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第一章 異界召喚編
第十八話 復讐
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「っ痛!!」
壁に叩きつけられた泰久の視界が一瞬白く染まる。
(そうだ、リファ!)
「リファ!!無事?!」
泰久は少し落ち着くと、すぐにリファを探しに走り回る。
「リファ!リファ!何処?!」
泰久は大声で叫びながら周囲を探す。
もはや今の泰久に、先程のような『機械に見つからないよう静かに動く』という考えは無い。
リファを探すことしか頭には残っていなかった。
「何処に……」
リファが見つからず、泰久が立ち尽くしていると後ろから瓦礫が崩れるような音とモーター音が聞こえた。
「……はぁ」
泰久は諦めたように溜め息を吐くと、ゆっくりと後ろを向く。
「どうしよっかな……」
泰久が振り向いた先には、先程の蜘蛛型機械が居た。
蜘蛛は泰久の方へジリジリと近付いてくる。
その機械を見ながら泰久はゆっくりと後ろに下がる。
(いけるかな……?)
蜘蛛を視界に捉えながらも出来る限り視界の端まで調べ、リファが居ないかどうか確かめる。
(どうしよう……居ない。一体どこに……?)
必死に探すが、一向に見つからない。
そうこうしているうちに、泰久の背中が壁に当たった。
「……どうしよっかな」
これ以上下がれない。
かといって、この巨大な機械の攻撃を避けることが出来るとも思えない。
(リファ……リファさえ見つかれば……)
そんな状況になっても泰久はリファがどこにいるのか探していた。
(あれは……)
泰久は視界の端に独特なツインテールを見つける。
(!……いや、落ち着け。今リファの元へ飛んで行ってもむしろリファのことを危険にさらしてしまうだけだ……せめてこの機械を振り切ってからにしないと……)
泰久はまず機械の方に向き直る。
「さて……問題はどうやって振り切るか、だ」
泰久は自分がここから離れてリファを安全に助ける方法を考える。
(後ろには下がれないから前に出る必要はあるだろうな……その場合、一番狙いやすそうなのはあの機械の足元だ)
蜘蛛型の機械の足は相当長いが、関節は精々2個ほどしか無い。
(2個しか関節がないのなら、僕が足元を素早く走り抜ければ蜘蛛は僕を捉えることが出来ないんじゃないか?)
賭けに出るしか無い、と考えて泰久は走り出す準備をする。
(足元を動いて、相手に補足されないように……)
「三……二……一……今!」
泰久は雲の足元に向かって走り出した。
蜘蛛は自分の真下へ向かってくる人間に向けて砲塔を向けようとする。
「よし!やっぱり大丈夫だ!」
砲塔は泰久の方へ向く直前に、蜘蛛の足に引っかかって止まった。
(今のうちにリファの所へ行って一緒に逃げないと!)
泰久は先ほど見えたツインテールのある場所へ全速力で向かう。
ギュン、という音が泰久の上から聞こえた。
「え?」
泰久はその音がした方へ振り返る。
見ると、泰久の真上、蜘蛛型機械の胴体の真ん中くらいの場所から、真下に居る泰久の方を向いた砲塔が生えていた。
「……え?」
予想外の出来事に泰久は一瞬足を止める。
その一瞬が致命傷となった。
ドン、と大きな音がして、泰久の体に砲弾が迫る。
「!!」
泰久は無意識的に手を前に向ける。
泰久の体に砲弾が直撃する
直前に泰久の手から黒い霧のようなものが生まれた。
「え?」
泰久は、そのまま立ち止まった。
黒い霧が砲弾に向かって伸びていく。
霧が弾を包んで砲弾が見えなくなった。
「いや……え?何が……」
ドクン、と不思議な感覚がした。
泰久は、自分の体の中に何かが流れ込んでくるような妙な感覚を覚えながらも黒い霧を見つめていた。
暫くすると、黒い霧の量が徐々に減っていく。
しかし、霧が無くなり、先ほど霧によって隠されていた砲弾が出てくるということは無かった。
「……無い」
霧が晴れた時にはもう砲弾は跡形も無く消えていた。
「一体、何が……」
泰久は少しの間その場で呆然としていた。
「っ!!違う!早く走らなきゃ!」
泰久は、ハッと我に返って走り出す。
「リファ!!無事?!!」
ツインテールのある場所に辿り着いて泰久はそう言う。
