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第一章 異界召喚編
第十六話 両思い
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「おはよ、泰久!元気?」
泰久のが起きたことを確認したリファはそのままベッドを凹ませる勢いで泰久の眠るベッドに飛び込んだ。
「っ!!おはよ……リファ」
泰久は抱き着かれた衝撃で目を覚まし、ゆっくりとリファに挨拶をする。
「朝ごはん出来てるけど、どうする?先に着替えちゃう?」
エプロン姿でフライパンを手に持ったリファはそう聞いてきた。
「そうだね……まず着替えてからご飯……かな?」
泰久は答えて、ノロノロと自分の着替えを探し始める。
「分かった。ご飯の準備しておくね!」
リファは嬉しそうにそう答えて、隣の部屋にあるキッチンに向かった。
「えっと……これか」
タンスから上下セットの服を取り出し、それに着替える。
着替え終わった光沢は、洗面所に行って顔を洗ってから、リファの居るキッチンへと向かった。
「ねぇリファ、僕も何か手伝えることが無いかな?」
キッチンに入ってきてすぐにそう聞いた泰久をリファは慌てたように止める。
「大丈夫だって泰久!私がやっとくから、泰久は……その、向こうでゆっくり休むの!」
泰久の背中を押して、半ば無理矢理元の部屋に押し込められる。
「じゃあ、私料理を作るから!」
泰久を部屋に押し込めた犯人はそう言ってキッチンへと繋がるドアを閉める。
一人になった泰久は呟いた。
「何だか、幸せなような慌ただしいような……」
そう考えた泰久は自分がここでリファラウスと共に暮らすことになった経緯を思い出していく。
――――――――――――――――――――――――
「それでね、泰久くん。私としては君に一緒に住んでほしくて……」
リファに抱きしめられながら泰久が休んでいると、いきなりリファがそう言ってきた。
「え?」
泰久は驚いて声を漏らす。
「そうなの!だからね、泰久くんには私の家でゆっくり過ごしてほしいの。お世話は私がするから……ね?」
目に薄っすらと涙を浮かべながらリファは言う。
「う、うん……分かった……」
泰久はその押しを断りきれず、次の日、いや、その日からリファラウスの家に住むことになった。
――――――――――――――――――――――――
「勢いが凄かったよなぁ……」
泰久は椅子に座ってそう思い返す。
そのまま落ち着いた気分でボーっとしていると、隣の部屋と今泰久が居る部屋を繋ぐ扉が開いた。
「おまたせ~。朝ごはん、出来たよ~」
リファが隣の部屋からワンプレートの朝食を手にやって来た。
「ありがとう……」
泰久はそこまで言うと、少し躊躇する素振りを見せてから続ける。
「なんか、ごめんね。こんなに色々させちゃって……」
すると、真剣な顔をしてリファは泰久に向き直った。
「あのね、泰久。私は、私がやりたいから泰久のお世話をしてるの。本当に私に申し訳ないと思ってるんなら、私のお世話を黙って受けること!」
朝食のプレートからスクランブルエッグのような料理を選んでスプーンで掬い、泰久の前に突き出しながらリファラウスは言う。
「あ、うん……分かった……」
泰久は精一杯、安心したような表情を見せようとした。
実際には納得でない様子ではありながら、少なくとも表面上は納得したという雰囲気を出そう、という雰囲気は見えたことからリファも笑顔になる。
「あのね、人は一度好きになると相手に何でもしてあげたくなるの。泰久もいつかきっと分かる日が来ると思うよ」
目を細めながら、ゆっくりとそう言った。
「……」
二人の間に沈黙が流れる。
「そっか……僕にも……ね」
泰久が呟くと、リファは改めてスプーンを手に取る。
「ほら!だから食べて!いっぱい食べて!」
泰久は自分に向かって突き出されたスプーンを手に取り、スクランブルエッグのような食べ物を口に運ぶ。
(なんか……普通に美味しいな……)
