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公爵の怒り
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リリーベル公爵の目が真っ直ぐにウィンノルを射抜く。
「……何か意味でもあったというのですか。」
何を言ってものらりくらりとし非を認めようとしない公爵にウィンノルは焦れまた事細かく説明してあげようと思った。しかしあまりの目の力強さにウィンノルはたじろぎ言葉が続かない。
「ウィンノル殿下。貴方は学園でずっとアレンシカを貶め続けていましたよね。その状態でどうして社交に行かせようというのでしょう。」
「……それはアレンシカが至らない点ばかりだったからです。何をしても俺より劣り、言ったことをいつまで経っても出来やしない。それでもアレンシカを見守っていますが、だからといって立場に甘んじてはいけないのです。」
「アレンシカのどこが甘んじていると?皆の前で貶め冷たくあしらっていることは私だって知っています。家を空けがちな私でさえも。」
「アレンシカには甘えず、より高みを目指してほしいのです。高い目標を達成し、それでも満足せずさらに高みを目指す。それこそが王族の婚約者にふさわしい。だけどアレンシカは目標すら達成していません。」
「……アレンシカが毎日勉強に励んでいるのは知っています。ウィンノル殿下の成績には及ばないことも。ですがアレンシカが勉強に励んでいる間、貴方は何に励んでいましたか?まさか私が何も知っていないとでも?王都にいないからって侮らないでいただきたい。」
「……俺の成績をご覧になっていますか?結果が伴わなければ意味がないのですよ。」
「意味が伴えば何をしてもいいと?」
公爵はギロリとウィンノルを見ている。目には怒りが篭もる。それでも数々の要人と仕事をしてきた公爵は態度に出すことはない。
「以前あるパーティーに出た時にアレンシカは何人にも責められていました。その相手は全て貴方様の浮気相手でしたよ。自分の管理も出来ない者がアレンシカの管理をしようと思わないでください。」
「俺の婚約者なんだからアレンシカを気に掛けるのは当たり前ですよね。それに少し何か言われるくらい王族の婚約者なんだから慣れないと。何も全てか婚約者だから言われていた訳ではないはずだ。公爵家の人間だから少なからず嫉妬されることもある。」
「まさか全てそうだと?少しは嫉妬もあったでしょう。ですがほぼ殿下の行いのせいでしたよ。ウィンノル殿下の浮気相手が、自分が寵愛を受けているからと正式な婚約者だっとアレンシカを貶めていたのです。」
あまりの返答に公爵の中でウィンノルへの怒りか積もっていく。これでウィンノルは公爵を騙すつもりや言い訳をしているつもりか無いのは分かっている。ウィンノルは心からそう思っているから平気で正しい行いと言っていた。
「以前にも言いましたよね、お互いに配慮もしていない今の状態では政略結婚の域にすらなっていないと。それに婚約者の仲が悪いと政敵から付け入られますよ。何故皆かお互いに歩み寄り思いやっているのか、それすらも理由が分かりませんか?」
「何を言うのかと思えば……、アレンシカとはとても仲が良かったですよ。普段から見ていれば誰の目から見ても分かるはず。皆がアレンシカに嫉妬し王族の婚約者として厳しく見ていたが、アレンシカは俺の気遣いにいつも気づいて努力していた。公爵、仕事で家を空けてしまうのは分かりますがもう少しアレンシカのことを見てやってください。」
思わず今まで以上に公爵の拳に力が入る。もしも同じ立場同士だったら思わず掴みかかっていたかもしれない。それほど怒りが積もっていった。
「リリーベル家は家門が少ないせいで付き合いも少ない。アレンシカは引っ込み思案で世間知らずだから、どうしても人付き合いも少なくなり、周りに言われても上手く言い返せないのでしょうね。それもアレンシカの特性なんでしょうが、それでは困りますからね。俺がアレンシカの代わりに他家と繋がり人の輪を広げないと。その為の交流と何が違いますか。」
