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第42話 豊穣の女神の衰退の始まりと慈悲
しおりを挟む一体、何が起きているんだ…別動隊が討伐から帰ってきたら、素材の価値が下がっていた。
「なんだ、この買い取り金額は! こちとら、中層まで進んで手ごわい魔物を大量に狩って来たんだぞ! この遠征にはかなりの金をつぎ込んだんだ…これじゃ赤字だ!」
「そうは言われましても北の方で、ウルフ系の魔物が大量に討伐されまして、今は何処も在庫余りなんです! この金額をつけるのも、遠征で苦労をした事を知っているからです…欲しいか欲しくないか、そう言う話なら欲しくないのです…嫌なら他へどうぞ!」
「お前…」
「いや、良い買い取ってくれ」
恐らくこれは冒険者ギルドの同情が入った金額だ。
本当の所は買いたくないのだろう。
此処で蹴ったら、次は恐らく持ってきても買ってくれない。
「アムリオン様…しかし…」
「仕方が無いだろう!此処で売らなければ終わりだ」
クソ…一体何が起きたんだ…
此処だけじゃない。
うちのクランの経営している農場も沢山のイナゴに襲われ壊滅だ。
そればかりじゃない、俺達の行きつけの店は軒並み潰れかかっている。
まさか…スノードロップが関係しているのか?
スノードロップが祀っている神とはどんな神なんだ。
こんな、不吉な祝福を持つ神等…私は知らない。
◆◆◆
「教えてくれないか? お前、いや貴方に祝福を与えている神とはどんな神なんだ…いや神様なのでしょうか?」
「はぁ…お前の店は豊穣の女神の味方で僕たちの敵なんでしょう?だったら話す事は無いよ! それじゃ」
「待って下さいよ!あんたに『貧乏』って言われてから…うち本当に貧乏になっちゃって…客が寄り付かなくて…」
「だったら豊穣の女神に言えば良いんじゃないですか? もう僕たちに物を売らないんでしょう? そんな店どうなろうと知らないよ」
「そんな…」
「そんなじゃないでしょう? 物を売って貰えなければ僕らは困る!それを知っていて『売らない』そういう選択をしたじゃないですか?豊穣の女神の味方なんでしょう? それなら僕の敵なんですから、どうなろうと僕も知りません…これから先、今以上の貧乏に見舞われますが…強く生きて下さいね」
可哀そうだとは思う。
だけど、豊穣の女神に味方した以上もう、僕には関係が無い人だ。
「貧乏ってなんだよ…俺の店は盗賊に入られて財産を全て失い…借金してお店を再開したのに、客が来ないし仕入れも上手くいかないんだ…このままじゃ妻や子供を奴隷として売るか、死ぬしかないんだよ…助けてくれお願いだ…」
「そうですね…今後、豊穣の女神に一切物を売らず、僕たちには半額で物を売る…そういう約束をするなら助けてあげましょう!もう一度言いましょう『僕や僕の神様は優しいから、真摯に謝れば許してあげる…困った事があったら助けてあげる…でもその条件は、豊穣の女神と今後、二度と付き合わない事が条件です』出来ますか?」
「それは…」
「躊躇するなら結構です…では…」
どうせ、のど元過ぎれば、また元に戻る。
この際、徹底的にやるべきだ。
「待ってくれ…貴方が祝福を受けている神は…」
本当の事を話す必要は無い。
「詳しくは言いませんが、商売人なら絶対に敵に回してはいけない神だと思います…僕が崇める神様を敵にしたなら如何なる豪商も潰れるのみです」
「解った…条件は飲む…だから…謝るから…もう許してくれ…」
「解りました」
貧乏解除
「これで、これで大丈夫なんだよな…」
「ええっ、ですが、豊穣の女神にまた寝返ったら…今度は死ぬまで商売が上手くいかない…そう思って下さいね」
「解った…」
これで、今迄どおり買い物…いや、半額で物が手に入る。
良かった、これで皆の悲しむ顔が一つ減る。
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