『俺にだけ美しく見える彼女達』勇者パーティを追い出された俺は速攻で奴隷商に走って行きました!

石のやっさん

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第7話 カナSIDE 身も心も

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私は多分、それなりに身分があり、裕福な家の娘だったのかも知れない。

記憶にある家族は薔薇が咲いている綺麗な大きな屋敷に住んでいて、良い身なりをしていた。

多分、貴族だったのかも知れない。

お父様もお母様も兄も妹も皆が幸せそうに笑っていた……

だけど、家族なのにそこに私の居場所はない。

私は屋敷に入る事は許されず家畜小屋で暮らしていた。

お父様、お母様と小さい頃に呼んだ時は、死ぬんじゃないかと思う位ムチを打たれた。

使用人ですら、部屋が貰える環境で私には部屋が無かった。

私がこの家に置かれる理由。

それは『醜聞を恐れて外に出したくない』からそれだけに過ぎない。

家族はおろか、使用人から他の人からも『化け物』と呼ばれ、誰もが嫌がる家畜の糞尿処理の仕事をし、その対価に食事として残飯を一日1回貰える……それが私の日常だった。

服だって他の人のお古で変色したボロしか着た事が無い。

靴だって無くていつも裸足だった。

『死にたい』何回そう思ったか解らない。

だけど、心の弱い私は死ねなかった。

醜く生まれる……それがどれだけ辛い人生なのかは嫌って程解った。

私が綺麗に……ううん、普通の姿で生まれたら、私はお嬢様と呼ばれる存在になれたのに……

神様は酷い。

どうせ醜く生まれるなら貧乏な家に生まれれば、こんな苦悩なんてしないですんだ。

兄が妹が憎くて仕方が無い。

だけど……幾ら憎んでもなにも変わらない。

何も出来ない私は自分の境遇を受け入れるしか無かった。

私は……化け物だって……うふふっ受け入れれば悲しくない。

だから、売られた時も我慢できた。

鉱山にでも行かなければ此処以下にはならない。

『無料でも良いから引き取って』

私は全く価値が無い……化け物だからね。

仕方ないんだ……

私は自分の家名も知らない。

追いだしても大丈夫だと、判断したのね。

だから、私は奴隷商に他の女の子と一緒に売られていった。

此処からが……更なる地獄が待っていたの。

◆◆◆

「うわぁ、化け物が居るよ……」

「だけど、奴隷商の前に置いてあるんだから、一応は人間なんだよな? 魔物だったら此処に居ないよな?」

「……」

言い返せば、もっと酷い事を言われる。

私にはただ黙って顔を隠している事しか出来なかった。

私は売り物でも無いんだ……他の子は全員奴隷商の中に居るのに、私だけは店の前に置かれている。

奴隷じゃない……只の『見世物』なんだ……私。

ふふふっ化け物なんだ……化け物なら、いっそう本物の魔物に生まれた方が良かったよ。

なんでこんな惨めな生き方しかできないのかな……

綺麗になんて贅沢は言わない……普通、ううん、ブサイクで良い。

ちゃんと人間として生きられる容姿に生まれたかったな。

碌のご飯も貰えない。

水も食事も1日1回。

排泄も人が見ている状態で檻の中。

ふふふっあははは……本当の化け物あつかい、もしくは獣あつかいね。

きっと、このまま……私は死んでいくんだわ。

周りの人は……私が苦しんでいるのを見るのが好きなのね。

「気持ち悪い……」

「これ、絶対に人間じゃないよ……人間だとしてもきっと魔物に犯された女から生まれたんじゃないのか」

苦しい……水も食料も真面に貰えない状態で、朝から夕方まで日陰の無い檻に入れられて……

周りから罵倒されて……

皆、化け物が苦しむ姿が見たいんだ……

私は人間じゃ無いから、目の前で死んでもどうでも良んだね……

私は見世物……化け物女……きっとこのまま檻の中で死んでいくんだね。

◆◆◆

その日はいつもと違っていた。

5人のパーティのうち1人の人が私を見ていた気がする。

貴方は良いわね、そんな綺麗な顔で。

その綺麗な女の子の誰かが……恋人なんでしょう?

醜い私を見て面白いの?

