きてきた。勅書が通じないならどうしようもない。璃央にできるのはこれだけだ。
「やめろ。誰かがひれ伏す様など見たくない。それに、頭を下げるだけ無駄だ。金丹はない」
「え、えっ、金丹ないんスか」
勢いよく顔を上げたら口に砂が入った。反射的に吐き出したら士鵠が眉を寄せたが、出してしまったのだからもう遅い。それより金丹だ。まさか、ないなんて。とぼとぼと山道を下る自分が見えた。とぼとぼと元来た道を帰り、父に叱責され、同僚に笑われ、少ない給金から借りた旅費を返す。喉が詰まって息ができなくなりそうだ。
「ない。今作っている最中だ」
「じゃあ、できたらあるんですね!」
よかった。とぼとぼ帰らなくていい。
「できてもお前にはやらないから帰れ」
「そこをなんとか!」
「お前、俺の話を聞いてたか。俺は皇帝が嫌いだ。お前は金丹を皇帝にやろうとしている。この流れでどうしてもらえると思ってるんだ。馬鹿なのか」
「士鵠様が皇帝陛下が嫌いなのはわかりましたけど、俺は金丹が必要なんです」
璃央は背筋を伸ばして士鵠を見上げた。しばしの沈黙のあと、士鵠は門を指した。
「出ていけ。もたもたしていると日が暮れるぞ。夜になる前にさっさと山を下りろ」
士鵠は冷ややかに言い、門に続く通路の右の扉から部屋へ入ってしまった。璃央は詰めていた息を吐き出した。目の前を鶏がのんびり歩いていく。璃央は立ち上がり、袴の土ぼこりをはたいた。厩の脇に置いていた荷物を背負うと、老馬が鼻先を寄せてくる。
「まだ帰らないけど、出ていけって言われたから一回出る。また明日な」
門を出て荷物を下ろし、璃央は土壁を背に座った。携帯食は余分がある。弟子の老人のおかげで水もある。今日は風もない。夜は冷え込むが、死にはしないだろう。璃央は野宿を決めた。明日になったら、もう一度士鵠と話す。今日は駄目でも、明日には何かが変わるかもしれない。
問題は、どうやって士鵠を説得するかだ。まさか士鵠が皇帝を嫌っているとは思わなかった。璃央の周囲に皇帝を批判する者はいない。士鵠があまりに堂々と嫌いだと言うから面食らってしまった。あの調子では、なかなか折れてくれないだろう。
璃央は空を見上げた。空には乾きかけた筆で擦ったような雲が浮かんでいた。鳥が飛んでいく。ねぐらに帰るのかもしれない。鳥はねぐらまでしか飛ばないが、空はもっと遠くまで広がっている。
空の下のどこかには、皇帝が大好きで璃央に快く金丹をくれる仙人がいるかもしれない。山道で出会った老人のような、朗らかな人物だろう。璃央が訪ねていったら旅の労をねぎらってくれて、温かい食事と寝床を提供してくれる。帰るときには金丹だけでなく、父や兄への土産も持たせてくれる。ひとりくらい、そんな仙人がいてもいいはずだ。
「何をしている」
思いの外長く空を眺めていたらしく、首を戻したら痛かった。気づけば東は暗くなり、雲は濃い紅色に染まっている。士鵠は出ていけと言ったときと同じく、不機嫌そうに璃央を見下ろしていた。
「夜になる前に山を下りろと言ったぞ」
「今日はここで野宿しようと思って」
璃央は山道に目を向けた。木々の合間は空より暗い。じきに足元も怪しくなるだろう。今からでは山を下りられないが、野宿を決めているので支障はない。
「入れ」
「え、入れてくれるんですか」
「狼が出る。食われたくないだろう」
食料と気温は考えの内に入っていたが、狼までは気にしていなかった。もちろん食べられたくはないので、璃央は急いで荷物を担いだ。敷地内に入ると、士鵠が扉を閉めてかんぬきをかけた。空は急激に赤から紫へ傾いていく。
「ありがとうございます。士鵠様、やさしいんですね」
「当然だ。お前は放っておいたら死ぬかもしれない人間を見過ごすのか」
「あ、はい、すいません」
返答に一々棘がある。それもこれも自分が、大嫌いな皇帝の使いだからだろう。士鵠はさっきと同じ部屋に消えた。どうやら彼のやさしさはここまでらしい。部屋や寝床を貸してもらえるとは思っていなかったし、軒があるだけでも夜露がしのげてありがたい。璃央は中庭まで進んだ。鶏はもういなかったが、脚を畳んでいた老馬が顔を上げた。
「明日って言ったけど、今日のうちにまた会えたな」
璃央は携帯食をかじり、水を少し飲んで厩の横木をくぐった。汚れた藁を脇へ押しやり、老馬の隣に腰を下ろす。もたれても、老馬は嫌がる素振りを見せなかった。
「お前のご主人、やさしいんだかやさしくないんだかわかんないな。たぶん、やさしいんだろうけどさ」
同感だとでも言うように、馬は首を揺すって低く鳴いた。
「ご主人の部屋、ほんとにあそこか。あそこ、召使いの部屋だろ」
通常、門の脇は召使いの部屋だ。主人の部屋は、中庭を挟んで門の反対側にある。一人で暮らすには広い家だが、他に誰かいないのだろうか。山中で出会った老人以外にも弟子はいるのだろうか。金丹はいつ完成するだろう。なんと言えば金丹がもらえるだろう。疑問がぷかりぷかりと浮かんでは、答えが出ないまま沈んでいく。璃央は馬の首筋に頬を寄せた。温かい。明日になったら金丹がもらえる画期的な案を思いつくといいなぁ、と思っているうちにまぶたが落ちた。
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