「あ!泰久!!来てくれたんだ!!ありがと♡」
リファは瓦礫の影からヒョコリと顔を出す。
「リファ……良かった……無事だったんだ……」
泰久は安心したように息を吐く。
「じゃあ、ほら、早く逃げるよ」
泰久はリファに背中を向けてしゃがむとそう言った。
「?……あっ!そういうこと?!大丈夫だよ!!流石に今は私も自分で歩けるよ!」
リファは立って泰久の隣を走っていった。
「ねぇ~。どっちに行けばいいの~?」
リファは走りながらそう言った。
「リファ!!駄目だよ!!隠れて、静かにしなきゃ!」
ギュン、とモーターが駆動するような音がする。
見ると、泰久の方を見ているリファの体の前に蜘蛛型の機械が来ていた。
「リファ!!危ない!!」
「え?」
泰久が叫ぶと、リファは一瞬立ち止まる。
その間に、蜘蛛の身体に付いた砲塔がリファの頭に狙いを定めていた。
「リファ!!早くそこから
ズドン、と何かが爆発するような音がする。
次の瞬間には、リファの頭が無くなっていた。
頭を失った胴体がゆっくりとその場に崩れる。
「リ……ファ?」
泰久は、何かに頭を侵されたようにゆっくりと、一歩ずつ進んで行く。
そして、動かなくなったリファの身体の前に辿り着く。
(いや、いやいやいや……そんな簡単に死ぬはずが……そんな……はずが……)
泰久はリファの身体に手を伸ばす。
腕を掴んでリファを起こそうとする。
(固い……え?いや……そんなはずは……だったら、リファは本当に……)
リファの腕は固くなっていて、泰久の筋力ではそう簡単に動かすことが出来そうになかった。
「ねぇ……リファ?大丈夫……だよ、ね?」
顔のないリファから声が返ってくることは無かった。
泰久の頭の中から周りの状況を判断できる余裕が消えていく。
そんな頭では、自分に向けられた砲塔に気付くことが出来る訳も無かった。
(とにかく……とにかくリファをここから動かさないと……それから、病院に連れて行って……)
「あ」
泰久はリファをどこか安全な場所に連れて行こうと持ち上げるが、腕に力が入らず、リファの身体を落としてしまう。
その瞬間、泰久に砲弾が直撃した。
泰久は吹き飛ばされ、何度も地面に当たりながら遠くにたどり着く。
「あ……あ……」
泰久にはもう動き出す気力も残っていなかった。
「リ……ファ……」
残っている力でリファのいる方に手を伸ばす。
リファが無事なのかを確認しようと、首を動かして先程自分がリファを持ち上げようとしていた場所を見た。
そこに、リファの死体は無かった。
(え……?何で……)
泰久は固まる。
(そんなはずは……さっきまでは間違いなくそこにあったはずなのに……)
泰久は力を振り絞って周囲を見渡す。
「……あれ……か?」
泰久の視線の先では身体の下半分だけが残ったリファらしきものが壁に突き刺さっていた。
「リ……ファ……」
泰久は地面を這って、その身体のある場所へ移動する。
「リファ……」
壁に刺さったリファを引き抜こうとリファの腰に手をかける。
引っこ抜こうと必死で力を込めていると、泰久は途中であることに気付く。
(このまま引っこ抜いた場合、リファは無事なのか?)
今のリファは、必死に力を込めても全く動かないくらい固く壁にハマっている。
「じゃあ、周りの壁を壊す方向で動いた方が良いのかな……?」
泰久は近くの瓦礫からスコップのようなものを拾う。
慎重に、慎重に壁に向けてそのスコップを当てる。
パラパラと少しだけ壁が崩れ始めた。
(まだ……来てない……)
泰久がチラリと蜘蛛型機械の方に目を向けると、まだ泰久の居る方へ向かってくる様子には見えなかった。
それをよく確認すると、泰久はどんどん壁を崩していく。
暫く崩すと、リファの身体を取り出せるくらいには隙間が空いてきた。
「よし……これなら……」
泰久はリファを壁からゆっくりと取り出す。
「……やっぱり……駄目か」
取り出したリファに上半身は無かった。
それどころか、先程よりも無くなっている身体の体積は増えていた。
「……もう、駄目なのかな……?」
泰久は半ば諦めながらもリファの身体を取り出し、丁寧に床に置いた。
「リファ……ごめんね……」
泰久の顔から涙が流れる。
「ごめん……」
少しだけ、泰久の身体から黒い霧が漏れ出た。
(何で……こうなったんだろう……?)
