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第49話 使用人風情が
しおりを挟む正一と別れ古馬本家の玄関を出た。
「え~となにこれ!?」
まさか、俺、何かされるのか?
伊佐治さんを含むかなりの人数の使用人がそこに居た。
もしかしたら、古馬本家に仕える使用人全員かも知れない。
「その……」
罰が悪そうに伊佐治さんが目を逸らす。
古馬本家の執事の伊佐治さんがこんな顔をするのは珍しい。
「なにか、言いたい事があるなら言えば良いんじゃないか?」
「和也様はこの先、旦那様の敵になる事はありませんよね」
「なんで、そんな事をきくの? 別にそんな気は今は無いけど……」
確かに少し前ならあった。
殺してやりたい程憎んだ事もあった。
頭の中で憎しみが増し『権蔵おじさん』が『権蔵』に変わった。
だが、今は『権蔵さん』だ……今が幸せだから憎しみは薄れどうでも良い存在になった。
率先して復讐迄したい相手ではもう無くなった。
だが、昔みたいに親戚のおじさんと言う思慕の気持ちは無くなり、
本当にどうでも良い。
そんな存在だ。
「今はと言う事は、将来的には『そう言う考えがある』そう言う事ですかな?」
俺が謀反でも起こす。
そう言いたいのか?
「言い換えた方が良いかな? 昔は凄く恨んでたのは事実だよ! 誰だって自分の大切な人が酷い目に遭わされれば気分は良くないよな!だが、美沙姉は今は俺の傍にいる。だからその恨みは捨てる事にしたんだ。尤も頭では割り切っているけど、心と言う事ならまだわだかまりはあるけど、何かしようと思わないよ」
「本当でございますか?」
「だってその方が都合が良いからな……今泉家の当主で居ればやりたい放題できるからな!」
「それは……一体」
「そうだな、お種さんには可愛らしい孫娘が居るよね? 確か幸子ちゃんだっけ? 俺に頂戴!」
美沙姉に酷い事していたんだ、ちょっとした仕返し位良いだろう。
「あの、和也様まだ11歳の孫に何を……」
「いやぁ、性処理道具に使おうと思って、後で連れてきて! おもちゃにするから」
「和也様、冗談ですよね……なんで孫をそんな、まだ子供です……やめて下さい……このお種の孫に酷い事をしないで下され」
「黙れよ! 本家とは言え使用人風情が俺に逆らうのか? 逆らってただで済むと思うのか?」
「和也様……お戯れがすぎますぞ」
「伊佐治さん!あんたも知っているんじゃないのか? 美沙姉が権蔵さんの後妻になる時に、そこのお種さんは『古馬の嫁になる者は一切前の家の物を持ち込んではならない』そう言ったそうだ!そんな掟は何処にも無いよな? 嘘ついて騙したんだよ、その後も随分意地悪したそうじゃないか? なぁ!? だから償って貰うだけだよ、さぁ孫を差し出せよ! なぁに永遠の別れじゃない。1年もオモチャにして遊んだら返してやるから……なぁお種さん」
「許してくだせぇ……孫は孫だけは許して下せぇ~なんでもしますから……他の事ならなんでもしますから、お許し下さい……孫だけは孫だけは、お許し下さいーーっ」
周りは冷たいな。
誰も助けに入らない。
「そう? それじゃ可哀そうだから娘でいいや!今日から俺の家畜にするから『真っ裸で届けて』あっやっぱり姦淫になるから孫じゃなきゃダメか?そうだ、旦那と離婚させてから、俺にくれよ家畜として飼うから」
「許して……許して下され……儂に恨みがあるなら……死んでお詫びしますから……儂の命でお許し下さい」
俺にだってこの位の力はある。
だが、使わなかっただけだ。
権蔵さん相手には無力だったけどな。
「権蔵さんが権力を握っていれば俺もこんな『特権階級』で居られるんだ。俺が敵にまわるわけ無いでしょう。お種さん、今のは本気じゃないよ! だけど、解ったんじゃない? 美沙姉の件に関しては『本当に汚いのは権蔵さん』だって」
「……」