そう思っていた……

だけど……

「ハァハァゼイゼイ」

このお店が閉まる間際に走ってきた。

やっぱり、私を見ていたんじゃない……きっとお目当ての子が居たんだ。

私じゃ無くてこの店を見ていたんだ。

「おい……良かったな……買い手がついたぞ」

「……」

「買い手がついたんだ、来い」

そう言うと檻のカギが開けられお店へ引っ張っていかれた。

嘘……あの人が私を買ってくれるの?

だけど……おかしい。

絶対になにか罠があるに違いないよ……

だけど……本当に買ってくれた……なんで?

私は奴隷だから許可なく話せない……

「え~と、名前を教えてくれる?」

名前を聞かれた。

「カナです……」

「くはっ……あわわわわ、この声は……」

私の声……そう言えば話した時に気持ち悪いって言われたわ。

忘れていたよ。

「どうか、なさいましたか? やはり気持ち悪かったですか……今ならまだ取り消しもききますが」

これでもう、私なんて買う気無くなったでしょう。

私顔だけじゃない、声も化け物なんだから……また檻の中か。

仕方ないよね、化け物なんだから……

「取り消す訳がないだろうが!」

「解りました、それなら手続きを進めさせて頂きます……お客様、クネクネして気持ち悪いからそれやめて貰えますか?」

なんで嬉しそうに踊っているのかしら?

だけど、本当に買うのね……こんな化け物。

「コホン、すまない」

「それでは、この血をつかい右肩に奴隷紋を刻ませて頂きます……はい、これで終わりました。 これで彼女は命に係わる事以外、貴方に逆らえません……あとこの書類をどうぞ。 奴隷紋があるので重要ではないですが所有者証明です。手続きは以上です」

奴隷紋が私に刻まれた……

「ありがとうございます……それじゃカナ行こうか?」

「はい……」

化け物の私を握って、なんで嬉しそうな顔しているのかな?

私には理解ができないよ。

◆◆◆

「私の顔を見てどうかなさいましたか?」

私の顔をなんで見つめているのかな?

そんなに化け物みたいな顔が見たいのかな?

だけど、他の人みたいな嫌な気にならないのは何故かな。

「いや、何でも無いよ……」

気のせいか顔を赤くしているし…..

「もしかして余りに醜くくて買った事を後悔されていますか? 」

「それは無いから安心して」

話しが上手すぎる……私みたいな化け物を買って嬉しい筈がないよ。

だけど、なんで買ったのかな?

まさか……絶対そうだ……なにかに利用する為に買った。

それ以外あるわけ無いよ。

「あの……私、このあとどうなるんですか? 危ない事とかさせられるんでしょうか? この容姿ですから贅沢は言いません。だけど、お願いですから……余り酷い事はしないで下さい……お願いしますから」

「いや、そんな事はしないから、安心して良いよ! それより一旦宿屋に行こうか?」

そういう事なのかな?

一応、女ではあるから……顔を隠せば、使えない事も無いかも知れない。

「あの……もしかして、ご主人様は私を抱きたいとか思っていますか?」

言ってみて思った。

良く、顔を見たら……どう見てもカッコ良い。

普通に彼女位作れそうな気がする。

「抱きたいかと聞かれれば抱きたいけど? 今は下心じゃなく今後どうするか話し合おうと思う、それに何をするにしても、そのままじゃ不味いだろう?」

私が……抱きたいの?  私を抱きたい?

「抱きたい!? あの……ふふっ、冗談を……ですが……わかりました……ついていきます」

まさか……只の冗談よね。

こんな化け物みたいな気持ち悪い女『誰も抱きたいなんて思わないわ』

◆◆◆

宿屋に一緒に入った。

「それで、あの……私をこれからどうするのでしょうか?」

不安で仕方が無い。

手が震えてくるし、思わず泣きたくなった。

『抱かれる』ことに抵抗は無い……寧ろこんな化け物みたいなブス、抱けるもんなら抱いて見て……そう思える。

だけど、そういう意味じゃない……きっと酷い事される……此処なら、暴力も振るい放題じゃない……

「ただ一緒に暮らす相手としてカナを選んだだけだよ『一緒に暮らしたい』そう考えていただけで、そこから先はまだ特に考えてないな」

笑顔でそんな事を言ってきた。

貧乏だから、私みたいな醜い奴隷をかったのかな?

