親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語

石のやっさん

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第30話 拝領妻と紺野家

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インターホンがなったから出たら、伊佐治さんが立っていた。

ドアを開けると……

「和也様、失礼します。紺野家の名義変更がすみましたので、書類をお届けに来ました」

そう言えば、必要な書類だけ渡して丸投げしていたんだよな。

「そうですか、ありがとうございます」

これで紺野家、美沙姉の家が正式に俺の物になった。

「和也くん、今、紺野家って聞いたけど? 私の家がどうかしたの?」

「美沙、今回の事件の慰謝料の一部として旦那様が、和也様に紺野の家を譲渡された。お前には関係ない話だ」

相変わらずの美沙姉へは塩対応だな。

だが、そろそろ美沙姉への対応を変えさせた方が良いだろう。

「伊佐治さん、そろそろ美沙への対応を改めてもらおうか?」

「その女の事は以前から存じております……それを知った上でおっしゃるのですか? 後妻とはいえ、その女美沙は、妾どころか使用人以下でしたから、それに如何わしい事の為に迎い入れた女です。確かに和也様と結ばれた以上『様』をつけるべきですが……私は尊敬出来ない人間をそうお呼びしたくはありません」

この前は、そう呼ぶと言っていたのに……これか。

「確かに、そう言う扱いだった事は俺も知っています。ですが、この村は古きを重んじる村ですよね? そして伊佐治さんもそれを重んじる人間の1人だ……違いますか?」

「その通りです、だからこそ、その汚らしい女に敬称はつけたくはないのです。」

「和也さん、私の事はもう良いですから」

「だからこそ呼ぶべきだ! 美沙さんは今泉家当主の俺の妻だけじゃない! 慰謝料代わりに貰ったとはいえ『拝領妻』なのですから、あんた達使用人はおろか、この村の重鎮でも蔑ろにして良い存在じゃない!」

「「拝領妻!」」

「そうです! だってそうでしょう? 美沙は古馬本家の当主権蔵さんの後妻とは言え妻だったんですよ! それを分家の当主である今泉家の当主の俺が貰ったのですから、これはれっきとした拝領妻になる筈です。 貰った経緯を考えても正一の姦淫の罪滅ぼしの為に、貰ったのです。 古い話なら姦淫は相手が許さなければ『死』です。つまり、美沙さんは正一の命の代わりに小泉家が古馬本家から貰った『拝領妻』という事になります。それを執事の貴方が低く見るのですか」

「幾ら、そう言われても、その女は……」

「それ以上言わない方が良い!まさか古馬本家に仕える人間が『当主が16歳の女の子を手籠めにしたい為に後妻にした』という醜聞を口に出すのですか?それなら、それで良いですが、伊佐治さんが言っていたとして隣村や近隣に広めます。 そうなったら伊佐治さん貴方はこの村に住めますか?」

「それは、やめて下さい。旦那様に罰を受けます」

「でしょう? 美沙を非難する事は権蔵さんの過去の仕打ちを明らかにする事になりますよ? だから、美沙はあくまで古馬本家で権蔵さんの妻だった。 形の上では愛妻だったが罪滅ぼしの為『拝領妻』として分家の俺に譲った。 権蔵さんの面子の為にも、そう言う事にしないと不味いと思いますがどう思いますか?」

この人も長年執事をしているんだ、此処迄話せばわかるだろう。

「そうですな、幾ら如何わしい相手をしていたとはいえ、旦那様の妻であった事は事実。そして今は和也様の妻。態度を改めさせて頂きます。美沙様、そうお呼びすれば良いのでしょうか?」

「それでお願い致します。 元々美沙は権蔵さんの妻ですから、使用人が呼びつけて良い存在じゃない。いかに主人が横暴で酷い事していてもそれは夫婦間の問題で、使用人には関係が無い事です。助けられないのは主従関係で仕方が無いですが、非難して良い相手じゃないと思います」