口から吐き出しそうになるほど不味い訳では決して無く間違い無く『おいしい』と呼ぶことのできるレベルのものではある。
しかし、目が飛び出るほど美味しいものかと言われると首を傾げてしまう。
感動する訳では無い味、感動よりも安心に近い料理。
その感想が最も適切だと言える食事だった。
「ほら!こっちも見て!スープも作ったの!」
リファはプレートの上に乗ったお椀を手に取り、泰久の口元に持っていく。
「もうさっきのは飲み込んだでしょ?はい、口開けて!」
泰久は言葉に反応し、無意識的に口を開ける。
「……はい!よく出来ました~」
口の中に注ぎ込まれたスープを泰久は飲み干す。
「……あの、せめて僕が自分で食べたいっていうか……」
「あ!食べたいの?!私の料理、食べたいの?!」
リファは目を輝かせながらそう言う。
「う、うん……まあ、一応そうなる……のかな?」
泰久は曖昧に答える。
「じゃあこのサラダ!結構自信あるから食べてくれないかな……?ね、お願い!」
リファはそう言って葉物野菜のサラダにシーザードレッシングのような液体を掛け始める。
「あ……ドレッシングは濃いめと薄め、どっちが好き?」
「僕は……薄い方が良いかな……」
そう泰久が返すと、リファは少し不安そうな顔をする。
「どうしよう……だったらちょっとかけ過ぎちゃったかな……?」
リファはそう言いながらフォークで泰久の口元にサラダを持っていく。
「だ、大丈夫だから……僕はちゃんと一人で食べれるって……」
泰久はそのサラダを手で押し退け、自分でフォークを取った。
そのままサラダを口に入れ、噛み始める。
「……いや、美味しいよこれ。確かにちょっと味は濃いかな?って思わないわけでも無いけど……」
「ホント!良かった……もし口に合わなかったらって……」
リファは露骨に安心したような顔を見せる。
その後も泰久は朝食をどんどん口に運び、最終的には完食した。
その様子を幸せそうに見つめていたリファに、泰久は言った。
「ご馳走さま」
リファはニコニコしながら答える。
「口に合ったみたいで良かった!泰久の好みの把握を間違えてたらどうしよう、って思ってたけど、大丈夫だったね」
その言葉を少し不審に思った泰久は聞き返す。
「僕の好みの把握?それって、僕の好みに当たりをつけてた……ってことなの?」
リファはその質問に答えた。
「うん!泰久が向こうの世界に居た頃からずっと泰久の生活を見ててからね……あ!流石にお風呂とかは見てないよ!そういうのは……やっぱさ、なんというか……許可?を取ってからじゃないと……」
少し顔を赤らめながらリファはそう言う。
「許可って……いや……まあ、それは確かそうだけど……」
泰久は突然態度を変えたリファに困惑しながらそう言った。
「ほら、まあ、私ってこう見えて結構順序とか大事にするタイプなんだよ?だから、さ。一応泰久ともっと仲良くなってからにしないと……」
リファはああ見えて貞操観念はかなり固いらしい。
泰久は意外だと思いながら言葉を続けた。
「まあ、僕の好みを知ってた理由はもう良いか……うん、美味しかった……ありがとうございます」
泰久はペコリと頭を下げる。
「こちらこそお食べ頂いてありがとうございます……」
リファもペコリと頭を下げた。
「ところで、僕はリファが考えを読むことができることがあるのはリファの……能力?が原因だったんだよね?」
リファはコクリ、と可愛らしく首を縦に振った。
「その能力って、どういうものなの?それを知りたいんだけど……」
リファは説明し始める。
「えっとね……これは私の……確か、【色欲】?みたいな能力のおかげでね。両想いならお互いの考えがわかるようになってるの♡」
うっとりとして頬に手を当てながらリファは言う。
(【色欲】っていう力が一体何なのかは分からないけど、あの感じだとリファ自身も大して分かってないみたいだから今聞いても意味は無さそうだな……)
泰久は力の正体については一旦横に置いておくこととし、もう一つの気になったことについて考え始めた。
(両想いだと互いの考えが分かるようになる……か)
