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第27話 違和感の正体
しおりを挟む「ターニャさん、本当に良いの?」
奴隷商の前に来た。
何となく恥ずかしいのでマヤさんは宿に残って貰った。
「はい、私の方が望んだ事ですし、なにより奴隷に成れる事が幸せなのです」
そう、ニコニコされて言われると奴隷にする事が正しいような気がする。
ターニャさんの人生がどれだけ過酷な物かが良く解った気がした。
「これはこれは、お客様、本日はどのような奴隷を…」
「今日は奴隷の購入では無く、奴隷紋を刻んで貰いに来ました」
「奴隷紋?そちらの女にですか? 失礼ですが、そちらの女性はエルフでは無く、耳長族ですよ、しかも耳長族は、性行為中に異臭をする汗を流すので性処理奴隷に使うのに適しません…その歳の耳長族だと閉経していますので、そもそも子供も作れ無いでしょうが、価値は全くありません…それでも大丈夫なのですか?」
奴隷商の説明を黙ってターニャさんは聞いている。
目が潤んでいるのが解る。
「随分と詳しいのですね」
「奴隷商人の間では、通称:詐欺エルフと言われ数百年前に、幾つかの奴隷商が被害を被ったのです! その為、今では見分け方がしっかりとマニュアル化しています。方法は商売上の秘密なのでお伝えできませんが」
「あと、閉経って…」
「人工的に昔、異世界人に作られた種族で、愛玩用として妊娠しないように17歳で閉経して子供が出来ない体に調整されたそうですよ。尤も、調整の失敗で破棄された存在なので、最近は…見かけませんでしたが」
「破棄?」
「先程申し上げた様に、性的な事をすると異臭をする汗をかきます、それを取り除く事が出来なかった為です。室内じゃ窓を開けてすら行為は出来ない、そう思った方が良いですよ…人工的に作られた一族なので神々からも祝福されないからジョブやスキルが無い、それでも奴隷にしたいですか? 奴隷としての価値はその年齢じゃゼロどころかマイナスです、抱き合わせじゃ無ければ引き取りません…それで良いなら奴隷紋を刻ませて頂きます」
ターニャさんが泣きそうな顔でこちらを見つめて来た。
「お願いします」
「全て解った上なら結構です、銀貨2枚になります」
僕は銀貨2枚を支払い、ターニャさんに奴隷紋を刻んで貰った。
◆◆◆
ターニャさんは奴隷紋を刻んで貰ったお尻を愛おしそうに見ている。
「ターニャさん、嬉しいのは解るけど、人前でスカートを捲るのは、見えちゃってますよ」
「下着くらい見られても構いません…こんな微妙な年齢の女の下着なんて誰も見たいと思いませんよ…」
巨乳エルフお姉さん。
前の世界なら目が釘付けの筈なんだけど。
確かに誰もこっちを見ていない。
そうか…もしエルフならこの容姿は高齢者の筈だから、そう言う目で見られないのかも知れない。
「ですが、ツバサ様…本当に良かったのですか? 私、役立たずですよ?」
「役立たず?」
そうか…引っかかっていたのはこれだ。
雪乃様は『とびっきりの仲間を用意する』そう言っていた。
それはパーティの戦力としてという事だ。
ターニャさんはどう考えても『戦力』じゃない。
うん、多分、勘違いだ。
だけど…
「はい、役立たずだけど一生懸命頑張らせて頂きますね」
この笑顔の彼女なら、そんな事は関係ないな。
◆◆◆
ターニャさんと宿に帰り、少しベッドで横になった。
すると頭の中に雪乃様の声が聞こえてきた。
どうやら、僕の様子が解っているようだ。
『翼くん、完全に勘違いだね! 僕が探していたのはパーティとして戦える仲間だぁ! ただ一緒にいる存在じゃないよ?』
「確かにそうですね、完全に勘違いでした。それで雪乃様、仲間の心当たりは見つかったのですか?」
『う~ん、それがなかなか難しくてね!獣人族の中で候補は居るんだけど…保留中だよ』
「雪乃様、後衛を探して居るんじゃなかったのですか?」
『うん、本当はそうなんだけど、この世界の魔法使いの殆どは、精霊や神からの祝福の力で魔法を使うんだよ! 翼くんにあげた器用貧乏はかなり例外なのさぁ…この世界の神様じゃ僕は外様みたいな物だからね、他の神の祝福を受けた子を翼くんの仲間にするのは、ちょっとね…なにか考えてみるけど…無理そうだよ』
「確かにそうですね…」
よく考えれば解かる事だ。
『そうなんだ、だけど、その分魔法が使えない者の多くは祝福を貰えていない者が多いから、探すのはそう難しくない…器用貧乏を使いこなして翼くんがオールラウンダーを目指すのも良いかも知れないね』
「オールラウンダーですか?」
『そう、オールラウンダー…まぁ、翼くんは使命も何もないんだから、ゆっくり考えなよ』
「そうですね」
『時に、あの翼くんが、邪な気持ちで仲間にしたエロエロ巨乳エルフモドキだけど、かなり辛い人生を歩んできたみたいだから優しくしてあげると良いよ』
「エロ巨乳エルフ…邪?」
『だってそうだろう? あの巨乳に引かれて仲間にしたんだろう! ぼ.く.の.翼くんは…全く、思わず嫉妬しちゃうよ…だけど残念だったね、鑑賞は出来るけど、出来ないんだから仕方ないね…うんうん、精々目の保養をするんだね』
「雪乃様?」
『翼くんの馬鹿…あっゴメン、また邪魔が入った…なんなんだい異世界って、また今度…それじゃぁね…』
相変わらずドタバタしている。
神様も忙しいんだな。
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