人類戦線

さむほーん

文字の大きさ
203 / 220
人類戦線編

第五十五話 起動

しおりを挟む
(まずい……)

さっきから、思いつく限りの方法を試した

でも、どれも上手く行かない

そろそろ城崎のところに逃げ帰ることを考えても良いかもしれないな

「……君さ、逃げようとしてる?」

あれ?バレた?

そういう素振りを見せた覚えはなかったんだけど……

「察しが良いですね」

僕は少し勝ち気に見えるようにそう答えた

「まあ、僕は結構昔から他人の考えが読めるタイプの人間って言われてたし、君がそう思っちゃうのも仕方ないかな」

余裕綽々とそう言った

「さて、もう出来ることが無いんならこれで終わりで良いのかな?」

そう言って左手で聖杯を傾ける

(抜刀)

非常にラッキーなことに、突然チャンスが降って湧いてきた

僕は相手が手に聖杯グラスを持っているのを確認するとすぐに加速状態に入り、相手の元まで猛ダッシュで向かった

「よし!OK!」

相手の手を刀で叩くと、相手の手から聖杯が零れ落ちる

(解除)

加速状態を解除すると、その瞬間まで空中で浮いていた聖杯が重力に従って地面に落ちていく

「っ?!」

相手が恐らく初めて焦った

とても人間とは思えないスピードで手を伸ばす

いや、実際人間じゃ無いんだろう

そのまま手を伸ばし、聖杯を再び掴む

その瞬間を狙って、僕は相手の手首を切った

「!」

ライアンは苦痛に顔を歪めた……ように見えた

でも、今は手を切られる痛みを我慢してでもやらなければいけないことがライアンにはある

諦めずに、もう片方の手を伸ばす

その手も、僕が切り落とした

不思議と、どこを切れば良いのかは分かっていた

相手がうずくまる

流石に足で聖杯を拾うのは諦めたようだ

僕は地面に落ちた聖杯をすぐさま遠くに蹴飛ばす

僕があの聖杯を有効活用してライアンをどうにかするのが最適ではあるけど、そんなことを狙ってライアンに聖杯を奪い返されたらおしまいだ

その最悪を避けるためにも、聖杯はこの場から少しでも遠ざけておいた方が良いだろう

「どうかな?これで僕が勝ったんじゃない?」

僕は本心からそう言った

「……」

ライアンは黙り込む

(お?これはもしかしたら本当に効いているんじゃないか?)

「じゃあさ、どうする?ここで降参?」

目線は相手に向けて、それでいて意識は聖杯に向けながらそう聞く

「……ふふっ」

すると、相手は突然笑い出した

「……何?頭がおかしくなったフリをして僕の動揺を誘って隙を作るつもり?残念だけど、それは無理だと思うよ」

口ではそう言いながらも、相手が急に笑い出した意図を探ろうとライアンをじっくりと観察する

僕の目に隠れて何かをやろうとしているのかもしれないけど、こいつが蹲った時点で何か仕掛けてくることへの警戒心は最大まで引き上げてある

今の僕はそんなに簡単には欺けないんじゃ無いかな?

「いや、備えあれば憂いなし、って言葉を思い出してね」

その言葉を聞いて、警戒心を更に引き上げる

(変なものが周りを飛んでいる気配は無い……ブラフかな?)

音や空気の流れから判断するに、増援が来ているという様子では無い

あと何か有るとしたら……

「もしかしてその『備え』って、あの巨人絡みのこと?」

そう聞く

EXACTLYだいせいかい。ところで、今僕の腕かどうなっているのか気にならないかな?」

「腕?」

もしかしたらこう言うことによって腕に注目を集めて、その間に視線誘導技術ミスディレクションの要領でなにか仕掛けるのが相手の目的かもしれない

その可能性を考えた上で、僕は相手の腕を叩いた

「……?」

僕が腕を叩くと、確かに腕は揺れた

けど、真ん中だけが揺れたんだ

肩も、手首から先も動かなかった

見間違いかと思って何度も叩くけど、結果は変わらない

流石になにかおかしいと思って相手の手首をよく見る

「……くっついてる?」

さっき僕が切り落としたから、ライアンには手首から先が無い

それは良いんだけど、問題はその切り口だ

僕が作った切り口が地面に接合されていた

「結構気付くのが遅いんだね。確かに君は見るからに察しが悪そうだけど、ここまでとは思ってなかったな……」

呆れたようにそう言ってきた

「何を……しようとしてんの?」

そう聞く

「人生何事も思い通りに行くわけじゃない。だから『僕が聖杯を使える状態で君達を圧倒する』っていう理想的な計画プランは失敗したけど、他のパターンも考えてあったんだ」

「その内の一つがこれさ。僕がこの巨人と一体化する」

そんなことを言われて黙っているわけには行かないが、それを阻止する方法もない

僕はただ見ているしかなかった

「……うん。そろそろだね。じゃあ楽しませてくれたお礼だ。君を故郷に返してあげよう」

「そこでこのゲームの終わりを見届けるといい」

――――――――――――――――――――――――

「……あの、なんかあの巨人、さっきから動き方が変わってません?」

僕は望遠鏡を覗きながらそう言った

「ん?そうなのか?ちょっと見してみろ」

隣りにいる人が望遠鏡を覗き込んでくる

「……おいおい、これ……人が動かしてねぇか?」

そう言ってくる

「……確かに、言われてみるとそういう感じもしますね」

一緒に巨人を見つめながらそう言った

「……おい、あいつ、こっちに歩いてきてないか?」

「確かにそうですね……一応、逃げておきましょうか」

僕たちは転移用のカーペットに乗った
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...