『俺にだけ美しく見える彼女達』勇者パーティを追い出された俺は速攻で奴隷商に走って行きました!

石のやっさん

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第24話 ミアSIDE

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まさか自分が買って貰えるなんて思わなかった。

醜い顔に真面に歩けない体……買い手のつかない私は『ゴブリンガール』人間扱いなんてされない見世物奴隷だ……

奴隷市場のオークションにも掛けられる事も出来ない私……安物しか扱わない奴隷商人の中で一番醜く売れない最低の奴隷、それが私だった。

最初は見世物感覚で店先で売られていたけど……私を見てお店から離れていくのを見て店主が店の奥に引っ込めた。

顏が醜く体型が可笑しく上手く歩けない私。

誰も買う訳が無い。

私は人じゃない……ゴブリンガール。

これなら、本物のゴブリンの方が良かったな……

ゴブリンなら、オスのゴブリンが相手してくれる。

だけど、私は醜い人間、ゴブリンじゃない。

「チェッ、こいつ死なねーかな!」

奴隷商人はうっぷん晴らしの為に私の檻を暇さえあれば良く蹴った。

「此奴がいると他の客が寄り付かねーから、毛布でも被せておくか」

「此奴どうしますか?」

「まぁ、生涯倉庫にでも突っ込んで放っておくしかねーな。本当に奴隷保護法は面倒くさいな! 処分も出来ねーし」

私は本当に誰からも必要とされない。

きっと檻の中で嫌われ、この毛布は外されずに死んでいくんだと思う。

蔵から出た時に見た空は綺麗だった。

初めて見た空は凄く青くて本当に綺麗だった……もう一度見たいな。

でも、もうきっと私は......二度と空は見れないなんだろうな。

◆◆◆

何もやる事が無いから、ただ寝ていた。

せめてこの毛布が無ければ外を見る事は出来るのになぁ。

今はただ寝ながら音を聞く事しか出来ない。

「それじゃ、その奥の毛布で包んである檻です。 毛布どけて自由に見て下さい」

「解りました」

声が聞こえて来た。

どうせ、また見世物扱いだよね。

私を見て、また『ゴブリンみたい』『気持ち悪い』って騒ぐんだよね。

私みたいな化け物……買うわけが無いもんね。

「あの、この子……」

「凄く気持ち悪いだろう? 目が凄く大きくて鼻も口も小さい、それでいてこの大きな頭、どう考えてもバランスがおかしいよな」

そんな事言われなくても解っているよ……

私は見世物なんだもんね。

だけど……何故かな?

この人の目が優しく見える。

今迄の人と違う気がする……

「そうかもな……それで話をさせて貰っても良いかな?」

話しをしてくれるんだ?

「どうぞ……」

許可が出た……これが最後のチャンスかも知れない……

多分、この人に買って貰えなければ……きっと私は暗い中で死んでいく運命しかない。

「あの名前はなんていうの?」

「ミアです……役立たずですが買って下さい」

最後の力を振り絞って声にだした。

だだでさえ醜いのに、私にはさらにハンデがある。

「役立たず?」

「此奴、頭が大きくて体が小さいでしょう? 良く転ぶんですよ。だから碌に仕事の手伝いもできない。言っておくが見世物位しか使い道がないんです……欲しければさっきの銅貨1枚でそのまま譲るよ。その代わり奴隷紋の代金として銀貨3枚は貰うけど」

役立たずだから……無理だよね。

「幾らなんでも安く無いか?」

安い……!?

「いや、村から買う時に欲しく無かったんだけど、此奴を引き取らないと他の女を売らないと言われて仕方なく引き取ったんだが、これじゃ売れないだろう? しかも奴隷法で最低限の生活は保証しないとならねーから金喰い虫なわけよ。どうだい気に入ったなら引き取らないか?」

