20 / 42
第20話 二人目 ミア
しおりを挟む「それじゃ、行ってきま~す!」
「リヒト、今日も何処に行くの? きょうは仕事しないで良いの?」
「期待されても困るけど、一応カナの友達探しな……」
「私の友達探しですか……本当に探してくれていたんですね。ありがとうございます。 それなら、私も……」
「いや、良いから」
流石に奴隷商、しかも、その中でも一番酷いであろう店にカナを連れていきたくなかった。
「でも……」
「俺がもし購入するとしたら、カナみたいに酷い目にあっている子なんだ……だから、出来るなら留守番していて欲しい」
「そう言う事なら……」
どうやら納得してくれたみたいだ。
◆◆◆
俺にとってカナが居れば充分だし、他に女性は要らない。
だけど、カナの寂しい気持ちも解る。
今迄、一人ぼっちで生きて来たカナ。
今は俺がいるとは言え留守にする事も多い。
『友達が欲しい』当たり前の事だ。
だが、男を近づけるのは嫌だ。
それじゃ女なら誰でも良いのか?
これも問題がある。
多分、どんな美女を買ってもカナと同じように愛せない。
ハリウッドスター並みに綺麗な子ならエルフや落ちぶれた貴族の令嬢には恐らく居る。
だが、俺は人形者。
フィギュアやドールを愛する存在。
決して出会う事が無い『理想の彼女』カナに出会ってしまった。
きっと、俺はカナと差別する。
いや、それ以前に迎えた相手もカナを嫌うかも知れない。
『難しいな』
俺は奴隷商の言うとおり奴隷市場の前まで来た。
見た感じ、市場の入り口では何人かの男が立っていてお金を取っているようだ。
『入場料銅貨5枚、但し奴隷購入時はこの金額はお返しします』
そう書いてある。
だが、俺の目当てはそこではない。
俺の目当ては、奴隷市場の外、テントみたいな場所で売っている奴隷。
そっちだ。
「すみません、少し見せて貰えないでしょうか?」
「どうぞ、どうぞ……安いよ! 本当に安いよ……質は良く無いけど」
思ったより……酷いな。
「あの、女性の奴隷が居たら見たいんですがいますか?」
「居ますが……こんな所で売られているのはババアか性病持ちか、容姿に問題がある存在だけですよ」
「若くて、性病持ちじゃ無くて……」
「それなら奴隷市場の中に行ったほうが良いですよ」
「変わった容姿をしている女性を見たいんだが」
「変わった容姿ですか……それはうちには居ないな。見世物にするような奴なら、あっちに『豚女』と『ゴブリンガール』って奴がいますが流石に見世物にするにも酷すぎるって言っていましたよ」
どちらも酷いな。
「他には居ないのか……」
「他にも居るかも知れないけど、まぁ地道にテントを回ってみるしかないな……しかし、そんな気持ち悪い存在買って本当にどうするの?」
「まぁ……蓼食う虫も好き好きって事で……」
「? それどういう意味ですか?」
「はははっ、何でも無いです」
「『豚女』はそこの右のテント、左のテントの方に居るのが『ゴブリンガール』だ。それ以外にも居るかも知れないけど、俺が知っているのは、それ位だな」
「ありがとう」
名前からしてどちらも碌な存在じゃない様な気がする。
どっちから見るか?
近い方、豚女から見るか……
「すみませ……いや、もう良い」
見た瞬間から解った。
そこの檻に入っているのが『豚女』だ。
ただのデブだ……な。
「ああっ、そうか……豚女って聞いて見に来たのか? まぁこれじゃ中途半端だな」
「はい……」
良い意味でも悪い意味でも中途半端。
只の想いっきり太っただけの女だ。
ハァ~これじゃ、もう一人も期待は出来ないな。
だが、見るだけ、折角だから見て見るか?
「いらっしゃい……」
「あのゴブリンガールって言う子が居るって聞いたんですが?」
「ああっ、余りに不評だから引っ込めたんだ見たいのか?」
「はい」
「それじゃ、悪いが銅貨1枚くれないか? 見世物扱いと言う事で」
銅貨1枚なら良いか。
「はい、銅貨」
「毎度~それじゃ奥にどうぞ」
幾つか檻があるが、居るのはまぁ普通のおばさんか男が多い。
うん……普通の奴隷だ。
「他には……その見世物みたいな若い子はいるのかな?」
「今回のジャンクでは、此奴と豚女しか居ませんね……どちらも、見世物小屋には向かないみたいで売れ残っています。豚女はみました?」
「見ましたが……あれは太った中年女ですよね?」
「あはははっ、そうですね……ですがゴブリンガールは、結構気持ち悪いですよ。あと碌に歩けないので本当の役立たずです」
「はぁ」
これは駄目だな。
「それじゃ、その奥の毛布で包んである檻です。 毛布どけて自由に見て下さい」
「解りました」
最悪、気持ち悪かったらどうしようか。
毛布を捲り見てみた。
これは……何処がゴブリンなんだ。
茶色のセミロングヘア―でロリ系アニメのヒロインの様な顔立ち。
身長は130cmくらいしかない。
頭が明らかに大きく、それに比べ体が凄く小さく見える。
頭が大きい5等身位の体型だから『ゴブリンガール』そう言う事か?
カナの傍に立ったらこれなら『妹』みたいに見える。
「あの、この子……」
「凄く気持ち悪いだろう? 目が凄く大きくて鼻も口も小さい、それでいてこの大きな頭、どう考えてもバランスがおかしいよな」
俺には変身する前の魔法少女。
もしくはロリコンマンガのヒロインにしか見えない。
「そうかもな……それで話をさせて貰っても良いかな?」
「どうぞ……」
「あの名前はなんていうの?」
「ミアです……役立たずですが買って下さい」
「役立たず?」
「此奴、頭が大きくて体が小さいでしょう? 良く転ぶんですよ。だから碌に仕事の手伝いもできない。言っておくが見世物位しか使い道がないんです……欲しければさっきの銅貨1枚でそのまま譲るよ。その代わり奴隷紋の代金として銀貨3枚は貰うけど」
銅貨1枚、たった1000円か。
「幾らなんでも安く無いか?」
「いや、村から買う時に欲しく無かったんだけど、此奴を引き取らないと他の女を売らないと言われて仕方なく引き取ったんだが、これじゃ売れないだろう? しかも奴隷法で最低限の生活は保証しないとならねーから金喰い虫なわけよ。どうだい気に入ったなら引き取らないか?」
「ううっ、本当に役立たずですが……買って下さい。もうひもじいのも寒いのも嫌なんです……何でもしますから見世物でもなんでもしますから……」
「どうしますか? 流石にこれは嫌ですよね。ですが奴隷は銅貨1枚以下にしちゃいけないんです……」
「それじゃ買わせて貰おうかな、奴隷紋の代金銀貨3枚で良いんだよな?」
「それで構いませんが、一応確認ですが見栄えが悪いだけじゃなく、此奴は真面に歩けないから仕事も出来ませんよ? それでも良いんですか?」
「構わないよ。それじゃ商談成立だな」
本当に役立たずみたいだけど、カナの友達ならそれでも良いかも知れない。
それにまるでちびキャラみたいで可愛いし。
良いか。
48
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる