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第27話 心につけ込んだ

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一体どうしたって言うんだよ。

ガイアはどうしちゃったんだ。

確かにガイアは性格は悪く口も悪い。

だが、それでも『勇者』だった。

その根底には正義みたいな物があったんだ。

性格や口の悪さに隠れている『勇者らしさ』そこが彼奴の魅力だった筈だ。

だが、今回のは余りに可笑しすぎる。

今迄のは『我儘』で通るが、今回のは違う。

こんなのはガイアらしくない。

一体どうしたって言うんだ…

それよりも、今は2人だ。

「ううっすんすん、うううっガイア…」

「ガイア…どうして…」

さっきから、うわ言を繰り返している。

「リヒトくん、見ていても仕方が無いよ」

「解っているけど、ごめん…」

リタの言う通りだ。

今はやることは何も無い。

もう治療は済んだ。

ただ、問題なのは…自分の姿を見た時だ。

2人とも女の子だ。

指や、手、足は兎も角、頭部の傷は、きっと辛いだろうな。

この世界にカツラはある事はあるが、前の世界程良い物はきっと無い筈だ。

「ちょっと出かけてくるから、此処は頼んだよ!」

「リヒトくん、何処に行くの?」

「特に考えて無いけど、このままじゃ可哀そうだから、何かないか探してくる」

「そう解ったよ」

俺は当てもないまま街へ出かけた。

◆◆◆

必要な物はエルザ様に杖は購入するとして、問題は頭だよな。

頭部しかもマリアもエルザも前髪部分だから結構目立つ。

前の世界なら、幾らでも良いカツラがあったがこの世界じゃ見込めないだろうな。

冒険者ギルドに行ってみた。

案外カウンターの受付嬢が相談に乗ってくれる。

マリアとエルザの名前を伏せて相談してみた。

「ああっ、それならカツラを買えば良いんじゃないですか?」

「あるんですか!」

驚いた、まさか普通にあるのか?

「ええっ、冒険者は結構過酷な仕事ですから、良く回りを見て下さい。怪我人多いでしょう?」

言われてみれば、思った以上に怪我している人間は多い。

いつも周りに目を向けていなかったから気がつかなかったな。

「確かに」

「女冒険者では怪我人は普通にいますし、義眼や義肢の方も居ます。怪我も無く戦えているのは才能に恵まれた方だけです」

確かにそうだ。

四人が居るから俺は良く勘違いしてしまうが、世の中の人間は俺より遥かに恵まれないジョブで戦っている。

怪我するのは当たり前だ。

「それで、カツラは何処に行けばあるのですか?」

「それなら、此処で販売していますよ」

「それじゃ見させて貰えますか」

「はい、ただいまご用意致します」

当たり前だが人毛100パーセントだから思ったより出来は良かった。

部分ウイッグやハーフウイッグは無く、フルウイッグしか無かった。

2人がこれを身につけると蒸れる気がしたが…取り敢えず、マリアやエルザに似た色の物があったから取り敢えず購入する事にした。

「それじゃ、これとこれ貰っていきます」

「ありがとうございます」

お礼を言ってギルドを後にし、街で帽子とパンダナ、杖を購入した。

まぁこんな物だろうな。

◆◆◆

宿に戻ってきた。

雰囲気は…暗い。

当たり前だ。

あの状態で笑えるわけが無い。

「リヒトくん…任せた!」

「リタ!」

この雰囲気にいたたまれなくなって逃げたな。

「リヒト…ありがとう」

「リヒト、リタから話は聞いたよ…治療してくれたんだってな。迷惑かけたな」

声が随分と弱弱しい。

そりゃ、将来を考えた奴に振られた挙句、暴力迄振るわれたら、こうなるよな。

「いや、それでさぁ、こういうの買ってきたんだけど!どうかな? カツラと帽子とパンダナにエルザには杖」

「…ありがとう…」

「ありがとうな」

流石に今すぐ明るくと言うのは無理だな。

「どう致しまして」

「あはははっ、笑えるよね!大した女でも無いのに変に気取ってさぁ、馬鹿みたい!解っているわよ!村では可愛い綺麗って言われても街に行けば幾らでももっと可愛い子なんているよね! ましてガイアは勇者なんだから女なんて選び放題なんだから…考えれば解った事だわ! ねぇリヒト、私ブスなんだってさぁ…糞ブスだから付き合う価値なんて全く無いんだって!ガイアは他に好きな人がいるんだって…あはははっ馬鹿みたい!」

「そうか」

「マリア…それをリヒトに言っても仕方が無いだろう?悪かったなリヒト、まぁ私もクズでブスだそうだ…言われても困るよな。色々とありがとう、ほら行っていいよ」

「エルザ、いいよ!マリア、話したい事があるなら聞くよ!」

「そう? いいわ! ただでさえブスなのに頭から顔にこんな大きな傷をおったらもう誰も相手なんてするわけ無いわ、傷物も良い所だわ。ほら化け物見たいじゃない…ほら行っていいわ。リヒトだって揶揄っていただけなんでしょう? 綺麗な女性が沢山居る場所で態々ブスを選ぶ馬鹿はいないわ…ねぇそうなんでしょう! ねぇねぇねぇ!」

