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返却
だがその手がアレンシカを掴むことはない。
「ありがとうジュスティ。」
いつの間にかすぐ側に来ていたジュスティが護衛用として帯剣していた刃がアレンシカとウィンノルの間に現れ、それ以上近づくことは許されなかった。
「すみませんアレンシカ様、近くにいた者達の確認をしていまして。」
「分かっていたから大丈夫です。」
すぐ隣にはメイメイもいて周囲に鋭い目を張り巡らせていた。
必ずジュスティが来ることは分かっていたのでアレンシカが慌てることはない。隣国から離れてから誰かに襲われた時の為に事前にジュスティとメイメイと確認しあっていた。
(遠くにいるのは……衛務院の人達と……それ以外にもいるけど……。)
王族が自分の国から離れているのに誰も連れていない訳がない。だが衛務院以外にも他の人もいた。
(あの身なりならもしかして……ハンリビスの専用護衛騎士かな。)
ハンリビス王国は他国から王族や有力貴族が来た場合に対象へつける専用の護衛がいると聞いた。もちろんウィンノルは隣国の王子なのでハンリビスがつけていてもおかしくはない。だがそれにしては随分と隠れていた。隠れている場合もあるがそれは特に犯罪等が疑われる場合であり、大抵はもう少し堂々と側で控えているものだった。
(殿下は一体どういった経路で来たのだろう……。)
まさか兄以外の誰にも告げずに飛び出して来たと思わなかったアレンシカにはウィンノルの突飛な行動力が理解出来なかった。
「おい。」
刃に遮られたウィンノルは怒りが更に増していた。
「お前は何者だ。」
「……俺はアレンシカ様の護衛のジュスティですが何か。」
「お前は何を考えている。王子の俺に刃を向ける等あるまじき行為を。」
「貴方は王子なんですか?どこからどう見ても我が主へ乱暴を働こうとしている不届き者にしか見えませんが。」
「お前……!」
ジュスティの言葉にウィンノルは激昂した。
「王子を犯罪者呼ばわり等不敬だ!それに敵対行為だ!」
「ここはハンリビスです。それに貴方は王子様なんですか?名乗りもしないので知りませんでした。」
ジュスティは無愛想にどこか軽蔑を滲ませた目でウィンノルを見ている。その態度にますますウィンノルは怒る。
「今すぐに牢に入れられたくなければ今すぐにその剣をしまえ!そうすればこの場では許してやる。」
「そうすればアレンシカ様に何をするか分からないので出来ませんね。第一俺は主の命しか聞きませんので。」
「俺はフィルニースの王子だ。アレンシカの婚約者で仕える相手。お前の主も同然なんだぞ。」
「それは残念ですね。俺の雇用主はハンリビス王国のシルロライラ公爵家ですので聞けません。」
ウィンノルは強く睨むがそれでもジュスティは引かない。なんとかしてアレンシカを取り返さなければとウィンノルも対抗して自分も柄に手を伸ばした。
だがいくら王子といえども他国で問題を起こせば大きな問題になる。ましてジュスティはシルロライラ公爵家に仕えているとなれば問題は避けられない。
ウィンノルは怒りを何とか鎮めてアレンシカに向き直る。
「……アレンシカ、お前は何をしているんだ。お前が隣国へ来たせいで危うく国際問題になるところだ。」
「どういうことでしょう。」
「他国へ問題を持ち込むなんて許されることではない。そんな人間に外交官が務まる訳がないだろう。」
ウィンノルはアレンシカを説得して自分から来させようとした。今まではウィンノルが説得すればアレンシカはきちんと言うことを聞いていた。だが。
「ジュスティ、メイメイ。帰りましょう。」
アレンシカは確かにウィンノルを見ていたのに、言うことを聞かなかった。それどころかウィンノルへ背を向けようとしている。
「何をしている!すぐ帰れ!」
「殿下もすぐに帰ったほうがよろしいですよ。王子が理由もなく国を離れるなんて心配されるでしょうから。」
