人類戦線

さむほーん

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人類戦線編

第六十六話 使用

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「!」

空から落ちてくる美優を発見する

それを伝えようとするが、自分が猿轡をつけていたことを思い出す

「どっちの方ですか?!」

言葉が出せないので右上の方に首を振る

それを確認したのか、飛行機が進行方向を大きく変える

その向かう先は、私が先程頭で指した弘岡の居る方向だった

「あと数秒で着きます!準備して下さい!」

そう言われたので、今までより一層強く猿轡を噛む

その直後、飛行機が一気に加速し、私の体に強烈なGがかかる

(大丈夫だ……まだまだ体は耐えられる!)

何故かは分からないが、最近の私の体は妙に耐久力が高い

もしかしたら、装備のおかげなのかもしれないが、今はそんなことはどうでも良い

ドンッ、と何かが飛行機の天井に当たるような音がする

多分、美優が上に着陸したんだろう

運転手がそれを確認した素振りを見せると、再び飛行機は急上昇していく

そして先程弘岡がと同じくらいの高さに辿り着いた

それと同時に、機体が僅かに下に押し出される

美優が飛び立ったみたいだ

再び、機体が強烈な速度で降下していく

フワリ、と体が浮き上がりそうになるが、ベルトを使って体を固定してあるお陰で何とかなっている

(あとこれを何度か繰り返せば……)

少しずつ、希望が見えてきた

私はその希望を支えに浮遊感とそれに伴う吐き気に必死で耐えた

――――――――――――――――――――――――

「これで……残るはあと一つ!」

巨人の右肩の裏を硬化した直後に私はそう叫ぶ

人間の場合、体を動かす上で重要な関節は十個程あることになる

この巨人も同じような構造であると仮定したら、同じように体を動かすために必要な関節は両肘・両股関節・両膝・両肩・両足首の合計十個の筈だ

私は今までにその内の左肩を除く九個を硬化した

だから、あと一つ硬化してしまえば相手の動きは完全に止められる

(ただ、気になるのは……)

一つだけ気になることがある

硬化に必要となる時間が少しずつ伸びていっていることだ

疲労なのかどうなのかは分からないけど……

もし自分でも気付かないような疲労なのだとしたら、最後の関節を固めている間に落下しかねない

(そのリスクはあるけど……今はやるしかない!)

覚悟を決めて再び壁から落下し、飛行機に拾われる

その飛行機に乗って、最後の目的地に向かう

(あと……少し……)

ベストなタイミングまで、待つ

ある高さから、飛行機が水平移動に変化した

(ここ!)

私は飛行機から飛び降りて、宙を舞う

そのまま壁に指を引っ掛けた

先程と同じような力が指にかかり、私自身が減速していく

暫くして、私は完全に停止した

「ここを……」

手を触れて相手を硬化させていく

(?!)

頭がクラリとする

疲労だろうか?

(不味い……早く終わらせないと……)

この状態で巨人の体に張り付いているのは危険すぎる

体が限界を迎える前に硬化しきって離脱しないと

(疲労のせいか、硬化が遅くなっているけど……あと少しで何とかなる)

ここで硬化が間に合えば……

下を見ると、もう飛行機が私を拾おうと、予定されたルートに入っていた

(不味い!このペースじゃあ間に合わない!)

このままだと飛行機の移動に間に合わず、海に落ちてそのまま死亡することになってしまう

そうなってはいけない

急いで硬化を行わないと!

必死に腕に力を込めるが、硬化は中々進まない

(急がないと!このままじゃあ……)

そんな時、蒼井からあるものをもらっていた事をに気が付く

ポケットから注射器を取り出した

――――――――――――――――――――――――――

「美優。出発前に少し良いか?」

「何?」

蒼井にそう言われて、振り向く

正直、ロシアから帰ってきてからは蒼井が私のことをずっと付け回してきたから鬱陶しいとは思っていた

けど、やっぱり大切な友達ではあったから突き放せずにいたままここまで来ていた

呼ばれて蒼井の方に向かうと、注射器を渡される

「……これは?」

「城崎から受け取った物だ。どうやら、ある人物の使っていた装備らしくてな。これを使えば疲労が一気に回復するらしい」

そして、次々とポケットから注射器を取り出してくる

「これが怪我の治療用で、これは身体能力の強化用、そしてこれは一時的に痛覚を消すもの」

そうして一本一本丁寧に包み、私にそれを渡してくる

「え?ちょっと……これ、何?」

そう言うと、蒼井は驚いたような顔をする

「何って……今説明しただろう?何度も説明するのは大変なんだが……」

「いや、だから……そもそもこれは誰のものなの?」

蒼井は簡単に答える

「これは城崎が私に渡したものだ。いざという時の為に何本か持っておけと」

「それじゃあ蒼井が使わないと駄目なんじゃ……」

それを言うと、蒼井はしゃがんで私の両肩に手をかける

「良いか、美優。これからの作戦では、美優は確実に肉壁のような役割を負わされる。私がどう言おうと、それを変えることは出来無い」

「うん」

そこは否定出来ない

「だから、せめてこれを使って……生き残る確率を少しでも上げてくれ……頼む」

――――――――――――――――――――――――――

(これを使えば……)

私は、一瞬だけ硬化の作業を止めて

疲労回復用の注射器を、自分の静脈にゆっくりと丁寧に刺した
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