泰久は一人で考えた。
「あ……あいつのせいか……」
泰久の視界の端に蜘蛛型の機械が映る。
それを見た瞬間、泰久の身体から出る黒い霧の量が急に増え始める。
「あいつの……せいで!!」
霧が少しずつ機械に近付いていく。
最初は蜘蛛型の機械は霧の発生源となる泰久を無力化しようと近付いてきていた。
ただ、自分の体の半分以上を霧が覆うようになると行動を変え始める。
蜘蛛は退却を始めていた。
泰久の耳に聞こえるモーター音は少しずつ小さくなっていた。
「待て」
泰久は地面を蹴り上げる。
音にも届くかと言う程の凄まじい速度が出た。
そのまま退却している蜘蛛の前に辿り着くと、今までの速度が嘘かのように急停止した。
「待てって」
泰久は呟くように、震える声でそう言った。
「僕からリファを奪っておいて何勝手に逃げようとしてるの?」
泰久は蜘蛛へそう話しかけた。
「ダメでしょ…ね?」
一歩ずつ蜘蛛へと近づいていく。
「ほら……ちゃんと償ってくれないと……困るよ……」
泰久はその場から機械に向かって走り出す。
そのままの勢いで機械に飛び蹴りを食らわせた。
ただ蹴りを食らわせただけで辺りを衝撃波が襲った。
蜘蛛型機械はその衝撃に耐えられず、機械の上半分が吹き飛ぶ。
「あ……以外と脆いんだ……」
泰久はボソリと呟く。
「じゃあ、壊せそうだな……」
泰久はジャンプして機械の上に乗り、部品同士の繋ぎ目を探す。
「あった……これか」
その繋ぎ目に手を捩じ込み、力を込めてその繋ぎ目を引き剝がした。
「リファは頭を吹っ飛ばされたんだ。」
「君に痛覚が有るのかは分からないけど、リファと同じだけとは言わないけど、出来るだけ苦しんでくれると嬉しいな」
泰久は部品を完全に千切り取った。
壁に叩きつけられた泰久の視界が一瞬白く染まる。
(そうだ、リファ!)
「リファ!!無事?!」
泰久は少し落ち着くと、すぐにリファを探しに走り回る。
「リファ!リファ!何処?!」
泰久は大声で叫びながら周囲を探す。
もはや今の泰久に、先程のような『機械に見つからないよう静かに動く』という考えは無い。
リファを探すことしか頭には残っていなかった。
「何処に……」
リファが見つからず、泰久が立ち尽くしていると後ろから瓦礫が崩れるような音とモーター音が聞こえた。
「……はぁ」
泰久は諦めたように溜め息を吐くと、ゆっくりと後ろを向く。
「どうしよっかな……」
泰久が振り向いた先には、先程の蜘蛛型機械が居た。
蜘蛛は泰久の方へジリジリと近付いてくる。
その機械を見ながら泰久はゆっくりと後ろに下がる。
(いけるかな……?)
蜘蛛を視界に捉えながらも出来る限り視界の端まで調べ、リファが居ないかどうか確かめる。
(どうしよう……居ない。一体どこに……?)
必死に探すが、一向に見つからない。
そうこうしているうちに、泰久の背中が壁に当たった。
「……どうしよっかな」
これ以上下がれない。
かといって、この巨大な機械の攻撃を避けることが出来るとも思えない。
(リファ……リファさえ見つかれば……)
そんな状況になっても泰久はリファがどこにいるのか探していた。
(あれは……)
泰久は視界の端に独特なツインテールを見つける。
(!……いや、落ち着け。今リファの元へ飛んで行ってもむしろリファのことを危険にさらしてしまうだけだ……せめてこの機械を振り切ってからにしないと……)
泰久はまず機械の方に向き直る。
「さて……問題はどうやって振り切るか、だ」
泰久は自分がここから離れてリファを安全に助ける方法を考える。
(後ろには下がれないから前に出る必要はあるだろうな……その場合、一番狙いやすそうなのはあの機械の足元だ)
蜘蛛型の機械の足は相当長いが、関節は精々2個ほどしか無い。
(2個しか関節がないのなら、僕が足元を素早く走り抜ければ蜘蛛は僕を捉えることが出来ないんじゃないか?)
