Glustony(グラストニー)

さむほーん

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第一章 異界召喚編

第九話 悪いのだ〜れだ

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「すみません!こちら、メギドさんに従って不可侵領域アンタッチャブルに来ていた者です!もんすたー、っていうのが群れをなして襲ってきて、とにかく、緊急事態なんです!確か、番号は0833だったと思います!一刻も早く帰還したいんです!お願いします!」

 室内に入ると板倉はすぐさまそう叫んだ。

 その声が室内に備えられてある自動音声読み取り機能に捉えられ、ウァルス帝国に送られる。

『了解した。出発までの時間の猶予はどの程度欲しい?』

 室内にそんな音声が響く。

 板倉はすぐに外に走って大声で叫ぶ。

「メギドさん!出発までどのくらい待てば良い?!」

「あ?!……二分半だ!それだけあれば撤退に十分なだけのスペースは作れる!」

 幸いにも、と言うべきなのか襲ってくる暴走者モンスターの数は徐々に減っていた。

 増援に至っては追加が殆ど来ていない。

「分かりました!」

 今の状況から考え出されたメギドの言葉を聞き、板倉はすぐさま車の中に入る。

「今から二分半でお願いします!」

 そう伝えると、遠く離れた場所に居る相手も応える。

『確認した。健闘を祈る』

 板倉はその言葉を聞くと、車両の奥の方に光沢を運ぶ。

 そして、奥にある椅子に光沢を固定した。

「それと、こっちも……」

 光沢を固定した後、入り口に投げ捨てられていた清水も同じようにしようと触る。

 すると、板倉が動かすよりも先に清水は起き上がった。

「あ、大丈……ぶ?」

 フラフラとおぼつかない足取りで車の奥の方へ進む。

 そして、不可侵領域に来たときに乗っていた席に座る。

 そのままノロノロとした手付きで自分の体を席に固定し始める。

(これなら……一応大丈夫、かな?)

 不安なところは有れど、自分の意志で行動できているらしい清水を見て板倉は少しだけ安心する。

 そして二人がいつでも出発できる状態になったので、板倉自身も出発準備をし始める。

「これで……こうして、よし」

 緊急発進だからなのか、行きのときは勝手に行われていた固定作業を手動で行わなくてはならない。

 それでもなんとかやり遂げるた板倉は、あとは待つだけだと言わんばかりに黙る。

 暫くすると、車両の中にメギドが転がり込んできた。

「あと数秒のはずだろ?!確認しろ!!」

 メギドが叫ぶと、社内の音声認識が反応して応える。

『出発まで残り十四……十三……』

 カウントダウンが行われる。

 その数字を聞くと、メギドは車両の入口付近へと移動し、懐から拳銃のようなものを取出して構える。

 メギドが外に居る敵に向かって銃を数発撃つと、爆発音のような音が聞こえる。

『五……四……』

 残り時間が五秒を切ったタイミングでメギドは拳銃を仕舞い、出入り口の扉を閉める。

『二……一……ゼロ。移動を開始します』

 車両が地下に入っていき、ある程度の深さまでたどり着くと長距離移動に向けた加速を始めた。

 再び車内に居る者達へとGが掛かる。

 車両はどんどん加速し、不可侵領域から遠ざかっていく。

 車両が十分な速度に達し、不可侵領域からも大きく離れた辺りでメギドは立ち上がってこう言う。

「まあ、一先ずはこれでなんとかなるだろう。国に戻るまでゆっくりしておけ」
 
 メギドは腰掛けながらそう言った。

 板倉は、光沢が無事だったのかを確認しようと椅子から立ち上がる。

「え?」

 立ち上がった瞬間、板倉は膝から崩れ落ちた。

「あれ……これ……なんで……?」

 立とうと地面に手を付くが、中々立ち上がれない。

「ああ。ちゃんと座っとけ。大方、精神が大分やられたんだろ。命の危険を肌で感じるのは初めてだから、そういうことはよくある。気にするな」

 そう言ってメギドは板倉の腕を掴んで移動させ、椅子に座らせる。

「多少の要望位なら聞いてやるから、お前はそこで座ってろ。お前等の保護も俺の仕事なんだ」

「じゃあ、神歌が無事かどうか確認してきてもらえますか?時間が無かったからちゃんと椅子に固定できたかどうか不安なんです」

 板倉は座りながらそう言った。

「ちょっと待てよ……よし、特に問題はなさそうだぞ。良かったじゃねぇか」

 それを聞いて、板倉は今度こそ完全に力が抜けた。

「はぁ……なんとか、なったのかな?」

「ま、そういうことだ。ちゃんと寝とけよ」

 メギドがそう言うと、板倉はそう時間を置かずに寝息を立て始めた。

(今回の件……明らかに不自然な所が多すぎる)

 メギドは静かになった室内で一人考える。

(その中でも特に変なのが、暴走者モンスターの中でも暴走生物が異種族同士でつるんで攻撃してきたこと、そしてもう一つがこの輸送車の発車場近くまで暴走者モンスター達が寄って来ていたことだ)

 まずメギドは後者について考えだした。
 
 後者は、ギリギリ説明がつかないことも無い。

(どういう訳か、暴走者モンスター達には一定の範囲から外に出ることが殆ど無いという特殊な性質が確認されている)