ここで買って貰えないと多分、もう私は暗い中で死ぬしかない。

毛布もくれないし、食事も他の奴隷はパンにスープなのに、私はパンしか貰えない。

水すら貰えない時もある……

「ううっ、本当に役立たずですが……買って下さい。もうひもじいのも寒いのも嫌なんです……何でもしますから見世物でもなんでもしますから……」

お願いですから……買って下さい……

神様……

「どうしますか? 流石にこれは嫌ですよね。ですが奴隷は銅貨1枚以下にしちゃいけないんです……」

「それじゃ買わせて貰おうかな、奴隷紋の代金銀貨3枚で良いんだよな?」

これで助かるのかな……

「それで構いませんが、一応確認ですが見栄えが悪いだけじゃなく、此奴は真面に歩けないから仕事も出来ませんよ? それでも良いんですか?」

「構わないよ。それじゃ商談成立だな」

買って貰えた……

だけど、この人、今迄の人達とは全然違う。

今迄の人は見た瞬間から目をそらしたり、罵って直ぐに歩いていっちゃったけど……この人は私の事をずうっと見つめていた。

どうしてなのかな?

◆◆◆

「本当に役立たずで、ごめんなさい……」

買って貰っても私は何も出来ない……

今も真面に歩く事が出来ずにいる。

それなのに……

「気にする必要はないよ、知った上で買ったんだから」

「それなら良いんですが……」

微笑みながらご主人様は笑顔で私をおぶってくれている。

凄く優しい......

気のせいか、私をまるで宝物みたいに大切そうにおぶってくれている気がする。

「そう言えば、奴隷になる前はミアは何をしていたの?」

「私は何もしていませんね……こんな容姿ですから小さい頃から蔵に閉じ込められていました。 ただ、頭が少しだけ良かったみたいで、蔵で暮らしながら書類仕事だけしていました」

私の事なんて興味を持ってくれた人なんて居なかった。

「もしかして、ミアは良い家の子だったりするの?」

「どうでしょう……解らないですよ……蔵から出た事が赤ん坊の頃から殆どなくて、ただ文字や数学を習って、書類仕事をしていたですから……ですが、書類の内容からして村のそこそこ偉い人だったのかも知れません」

こんなに人と話した事なんて今迄無かったな。

「そう……なんだ」

『あれ、リヒトじゃないか? また変なのを連れているぞ』

『あの背中の物体は人間なのかな? 新種の化け物なのかな?』

『私A級冒険者のリヒトさんに憧れていったけど、ブス専とおり越して化専だったなんてショックだわ』

『あの英雄リヒトがあそこ迄壊れるなんて……あれ狩った魔物とかじゃないだよな』

『こういう時は見ないであげるものよ』

『そうよ、見ないであげるのが思いやりよ』

私なんかを連れているからご主人様が馬鹿にされている。

本当に良いのかな?

「あの……」

「まぁ、気にしないで良いよ! 俺は皆からブス専だと思われているようだから……」

「そう、なのですか? 」

「まぁね、俺から見たらミアもかなりの……美少女だよ」

私が美少女?

この醜い私が美少女……本当なのかな?

そんな事......あるの?

私が呆然としているとご主人様が私の年齢を聞いてきた。

「ミアって何歳?」

「やはり聞いちゃいますか? 実は結構な齢なんですよ! もう成人年齢は過ぎていますよ……それ以上は内緒です!」

「そう……大人なんだ」

「ご主人様よりは確実に年上だと思います!」

「へぇ~」

私は子供みたいに見えるけど、実は成人しています。

もしかしてご主人様は、あっちの方を期待しているのかも知れません。

ですが……

「あの、ご主人様、もしかしてHな事考えていますか?」

「いや、それは考えて無いけど?」

違うのかな……

「もし期待していたなら……ごめんなさい……出来る事は少ないです」

「一応、聞くけど? なにか理由があるの?」

「実はですね……」

なんてことは無い。

私は此処でも役立たずなんです。

バランスの悪い体だから、真面に相手が出来ません。

「そうなんだ……」

「一応奴隷なんで、男性の上に跨ってみたのですが力が抜けて頭突きしてしまって……相手の鼻の骨が折れちゃって大変な事になりました」

一応、研修は受けたのですが、真面に相手出来なくて怪我ばかりさせてしまいました。

この大きな頭で頭突きしたら、本当に危ないんです。

「そうだったんだ……ああっ着いたよ! それじゃ入ろうか? 最初に言っておくけど、仲間がもう一人居て、ミアに友達になって貰いたいんだ」

「私とですか?……逆に相手が……」

「多分、大丈夫だよ」

ご主人様は特殊な人だと思います。

私を見て気持ち悪く思わない人が……もう一人いる。

そして友達になってくれたら......凄く嬉しいです。

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