「その通りです。 今後は改めさせて頂きます」

「他の使用人にもお願いしますね」

「解りました」

美沙姉が如何にひどい扱いされていても、名目上は権蔵さんの妻だったんだ。

俺は差別をしないが、嫌な言い方をすれば『使用人風情が馬鹿にして良いわけがない』

美沙姉は本来は古馬本家の権蔵さんの妻だ。

立場だけで考えれば古馬本家では権蔵さんの次の地位で正一よりも上だ。

だが、本来の後ろ盾の権蔵さんは美沙姉を雑に扱い。

庇ってくれる両親も居ないから悲惨な事になった。

だが、立場だけで言うなら、あくまで権蔵さんの妻だったんだ。

言い方を変えれば、この村の権力者の妻だった。

それは変わらない。

そして、今は俺の妻だ。

俺はこれでも古馬に連なる今泉家の当主。

褒美ではなく償いという形で貰い受けたが、これは過去にあった『献上妻』だ。

その昔、この地の領主様から褒美として家臣がその妻を貰った。

そういう話がある。


古馬本家は庄屋の家系だが、本家と分家と考えればあながち間違っていないだろう。

俺がこれからは美沙姉の後ろ盾になる。

今の美沙姉は、今泉美沙。

俺の妻。

過去は変えられないけど、これから先は絶対に馬鹿になどさせない。

◆◆◆

「ごめん、美沙姉嫌な事思いださせて……」

「良いよ、仕方ないもの……聞いていて私の為に和也くんが怒ってくれていたのが解ったから、寧ろ嬉しかったかな」

伊佐治さんはすぐに帰っていった。

あの人は人を上下でしか見れない人だが、古馬本家の優秀な執事だ。

美沙姉が、俺の妻になり俺が大切に思っている。

そう解れば、もう雑には扱わないだろう。

これで古馬本家は大丈夫。

だが、村や近隣に美沙姉の話は知られている。

まだまだ先は長いな。


◆◆◆


「この家に戻ってくるのも久しぶりだなぁ」

「美沙姉の家、懐かしいなぁ~」

村の中にあるニュータウンみたいな場所。

そこにポツンと美沙姉の家がある。

本来、ここには20軒の家が建つ筈だったが、移住説明会にはそこそこ来たのに、移住してくれたのは紺野家だけだった。

結果この場所には美沙姉の家しか建っていない。

農家ばかりの家が多い中、お洒落な建物は俺のスーパーと美沙姉の家しかない。

洋風の綺麗な新しい小ぶりな2階建ての家。

それが、美沙姉の家だった。

だが、流石に痛んでいる。

「本当に懐かしい、また帰ってこれるなんて思わなかったよ」

しかし、本当に酷いな。

これは美沙姉の家だ。

それが書類を見たら、美沙姉が後妻になった時点で権蔵さんに名義変更されていた。

『汚いな』

まだ若くて何も知らない美沙姉から金持ちの癖に家まで騙し取ったのかよ……

しかも、この家、どうも使われた形跡がない。

だけど、しっかりと作られているから、ちょっとした修復と掃除で住めそうだ。

まぁ、田舎特有の虫が多いのは仕方が無い。

「よかったね美沙姉、もし良かったら此処で暮さない?」

「えっ良いの?」

「俺の家は1階がスーパーだから、従業員と顔を合わせなくちゃならないし、此処の方が落ち着いて新婚生活が送れると思う」

「うん、確かにそうだね。ここの方が二人の時間を楽しめそうだね」

「此処には美沙姉の部屋もあるしね、どんな部屋か楽しみ」

「えっ、見たいの?」

「勿論、見たい……」

「恥ずかしいけど、和也くんなら良いよ……招待してあげる」

美沙姉の部屋、凄く楽しみだ。

美沙姉に連れられて階段を上がり2階に向かった。

階段を上がった先には扉が2つあり、右側の部屋が美沙姉の部屋みたいだ。

「此処が美沙姉の部屋か」

「はいどうぞ……流石に埃だらけだね、なんだかゴメン」

確かに汚れているけど、ピンクを基調にした女の子らしい部屋。

そう言えば、女の子の部屋に来るのって初めてだ。

「そんな事無いよ、女の子らしい可愛らしい部屋だよ。俺初めて女の子の部屋に入ったから凄く嬉しい」

「そう言ってくれると嬉しいな……男の子を部屋に招待したのは和也くんが初めてだから」

確かに年数を感じる部屋だけど、ベッドはそのまま布団が敷いてあり、壁にはセーラー服が吊るされている。

美沙姉が好きなアイドルのポスターも貼ってあって、これこそが女子高生の部屋だ。そう感じる。

「そう、凄く嬉しい」

セーラー服を着ていた美沙姉……凄く懐かしいな。

「そんなにセーラー服を見つめて、もしかしたら着て欲しいの?」

美沙姉は大人っぽいけど童顔でもあるから、今でも似合いそうだな。

「着て欲しいし、凄く見たい……だけど、すぐには無理だね、流石に汚れているから」

「あはははっ、流石にカビているね」

「うん、それは次回の楽しみだね」

「そうだね、ちゃんと着てあげるから、そんな寂しそうな顔をしないの」

「そうだね」

美沙姉は懐かしそうにあちこち見て回っている。

『まるで、そう俺が一目ぼれした』あの笑顔の美沙姉だ。

笑っている美沙姉を見ているとあの日に戻ったみたいな気がして、思わず美沙姉を抱きしめてしまった。

「和也くん」

「美沙姉……」

俺を見つめてくる美沙姉の顔が、昔見た天使の様な笑顔に重なって見えた。

俺はそのまま美沙姉を抱き寄せ唇にキスをした。






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