咲かない花を僕は愛しつづけた。

志田あずさ

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ピピピピピピ

「ん…もう朝か…」

大学にももう慣れていつも通りの朝を迎えようとしていた。
朝のニュースを見る前までは、


朝ごはんを適当に作ってテーブルに座る。
ご飯を食べ終わり今日の天気を見ようとテレビをつけた、その時テレビに映った光景は信じられないものだった。

「え、なんだ…これ」

この時間だったら人で溢れているはずの東京の街が誰一人と歩いていなかった。
その状況を混乱状態で慌てて原稿を読んでいるアナウンサー、テレビで映っていない裏側も混乱し騒ぎが起きていることが分かった。

ピコンッ
「ん?蕾か」
蕾からラインがきた。

「海斗ニュースみた?」
「あぁ、さっき起きて見たけど…なにこれ」
「なんか変異ウイルスが昨晩の一瞬で増えていたみたいなの。もちろんそれがどういうウイルスかも分からないから、薬もないし大混乱だよ」
「そういうことか、まぁ大丈夫じゃない?仙台には来ないでしょ」
「ちょっと少し離れ危機感持ちなよね?じゃ、大学で」

東京があんな状態だったら仙台にも来るかもしれないというのは分かっていた。
「インフルとか風邪みたいなもんだろ」
そう思っていた。
変異ウイルスの患者は今は58人。その患者の状態は至って普通だそうだ。
普通に風邪薬とか解熱剤を飲めば治るだろうと誰だもが思っていた。


「おはよー蕾、ってマスクしてるの?」
「はよ、まぁ一応見たいな?かかったら怖いし」
「心配性だなぁ蕾。あんなの普通の風邪みたいなものだって」
「そうかなぁ?でも一応ね」

蕾は心配性だった。
いつも俺の心配もしてくれるお母さんみたいなところもあった。
大学の授業も受けて終わった後、蕾とカフェでご飯を食べることにした。

「なんかいつもより人少なくない?」
「そうか?いつも通りだろ」
「そうかなぁ」
「そんな不安がるなって~笑」

いつも幸せみたいな顔してここのサンドウィッチを食べるのに、今日の食べる姿は少し歪んでいた。
まぁ、朝起きて直ぐにあのニュースを見たらこうもなるか。
大地震が来た時災害が起きた時でも冷静だった大人が、あんなに慌てているなんて。
誰でも怖くなってしまう。


ご飯を食べたあと蕾は実家に用事があると、カフェで解散した。
「午後何も無いなぁ…あ、夏になるし服でも見に行くか」
ちょうど長袖では少し暑いくらいだった。明後日からは本格的に夏が始まると聞いたので、服を見に行くことにした。
学生の頃は適当にお母さんが買った服を着ていたので、こうして服を自分で選んで買うのは初めてだ。

「わっこんな服あるのか」
手にとった服はTシャツにファスナーが斜めに着いているような、変わったオシャレな服だった。
いかにも都会のオシャレさんが着こなせる服。
「俺には…まだ早いな笑」
そっと服を元に戻し店内を見ていると、若い男の2人組がいた。
ギャハギャハと服を見ながら笑ったり話をしていたが俺はあまりに気にならなかった。
普通に服を見ていると

「てかさ、今日アーケード通った?」
「いやぁ?通ってないけどなんかあったん?」
「ニュースでさぁ、ウイルス流行ってるみたいじゃん?その影響で人少なかったんだよね~笑」
「まじ?じゃあ今日、あそこの混んでる飲み屋空いてるんじゃね」
「あ、いいねぇ行こうか!」

盗み聞きするつもりはこれぽっちもなかった。
ウイルス…か。やっぱり少し気になってしまう。
感染してしまった患者だって、病院に隔離されただけで体調には異常はないみたいだし…
大丈夫だろう。俺も混んでていけなかったところなどに行けるし、いい機会かもしれないそう思った。
手に取っていいなっと思った服を3着ほど購入して店を出た。


「え、もう17:49?店内にいすぎたなぁ。今日は帰るか。」
午前中は大学の授業。午後は服を購入しようと仙台から少し離れたモールに来たから疲れてしまった。
夕飯は適当に作るかと思ったけど、ろくな材料が冷蔵庫には入っていないと気づき、近くのコンビニで弁当を買うことにした。
「598円です~」
「はい」
最近の弁当はやけに高い気がした、税金が上がったせいか気のせいなのか、また他のせいなのか。

1人ぐらしの俺には少しキツかった。
アルバイト変えようかな。俺は今ファミリーレストランで授業がない日に働いていた。
結構な時間働いてもあんまり貰えないし…
少しいい所の場所で働いたらいいかもと、帰ったら調べようと決めた。

「ん~ネットニュースは変異ウイルスでも
持ち切りか」
トップニュースは全て変異ウイルス、テレビをつけても変異ウイルスについて語っている偉い人ばかり。
都知事や県知事達は緊急の取材を受けて、無茶な質問に答えるのに必死だった。
医者でも薬剤師でも分からない変異ウイルスのことを、知事が分かるわけないだろう。
この記者たちは頼る人を間違えている。いや、頼る人がいないから、この人たちに押し掛けてるのか。
このニュースの書き込みだって、その人を批判するものばかりだった。

「知事なのに分からないの?」
「こんな人がトップだと不安だわぁ」
「これから大丈夫なのかな?」
「もっとマシな人がいた」
 
誹謗中傷は簡単だ。だって顔が見えていないし、共感する人が居ればもっとヒートアップするだろう。
「じゃあ、お前なら変異ウイルスについて分かるのかってことだよなぁ」
誰も分からないことを、「分からない」と言って批判される人を見て俺は心が痛くなった。
でも、そいう役割もその仕事に入っているのだろう。
何もかも未知の世界の変異ウイルスへ都内のひとは特に不安だろう。
その不安をどうするかと言われたら、誰にも当てることが出来ず発散できない。そこで標的になったのはテレビの人。
可哀想だと思っても俺は何も出来ない。
まぁ、宮城はまだ大丈夫だし。アルバイトでも探すか。

「あ、なんかいいバイトが多いぞ」
今回の件で結構飲食系はやめている人が多いらしい。
「ここのバイト時給高いじゃん。え、まかない付き?ここにしよー」
少し高級なレストラン。時給だって良いし仕事もそんな苦には見えなかった。
応募をすることに決めた。

ソファーの上で背伸びをして時計をみる。
すると時計の針は21:16を指していた。
もう寝る準備しないとなと、風呂を沸かし洗面台に向かった。
洗濯物も溜まってるから明日の朝干すか。久々に洗濯機を動かして、炊飯器も明日の朝ごはん用に予約スイッチを入れた。

明日は大学はない、その代わりバイトが入ってる。明日でも店長に辞めると伝えようか。
バイトの人間関係はいいも悪いもなかった。一緒の場所にいるのなら普通に話すし、居ても自分は自分、貴方は貴方と言ったような場所だった。
その空間が寂しいと思う人はいるかもしれないが、俺にとっても居心地が良かった。
この空間を辞めるのには少し戸惑ったが、生活やこれからのことを考えると変えるしかない。

「…明日店長に言おう」
そう決めて俺は目をつぶった。
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