「俺はお前を連れ帰る責任がある!」
「正当に来ている僕には帰る意味がありません。それでは。」
行かせまいとウィンノルは手を伸ばしても警戒しているジュスティは刃を向け続けておりウィンノルが近づくことは出来ない。
そうはさせないとウィンノルは今度こそ剣を抜こうと柄をしっかりと握る。ジュスティさえ退けることが出来ればアレンシカをすぐに捕まえることが出来る。あとはこの刃が出ればいいだけだ。
だがそれ以上は許されなかった。
「それ以上は見過せません。」
捉えられたのはウィンノルの方だった。
素早く後ろ手にされて剣から手が離れ引き抜かれることはなかった。
ぐるりとウィンノルの周りを人が囲み視界が遮られる。
「困りますよ。王子がこちらに来るのならきちんと手順を踏んで話を通してもらわないと。」
厳しい声でハンリビスの騎士が言った。
「申し訳ありません。ここまでとは思わなかったもので。」
騎士も衛務院も黙認していた訳ではない。ふたつは正式に取り引きをしてウィンノルをここまで来させていた。
「ではシルロライラ公爵家及び宰相への正式な報告をさせていただきます。」
「ええ。剣は未遂とはいえハンリビス王国の王族や貴族が集まる学園への不当な侵入は重罪にあたりますからね。」
「沙汰はフィルニース国王へご連絡させていただきますが。速やかにお帰りいただきますように。」
「もちろんです。」
「離せ!王族へのこの対応はあってはならないことを分かっているのか!」
「現在の貴方はただの侵入者ですので。」
ウィンノルがどんなに暴れても人数も力も叶わない。なす術無く控えていた厳重な馬車に押し込まれる。ウィンノルをフィルニースへ返す為にずっと控えていたのだろう。外から鍵をかけられれば中からは開けることは出来ない馬車だ。
「それでは。お手数をおかけしました。」
馬車は走り出す。
ウィンノルがいくら壁を押しても殴っても開くこともなく、音も漏れずにフィルニースへただ何も出来ずに帰ることしか出来なかった。
「ありがとうジュスティ。」
いつの間にかすぐ側に来ていたジュスティが護衛用として帯剣していた刃がアレンシカとウィンノルの間に現れ、それ以上近づくことは許されなかった。
「すみませんアレンシカ様、近くにいた者達の確認をしていまして。」
「分かっていたから大丈夫です。」
すぐ隣にはメイメイもいて周囲に鋭い目を張り巡らせていた。
必ずジュスティが来ることは分かっていたのでアレンシカが慌てることはない。隣国から離れてから誰かに襲われた時の為に事前にジュスティとメイメイと確認しあっていた。
(遠くにいるのは……衛務院の人達と……それ以外にもいるけど……。)
王族が自分の国から離れているのに誰も連れていない訳がない。だが衛務院以外にも他の人もいた。
(あの身なりならもしかして……ハンリビスの専用護衛騎士かな。)
ハンリビス王国は他国から王族や有力貴族が来た場合に対象へつける専用の護衛がいると聞いた。もちろんウィンノルは隣国の王子なのでハンリビスがつけていてもおかしくはない。だがそれにしては随分と隠れていた。隠れている場合もあるがそれは特に犯罪等が疑われる場合であり、大抵はもう少し堂々と側で控えているものだった。
(殿下は一体どういった経路で来たのだろう……。)
まさか兄以外の誰にも告げずに飛び出して来たと思わなかったアレンシカにはウィンノルの突飛な行動力が理解出来なかった。
「おい。」
刃に遮られたウィンノルは怒りが更に増していた。
「お前は何者だ。」
「……俺はアレンシカ様の護衛のジュスティですが何か。」
「お前は何を考えている。王子の俺に刃を向ける等あるまじき行為を。」
「貴方は王子なんですか?どこからどう見ても我が主へ乱暴を働こうとしている不届き者にしか見えませんが。」
「お前……!」
ジュスティの言葉にウィンノルは激昂した。
