Glustony(グラストニー)

さむほーん

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第一章 異界召喚編

第三話 二人の少年

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(何故僕がここに居るのか、それは分かる)

(恐らく、この国の人達によってあの新幹線の中が連れてこられたんだろう)

(それは良い)

(問題なのは、この国の人がどういう理由で僕たちをこの場所に連れてきたのか、ということだ)

「一番単純に思い付くのは、僕達の世界の知識を手に入れる為、っていうのだけど……」

(普通、その為に高校生を連れてくるのかな?)

もし辞書として扱いたいならもっと知識のある人、例えば学者さんとかを連れてくるだろう

(その方が得られる知識も多いはずだ)

「かといって学生を戦力として扱うのは無いだろうし」

 ここまで言ったところで、泰久は自分がまだを検証していないことに気が付く。

「そういえば、今の僕の体ってどうなってるんだろう?」

 自身が脱線した新幹線の中で意識を失う直前に見た記憶を掘り起こす。

(あの時の僕には間違い無く下半身が無かった。ってことは今の僕の下半身はこっちの世界に来てから作られたものになる)

「その方法がこの世界の技術を利用した再生医療とかなら良いんだけど……もしそうじゃない方法で下半身が作られていたんだとしたら……」

 自分の体が既に人間のものでは無い可能性に思い当たり、少し怖くなる。

(どうにかしてそれを確かめる方法とか無いかな……普通に聞いてもちゃんと答えてくれるんだろうか?)

 しばらく考えて、結論を出す。

「……明日聞こう」

(よく考えたら今僕が色々考えたところで何もわからないよね。汎用人格の……レイアさん?に話を聞けば何か分かるかもしれないけど、あの人は機械だろうから多分権限の問題で答えられない事の方が多いだろう)

 ベッドに近づくと、掛け布団が持ち上がって体が入るスペースを作ってくれる。

「……本当に高性能だな。色々と便利過ぎてむしろ恐ろしく思えるレベルだよ」

 布団の中に入ると、すぐさま眠気が襲ってくる。

(まあ……良いや……続きは……明日……考えよ……)

 そのまま泰久の意識は布団に沈んだ。

――――――――――――――――――――――――――

「やっぱり可愛いなぁ♡」

 どこかの部屋の中で、ベッドに寝転びながらある画面を見ている。

 その少女は、何かの形をした人形を抱きかかえていた。

に居たときは一目見るのも大変だったな~。やっぱりこっちに来て正解だよ♪」

 少女は、寝転んでいる状態から体を起こし、ベットに座り込んだ。

「ま、でもプライバシーはちゃんと確保しないと。お風呂に入ってる姿とかを見るのはちゃんと順序を踏んで、許可を取ってからにしないと。その時には……♡」

 顔を布団に押し付けてジタバタする。

「はぁ……♡もう見てるだけで胸がキューキュー締め付けられる……実際に会ったらどうなっちゃうんだろう……抱きしめられたら……抱かれたら……♡」

 そこまで喋ってから、思い立ったようにベッドから降りる。

「よし!今から精神トレーニングをしよう!ドキドキしても大丈夫なように、イメトレを……」

 そうやって部屋の中を歩き回る。

「えっと……こういうときはこうやって……」

 そのまま部屋の中で動き続けた。

――――――――――――――――――――――――――

「拘束具付け終わりました。もう少しで覚醒させられます」

「了解。少しずつで良いから薬剤を抜いていけ」

 白衣を着た者達は、巨大なビーカーの中を見ながらそう言う。

 そこには、口と耳以外を拘束具で覆われた存在があった。

「拘束具が有るからといって油断するな!相手は素性も性格も分からない【超人】だ!一瞬でも気を抜いたら終わりだと思え!」

 軍服姿の者がそう言う。

少しずつ、ビーカーの推移が下がっていく

泰久の時とは違って、その人型の存在は拘束具によって宙に縛り付けられたままだった

「処置終了まで……五……四……三……ニ……一……ゼロ」

それと同時に、縛り付けられている人間の口がゆっくりと開く

その人間に対し、白衣の研究員は話しかける

『無礼に思えるかもしれないが、どうか許して頂きたい。我々としても素性の知らない相手を信頼することは出来ないんだ』

縛り付けられている相手はゆっくりと口を開く

「……ここは、何処ですか?」

高く見積もっても二十歳くらいニ聞こえる若い声でそう聞く

『ああ、落ち着いて聞いてくれ。ここはちょっとした実験施設のようなものでね。君は死にかけた後、ここに運び込まれたんだよ』

研究者はマイクを通してそう言う

「……実験施設って、どこの国の施設なんですか?」

その言葉に研究者は少し黙る

『……分かった、話そう。そもそもここは君達の住んでいる世界では無い。いわゆる、異世界と言うやつだ』

――――――――――――――――――――――――

「……ん?誰か来たの?」

泰久の部屋のドアがノックされた音がする

その音で目を覚まし、パジャマのままドアの方に向かう

ドアの近くに設置してあるインターホンには、清水の顔が映っていた

「……どうしたの?何か凄い事でも起こったの?」

泰久は普段と同じトーンでそう言った

「楠田くん……少し話したいことがあるんだけど、良いかな?」

インターホンの向こうで、清水がそう言った

「いいよ。部屋の中に入る?」

「うん……楠田くんが良いなら……」

そう会話すると、部屋のドアが開いた

部屋の中に清水が入ってくる

「あのさ……楠田くん。もうちょっと警戒心を高めた方が良いと思うよ。これでもし僕が入って来た瞬間に楠田くんを殴ったりしたらどうするつもりだっの?僕等ほぼ初対面だから、相手が何するかも分からないでしょ?」

