鬼畜坊主に召喚されました

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第一章

馴れ初めを聞きました。

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「まあ、ゆっくりしてくれ。久しぶりの客人で太湖も嬉しいのだろう。」
招かれた座敷の座布団に座りながら、俺は出されたお茶を啜る。ついでに茶菓子も出されたので、一度断りを入れてから食べると、どうやら手作りらしく茶菓子は美味しかった。
「景光の出す菓子も茶も美味かろう?あいつは料理も上手いからな。」
茶とお菓子を食べている俺を見ながら、烏天狗ー太湖は頬杖をついてニヤニヤ笑う。そしてこの寺のことや自分達のことを話し始めた。
太湖が言うには、ここは前は廃寺だったが、景光(先程の住職)とこの烏天狗の太湖が買い取り、建て直して今は二人で住んでいるらしい。(ちなみにこの廃寺に潜んでいた妖や幽霊や悪霊は太湖が追っ払ったりなどしたらしい。)
そして畑などを耕したりしながら、それなりに暮らしているらしい。
「俺はその昔、森の奥深くに住んでいた妻子ある烏天狗だったんだがな、ある時森に迷い込んで来た少年がいてな、その少年が森の主の大蛇に食べられそうになった所を俺はつい助けると同時に、その大蛇を殺してしまってな。その罰として、森から追い出されてしまったんだ。まあ、森に追い出されてもそれなりに力が弱体化する訳でもないから、俺はその少年がどうなったか気になって、その少年を陰から見守っていたんだ。」
「その少年が私、景光でね。私は昔からよく妖などが見えて、つい森に入ってしまったんだ。でも、太湖が助けてくれたからこうして生きているんだ。」
「でも、お前はあの時勝てる訳がないのに、飛び出したからその怪我を負ったのだぞ?俺が大蛇に食べられると思ってな。」
太湖が言いながら、景光の着物の合わせ目を指さす。着物で隠れているが、景光の胸にはうっすらだが、深い傷があった。
「あの時は君に悪いことをしたと思ってるよ。現に私があんなことをしなければ、君は森から追い出されることもなかったのにね。」
「前からあの森の主は人間の血肉を覚えてしまってから、迷い込む人間を食らっておって森の者達も迷惑していたからちょうどよかったのだ。迷い込む人間を食らっては、その人間達の無念の魂は成仏できずに、ずっと森に縛り付けられていたから、いつからか森は違う意味で荒れておった。あの森の主が死んでから、少しは森も豊かにはなるだろう。」
太湖はそう言うと自分の湯飲みの茶を啜る。そして景光を見る。
「それにお前も、その傷が元で不幸にあっただろう?おあいこだ。」
太湖の言葉に景光はそうだねと呟くと、自分もお茶を啜った。俺はしばらく二人を見ていたが、口を開いた。

「そういえば先程太湖さんが景光さんのことを契約者と言っていましたが、それは?」
一応、目上だと思うので、俺は念のため慣れない敬語を使いながら、尋ねてみる。すると二人はキョトンとした後、景光が口を開いた。
「私のことは景光でいいよ。無理な敬語も使わなくてもいいよ。この傷はその大蛇の呪いでもあるんでね。」
「呪い?」
「私は太湖に助けられたが、無傷ではなくて何とか一命は取り留めたんだけど、ひどい高熱などに襲われたりしてね。しばらくは寝たきりの状態だったんだ。それでも何とか回復したが、そこからが大変だった。人並み以上に努力したりしたが、やっとできた妻と子供に呪いが移ってしまってね。これ以上呪いが移らないように、妻は子供を連れて出て行ってしまったんだ。私には誰かと接するとその呪いが移るみたいでね。」
「だからこうして住職などの仕事をしてるんだ。まあそんな呪いの元凶を作ったのは、俺だからな。こうして、こいつと一緒にいるんだ。」
太湖はそう言うと景光の肩を掴む。それを見ると二人がどれだけの信頼関係で結ばれているのかが見えるような気がした。
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