(ただ『殆ど』と言うからには勿論例外もある)
  
(あいつ等は基本的に、兵器として作られたときの本能を継承している。もしその中に『逃げる敵を追撃する』ものが優先的に組み込まれて居るのなら、あの辺りまで暴走生物モンスターがやって来たことにも説明は付く)

 そうであったとしても、普通はあれ程の数は来ないということに気付きながら目を逸らし、前者について考える。

(問題は暴走生物モンスター達が異種族間で協力し合うような行動を見せたことだ)

 不思議そうにしながらそのことについて考える。

(自然発生的にそうなったのだとしたら大問題だが、人為的なものだとしたらさらに大問題だ)

 二つのパターンを考え、それぞれの可能性を探る。

(仮に自然発生的に起こったとして、一体何が原因となった?少なくとも、事前に確認した範囲では特に異変は感じられなかったが……)

 メギドが思索を続けている中、その車両はどんどん移動していった。

 ――――――――――――――――――――――

「メギド副団長。説明して頂いて構いませんかな?」

 会議室のような場所に座るメギドに壮年の男がそう質問する。

 その部屋には他にも大勢の人間が居た。

 一つの円卓を囲うように多くの人間が座っており、部屋への入り口から最も遠い場所には何やら独特の形の図形が浮かんでいた。

「申し訳ございません。敵の大群による攻撃により、貴重な異世界人を三人、失ってしまいました」

 申し開きはせずにメギドは頭を下げた。

「おいおい……マジかよ……」
「これは少々軍事計画を練り直した方が良いのでは……」
「いや、幸いにも失った人材は以下の存在だけだ。上手く行けば計画へのダメージは最小に減らせるかもしれん」

 メギドから正確な報告が来た直後、その場にいる者達は小声でそう話し始める。

「いや、私としてはそれよりも先にメギド副団長殿の処遇について話し合いたい。具体的には、彼を副団長職から解任するのか、それともそもそも【超人部隊】から除名するのか、といった具合にだ」

 そう言ったのは現在のウァルス帝国陸軍大将ゲルム・ローだ。

(陸軍大将……正直、彼等からしたら我々の存在は鬱陶しいだろうが……)

 ウァルス帝国には徴兵制が有る。

 国民の中で条件を満たした者は徴兵され、陸軍・空軍・国家警察の三つの軍組織の何れかに一定期間、一般的には三年程配属される。

 そして、そんな軍を統括するのが陸軍・空軍の対象と統括警察長だ。

 これらのトップも含めてだが、軍組織の上層部には愛国心が強い者が多い。

 愛国心が弱い者は『激務』かつ『軍以外への権限がほぼゼロ』の軍上層部などになろうとはしないからだ。

 そういう訳で、軍上層部を動かす原動力は『金』でも『権力』でも無く、義務として自分達に身を預ける国民への責任感や愛国心となっている。

 そんな軍上層部からすると、【超人部隊】というウァルス皇帝直属であるだけの組織が軍事の中心を担っているかのような扱いを受けているのが気に食わないらしい。

(まあ、向こうも今国を守っているのがどの部隊なのかを考えると、あまり派手なことはしてこないだろうが……)

 自分自身が部隊を追われることはあるかもしれないと覚悟を決める。

『控えよ』

 空中の図形からそんな声が聞こえた。

 その場にいる全員が頭を下げる。

「皇帝陛下のご意見です」

 ウァルス帝国は名前の通り帝政を敷いている。

 そこから分かるように、この国では皇帝の持つ権限が非常に大きい。

 なので、この会議における皇帝のとはほぼと同じ意味として使われる。

『帝国超人部隊副団長メギド・ロウィンスに半年間の減棒措置を行う。割合は20%程度だ』

 処置の内容に驚いて、そこにいる者達が口々に反論を言う。

「陛下、流石にそれは処分が軽すぎるのでは……」
「その通りです。ここで軽すぎる処分をしてしまうと後に続く者達の悪い手本となってしまうのでは……」

 その質問に皇帝は答える。

『問題無い。詳細については機密事項の為話せないが、今回の件がメギドの責任では無いことは裏取りしてある』

 それが何なのか、気になる者もこの場には多い。

 しかし、皇帝が機密と言ったからには追求してはならないのだ。

『これで会議を終わらせたいと考えているが、構わんか?』

 皇帝に言われた以上、誰も反対することは出来ない。

 そのまま会議は終了した。

 ――――――――――――――――――――――――

「ふぅ……予想外の出来事とは起こるものだな」

 椅子に座って、六十は超えているかのように見える男は言った。

「珍しいですね。陛下は常に様々な状況を想定して行動していると思うのですが……」

 そばに控えている男が言った。

「甘いな。確かに、私は常人の行動はほぼ完璧に読むことが出来るが、狂人のそれを読むことは出来ない。今回はが動いたようだが、他の【大罪能力者】達の行動も私には読めない」

「彼らですか……確かにかなり行動の予測がつきにくいですね」

「ああ。いい加減もう少しで良いから社会貢献の為に動いて欲しいものだ」

 さて、と話題を変えるように皇帝が言う。

大罪能力者アホ共の行動を読むのも大事だが、今はウェスタへの対策が優先だ」

「あの国、最近キナ臭いですもんね」

 二人は暫く部屋の中で話していた。
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