清水がゆっくりと諭すようにそう言ってくる

「あ、そっか……次から気をつけないと。ありがとね、清水くん」

言われて初めて気が付いた泰久は、笑顔でそう答えた

「……そういう態度も危険だと思うんだけど」

「あれ?今何か言った?」

清水が呟くと、泰久はそう言う

「難聴系かよ……まあ、今はその話じゃ無い。本題に入るけど、良い?」

「うん」

そんなやり取りをした後で、清水は話し始める

「楠田くんはさ、なんでこの国の人が僕達を連れてきたのか、見当はついた?」

「あ、その話か!」

清水が話し始めると、泰久は何か納得行ったかのうようにポンと手を打つ

「うん。それで、楠田くんの方では……」

「僕か……僕が考える可能性としては……オーソドックスな感じになるけど『僕達の世界の知識を得る』『あの緑の液体で僕達を改造して戦力として使う』もしくは『いわゆる【異世界転移ボーナス】で強化された僕達を戦力、もしくは特殊技能を持った技師として扱う』ってところかなぁ……」

「ま、そんなところになるね……」

二人の見解は概ね一致していたようで、清水からも特に異論は出なかった

「僕としては、出来れば『知識を得るため』っていう理由であって欲しいんだけど……」

泰久は少し諦めたような口調でそう言う

「ま、まぁ……無理……だね。そんなことやるなら僕達じゃなくてもっと頭の良い人を連れてくるだろうから……」

そこまで喋ると、二人共言う事が無くなって黙り込んだ

「……まあ、明日、一緒に聞きに行こう。よく考えれば今僕たちで考えても仕方の無いことだ」

泰久が言うと、それに対して清水が答える

「あ、あのさ……仮に、仮にだよ。僕達が異世界転移系の登場人物みたいに特別な力を持っているとしたらさ、どう行動する?」

清水が、興奮を抑えるようにも、恐る恐る聞いているようにも見える態度でそう

「もし力を持ってるとしたら……か」

泰久は黙り込む

(正直、考えたことも無かったな……)

泰久は、この場所に来てから自分が何も考えずに行動していたことに気付く

(まあ、まだ意識が覚醒して数時間とかそんなレベルだからそこまで考えなくても良いのかもしれないけど……)

それでも泰久は一応の結論を出す

「僕は……出来れば戦争みたいな暴力的なことには使いたくない、かな」

そう言った

その後に続ける

「ところで清水くん、一つ聞いておきたいんだけど……このことって僕以外には誰に聞いたの?」

「いや……誰にも言ってない……」

目を逸らしながらそう言ってくる

「あれ?他の人には聞かなかったんだ。何で?」

泰久がそう聞くと、相手は肩を落としながら答える

「いや……僕って、あんまり知り合い居ないし……」

最後の方は消え入りそうな音量で喋っていた

「あ……なるほど……そっか……」

二人の間に微妙な空気が流れる

両者が少し黙っていたら、ゆっくりと清水が立ち上がった

「じゃ、じゃあ夜も遅いから、僕はこの辺で。その……ゆっくり休んでね。あと、休憩時間中に割り込んですみませんでした……」

そう言いながらそそくさとドアから出ていった

「ばいば~い」

それを見送ってから、改めて布団に入った

(じゃあ……明日……僕が目覚めた場所に居た研究者の内の一人に聞いてみよう……)

泰久の意識は再び沈んでいった

――――――――――――――――――――――――――

「おはようございます。楠田様」

布団の中にいると、そんな声が聞こえた

「ん……はい……おはようございます……」

その声に導かれるように目を覚ます

僕のベットの横には昨日のメイドさんが居た

「早速で申し訳ありませんが、楠田様の本日の予定をお伝えさせて頂きます」

「あ、はい」

流石に寝転んだまま人の話を聞くのもどうかと思ったので、起き上がってベットに座る

「本日朝九時より会議室Bにお越しください。もし場所が分からないのでしたらお申し付け下さい。ご案内いたします」

ペコリと綺麗な礼をして、レイアはそう言った

「あ、はい。じゃあ朝ごはんだけ食べたら支度します」

立って着替えを始めた

「……あの、服、とか無いですかね?」

始めたは良いものの、着るものが無く止まってしまう

「でしたら、こちらを」

天井からアームが伸びてきて、泰久に服を渡す

「あ、ありがとうございます」

レイアが今動かしているアンドロイドは女性型なのだが、特に気にせずに着替えだす

取り敢えず服だけ変えると

「レイアさん。ちょっと仕上げだけお願いできます?」

レイアの手助けもあって、それなりに見た目にはなった

「よし、それじゃあ向かいましょうか!案内よろしく!」

「畏まりました」
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