泰久は以前、リファの心の声が自分の頭の中に響いてきたことを思い出す。
(両想い……かぁ……)
眼の前に居るリファを見ながら考える。
(両想い……恋愛……なんか、僕が今リファに対して抱いている感情はそういうのじゃ無い気がする……)
自分にとって、リファが大切な存在なのは分かる。
しかし、その感覚が恋愛的な感情に根差しているものなのかは泰久には分からなかった。
「あ!一応、両思いじゃなくても相手の考えが分かる場合が有るの!えっと……片思いのときは【想われてる側】の人は【想っている側】の考えが分かるんだけど……」
リファは少し悲しそうにしながらそう言った。
「リファ?どうしたの?」
泰久がそう聞く。
「いや……大丈夫。ちょっと考えてただけだから」
リファはそう言って話を終わらせようとするが、泰久は食い下がる。
「本当に大丈夫?何だか辛そうだったけど……」
「大丈夫、本当に大丈夫だから」
結局リファはそう言ってばかりだった。
話すことが出来ず、泰久は遂に諦めてその話を切り上げた。
「まあ、そこまで言うなら良いか……本当に大丈夫なんだよね?」
「うん。大丈夫」
リファがそう言い、泰久は本当に諦めた。
(【色欲】……そんな特殊能力も世の中には有るんだな……)
そう考えていた泰久は、自分が倒れていた時のことを思い出す。
何度も空腹のまま死んだときのことを思い出し、吐きそうになるが、何とか手で口を抑えて最悪の事態だけは避けた。
「!!大丈夫?!?!」
その泰久を見てリファが大急ぎで寄ってくる。
「あぁ……うん。ちょっとね……まあ、でも大丈夫」
泰久を見てリファは泣きそうになりながら聞く。
「もしかして、私の料理、無理して食べてた……?本当に無理しないでね?そうされると、私も辛いし……」
涙を目に浮かべながらそういうリファを泰久は抱きしめて慰めながら考える。
(僕が何度も餓死してから目覚めるまでの間に、確かに真っ黒な何かを見た)
(何度も餓死した僕が今でも生き残れている理由はあの真っ黒なものなのかな……?)
泰久はリファが自分に抱きついてくる感触に多幸感を感じながら思索を深めていった。
泰久のが起きたことを確認したリファはそのままベッドを凹ませる勢いで泰久の眠るベッドに飛び込んだ。
「っ!!おはよ……リファ」
泰久は抱き着かれた衝撃で目を覚まし、ゆっくりとリファに挨拶をする。
「朝ごはん出来てるけど、どうする?先に着替えちゃう?」
エプロン姿でフライパンを手に持ったリファはそう聞いてきた。
「そうだね……まず着替えてからご飯……かな?」
泰久は答えて、ノロノロと自分の着替えを探し始める。
「分かった。ご飯の準備しておくね!」
リファは嬉しそうにそう答えて、隣の部屋にあるキッチンに向かった。
「えっと……これか」
タンスから上下セットの服を取り出し、それに着替える。
着替え終わった光沢は、洗面所に行って顔を洗ってから、リファの居るキッチンへと向かった。
「ねぇリファ、僕も何か手伝えることが無いかな?」
キッチンに入ってきてすぐにそう聞いた泰久をリファは慌てたように止める。
「大丈夫だって泰久!私がやっとくから、泰久は……その、向こうでゆっくり休むの!」
泰久の背中を押して、半ば無理矢理元の部屋に押し込められる。
「じゃあ、私料理を作るから!」
泰久を部屋に押し込めた犯人はそう言ってキッチンへと繋がるドアを閉める。
一人になった泰久は呟いた。
「何だか、幸せなような慌ただしいような……」
そう考えた泰久は自分がここでリファラウスと共に暮らすことになった経緯を思い出していく。
――――――――――――――――――――――――
「それでね、泰久くん。私としては君に一緒に住んでほしくて……」
リファに抱きしめられながら泰久が休んでいると、いきなりリファがそう言ってきた。
「え?」
泰久は驚いて声を漏らす。
「そうなの!だからね、泰久くんには私の家でゆっくり過ごしてほしいの。お世話は私がするから……ね?」
目に薄っすらと涙を浮かべながらリファは言う。