「マリア、いい加減にしないか! リヒトは関係ないだろう! なぁリヒト、今の私達は冷静じゃない! あたり散らすと悪いから立ち去ってくれないか?」

「まぁ、確かに頭から顔に大きな傷があるんだ、まぁブスなのかもな」

「ほうら、それがリヒトの本音なんだ、ガイアと同じで揶揄っていたんだね!嘘つき!」

「リヒト、お前!」

「それじゃ逆に聞くけど? 俺が二人を好きだって言ったら受け入れるのか?」

「またそうやって揶揄っているんでしょう…ふざけないで!」

「リヒト…嫌がらせか…」

「外見なんて探せば幾らでも上がいるだろうが!馬鹿じゃないの!まして俺だってS級冒険者なんだぜ! 女が欲しいなら、こんなパーティ速攻で出て行くよ! 俺がパーティ組みたいっていえばA級以下の女が幾らでもメンバーになりたがるぜ。更に上の女が欲しければ奴隷商で奴隷を買えば良いだけだ」

「そう…最低だね!ガイアと変わらないじゃない!」

「だったらそうすれば良いだろう…悪かったな」

「違うだろう! 俺は外見なんて関係なしに、幼馴染の3人が好きだから此処に居るんだろうが! そんな事も解らないのか? 確かに皆には劣るが俺だってS級。金なら稼げる。 そんな俺がなんで『此処に居る』と思う? 毎朝朝食を作ったり、女物の下着まで洗って惨めな思いしてまで何でいるか、考えろよ『好きだから』それ以外どんな理由があるっていうんだ!」

「へぇ~そうなの? 嘘ばっかり…じゃぁい良いわ。今までの私は好きだった。それで良いわよ! だけどこの顔の傷よ!ブスな上にこんな傷迄あるのよ…それに指だって動かない!こんなゴミ流石に嫌いでしょうが!」

「リヒト答えなくて良い!マリアもいい加減にしろ!関係ないリヒトに絡むなよ!」

完全に拗らしているな。

「それじゃ逆に聞くけど?! 俺がマリアやエルザが好きだって言ったら受け入れてくれるのか? 本当に俺が二人を好きなら受け入れるのかよ!」

「ふん!どうせ嘘でしょう? 良いわこんなブスで傷物女が欲しいなら、あげるわよ…あげる…返品はきかないわ。今が断る最後のチャンスよ! 素直に要らないって言いなさいよ!」

「マリアはこう言っているけどエルザはどうなんだ?」

「私は、リヒトが私達を好きだった…そこは信じているよ。だけど頭から顔にこんな酷い傷があって、真面に歩けないし片手が真面に動かない。こんなゴミ女を愛するわけ無いだろう…」

「そう…舐められたもんだ。だったら『物凄く欲しい』から愛すし貰うから!たった今から二人とも俺の物だからな!そっちこそはいた唾のみ込むんじゃねーよ」

「また揶揄っているんでしょう」

「リヒトいい加減にしろ」

「揶揄ってないよ!大体男が全員、外見だけで女を好きになるわけじゃ無い! 俺が3人を好きなのは幼馴染だからだ。沢山の思い出がある、マリアが5歳までおねしょしていた事。エルザが魚釣りに行って竿を蜂の巣にひっかけて無数の蜂に刺されて顔を腫らして泣いていた事。沢山の思い出を積みかさねた結果、俺は3人が好きなんだよ…外見だけで好きになったわけじゃ無い」

「思い出ね…へぇそれじゃリヒトあんたに聞くけど?こんな私でも愛せるの?」

「結構な傷だし…無理しないで良いんだぞ」

「俺は愛せるよ…今だって好きだよ」

「そう、そこ迄意地を張るのね、もう後戻りはできないからね」

後戻りなんてするわけない。

馬鹿か。

「あのさぁ…リヒト、本当に良いのか? 私だって冷静さを保っているが、結構な動揺をしている…正直に言えば、女としての自信を失っている。もし、こんな私でも受け入れてくれると言うのなら…嬉しい。だが、もしリヒト、軽い気持ちなら辞めてくれ…きっと私は、貴方までもが私を裏切ったら…多分生きていけない…恐らくリヒトを殺して私も…」

幼馴染として育って5人だけの世界が長かった。

俺が3人に思い入れがある様に3人も俺とガイアに思い入れがあるだろう。

2人のうち1人が欠けたら、こうなっても仕方が無いな。

本当はこんなのは『愛』じゃないし『恋愛』でもない。

ただ『寂しい』そう思っている心につけ込むだけだ。

それでも俺は2人が欲しい。

これがどんなに狡い事なのか解っていても。

「俺はガイアが羨ましかった。努力して一生懸命頑張っても受け入れて貰えない…そう思っていたからな! 俺だって善人じゃない…好きでも無い相手に尽くしたりするもんか! 好きで好きで好きで好きでしょうがないんだ…『これで二人とも俺の物』で良いんだよな?エルザ、俺の好きだって気持ちが嘘だったなら、何時でも殺してくれて構わないからな…あと悪い、流石に限界だ! さっきから『好き』を連発しすぎて顔が赤くなって二人の顔が真面に見れない…だから悪いが逃げ出させて貰う…それじゃ」

「リヒト…ちょっと待って」

「リヒト、待て」

「悪い、もう限界…顔が赤くなっ真面に話せない…すげー恥ずかしい事連発したからな」

俺は逃げるようにその場を後にした。











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