「王子を犯罪者呼ばわり等不敬だ!それに敵対行為だ!」
「ここはハンリビスです。それに貴方は王子様なんですか?名乗りもしないので知りませんでした。」
ジュスティは無愛想にどこか軽蔑を滲ませた目でウィンノルを見ている。その態度にますますウィンノルは怒る。
「今すぐに牢に入れられたくなければ今すぐにその剣をしまえ!そうすればこの場では許してやる。」
「そうすればアレンシカ様に何をするか分からないので出来ませんね。第一俺は主の命しか聞きませんので。」
「俺はフィルニースの王子だ。アレンシカの婚約者で仕える相手。お前の主も同然なんだぞ。」
「それは残念ですね。俺の雇用主はハンリビス王国のシルロライラ公爵家ですので聞けません。」
ウィンノルは強く睨むがそれでもジュスティは引かない。なんとかしてアレンシカを取り返さなければとウィンノルも対抗して自分も柄に手を伸ばした。
だがいくら王子といえども他国で問題を起こせば大きな問題になる。ましてジュスティはシルロライラ公爵家に仕えているとなれば問題は避けられない。
ウィンノルは怒りを何とか鎮めてアレンシカに向き直る。
「……アレンシカ、お前は何をしているんだ。お前が隣国へ来たせいで危うく国際問題になるところだ。」
「どういうことでしょう。」
「他国へ問題を持ち込むなんて許されることではない。そんな人間に外交官が務まる訳がないだろう。」
ウィンノルはアレンシカを説得して自分から来させようとした。今まではウィンノルが説得すればアレンシカはきちんと言うことを聞いていた。だが。
「ジュスティ、メイメイ。帰りましょう。」
アレンシカは確かにウィンノルを見ていたのに、言うことを聞かなかった。それどころかウィンノルへ背を向けようとしている。
「何をしている!すぐ帰れ!」
「殿下もすぐに帰ったほうがよろしいですよ。王子が理由もなく国を離れるなんて心配されるでしょうから。」
「俺はお前を連れ帰る責任がある!」
「正当に来ている僕には帰る意味がありません。それでは。」
行かせまいとウィンノルは手を伸ばしても警戒しているジュスティは刃を向け続けておりウィンノルが近づくことは出来ない。
そうはさせないとウィンノルは今度こそ剣を抜こうと柄をしっかりと握る。ジュスティさえ退けることが出来ればアレンシカをすぐに捕まえることが出来る。あとはこの刃が出ればいいだけだ。
だがそれ以上は許されなかった。
「それ以上は見過せません。」
捉えられたのはウィンノルの方だった。
素早く後ろ手にされて剣から手が離れ引き抜かれることはなかった。
ぐるりとウィンノルの周りを人が囲み視界が遮られる。
「困りますよ。王子がこちらに来るのならきちんと手順を踏んで話を通してもらわないと。」
厳しい声でハンリビスの騎士が言った。
「申し訳ありません。ここまでとは思わなかったもので。」
騎士も衛務院も黙認していた訳ではない。ふたつは正式に取り引きをしてウィンノルをここまで来させていた。
「ではシルロライラ公爵家及び宰相への正式な報告をさせていただきます。」
「ええ。剣は未遂とはいえハンリビス王国の王族や貴族が集まる学園への不当な侵入は重罪にあたりますからね。」
「沙汰はフィルニース国王へご連絡させていただきますが。速やかにお帰りいただきますように。」
「もちろんです。」
「離せ!王族へのこの対応はあってはならないことを分かっているのか!」
「現在の貴方はただの侵入者ですので。」
ウィンノルがどんなに暴れても人数も力も叶わない。なす術無く控えていた厳重な馬車に押し込まれる。ウィンノルをフィルニースへ返す為にずっと控えていたのだろう。外から鍵をかけられれば中からは開けることは出来ない馬車だ。
「それでは。お手数をおかけしました。」
馬車は走り出す。
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