Glustony(グラストニー)

さむほーん

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第一章 異界召喚編

第五話 検査

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 ばふんっ、という音を立てながら泰久は部屋にあるソファへと突撃ダイブした。

「ふぃ~~結構疲れるなぁ……」

 ソファに顔を埋めながらそう漏らした。

(会議って言うより、情報の伝達会みたいな感じだったな~)

 ソファの上でそう考える。

「それでは、また御用がございましたらお申し付け下さい」

 後ろからレイアが話しかけてきた。

「あ、は~い。その時はお願いします」

 僕がそう返すと、レイアさんは部屋の外に出ていった。

「さてと」

 起き上がり、ソファに座り直す。

「お出かけ当日までに何をすればいいのかな?」

 先程渡された予定表に書かれていたことを思い出す。

(四日後に不可侵領域に行くんだけど、明日も予定が入っていた筈だ。確かその中身は……)

「身体検査……いや、能力と身体の検査?もしかしたら身体能力検査だったかも……」

 予定表に書かれていた言葉を思い出そうとするが、記憶は定かでは無いようだ。

「まあ良いや。とにかくそれが明日だから、それまで何をして過ごしておくかを考えないと……」

 服を部屋着に着替えながら考えていく。

 着替えが終わると、部屋の中に情報端末らしき物があることに気が付く。

(スマホ……だよね)

 その端末はスマートフォンにそっくりだった。

「おかしいな……この部屋の技術レベルから考えると、この世界ではもうスマホは使われてないと思うんだけど……」

 こちらの行動を予測して勝手に開く布団や、『汎用管理人格』という言葉から予想するに、この世界の技術は僕達の居た2020年代に比べて随分と進んでいるように思える。

 にも関わらず、この机の上にはスマートフォンらしきものがある。

 (これは一体どういうことなんだろう?)