賭けに出るしか無い、と考えて泰久は走り出す準備をする。
(足元を動いて、相手に補足されないように……)
「三……二……一……今!」
泰久は雲の足元に向かって走り出した。
蜘蛛は自分の真下へ向かってくる人間に向けて砲塔を向けようとする。
「よし!やっぱり大丈夫だ!」
砲塔は泰久の方へ向く直前に、蜘蛛の足に引っかかって止まった。
(今のうちにリファの所へ行って一緒に逃げないと!)
泰久は先ほど見えたツインテールのある場所へ全速力で向かう。
ギュン、という音が泰久の上から聞こえた。
「え?」
泰久はその音がした方へ振り返る。
見ると、泰久の真上、蜘蛛型機械の胴体の真ん中くらいの場所から、真下に居る泰久の方を向いた砲塔が生えていた。
「……え?」
予想外の出来事に泰久は一瞬足を止める。
その一瞬が致命傷となった。
ドン、と大きな音がして、泰久の体に砲弾が迫る。
「!!」
泰久は無意識的に手を前に向ける。
泰久の体に砲弾が直撃する
直前に泰久の手から黒い霧のようなものが生まれた。
「え?」
泰久は、そのまま立ち止まった。
黒い霧が砲弾に向かって伸びていく。
霧が弾を包んで砲弾が見えなくなった。
「いや……え?何が……」
ドクン、と不思議な感覚がした。
泰久は、自分の体の中に何かが流れ込んでくるような妙な感覚を覚えながらも黒い霧を見つめていた。
暫くすると、黒い霧の量が徐々に減っていく。
しかし、霧が無くなり、先ほど霧によって隠されていた砲弾が出てくるということは無かった。
「……無い」
霧が晴れた時にはもう砲弾は跡形も無く消えていた。
「一体、何が……」
泰久は少しの間その場で呆然としていた。
「っ!!違う!早く走らなきゃ!」
泰久は、ハッと我に返って走り出す。
「リファ!!無事?!!」
ツインテールのある場所に辿り着いて泰久はそう言う。
「あ!泰久!!来てくれたんだ!!ありがと♡」
リファは瓦礫の影からヒョコリと顔を出す。
「リファ……良かった……無事だったんだ……」
泰久は安心したように息を吐く。
「じゃあ、ほら、早く逃げるよ」
泰久はリファに背中を向けてしゃがむとそう言った。
「?……あっ!そういうこと?!大丈夫だよ!!流石に今は私も自分で歩けるよ!」
リファは立って泰久の隣を走っていった。
「ねぇ~。どっちに行けばいいの~?」
リファは走りながらそう言った。
「リファ!!駄目だよ!!隠れて、静かにしなきゃ!」
ギュン、とモーターが駆動するような音がする。
見ると、泰久の方を見ているリファの体の前に蜘蛛型の機械が来ていた。
「リファ!!危ない!!」
「え?」
泰久が叫ぶと、リファは一瞬立ち止まる。
その間に、蜘蛛の身体に付いた砲塔がリファの頭に狙いを定めていた。
「リファ!!早くそこから
ズドン、と何かが爆発するような音がする。
次の瞬間には、リファの頭が無くなっていた。
頭を失った胴体がゆっくりとその場に崩れる。
「リ……ファ?」
泰久は、何かに頭を侵されたようにゆっくりと、一歩ずつ進んで行く。
そして、動かなくなったリファの身体の前に辿り着く。
(いや、いやいやいや……そんな簡単に死ぬはずが……そんな……はずが……)
泰久はリファの身体に手を伸ばす。
腕を掴んでリファを起こそうとする。
(固い……え?いや……そんなはずは……だったら、リファは本当に……)
リファの腕は固くなっていて、泰久の筋力ではそう簡単に動かすことが出来そうになかった。
「ねぇ……リファ?大丈夫……だよ、ね?」
顔のないリファから声が返ってくることは無かった。
泰久の頭の中から周りの状況を判断できる余裕が消えていく。
そんな頭では、自分に向けられた砲塔に気付くことが出来る訳も無かった。
(とにかく……とにかくリファをここから動かさないと……それから、病院に連れて行って……)
「あ」
泰久はリファをどこか安全な場所に連れて行こうと持ち上げるが、腕に力が入らず、リファの身体を落としてしまう。
その瞬間、泰久に砲弾が直撃した。
泰久は吹き飛ばされ、何度も地面に当たりながら遠くにたどり着く。
「あ……あ……」
泰久にはもう動き出す気力も残っていなかった。
「リ……ファ……」
残っている力でリファのいる方に手を伸ばす。
リファが無事なのかを確認しようと、首を動かして先程自分がリファを持ち上げようとしていた場所を見た。
そこに、リファの死体は無かった。
(え……?何で……)
泰久は固まる。
(そんなはずは……さっきまでは間違いなくそこにあったはずなのに……)
泰久は力を振り絞って周囲を見渡す。
「……あれ……か?」
泰久の視線の先では身体の下半分だけが残ったリファらしきものが壁に突き刺さっていた。
「リ……ファ……」
泰久は地面を這って、その身体のある場所へ移動する。
「リファ……」
壁に刺さったリファを引き抜こうとリファの腰に手をかける。
引っこ抜こうと必死で力を込めていると、泰久は途中であることに気付く。
(このまま引っこ抜いた場合、リファは無事なのか?)
