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「ふむ……、やはり子爵と息子ではそれぞれ交友関係が違うらしい。」
ユースは再度自作のリストを見ながらアレンシカの行方を追っていた。
「そこまで違う?」
「子爵は貴族が主だが、弟は商家が中心だな。」
「あら意外。」
「あそこの兄弟は個別主義だからな。ミラー子爵家は数年前までは壊滅的といってもいい程だったが、現在の当主が継いでからは急成長を遂げている。弟の交友関係と合わせれば広がることが急成長の秘密か。」
いつものようにフィラルがユースの執務室におり、散らかった書類をまとめている。
「さすがに商家はないと思う?」
「こちらへの対抗として力がないからな。公爵子息を匿うには不十分だろう。」
「そっかー。」
二人とも書類とにらめっこするくらいしか出来ないが、何か少しでも手がかりがないか隅々まで探す。
何かボロがあるはずだ。
「失礼します。新しいリストです。」
ノックをして部下が入ってきた。ユースの前に数枚の神を差し出す。
「待っていたアレンシカ様の学園関係の内容だな。」
「クラス、教師、クラブにいたるまで少しでも関係がある者をまとめてきました。」
「下がっていい。」
紙を受け取ると一礼して静かに下がっていく。
ユースはすぐに受け取った書類に目を通した。
「やはり一番の仲はプリム・ミラーとエイリーク・スプリンガードか……。他のと項目の差は歴然だな。」
「もう一人は平民。成績は優秀みたいだけど、平民じゃ力はないね。」
「手がかりはないかと思ってこちらも一応調べているが、平民では無力だな。アレンシカを逃がすことすら出来ない。」
プリムならアレンシカの侍従だから命令されれば何でも聞くだろう。子爵家という差はあるが「リリーベル家の侍従」というだけで泊はつき出来ることが増える。
反面エイリークではただの平民、何か助けたくても動くことも発言することも出来ない。困っている友人を前にしても出来ることは戸惑うことだけだ。
「ん?」
「どうしたの?」
「出身はレイシーラ領……。」
無意味ではあるが部下のまとめてくれた情報だからと一通り目を通していると気になる項目が目に入った。
「レイシーラってあの遠い領だよね。一昨年なんて雪崩が酷かったって言われてたっけ?あれどうなったの?」
「父が施して気がついたらすぐ終わっていた。雪崩なんて溶ければすぐ終わるから大した被害でもないだろうし。」
「冬じゃ農業しないから被害が少なくてよかったよね。でもレイシーラがどうしたの?」
「いや、これが……。」
ユースは先程まで見ていたミラー家の項目に再度目を通して指で指し示した。
「プリム・ミラーはシーラ侯爵家と関わっているんだ。家としても交流があるが、個別でも項目が分かれてここにある。プリム個人とも交流があるらしい。」
「当主でもない一個人が侯爵家と?」
「その上特に一番の仲が当主だ。普通ならもっと立場が下の者だろう。」
「当主でもない、他に事業でも起こしている訳でもないあくまで弟だもんね。子爵当主ならともかく個人で繋がりを持つには差がある。」
「そう。そしてこれだ。」
再びレイシーラの文字に戻り指し示す。
「これがなんだっていうの?」
「レイシーラはシーラ侯爵家の飛び地領なんだ。」
「えっ!」
フィラルは顔を上げ驚く。
「あそこってなんかぼんやりした人が領主じゃなかった?」
「あそこの領主はシーラ侯爵家の家門だ。」
「本当?!」
フィラルの中でもやっと繋がり今日一番の声を上げた。まさかここに手がかりがあったとは。
「じゃあ侍従の子と縁がある侯爵家の領地出身の平民……?こんなことって……。それじゃあ……。」
「ああ、アレンシカはここにいる可能性がある。」
「じゃあ今すぐウィンノルに知らせないと!」
「いや、まだ確定的ではない。何せ平民のいる場所に行ったって平民ではアレンシカを守れないどころか危険に晒す可能性があるだろう。そんなところに行くか?」
「いやでもここに証拠が!」
「これはあくまでレイシーラ領が平民の出身地で、そこの領主がミラー家と関わりのある者の家門だということでしかない。」
「でも……。」
「レイシーラは遠いからな、失敗は避けたい。」
王都から距離があるレイシーラに行ってもしいなかった場合、大きなロスになってしまう。その間に本来なら見つけられたはずの場所からいなくなってしまったら?逃げていってしまったら?そう考えるとミスは出来ない。
「じゃあどうするのさ……。」
「そうだな……。」
ユースは少しだけ逡巡し、そして決めた。