「う、うん……分かった……」
泰久はその押しを断りきれず、次の日、いや、その日からリファラウスの家に住むことになった。
――――――――――――――――――――――――
「勢いが凄かったよなぁ……」
泰久は椅子に座ってそう思い返す。
そのまま落ち着いた気分でボーっとしていると、隣の部屋と今泰久が居る部屋を繋ぐ扉が開いた。
「おまたせ~。朝ごはん、出来たよ~」
リファが隣の部屋からワンプレートの朝食を手にやって来た。
「ありがとう……」
泰久はそこまで言うと、少し躊躇する素振りを見せてから続ける。
「なんか、ごめんね。こんなに色々させちゃって……」
すると、真剣な顔をしてリファは泰久に向き直った。
「あのね、泰久。私は、私がやりたいから泰久のお世話をしてるの。本当に私に申し訳ないと思ってるんなら、私のお世話を黙って受けること!」
朝食のプレートからスクランブルエッグのような料理を選んでスプーンで掬い、泰久の前に突き出しながらリファラウスは言う。
「あ、うん……分かった……」
泰久は精一杯、安心したような表情を見せようとした。
実際には納得でない様子ではありながら、少なくとも表面上は納得したという雰囲気を出そう、という雰囲気は見えたことからリファも笑顔になる。
「あのね、人は一度好きになると相手に何でもしてあげたくなるの。泰久もいつかきっと分かる日が来ると思うよ」
目を細めながら、ゆっくりとそう言った。
「……」
二人の間に沈黙が流れる。
「そっか……僕にも……ね」
泰久が呟くと、リファは改めてスプーンを手に取る。
「ほら!だから食べて!いっぱい食べて!」
泰久は自分に向かって突き出されたスプーンを手に取り、スクランブルエッグのような食べ物を口に運ぶ。
(なんか……普通に美味しいな……)
口から吐き出しそうになるほど不味い訳では決して無く間違い無く『おいしい』と呼ぶことのできるレベルのものではある。
しかし、目が飛び出るほど美味しいものかと言われると首を傾げてしまう。
感動する訳では無い味、感動よりも安心に近い料理。
その感想が最も適切だと言える食事だった。
「ほら!こっちも見て!スープも作ったの!」
リファはプレートの上に乗ったお椀を手に取り、泰久の口元に持っていく。
「もうさっきのは飲み込んだでしょ?はい、口開けて!」
泰久は言葉に反応し、無意識的に口を開ける。
「……はい!よく出来ました~」
口の中に注ぎ込まれたスープを泰久は飲み干す。
「……あの、せめて僕が自分で食べたいっていうか……」
「あ!食べたいの?!私の料理、食べたいの?!」
リファは目を輝かせながらそう言う。
「う、うん……まあ、一応そうなる……のかな?」
泰久は曖昧に答える。
「じゃあこのサラダ!結構自信あるから食べてくれないかな……?ね、お願い!」
リファはそう言って葉物野菜のサラダにシーザードレッシングのような液体を掛け始める。
「あ……ドレッシングは濃いめと薄め、どっちが好き?」
「僕は……薄い方が良いかな……」
そう泰久が返すと、リファは少し不安そうな顔をする。
「どうしよう……だったらちょっとかけ過ぎちゃったかな……?」
リファはそう言いながらフォークで泰久の口元にサラダを持っていく。
「だ、大丈夫だから……僕はちゃんと一人で食べれるって……」
泰久はそのサラダを手で押し退け、自分でフォークを取った。
そのままサラダを口に入れ、噛み始める。
「……いや、美味しいよこれ。確かにちょっと味は濃いかな?って思わないわけでも無いけど……」
「ホント!良かった……もし口に合わなかったらって……」
リファは露骨に安心したような顔を見せる。
その後も泰久は朝食をどんどん口に運び、最終的には完食した。
その様子を幸せそうに見つめていたリファに、泰久は言った。
「ご馳走さま」
リファはニコニコしながら答える。
「口に合ったみたいで良かった!泰久の好みの把握を間違えてたらどうしよう、って思ってたけど、大丈夫だったね」
その言葉を少し不審に思った泰久は聞き返す。