「どうやら一般的な交流の認識が私たちとは違うようです。そもそも婿入り先の特徴すら知ろうとしないとは思いませんでした。まあ婚約関係は過去のものとなるので、その努力ももうしなくてもいいでしょう。」
ひとつひとつ理由を述べていも公爵は反論する。
昔から苦手としていることもありウィンノルは公爵の視線が怖かったが、冷静に言い返していけばいつもの調子を取り戻していった。
それが道理が通っているかは別として。
「この国は一夫一妻制であり、不倫は認められません。殿下はこの国も我がリリーベル公爵家も混乱させるおつもりですか?」
「この国は兄上が、公爵家は俺が治めるのだから混乱することにはならない。」
「当主はアレンシカです。殿下には実務の権利もありませんね。まあそれもすらも今は殿下の夢物語でしかありません。」
「まさか婚約解消出来るとでも?」
「話は進んでいると前にも申したはずですが。」
ウィンノルはため息をついた。ため息をつきたいのは公爵のほうだったが難なく堪える。
「まさかまだそんな我儘を。それこそ夢物語ですよ。」
「婚約解消出来ないとどうして殿下はそう頑なに思っているのか甚だ疑問なのですが。」
「王族との縁を解消したいと思うなんて随分物好きだ。」
「それぞれの家には事情がありますから。殿下も随分と自分が求められる立場だとお思いのようですね。そう思ってしまう出来事が多かったのでしょうね。」
公爵はいつの間にか頭痛がしていることに気づいた。目の前から返される言葉の数々を聞いていると頭痛が酷くなっていく。それでも愛する息子の為にも何とかするしかない。息子は今新天地でのびのびとしながらも新しく努力している。こんな人物と婚約させてしまったことが父親として申し訳なかった。
「殿下、私ははっきりと言えますよ。殿下とアレンシカの婚約は失敗だったと。」
「何を……、」
「もはや、婚約関係にあったという事実すらアレンシカの足枷になる。」
「……王族との婚姻は最高の栄誉だ。」
「それが素晴らしい人格を持った王子ならの話ですが。」
とうとう怒りによって普段の公爵ならけして言わない言葉が出た。使用人たちはここおらず誰もいないからこそ言えることだった。
もっともウィンノルを諭す為にならどう言おうと構わないと以前から国王にお墨付きをもらっているからだが。
「……何か意味でもあったというのですか。」
何を言ってものらりくらりとし非を認めようとしない公爵にウィンノルは焦れまた事細かく説明してあげようと思った。しかしあまりの目の力強さにウィンノルはたじろぎ言葉が続かない。
「ウィンノル殿下。貴方は学園でずっとアレンシカを貶め続けていましたよね。その状態でどうして社交に行かせようというのでしょう。」
「……それはアレンシカが至らない点ばかりだったからです。何をしても俺より劣り、言ったことをいつまで経っても出来やしない。それでもアレンシカを見守っていますが、だからといって立場に甘んじてはいけないのです。」
「アレンシカのどこが甘んじていると?皆の前で貶め冷たくあしらっていることは私だって知っています。家を空けがちな私でさえも。」
「アレンシカには甘えず、より高みを目指してほしいのです。高い目標を達成し、それでも満足せずさらに高みを目指す。それこそが王族の婚約者にふさわしい。だけどアレンシカは目標すら達成していません。」
「……アレンシカが毎日勉強に励んでいるのは知っています。ウィンノル殿下の成績には及ばないことも。ですがアレンシカが勉強に励んでいる間、貴方は何に励んでいましたか?まさか私が何も知っていないとでも?王都にいないからって侮らないでいただきたい。」
「……俺の成績をご覧になっていますか?結果が伴わなければ意味がないのですよ。」
「意味が伴えば何をしてもいいと?」
公爵はギロリとウィンノルを見ている。目には怒りが篭もる。それでも数々の要人と仕事をしてきた公爵は態度に出すことはない。
「以前あるパーティーに出た時にアレンシカは何人にも責められていました。その相手は全て貴方様の浮気相手でしたよ。自分の管理も出来ない者がアレンシカの管理をしようと思わないでください。」
「俺の婚約者なんだからアレンシカを気に掛けるのは当たり前ですよね。それに少し何か言われるくらい王族の婚約者なんだから慣れないと。何も全てか婚約者だから言われていた訳ではないはずだ。公爵家の人間だから少なからず嫉妬されることもある。」
