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第50話 ツグナールSIDE②
しおりを挟むそう言えばあいつ等、随分素早く冒険者を辞めたもんだよな!
待てよ!
冒険者は廃職届けを出しても、すぐには辞められない筈だ。
個人でギルドを通さず、請け負った依頼などがあるからな。
うん、もしかしたら…そうだ…
これはいけるかも知れないな。
◆◆◆
冒険者ギルドへやってきた。
「俺の所属のパーティ 迷宮の探索者は現状どうなっている?」
俺は冒険者証を受付に出して話を聞いてみる事にした。
「いま、調べた所、三人から冒険者の離職届けが出ていますから、今現在はツグナール様一人ですね」
あいつら、やはり馬鹿だったな。
「という事は、形上、俺一人しか存在しないから、このパーティの決定権は俺にある……間違いはないかな」
「はい、その通りです」
「それでは、このパーティのリーダーを俺に今すぐ変えてくれ。あとパーティのお金も俺の許可なくおろせないようにしてくれないか」
「はい、ただいま」
馬鹿か。
個人で冒険者を辞めるのは簡単だ。
だが、俺がパーティに残っている以上は全員の同意が得られていないから、パーティの解散は出来ない筈だ。
そして、ここからは運だが。
普通のギルドマスターなら、パーティが解散してないのに、パーティ名義でギルドへ預けているお金を全額おろして1人だけメンバーを残して離職するなんておかしな状況なら、様子を見て、即日現金を渡したりしないはずだ。
俺の予想が合っているなら、まだパーティの口座のお金はそのままある筈だ。
「はい、今切り替えました。今よりパーティ、迷宮の探究者のリーダーはツグナール様になります」
「それで、パーティの口座のお金はどうなっている」
「パーティの口座には、金貨720枚(約、七千二百万円)ほど入っています」
やった。
どうやら、俺は賭けにかった。
本当に馬鹿な奴らだ。
離職より先に何処か遠くの街に逃げて、時間を掛けて少量づつ金をおろしてから離職をすれば良かったんだ。
「そうか、ありがとう、また来るよ」
これで、ようやく仲間を集められる。
◆◆◆
俺はまた、豊穣の女神の畑にきている。
あの時のように絶望していない。
今の俺にはパーティがある。
金がある。
あと、足らないのは仲間だ。
そして此処には…
「皆、新しいパーティを作ったんだ。前のように迷宮に潜ろう。新しいパーティは『豊穣の女神』とは縁が薄いパーティだ。今から、新しい俺達の住処を作っていかないか?」
「また、パーティが組めるんですか?」
「私は迷宮もそうだけど、この畑を復活させたい…良いかな!ツグナール」
「ああっ、勿論だとも。畑をたがやかし昔のように頑張ろうぜ」
「ツグナール、ありがとうな」
「よせよ仲間じゃないか?」
大切な仲間なら…此処に居る。
◆◆◆
ギルメドに残った三十人のうち二十人は食べていけずにギルメドを去ってしまった。
残った十人と俺、総勢十一人が迷宮の探索者のメンバーだ。
俺は皆と話、ある禊をする事にした。
「皆、良いか? 本当に良いんだな? これはプライドを捨てる行為だ」
「ツグナールがこのギルドのパーティリーダーだ、好きなようにしろ」
「そうよ!生きる為、なにも恥じる事ないわ」
「そうか、解った…お前達はただ、俺を見ているだけで良い。少し離れた場所で見ていてくれ」
「「「「「「「「「「わかった」」」」」」」」」」
もう、あとには引けない。
※今日はもう一話更新します。
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