「僕の好みの把握?それって、僕の好みに当たりをつけてた……ってことなの?」
リファはその質問に答えた。
「うん!泰久が向こうの世界に居た頃からずっと泰久の生活を見ててからね……あ!流石にお風呂とかは見てないよ!そういうのは……やっぱさ、なんというか……許可?を取ってからじゃないと……」
少し顔を赤らめながらリファはそう言う。
「許可って……いや……まあ、それは確かそうだけど……」
泰久は突然態度を変えたリファに困惑しながらそう言った。
「ほら、まあ、私ってこう見えて結構順序とか大事にするタイプなんだよ?だから、さ。一応泰久ともっと仲良くなってからにしないと……」
リファはああ見えて貞操観念はかなり固いらしい。
泰久は意外だと思いながら言葉を続けた。
「まあ、僕の好みを知ってた理由はもう良いか……うん、美味しかった……ありがとうございます」
泰久はペコリと頭を下げる。
「こちらこそお食べ頂いてありがとうございます……」
リファもペコリと頭を下げた。
「ところで、僕はリファが考えを読むことができることがあるのはリファの……能力?が原因だったんだよね?」
リファはコクリ、と可愛らしく首を縦に振った。
「その能力って、どういうものなの?それを知りたいんだけど……」
リファは説明し始める。
「えっとね……これは私の……確か、【色欲】?みたいな能力のおかげでね。両想いならお互いの考えがわかるようになってるの♡」
うっとりとして頬に手を当てながらリファは言う。
(【色欲】っていう力が一体何なのかは分からないけど、あの感じだとリファ自身も大して分かってないみたいだから今聞いても意味は無さそうだな……)
泰久は力の正体については一旦横に置いておくこととし、もう一つの気になったことについて考え始めた。
(両想いだと互いの考えが分かるようになる……か)
泰久は以前、リファの心の声が自分の頭の中に響いてきたことを思い出す。
(両想い……かぁ……)
眼の前に居るリファを見ながら考える。
(両想い……恋愛……なんか、僕が今リファに対して抱いている感情はそういうのじゃ無い気がする……)
自分にとって、リファが大切な存在なのは分かる。
しかし、その感覚が恋愛的な感情に根差しているものなのかは泰久には分からなかった。
「あ!一応、両思いじゃなくても相手の考えが分かる場合が有るの!えっと……片思いのときは【想われてる側】の人は【想っている側】の考えが分かるんだけど……」
リファは少し悲しそうにしながらそう言った。
「リファ?どうしたの?」
泰久がそう聞く。
「いや……大丈夫。ちょっと考えてただけだから」
リファはそう言って話を終わらせようとするが、泰久は食い下がる。
「本当に大丈夫?何だか辛そうだったけど……」
「大丈夫、本当に大丈夫だから」
結局リファはそう言ってばかりだった。
話すことが出来ず、泰久は遂に諦めてその話を切り上げた。
「まあ、そこまで言うなら良いか……本当に大丈夫なんだよね?」
「うん。大丈夫」
リファがそう言い、泰久は本当に諦めた。
(【色欲】……そんな特殊能力も世の中には有るんだな……)
そう考えていた泰久は、自分が倒れていた時のことを思い出す。
何度も空腹のまま死んだときのことを思い出し、吐きそうになるが、何とか手で口を抑えて最悪の事態だけは避けた。
「!!大丈夫?!?!」
その泰久を見てリファが大急ぎで寄ってくる。
「あぁ……うん。ちょっとね……まあ、でも大丈夫」
泰久を見てリファは泣きそうになりながら聞く。
「もしかして、私の料理、無理して食べてた……?本当に無理しないでね?そうされると、私も辛いし……」
涙を目に浮かべながらそういうリファを泰久は抱きしめて慰めながら考える。
(僕が何度も餓死してから目覚めるまでの間に、確かに真っ黒な何かを見た)
(何度も餓死した僕が今でも生き残れている理由はあの真っ黒なものなのかな……?)
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