今のリファは、必死に力を込めても全く動かないくらい固く壁にハマっている。
「じゃあ、周りの壁を壊す方向で動いた方が良いのかな……?」
泰久は近くの瓦礫からスコップのようなものを拾う。
慎重に、慎重に壁に向けてそのスコップを当てる。
パラパラと少しだけ壁が崩れ始めた。
(まだ……来てない……)
泰久がチラリと蜘蛛型機械の方に目を向けると、まだ泰久の居る方へ向かってくる様子には見えなかった。
それをよく確認すると、泰久はどんどん壁を崩していく。
暫く崩すと、リファの身体を取り出せるくらいには隙間が空いてきた。
「よし……これなら……」
泰久はリファを壁からゆっくりと取り出す。
「……やっぱり……駄目か」
取り出したリファに上半身は無かった。
それどころか、先程よりも無くなっている身体の体積は増えていた。
「……もう、駄目なのかな……?」
泰久は半ば諦めながらもリファの身体を取り出し、丁寧に床に置いた。
「リファ……ごめんね……」
泰久の顔から涙が流れる。
「ごめん……」
少しだけ、泰久の身体から黒い霧が漏れ出た。
(何で……こうなったんだろう……?)
泰久は一人で考えた。
「あ……あいつのせいか……」
泰久の視界の端に蜘蛛型の機械が映る。
それを見た瞬間、泰久の身体から出る黒い霧の量が急に増え始める。
「あいつの……せいで!!」
霧が少しずつ機械に近付いていく。
最初は蜘蛛型の機械は霧の発生源となる泰久を無力化しようと近付いてきていた。
ただ、自分の体の半分以上を霧が覆うようになると行動を変え始める。
蜘蛛は退却を始めていた。
泰久の耳に聞こえるモーター音は少しずつ小さくなっていた。
「待て」
泰久は地面を蹴り上げる。
音にも届くかと言う程の凄まじい速度が出た。
そのまま退却している蜘蛛の前に辿り着くと、今までの速度が嘘かのように急停止した。
「待てって」
泰久は呟くように、震える声でそう言った。
「僕からリファを奪っておいて何勝手に逃げようとしてるの?」
泰久は蜘蛛へそう話しかけた。
「ダメでしょ…ね?」
一歩ずつ蜘蛛へと近づいていく。
「ほら……ちゃんと償ってくれないと……困るよ……」
泰久はその場から機械に向かって走り出す。
そのままの勢いで機械に飛び蹴りを食らわせた。
ただ蹴りを食らわせただけで辺りを衝撃波が襲った。
蜘蛛型機械はその衝撃に耐えられず、機械の上半分が吹き飛ぶ。
「あ……以外と脆いんだ……」
泰久はボソリと呟く。
「じゃあ、壊せそうだな……」
泰久はジャンプして機械の上に乗り、部品同士の繋ぎ目を探す。
「あった……これか」
その繋ぎ目に手を捩じ込み、力を込めてその繋ぎ目を引き剝がした。
「リファは頭を吹っ飛ばされたんだ。」
「君に痛覚が有るのかは分からないけど、リファと同じだけとは言わないけど、出来るだけ苦しんでくれると嬉しいな」
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