「お種さん、だんまりですか? 気が変わったよ!やっぱり孫娘か娘を差し出して貰おうか? それが嫌なら『権蔵は薄汚い男だ』そう言いな!そうしたらやめてあげる。これが最後のチャンスだよ。言わないなら……もう俺はあんたが泣こうが死のうが止めない」
「旦那様……権蔵は薄汚い……男だ……これでいいだか……」
涙流してやんの……
「それで良い。元から俺にはそんな気はない!嫁がいるのにそんな事する筈がないだろう? だけど、お種さんは散々美沙姉に酷い事しながら、いざ自分の身になったら納得できないなんて可笑しくないか? お種さんさっき一瞬俺の事睨んだろう? 思い浮かべてみろよ! 自分の孫や娘を俺が弄ぶ姿を! どうだい? その事を踏まえて権蔵さんと美沙姉、どっちが汚い? 」
「旦那様です……」
「自分の身になって考えればどちらが悪いか解るだろう? 権力を持つ人間が悪い事をすれば誰も止められない。 伊佐治さんもこれで安心した?」
「和也様……?」
「権蔵さんが古馬本家を守っているから、俺は『今泉家の当主』で居られる。 その結果、お種さんに言った事を実際に実行しても誰も文句を言えない。古馬本家の流れをくむ今泉家当主だからね。恩恵に預かっている俺が権蔵さんの敵になるわけ無いじゃないか?」
「確かにそうですな」
「それでね、最後に一言だけ言わせて貰う。美沙姉は『今泉美沙』なんだ……」
「「「「「「「「「「???」」」」」」」」」」
「こう言う事は二度と言いたくないんだ『お前等みたいな使用人風情が馬鹿にすんじゃねーよ!今泉家の嫁をなーーっ』分をわきまえろ!」
こんな事は言いたくはない、だが一度解らせないと、美沙姉への侮蔑は終わらない。
「きっ肝に命じます」
「「「「「「「「「「ひっ」」」」」」」」」」
「いや、余り気にしないで良いからね。俺は皆の事蔑んだり、下に見た事は無い筈だよ。スーパーだって皆に喜んで貰いたくて作ったんだ。出来る事ならこんな事はしたく無いし言いたくない。だけど自分の嫁さんが傷つけられるなら、『今泉家当主』の力を使わせて貰う。だが、それは本当に不本意なんだ。だから、どうにか仲良くできないか」
「本来の関係なら前に和也様が言われた通り、旦那様の妻の時点から我々が美沙様を馬鹿にするのが可笑しな話です。 いかに旦那様が雑に扱おうと旦那様の妻である以上、私どもとは主従の関係なのですから。旦那様が許していたから調子に乗っていた。そうとしか思えません。美沙様は今は和也様の妻。 そして和也様が妻への侮辱を許さないというのであれば、私どもが貶して良い訳が無い……違うか!皆!」
「そうですね、私が間違っていました」
「今後は、決して貶めたりしませんわ」
「悪かったよ まぁ、解ってくれれば良いよ……いや土下座までしなくても……」
俺が止めても止まらず、全員が土下座をし始めた。
そこ迄俺は求めていないのに......
これで少しは納まると良いな。
◆◆◆
「あれで解ったのではないか? 私の言った事に嘘は無かっただろう」
「伊佐治さん、あの和也様がまるで鬼だ……」
「和也様の逆鱗は美沙様だ。 どうだ? 私が言った様に早目に謝って正解だろう……特にお種さん、あんたは相当恨まれても仕方が無い事をしていたからな」
「だが、あれは旦那様が……」
「旦那様は『見逃していただけ』やれと命令をしていない。違うか?」
「だども……皆だってあの女を家畜呼ばわりしていたでねーか」
「お種さん、過去は変わらない。 これからは絶対に『しない』そうするしかない」
「そうだな、気をつけますだ」
「皆も解っただろう! 和也様は普段は仏の様に優しいが、美沙様が絡むと鬼になる……絶対に蔑ろにしてはならぬ……解ったな」
罰を与える……そんな事言わなくても、和也様の怖さが解った筈だ。
まるで、母親の詩織さんの様に『優しくて怖い』
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