「他の技術が発達してるのに情報端末だけ昔のまんま、ってことは無いだろうし……」

 そこで泰久は、昨日の青髪の話を思い出す。

『君達が生きていたのは……二十一世紀後半か。』

 その言葉から、ある可能性に思い当たる。

「もしかして……この国は僕たちの世界から何度も人を連れてきてるのかな?」

 改めて部屋の中を見回すと、その部屋の内装は一般的なホテルと大して変わらないように見えた。

 つまり、使われている技術だけが妙に高度であるということになってしまう。
 
 だが、普通に考えるとそんなことはあり得ない。

「ってことは、まさか……」

 泰久には『自分たちが端末を使いやすいように国側が技術レベルを泰久達の居た世界の二十一世紀レベルに合わせている』ようにしか思えなかった。

「これは……」

 泰久は黙り込む。

「これは随分と親切だね……」

 感心したような声でそう言った。

「普通は異界から来た人のためにここまでしないよね……でも実際にこんなに良い扱いを受けてる……」

 一人呟く。

「これはウァルス帝国側に凄く優しい人が居るのかな?もし見つけたらその人にお礼を言っておかないと……」

 さらにここで新たな可能性に思い当たる。

「もしかしたら……そんな特定の人間一人が優しいんじゃなくて、帝国の体制側に優しい人が集まっているのかもしれないな……」

 民主主義国家の場合、体制側に優しい人間を集めるのは容易ではない。

 ある程度とは言え『下層からの成り上がり』が許容されている社会では、少しでも隙を見せてしまうと同じ国の【下層】にいる人間に足下をすくわれる。

 その為、上に立つものは常に下に居る人間を警戒し、その警戒心は外部の人間と接触する時にも滲み出てしまう。

 しかし、帝政のように『逆転が不可能な』政治制度を採用した国では訳が違ってくる

 下層に居る人間に足をすくわれる恐れがないので、上層に居る人間に余裕が出てくる。

 そうなると、外部の人間と接する態度にも余裕が見えてきて、泰久たち異界から来た人間に対して行っているように、部外者に対して優しい対応が出来る。

 上に立つ人間が余裕を持った結果、集団自体が腐敗するリスクがあるという部分を無視すれば、『逆転が不可能な』政治制度というものもデメリットばかりではない。

「僕たちの世界では腐りきって使い物にならなくなった制度だけど、ちゃんと優しい人が使えば上手く回るのかもしれないな……」

 泰久は一人でそう考えていた。

 ――――――――――――――――――――――――

「おはようございます。楠田様。本日は午前十時頃から検査を行う予定ですので、遅れることの無いようにお願いします」

 目が覚めた泰久に対してレイアはそう伝える。

「了解……でも場所は分からないからちゃんと案内してね?」

「勿論です」

 泰久はレイアに渡された服に着替える。

「……ちょっとこの服、地味すぎない?いや、派手な服にしろって訳じゃあ無いんだけど……もうちょっとなんかこう……いや、別に良いか」

 泰久は思うところはありながらも、そう言った。

 着替え終わったら、すぐに部屋を出て検査をする場所へと向かう。

『どうもこんにちは。えっと……楠田泰久くん、で合ってるよね?』

「はい。楠田泰久です」

 そこでは全身を防護服のようなスーツで護っている人が待っていた。

 声の高さからすると、多分女だろう。

「あの……その服は……?」

『私は体が弱いからね。こういうのを使わずに有害な光線にさらされると命も危ないんだ。少し失礼に思えるかもしれないけど、ごめんね』

 そう言うと、防護服を着た女は手である部屋を示す。

 泰久がその部屋に入ると、すぐに部屋の扉が閉められる。

『中央にある椅子に座りなさい』

 泰久が椅子に座ると、再び防護服の女が話す。

『今から次に私が指示するまで、絶対にその場から動かないように。もし動いた場合、君の安全は保証出来ないよ』

「……怖いこと言いますね」

 泰久は不安そうな声でそう言う。

『検査っていうのは精密になればなるほど、やり方を間違えたときのリスクも大きくなるの。大丈夫。私の指示通りに動かないでいてくれたら安全は保証するから』

 泰久は体の力を抜く。

 その数秒後にごく僅かな音が鳴り始めた。

(暇だなぁ……)

 泰久は座りながらそう考える。

(これって何分くらい続くんだろう?一分や二分ならこのまま居られるんだけど、二十分続くとか言われたら流石に耐えきれなくて動いちゃうよね……?)

 自分が『何十分も動かずに居られること』に耐えきれるかどうか不安に思い始める。

(こんなことなら検査が何分くらいかかるのかだけでも聞いておけば良かった……)

 少しだけ後悔するが、もう遅い。

 今から動くと安全は保証しないとまで言われたのだ。

 そうなってしまうと、質問すらままならない。

(次の検査からは、どのくらい時間が掛かるのかちゃんと聞いておかないとね)

 幸いにも、その検査はほんの数分で終わった。

『……はい。よく頑張りました。これでこの検査波終わりです。好きに動いて良いですよ』

 先程から鳴り響いていた小さな音が鳴り止んでから数秒後、防護服の女の声が聞こえてきた。

「あの……これで検査は全部終了なんですか?」

 椅子から立ち上がるとすぐに泰久はそう聞いた。

『まだ体液検査が残ってはいるけど、それはそんなに大変なものじゃあ無いから心配しなくても大丈夫よ。【大変な】検査はこれで終わり』

 その言葉を聞いて泰久は少しホッとする。

「じゃあ早速残りの検査もしてしまいましょう。えっと……どちらに向かえば良いんでしょうか……?」

 泰久は部屋の扉の前までやって来てそう言う。

 扉が開くと、レイアが居た

「こちらへどうぞ」

 レイアが何処かへ向かって歩いていく

 泰久はそれを追いかけながら歩いていく

「……そういえば、他の人には全然出会いませんね。もう少し人とか居ないんですか?」

 自分の部屋から最初の検査場に行った時には数人と出会った

 しかし、今さっき検査場を出てから、まだ誰一人として他人に出会って居ない

(流石にこんなに人が少ないのはおかしいと思うんだけど……)

「はい。機密保護の観点から人払いをしてあります。ご容赦下さい」

 レイアはそう言った。

 そこで、泰久はあることを聞く。

「あの、そういえば今日は何を調べるんですか?」

 それを聞くと、レイアは答える。

「本日の検査の目的は『あなたの潜在能力』です。【超人】や【準超人】と呼ばれるような方は大抵の場合、何らかの特異能力を保有しています。その調査を行うのです」

(へぇ~……そんな感じか……)

 それを聞くと、泰久は言うことが無くなったのか黙り込んだ。

 沈黙が続く。

 黙って着いていくと、もう一つの検査場らしき部屋の前でレイアが立ち止まった。

「こちらへどうぞ」

 手で示された部屋の中に入る。

 部屋の中には手首を入れることが出来そうな穴を持つ、小さめの機械が置いてあった。

(これ……あれか!血圧を測る機械か!)

 中学校に居たときに何度か健康診断で見たものを思い出すと、それとピッタリ一致した。

「ここに手を入れれば良いんですか?」

「はい。ですが少々お待ち下さい」

 レイアが立ち止まって目を瞑る。

 少ししたら、目を開けて泰久の方に歩いてくる。

「どうぞ。この中に手をお入れ下さい」

 泰久は言われたままに手を突っ込んだ。

 徐々に機械が閉まっていき、圧迫感が一定の強さに達したところで上げ止まる。

 そのまま暫く待つと、腕にチクリとした痛みが走る。

(注射……かな?血液検査でもするのかな?)

 大した痛みでは無いようで、歯を食いしばって耐えるほどのものでもなかったようた。

 少し時間が経つと、圧迫感が薄れていく。

「どうぞ。腕をお引きください」

 その指示に従って、腕を手前に戻す。

「これで本日の検査は終了です。お疲れ様でした」

 レイアは礼をしてそう言う

「あの……本当にこれで終わりなんですか?なんか、想像していたよりも検査項目が少ないというか……」

「楠田様が液体に浸かっている間にある程度の検査は済ませてあります。先程行ったのはあなたの意識が無いと行えない検査のみです」

 その言葉を言うと、レイアはすぐに動きを止める。

「……どうしたんですか?」

 泰久が聞くと、レイアは頭を下げる。

「申し訳ありません。調査の結果、あなたの正確な固有能力は判明しませんでした」






「……え?」
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