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第10話 たった1回で
しおりを挟むトントントン
なんだ、こんな朝早くから…まだ早朝じゃないか…
「ふわぁーあ、こんな朝早くからどうしたんですか?」
黒服の紳士が立っていた。
顔は知らないが、この服は知っている。
この服は、高級娼館カティの制服だ。
「実は、泊まられた勇者様が、どうしてもリヒト様を呼んで欲しいという事で来ました…早朝から申し訳ございませんが、カティまで一緒に来て貰えませんか?」
ガイア…一体何を考えているんだ…
「あの、どう言ったご用件なのでしょうか?」
「詳しい事は、会って話すそうです」
まだ早いから、行って帰ってきてからでも、朝食の準備は間に合う。
仕方ない。
行くしか無いか。
「解りました。同行します」
訳も解らないまま俺は後をついていった。
◆◆◆
カティに着くと、ガイアがコーヒーを飲んで待っていた。
「よう!リヒト昨日はありがとうな」
しっかり抜いて貰ったのだろう…此処の所あった険しさがとれ好青年に見える。
しかも凄い笑顔だ。
初体験を終えたあとは…殆どの場合はこんな感じになるんだよな。
「それでどうしたんだ? 昨日は充分楽しんだんだろう?」
「まぁな、朝までな…」
男の赤い顔見てもな…
「それで、こんな早朝からなんで呼び出したんだよ!普通ならまだ寝ている時間だぞ…」
「悪いな…」
なんだガイアがモジモジしている。
うん?どうしたんだ?
楽しんだ後は帰るだけだよな?
それによくなんでガウンみたいな物着ているんだ。
「一体どうしたんだ? 俺はこれから朝飯を作るんだが、一緒に帰るか?」
「いや…それが…帰りたくないっていうか…帰してくれないというか」
何となく解かった気がする。
「ガイア、文句言ったりしないから、しっかり話せよ」
しかし凄いな…初体験で此処迄はまるか。
「それが昨日は楽しい夜を過ごしたんだけど、このまま帰ってしまうのが寂しくてな、ティア達も寂しいって言うんだ。もう少し此処に居たいんだけど…どうにかならないかな」
まぁ相手は商売だから、太客だと思ったら金を引っ張ろうと思うよな。
ここで聞くべきだよな。
「此処に居るという事はティア嬢たちと色々楽しむという事だよな…マリア達は良いのか?」
「ああっ、それか!仲間とか、幼馴染とかで言うなら大切だ、リヒトと同じように!女と言うなら恋愛対象じゃないは解った!その、そうだ妹や姉、家族みたいな物だ」
ハァ~やっぱり、こうなったな。
経験したら『俺と同格』『姉妹みたいな存在』に格下げか。
「そうか、解った! それでガイアはどうしたい?」
「もう、暫く此処に留まって楽しみたいんだ」
「具体的にどの位の期間だ?」
「出来るだけ永くだ!」
幾らなんでも嵌まりすぎだ。
「解った、店の人と話をするから暫く待っていてくれ」
「頼んだぞ!親友」
親友か久しぶりに呼ばれたな…まぁ良いや。
お金で済む事なら、まぁ困らないしな。
◆◆◆
「ガイアから話を聞きましたが、ぶっちゃけ、どの位まで延長できるますか?」
「3人はこの店のナンバー1~3。いわば全員が看板娘なんです。他のお客様もかなり前から予約を入れている方も多く居ますので全員貸し切りは困ります。」
だよな。
エルフ2人にダークエルフ1人。
普通に考えて『人気嬢』当たり前だ。
「それで、断らないで態々俺を呼んだという事は何かしら方法がある。そういう事じゃないのか?それとも俺に連れ帰って欲しいとか? そう言う事かな」
「いえ、ガイア様とお話しまして3人全員1度に独占するのは無理なので、1日1人にして日替りで楽しまれてはどうか? そう提案したんですよ、そうしたらかなり乗る気でして、ただ結構な金額のものですからどうした物かと」
「それで、ガイアは随分気にいっているようなんだが、それどの位の期間出来るの?此処に住むという事だよな?」
「日替りならどの位でも構いません!ですが、そんなに気にいったなら『身請け』をされるのも良い手だと思いますが…」
流石にそれは不味いな。
『勇者だから娼婦の身請けは流石に不味い』
いや、勇者絶対主義の教皇だから…流石に無いよな。
それに勇者だから一箇所に、長く滞在は出来ない。
精々延ばして2週間が限界だな…まずは1週間で良いだろう。
「それじゃ1週間でお願いできるかな」
「それなら1日金貨5枚(50万円)×7日間で金貨35枚(350万円)お願いします」
かなり高いが『高級娼館』だから仕方が無いか。
「それじゃ昼前には持ってくる」
「ありがとうございます」
まぁどうにかなるだろう。
◆◆◆
「それで、どうだった?」
「7日間申し込んだ、それで良いか?」
「7日間? もう少し長くならないのか?」
そこ迄嵌まったのか?
娼館に住み込みで7日間でも充分異常だと思う。
前世で考えても異常だ。
「ガイア、お前勇者だろうが、忘れたのか?俺は兎も角、ガイア達は魔王討伐の使命の途中だろうが…」
「ああっそうだった、済まない」
ハァ~露骨にがっかりしたし、一瞬『忘れていた』そんな顔をしたな。
流石に『旅をしたくない』とか言わないでくれよ。
「もしかして7日間、一度も帰って来なかったりするつもりなのか?」
「勿論!」
清々しい笑顔だな。
「『勿論』は良いけど…マリア達にどう言い訳すれば良いんだよ」
流石に7日間居なくなるんだ『理由』が必要だ。
「出来たら上手く言い訳して貰えると助かるけど、バレたら正直に言って貰って構わない...但し邪魔はされたくないから、居場所だけは絶対に言うなよ!」
「解った」
まさか、たった1回の娼館通いで此処迄変わるか?
流石に早すぎだろう…
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