そう思ったけど、違ったようだ。

その後、私を見ると……

「俺から見たらカナは凄く可愛いと思うけど?」

そんな事言いだした……

そんなわけ無い。

私が可愛かったら、こんな人生送って無い。

『化け物』なんて言われるわけない。

「それでも、俺には凄く可愛いく見えるよ!」

「世間一般ではそうかも知れない……だけど俺にとってカナは俺の好きな人に凄く似ているんだ。 はっきり言えば容姿も声もスタイルの全部好みなんだ。これは嘘じゃないよ……幾ら言われてもこれは本当の事だからね」

「理由は上手く言えないけど、俺にとって間違いなくカナは可愛いよ」

幾ら私が否定しても『私が可愛い』で通すようだ。

「取り敢えず、お風呂に入って貰えるかな」

「あの……もしかして夜伽ですか? 本当に私で良いのですか?」

可愛いなんて言われた事無い。

こんな醜い私が抱きたいなら、抱いてくれて構わない。

嘘でも……

「いや、それは嬉しいけどその服はボロボロだし、下着もまともじゃないから、お風呂で綺麗にしている間に服を買ってくるよ」

「お洋服……お洋服を買ってくれるのですか? 本当? 信じられない……」

洋服なんて買ってくれるんだ。

私に? 

「それじゃ、俺は服を買いに行って来るから、お風呂に入って、そうだな毛布に包っていてくれる」

「解りました……その、ありがとうございます」

信じられない……まさか、本当に……ううん、そんなわけないよ。

◆◆◆

ご主人様が帰ってきた。

お風呂に入って毛布に包っている私を見ている。

「なんですか!? その目……ガッカリしたんですね……私は顔だけじゃ無く、体のバランスも可笑しいんです……おかしいですよね! 手足が細くて長くて体がこんな小ぶりで……こんな可笑しな体、見たくも抱きたくも無いですよね?」

よく考えたら、私が醜いのは顔だけじゃない。

体のバランスも可笑しかったんだ……

「下着と服を買って来たんだ、取り敢えずこれ着てみてくれるかな」

そう言うとご主人様は私の前に下着と服を置いた。

どう見ても高級そうな物にしか見えない。

「新しい下着と服……私にですか? こんな服私に勿体ないですよ。醜い私にはボロキレで充分です」

なんで私は……素直に嬉しい、ありがとうって言えないんだろう。

「まぁ、良いから、隣の部屋で待っているからそれに着替えてからきて」

「……解りました」

『可愛いって』って言ってくれた人なんて居ない。

新しい服をくれた人なんて私の人生で他には居ない。

なんで、こんな親切なのか……解らないよ。

◆◆◆

着替えてからリビングに行くとご馳走が用意されていた。

床には何も無い。

パンとスープ位貰えるかな……そう思ったけど違うみたいだ。

「さぁ、カナ食事も買ってきたんだ食べよう」

食べようって私の食べ物がないじゃない……酷い。

「食事って私のは何処ですか? 見当たらないのですが?」

「そこにあるじゃないか?」

ご主人様はテーブルの上の食事を指さした。

「それはご主人様のものでは? 床に食事がありません......」

「そんな沢山俺一人で食べる訳ないだろう? 食器もフォークもちゃんと二つ並べてあるじゃないか」

「それを私が食べて良いんですか?」

椅子に座れる事も、食事を食べて良いって事も信じられなかった。

「ちゃんと二つあるだろう……良いから座ってほら食べよう」

「本当に食べてい良いんですね?」

「ああっ」

「それでは……」

こんな美味しい物初めて食べた……

「そんながっつかなくても良いよ! なんなら全部食べても良いんだから」

「(もぐもぐ)ふぉんとでふか?」

この食事……全部本当に食べて良いの。

こんなに沢山食べたのは、生まれて初めてだよ。

全部食べたのに……嫌な顔もされなかった。

なんでかな?