「まさか全てそうだと?少しは嫉妬もあったでしょう。ですがほぼ殿下の行いのせいでしたよ。ウィンノル殿下の浮気相手が、自分が寵愛を受けているからと正式な婚約者だっとアレンシカを貶めていたのです。」
あまりの返答に公爵の中でウィンノルへの怒りか積もっていく。これでウィンノルは公爵を騙すつもりや言い訳をしているつもりか無いのは分かっている。ウィンノルは心からそう思っているから平気で正しい行いと言っていた。
「以前にも言いましたよね、お互いに配慮もしていない今の状態では政略結婚の域にすらなっていないと。それに婚約者の仲が悪いと政敵から付け入られますよ。何故皆かお互いに歩み寄り思いやっているのか、それすらも理由が分かりませんか?」
「何を言うのかと思えば……、アレンシカとはとても仲が良かったですよ。普段から見ていれば誰の目から見ても分かるはず。皆がアレンシカに嫉妬し王族の婚約者として厳しく見ていたが、アレンシカは俺の気遣いにいつも気づいて努力していた。公爵、仕事で家を空けてしまうのは分かりますがもう少しアレンシカのことを見てやってください。」
思わず今まで以上に公爵の拳に力が入る。もしも同じ立場同士だったら思わず掴みかかっていたかもしれない。それほど怒りが積もっていった。
「リリーベル家は家門が少ないせいで付き合いも少ない。アレンシカは引っ込み思案で世間知らずだから、どうしても人付き合いも少なくなり、周りに言われても上手く言い返せないのでしょうね。それもアレンシカの特性なんでしょうが、それでは困りますからね。俺がアレンシカの代わりに他家と繋がり人の輪を広げないと。その為の交流と何が違いますか。」
「どうやら一般的な交流の認識が私たちとは違うようです。そもそも婿入り先の特徴すら知ろうとしないとは思いませんでした。まあ婚約関係は過去のものとなるので、その努力ももうしなくてもいいでしょう。」
ひとつひとつ理由を述べていも公爵は反論する。
昔から苦手としていることもありウィンノルは公爵の視線が怖かったが、冷静に言い返していけばいつもの調子を取り戻していった。
それが道理が通っているかは別として。
「この国は一夫一妻制であり、不倫は認められません。殿下はこの国も我がリリーベル公爵家も混乱させるおつもりですか?」
「この国は兄上が、公爵家は俺が治めるのだから混乱することにはならない。」
「当主はアレンシカです。殿下には実務の権利もありませんね。まあそれもすらも今は殿下の夢物語でしかありません。」
「まさか婚約解消出来るとでも?」
「話は進んでいると前にも申したはずですが。」
ウィンノルはため息をついた。ため息をつきたいのは公爵のほうだったが難なく堪える。
「まさかまだそんな我儘を。それこそ夢物語ですよ。」
「婚約解消出来ないとどうして殿下はそう頑なに思っているのか甚だ疑問なのですが。」
「王族との縁を解消したいと思うなんて随分物好きだ。」
「それぞれの家には事情がありますから。殿下も随分と自分が求められる立場だとお思いのようですね。そう思ってしまう出来事が多かったのでしょうね。」
公爵はいつの間にか頭痛がしていることに気づいた。目の前から返される言葉の数々を聞いていると頭痛が酷くなっていく。それでも愛する息子の為にも何とかするしかない。息子は今新天地でのびのびとしながらも新しく努力している。こんな人物と婚約させてしまったことが父親として申し訳なかった。
「殿下、私ははっきりと言えますよ。殿下とアレンシカの婚約は失敗だったと。」
「何を……、」
「もはや、婚約関係にあったという事実すらアレンシカの足枷になる。」
「……王族との婚姻は最高の栄誉だ。」
「それが素晴らしい人格を持った王子ならの話ですが。」
とうとう怒りによって普段の公爵ならけして言わない言葉が出た。使用人たちはここおらず誰もいないからこそ言えることだった。
もっともウィンノルを諭す為にならどう言おうと構わないと以前から国王にお墨付きをもらっているからだが。
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