「カマをかけてみよう。」
ユースは再度自作のリストを見ながらアレンシカの行方を追っていた。
「そこまで違う?」
「子爵は貴族が主だが、弟は商家が中心だな。」
「あら意外。」
「あそこの兄弟は個別主義だからな。ミラー子爵家は数年前までは壊滅的といってもいい程だったが、現在の当主が継いでからは急成長を遂げている。弟の交友関係と合わせれば広がることが急成長の秘密か。」
いつものようにフィラルがユースの執務室におり、散らかった書類をまとめている。
「さすがに商家はないと思う?」
「こちらへの対抗として力がないからな。公爵子息を匿うには不十分だろう。」
「そっかー。」
二人とも書類とにらめっこするくらいしか出来ないが、何か少しでも手がかりがないか隅々まで探す。
何かボロがあるはずだ。
「失礼します。新しいリストです。」
ノックをして部下が入ってきた。ユースの前に数枚の神を差し出す。
「待っていたアレンシカ様の学園関係の内容だな。」
「クラス、教師、クラブにいたるまで少しでも関係がある者をまとめてきました。」
「下がっていい。」
紙を受け取ると一礼して静かに下がっていく。
ユースはすぐに受け取った書類に目を通した。
「やはり一番の仲はプリム・ミラーとエイリーク・スプリンガードか……。他のと項目の差は歴然だな。」
「もう一人は平民。成績は優秀みたいだけど、平民じゃ力はないね。」
「手がかりはないかと思ってこちらも一応調べているが、平民では無力だな。アレンシカを逃がすことすら出来ない。」
プリムならアレンシカの侍従だから命令されれば何でも聞くだろう。子爵家という差はあるが「リリーベル家の侍従」というだけで泊はつき出来ることが増える。
反面エイリークではただの平民、何か助けたくても動くことも発言することも出来ない。困っている友人を前にしても出来ることは戸惑うことだけだ。
「ん?」
「どうしたの?」
「出身はレイシーラ領……。」
無意味ではあるが部下のまとめてくれた情報だからと一通り目を通していると気になる項目が目に入った。
「レイシーラってあの遠い領だよね。一昨年なんて雪崩が酷かったって言われてたっけ?あれどうなったの?」
「父が施して気がついたらすぐ終わっていた。雪崩なんて溶ければすぐ終わるから大した被害でもないだろうし。」
「冬じゃ農業しないから被害が少なくてよかったよね。でもレイシーラがどうしたの?」
「いや、これが……。」
ユースは先程まで見ていたミラー家の項目に再度目を通して指で指し示した。
「プリム・ミラーはシーラ侯爵家と関わっているんだ。家としても交流があるが、個別でも項目が分かれてここにある。プリム個人とも交流があるらしい。」
「当主でもない一個人が侯爵家と?」
「その上特に一番の仲が当主だ。普通ならもっと立場が下の者だろう。」
「当主でもない、他に事業でも起こしている訳でもないあくまで弟だもんね。子爵当主ならともかく個人で繋がりを持つには差がある。」
「そう。そしてこれだ。」
再びレイシーラの文字に戻り指し示す。
「これがなんだっていうの?」
「レイシーラはシーラ侯爵家の飛び地領なんだ。」
「えっ!」
フィラルは顔を上げ驚く。
「あそこってなんかぼんやりした人が領主じゃなかった?」
「あそこの領主はシーラ侯爵家の家門だ。」
「本当?!」
フィラルの中でもやっと繋がり今日一番の声を上げた。まさかここに手がかりがあったとは。
「じゃあ侍従の子と縁がある侯爵家の領地出身の平民……?こんなことって……。それじゃあ……。」
「ああ、アレンシカはここにいる可能性がある。」
「じゃあ今すぐウィンノルに知らせないと!」
「いや、まだ確定的ではない。何せ平民のいる場所に行ったって平民ではアレンシカを守れないどころか危険に晒す可能性があるだろう。そんなところに行くか?」
「いやでもここに証拠が!」
「これはあくまでレイシーラ領が平民の出身地で、そこの領主がミラー家と関わりのある者の家門だということでしかない。」
「でも……。」
「レイシーラは遠いからな、失敗は避けたい。」
王都から距離があるレイシーラに行ってもしいなかった場合、大きなロスになってしまう。その間に本来なら見つけられたはずの場所からいなくなってしまったら?逃げていってしまったら?そう考えるとミスは出来ない。
「じゃあどうするのさ……。」
「そうだな……。」
ユースは少しだけ逡巡し、そして決めた。
「カマをかけてみよう。」
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