そして……

「本当に俺の目にはカナは凄く綺麗で可愛い女の子に見えるんだ!はっきり言えば一目惚れだよ! 見た瞬間カミナリに打たれたような衝撃を感じた……今迄の人生の中でこんなに誰かを好きになったことは無い」

可愛いだけじゃなくて一目惚れ? 好き……

私がどんなに否定しても可愛い、綺麗って言ってくる。

『本当に俺はカナが好みなんだよ! あの奴隷商の中に居たエルフよりも誰よりもカナの容姿の方が綺麗に見える。それは幾ら言われても変わらない……だいたい、嫌いな相手にご馳走を振舞ったり、新しい服を買ってあげたり普通はしないだろう?』

本当に好きなんだ……

生まれて初めて可愛いって言ってくれた。

綺麗だっていってくれて新しい服に豪華な食事まで……

流石にもう否定するのはおかしいよね。

それなら……

「確かにそうですね……それじゃリヒト様に聞きますが、私はどう言う目的で買われたのですか? 本当に愛玩ようとして私を買ったのですか……」

愛玩じゃないって否定できない。

こんなカッコ良い人が……うん、どう考えてもご褒美にしか思えない。

「もし、リヒト様が愛玩用で私を買ったのでしたら、何をしても構いません。リヒト様が望むなら何でもしてあげますよ! だけど、私にこんな事言われても気持ち悪いでしょう? もういい加減に......うん!?うぐっぷはぁ……何を……するのですか」

いきなりキスされた。

本当に私が好きなのかな……ううん、化け物にキスなんてしないから、リヒト様にとって私は『女』なんだ……そう思った。

「何でもして良いって言ったのはカナだからね……」

「解りました……こんな醜い私を本当に愛玩用として望むのですね。私を欲しがる人がいるなんて思いませんでした。だったらカナは『何をされても構いません。リヒト様が望むなら何でもしてあげます』よ」

リヒト様は私を化け物と見ないし、ちゃんと女の子として見てくれる。

綺麗な服に美味しい食事……歯が浮く様な優しい言葉。

だったら、私だって何か返してあげたい。

「いや……愛玩用じゃなくて……」

と否定されたのが悲しくて一瞬目の前が暗くなったけど……

まさか……

「いや、愛玩奴隷じゃ無くて『恋人になって欲しい』そう言いたかったんだ」

「さっき、俺キスしたよね? 普通に考えて『醜い化け物』そう思っている相手にキスなんてしないと思わない? それは解るよな」

「今日会ったばかりでなんだけど、俺はカナの恋人になりたいって本当に思っているんだ」

もう否定できないよ……

「グスッ信じて良いんですか?」

「寧ろ信じて貰えないと困る……」

此処までしてくれて、私が好きだって言ってくれるなら。

ちゃんと答えなきゃ……私は凄く恥ずかしかったけど、メイド服のブラウスに手を掛けボタンを外し始めた。

「だったら、カナは今からリヒト様の物です。なんでも喜んでしますし、リヒト様がしたい事自由にして貰ってもかまいません……どうぞ……」

恥ずかしいけど胸をリヒト様に曝け出した。

「ちょっと待って! そういうのは、そうカナが俺の事を好きになったら!うんうん、好きになってからで良いからっ!」

私はリヒト様の目をじぃーと見つめる。

リヒト様は解ってないのかな……

「それなら気にしないで良いですよ! リヒト様はカナの事が好きなんですよね? カナもリヒト様の事大好きですよ! 胸でもお尻でも好きな所自由に触ったらいいじゃないですか? 直に! ああっ、そうですね、いっそうの事、このメイド服も脱いじゃいますか?」

「カナ、ちょっと落ち着こうか? そうだ、今日はもう夜遅いから寝よう……うん、なんだか疲れたな……うんうん疲れた」

私、もう充分落ち着いてますよ。

私を可愛い、綺麗なんて言ってくれた人は誰も居なかったんですよ?

両親も兄妹からも嫌われて誰からも私は愛された事がないんです。

リヒト様が好きだっていった私はそんな女の子なんですよ?

この世界の人全てが化け物、醜いって言ってきて、私人扱いされてないんです。

そんな子に『好き』なんて言ったら……好きになるに決まっているじゃないですか!

カナはもうリヒト様の物ですよ……身も心も……ね。


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